2015年版開発協力白書 日本の国際協力

第 I 部 持続可能な開発のための2030アジェンダに取り組む

ドミニカ共和国の国立職業技術訓練庁で、機械のメンテナンスや修理の指導をする永田正樹シニア海外ボランティア(写真:佐藤浩治/JICA)

ラオス青年同盟(Lao Youth Union)のビエンチャン本部にある服飾コースで、縫製などの指導をする青年海外協力隊(服飾)の高畑悠里さん(写真:今村健志朗/JICA)

第1章 MDGsの成果と課題

ベトナム・ハノイ市内の交通の便を改善し、渋滞の解消に役立つ環状3号線(写真:高橋智史/JICA)

コスタリカのサン・ホセ市の小学校で子どもたちに環境問題の啓発教育をする青年海外協力隊の高橋愛実さん(写真:今村健志朗/JICA)

第1節 MDGsとは

世界の貧困の半減などを目指し、2015年までの達成を目指して国際社会が掲げてきた目標がミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)です。「ミレニアム」(千年紀)とは1000年ごとの区切りを意味します。節目の年となる2000年の9月の国連ミレニアム・サミットで採択されたミレニアム宣言(注1)と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合したものがMDGsです。

MDGsでは8つの目標が掲げられ、その下に、より具体的な21のターゲットと60の指標が設定されました(8つの目標については以下の図を参照)が、ほとんどの目標は1990年を基準年とし、2015年を達成期限としていました。

  ミレニアム開発目標 (MDGs)Millennium Development Goals
ベナンのウィダにて生まれたばかりの男の子を抱く母親(写真:大塚雅貴/JICA)

ベナンのウィダにて生まれたばかりの男の子を抱く母親(写真:大塚雅貴/JICA)

MDGsが設定された背景として、それまでの開発協力のやり方に対する反省があります。1980年代には、開発途上国の経済の仕組みを市場経済メカニズムが機能するように改革することこそ、開発途上国の経済発展、ひいては貧困の削減にもつながるという「構造調整政策」という考え方が国際的な開発協力の主流でした。しかし、この手法によって貧困の削減は必ずしも順調に進まず、逆に貧困の悪化をも引き起こすこともあることが明らかになってきました。その反省もあり、1990年代に入ると、より直接的に貧困問題にどのように対応すべきかについて国際社会の関心が高まりました。1995年の世界社会開発サミットでは、「人間中心の社会開発」を目指し、世界の絶対的貧困を半減させるという目標が提示されました。翌年の1996年には日本が提案したOECD-DAC(ダック)(注2)新開発戦略において、国際開発目標(IDGs:International Development Goals)が採択されました。IDGsには、2015年までに極端な貧困人口の割合を半減させるという、後にMDGsの中核となる目標も掲げられていました。このような1980年代から90年代を通じた国際的な潮流の変遷を総括する形で、節目となる2001年に国際社会はMDGsを作り上げたのです。

MDGsのそれぞれの目標自体は必ずしも目新しいものではないかもしれません。しかしながら、先進国と開発途上国の双方を含む世界中の指導者が、達成期限と具体的な数値目標を定めて実現を公約し、その後も2005年国連首脳会合や2010年のMDGs国連首脳会合などの様々な機会に首脳レベルでその達成に向けた取組の強化が図られてきたという点で、MDGsは画期的であったといえます。

メキシコ・ケレタロ市旧市街で青果物を売る女性(写真:今村健志朗/JICA)

メキシコ・ケレタロ市旧市街で青果物を売る女性(写真:今村健志朗/JICA)


  1. 注1 : 2000年9月8日、国連ミレニアム・サミットで採択。①平和・安全・軍縮、②開発・貧困撲滅、③環境保護、④人権・民主主義・グッドガバナンス、⑤弱者の保護、⑥アフリカの特別なニーズへの対応、⑦国連強化が柱となっている。グローバリゼーションへの対応を念頭に21世紀の国連が果たすべき役割の方向を示した。ミレニアム開発目標(MDGs)を支える価値やMDGsの基礎となる目標を含んでいる。
  2. 注2 : OECD-DAC 経済協力開発機構 OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development
    開発援助委員会 DAC:Development Assistance Committee
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