2015年版開発協力白書 日本の国際協力

第3節 MDGsの達成状況

3.開発をめぐる環境の変化

ペルーのリマで、日本の無償資金協力により建設された国立障害者リハビリセンターで理学療法士として働く廣田美江JICAシニア海外ボランティア(写真:岡原功祐/JICA)

ペルーのリマで、日本の無償資金協力により建設された国立障害者リハビリセンターで理学療法士として働く廣田美江JICAシニア海外ボランティア(写真:岡原功祐/JICA)

MDGsが策定されてからの15年間で、開発をめぐる国際的な環境が大きく変化し、MDGsの追求だけでは十分に取り組むことができない、新たな課題が顕在化してきたことにも目を向けなくてはなりません。

一つの例として、格差の問題が挙げられます。MDGsは、一つの国を単位として達成状況を測定するマクロな指標です。しかしながら、アジア諸国のように、経済成長を遂げる一方で、国内の地域間や社会・所得階層間での格差が拡大している国も見られます。また、女性、子ども、障害者、高齢者、難民など、立場の弱い人々が国内で取り残されないようにする取組もますます重要になっています。しかしながら、このような国内の格差の状況は、国単位のMDGsではとらえきることはできませんでした。深刻さを増している環境汚染や気候変動への対策や、頻発する自然災害に対処するための防災の取組など、MDGsにおいて必ずしも十分に扱われていない課題への取組の重要性も増しています。

スリランカのラージャンガナヤで住民の要望を聞き取り調査している青年海外協力隊の三輪洋子さん(写真:中原二郎/JICA)

スリランカのラージャンガナヤで住民の要望を聞き取り調査している青年海外協力隊の三輪洋子さん(写真:中原二郎/JICA)

開発にかかわる主体の多様化も近年進みました。開発途上国に流入する資金額を見ると、企業の投資などの民間資金の額はODAの額を遥かに凌(しの)ぐようになっています。これは、各国の政府や国際機関が開発協力に取り組むに当たって、民間企業との連携がもはや不可欠になっていることを示しています。また、NGOなど、市民社会が果たす役割も、開発途上国の開発の現場はもちろん、先進国での政策提言や意識啓発など、様々な場面で拡大しています。さらに、一部の開発途上国(新興国)が急速に発展を遂げ、「先進国と開発途上国」という旧来の二分法が実態を反映しなくなっています。そのような中で、先進国に限らず、新興国を含む各国が、開発協力の分野においても、それぞれの役割を果たすことが求められるようになっています。

このように2015年までに達成できなかったMDGsの「残された課題」や新たに顕在化してきた課題が、2015年以降に国際社会が取り組まなくてはならない課題として浮かび上がってきました。これらの課題にどう取り組むべきかという点も含めて、各国の間で、2015年より先の国際目標の策定についての議論が進められてきたのです。

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