(4)持続可能な都市
都市は人間の主要な居住地域であり、経済・社会・政治活動の中心です。近年、そのような都市の運営にかかわる様々な問題が注目されています。市街地や郊外で排出される大量の廃棄物処理への対応や、大気・水等の環境汚染防止への対応、下水・廃棄物処理システム等のインフラ施設の整備、急激な人口増加とそれに伴う急速な都市化への対応などの問題です。こうした問題に対応し、持続可能な都市の実現に向けて取り組むことは重要な開発協力課題となっています。
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の中の「持続可能な開発目標(SDGs)」では、目標11として「包摂(ほうせつ)的で安全かつ強靱(きょうじん)(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住の実現」という課題が設定されました。このように、持続可能な都市の実現を含む人間居住の課題解決に向けた国際的な関心が高まっています。
< 日本の取組 >
日本は、2015年2月に閣議決定した「開発協力大綱」を踏まえ、開発途上国の「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅のため、持続可能な都市の実現に向けた協力を実施するとともに、防災対策・災害復旧対応や健全な水循環の推進等、人間居住に直結した地球規模課題の解決に向けた取組を進めています。
具体的には、日本の知識と経験を活かし、上下水・廃棄物・エネルギー等のインフラ整備や、災害後において被災前より強靱なまちづくりを行う「より良い復興」の考え方を踏まえた防災事業や人材育成等も実施しています。
このほか、日本は人間居住の課題解決に向けた活動を中心とした国際機関である国連人間居住計画(UN-Habitat)(注21)への支援を通じた取組も進めています。特に、UN-Habitatのアジア・太平洋地域事務所の本部が福岡県に所在していることもあり、同事務所本部や日本の民間企業とも連携した事業も実施しています。また、アジア・太平洋地域事務所本部は、20年に1度、都市化に伴う課題をはじめ、人間居住にかかわる課題解決のための国連会議(人間居住会議)を開催しています。
2016年10月には、南米エクアドルのキトで開催される第3回国連人間居住会議(HABITAT Ⅲ)で、前回会議からの20年間に進められてきた各国の取組実績をもとに、幅広い人間居住に係る課題の解決に向けた国際的な取組方針である「ニュー・アーバン・アジェンダ」が採択予定です。日本としても、同会議への貢献に向けた取組を進めていく考えです。
- 注21 : 国連人間居住計画 UN-Habitat:United Nations Human Settlements Programme