第2節 持続可能な開発のための2030アジェンダの概要と意義
2.2030アジェンダの特徴
このように、2030アジェンダは、その前身であるMDGsと比べても広範で多様な目標を掲げています。このような包括性も反映して、2030アジェンダには、いくつかの特徴が見られます。
○ユニバーサリティ(普遍性)

カンボジア・プノンペン市内の日本のNGOも支援した障害者施設の工房で、商品製作に取り組む男性(写真:久野真一/JICA)
開発途上国に限らず先進国を含むすべての国に開発目標が適用されるという「ユニバーサリティ」(普遍性)は2030アジェンダの大きな特徴です。実際に、2030アジェンダには、開発途上国だけでなく先進国も抱える課題に関する目標がいくつも掲げられています。たとえば、目標10が掲げる格差の問題や、目標12が掲げる持続可能な消費や生産、さらには目標13が掲げる気候変動対策に関する一連の目標は、先進国を含むすべての国が自らの国内で取り組まなければならない課題です。
○分野横断的なアプローチの必要性
2030アジェンダは、開発に関する包括的なメニューを示すと同時に、取り上げられている各々の分野別の目標は相互に関連していることを強調しています。個々の目標やターゲットの達成に向けて取り組むに当たり、それぞれの課題がバラバラに存在するわけではなく、相互に密接につながっていることを踏まえて取り組むことが、効果的で効率的に2030アジェンダを推進していくためには必要なのです。
たとえば、水と衛生の分野(目標6)の取組として、コミュニティ内に井戸や安全で清潔なトイレを設けることとした場合、これによって、病気の蔓延(まんえん)を防ぎ(目標3 人々の健康)、下痢などによる栄養不良を防止することができます(目標2 飢餓撲滅と栄養改善等)。さらに、コミュニティの女児を1日5時間もかかっていた水汲みの労働から解放し、学校に通う機会を創出することができます(目標4 教育)。そして、インドの農村で実際に行われているように、コミュニティの女性たちをこうした井戸の修理工として育成し、収入の向上を実現すれば、貧困の撲滅や(目標1)、ジェンダー平等(目標5)、格差の是正(目標10)等の目標の達成にも寄与するでしょう。
このように目指すべき開発協力の目標が多様で広範になればこそ、様々な目標が「統合され不可分のもの」であることを踏まえた一貫性のある戦略的なアプローチが重要となってくるのです。

アンティグア・バーブーダの日本の援助で建てられた魚市場で働く人々(写真:岡原功祐/JICA)

パラオのコロール州のアラカベサン島の小学校で学ぶ生徒たち(写真:鈴木革/JICA)
○グローバル・パートナーシップの重視

「グローバル・パートナーシップ」も2030アジェンダの大きな特徴です。旧来の南北の二分法を超えて、先進国も開発途上国も含む各国政府や市民社会、民間部門も含む様々なアクター(主体)が連携し、ODAや民間の資金も含む様々なリソースを相互に補完させながら活用していく「グローバル・パートナーシップ」を構築していくことが2030アジェンダの推進には必要となります。
「グローバル・パートナーシップ」の重要性は2030アジェンダの序文(右を参照)をはじめ、随所で強調されています。SDGsの目標17においても「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことが目標として掲げられています。そして、そのために、徴税などを通じた国内資金の動員や、貿易・投資などを含む様々な分野で技術移転や能力構築、国際的な制度作りなどに取り組むことが具体的なターゲットとして設定されています。このような取組を通じて、2030アジェンダの推進にとって不可欠な「グローバル・パートナーシップ」を幅広く展開していくことが期待されます。