第 Ⅲ 部 2014年度の開発協力実績

コスタリカ大学で日本語を教える青年海外協力隊員(日本語教師)の玉村香奈さん(写真:今村健志朗/JICA)
第1章 実績から見た日本の政府開発援助

ケニアにおいて2014年2月に日本の支援により拡張された、アフリカ理数科・技術教育センター(CEMASTEA)。科学実験教室でアフリカ諸国の現職教員たちに教授法を伝えるシニア海外ボランティアの新見さん。1998年から続く技術協力「中等理数科教育強化計画(SMASSE)」「アフリカ理数科教育域内連携ネットワーク(SMASE-WECSA)」がアフリカ地域の競争力を支えている(写真:久野真一/JICA)
2014年、日本の政府開発援助(ODA)の支出総額は約157億754万ドル(約1兆6,626億円)で世界第4位、政府貸付の回収額を差し引いた支出純額(注1)は約92億6,629万ドル(約9,808億円)で世界第5位の実績でした。(注2)
< 実績の分析 >
2014年の日本のODA実績(支出総額)は、前年(2013年)に比べ約30.3%減で、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC(ダック))加盟国における順位は、米国、英国、およびドイツに次いで第4位となりました。また、支出純額でも約20.0%減で、順位は、米国、英国、ドイツ、フランスに次ぎ第5位となりました。(注3)
対前年比で日本のODA実績が減少した主な要因は、円安の進行によりドルベースでの金額が減少したことに加え、前年には債務救済の実績の増加という特殊要因によりODA実績が増大したものが、2014年にはその要因がなくなったことなどによるものです。
2014年ODA実績の内訳は、支出総額では二国間ODAが全体の約79.3%、国際機関に対するODAが約20.7%、支出純額では、二国間ODAが全体の約64.9%、国際機関に対するODAが約35.1%です。二国間ODAは、日本と被援助国との関係強化に貢献することが期待されます。一方、国際機関に対するODAでは、「日本の顔」も見える形で専門的知識や政治的中立性を持った国際機関を支えることを通じて、直接日本政府が行う援助が届きにくい国・地域への支援も可能になります。日本は、これらの支援を柔軟に使い分けるとともに相互の連携を図り、適切に援助が供与されるよう努力しています。
無償資金協力は、開発途上地域の開発を主たる目的として相手国政府等の要請に基づき必要な生産物および役務を購入するための資金を贈与する協力です。また、無償資金協力では大きな災害が発生したときなど開発途上国や国際社会のニーズに迅速かつ機動的に対応することができ、日本のリーダーシップを発揮できる大きな政策的効果があります。技術協力は、日本の知識・技術・経験を活かし、開発途上地域における経済社会開発の担い手となる人材の育成を行う協力で、開発途上国の技術水準の向上、制度や組織の確立や整備などに役立ちます。有償資金協力(政府貸付)は、資金の供与の条件が開発途上地域にとって重い負担にならないよう、金利、償還期間等について緩やかな条件が付された有償の資金供与による協力です。無償資金協力と比較して、有償資金協力には大規模な支援を行いやすく、開発途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設等の支援に効果的です。
以上の援助手法別に見ると、二国間ODAでは、無償資金協力として計上された実績が約24億4,975万ドル(約2,593億円)で、ODA支出総額の実績全体の約15.6%となっています。うち、国際機関を通じた贈与は、約11億6,903万ドル(約1,237億円)で全体の約7.4%です。技術協力は約26億3,007万ドル(約2,784億円)で、全体の約16.7%を占めています。政府貸付実行額は約73億7,306万ドル(約7,804億円)で、ODAの支出総額全体の約46.9%を占めています。政府貸付実行額から回収額を差し引いた純額ベースでは、政府貸付等は約9億3,181万ドル(約986億円)となっています。また、債務救済については、2013年に約40億2,086万ドル(約3,924億円)でしたが、2014年の実績はありませんでした。
地域別の二国間ODAは次のとおりです。支出総額(支出純額)の順。
(以下の実績値は、卒業国向け援助を含む。)
◆アジア:約72億7,126万ドル(約19億7,713万ドル)
◆中東・北アフリカ:約14億4,274万ドル(約8億1,026万ドル)
◆サブサハラ・アフリカ:約16億4,327万ドル(約15億5,742万ドル)
◆中南米:約4億3,423万ドル(約2,975万ドル)
◆大洋州:約1億2,806万ドル(約1億891万ドル)
◆欧州:約1億9,237万ドル(約1億3,174万ドル)
◆複数地域にまたがる援助:約13億5,307万ドル(約13億5,307万ドル)

- 注1 : 支出総額(グロス)と支出純額(ネット)の関係は次のとおり。支出純額=支出総額-回収額(被援助国から援助供与国への貸付の返済額)
援助実績の国際比較においては、通常支出純額が用いられている。 - 注2 : 卒業国向け援助を除く。「卒業国を含む」実績値について、詳しくは図表Ⅳ-13をご覧ください。
- 注3 : 日本以外は、暫定値による比較。




