ODAとは? ODA改革

「ODA総合戦略会議」第1回会合・議事録

1.日時

 平成14年6月27日(木)8:00~9:30

2.場所

 外務省飯倉公館

3.出席者

 ODA総合戦略会議委員(ただし、浅沼信爾一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、西岡喬三菱重工業(株)取締役社長は欠席)。外務省(事務局)より経済協力局長他が出席。関係府省、JICA(国際協力事業団)及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバー参加した。

4.議論の経過

 議事は以下のとおり、川口議長及び渡辺議長代理(拓殖大学国際開発学部長)の挨拶、各委員による自己紹介に続き、事務局より審議事項・日程、運営方法、ODA改革、ODA予算について説明し、各委員より議事の公開方法や今後取り上げるべきテーマ等について議論があった。

(1)川口外務大臣(議長)の挨拶

 おはようございます。今日はお忙しいところ、また雨で足下の悪い中、朝早くお越し頂きまして有り難うございます。「ODA総合戦略会議」第1回会合を開催致します。
 最初に、私のODAについての問題意識を申し上げたいと思います。今、ODAについて国民の皆様の理解を得ていくことが非常に重要な時期になっております。財政的に非常に厳しくなっている状況で、ODAの重要性を理解して頂きながらODAを実施していくということが大事だと思います。このためには、ODAに対するいくつかの疑問、例えば本当に効率的に使われているのか、あるいは十分に透明な形で実施されているのか等について、きちんと説明をしてご理解を頂くことが必要だと思います。
 私は、2月に外務大臣に就任した時に「開かれた外務省のための10の改革」を発表し、その10項目の1つにODAを挙げておりますが、これは今申し上げたような問題意識から来ております。
 今後、ODAについては、改革を積極的に進めていきたいと考えております。ODA改革の具体策については、「第2次ODA改革懇談会」の最終報告で、「国民参加」、「透明性の確保」、「効率性の向上」を具体化すべしとの提言を頂いており、現在、それを具体化するための作業を進めております。
 ODAについて国民の十分な理解を得ることは、日本のみならず、どの国でも難しいとは思いますが、IT技術その他いろいろな方法がありますので、国民の皆様に分かりやすい形で提示をしていくことが大事であろうと思います。
 このような問題意識の中で、この「ODA総合戦略会議」に対して何を期待するかを述べたいと思います。この会議の目的は、まず国別援助計画を策定することですが、同時に、国と分野は相互に縦糸・横糸の関係にあると思いますので、分野別に何を重点化していくかという点についても議論に含めて頂ければと思います。
 専門家の方に集まって頂いておりますので、国別の援助計画や分野別の援助の重点化について、あるいはその折々のODAの重要課題について、是非レベルの高い議論をして頂きたいと思っております。
 この会議の議長は私が務めることとなりましたが、残念ながら毎回出席できるわけではないと思いますので、渡辺先生に議長代理をお願いをしたいと思います。
 さて、ODAに対する批判には、先ほど申し上げた透明性あるいは効率性についての批判のほかに、戦略が見えないということがあると思います。この点については、委員の皆様のご意見を政策に反映していくことによって、外務省の持つODAの調整機能を十分に発揮して、政府全体としてODAが有機的かつ一体的に行われる状況になることが大事だと思います。
 私が外務大臣を拝命して以来5カ月間になりますが、いくつか思うことの一つに、軍事的な手段を持たない我が国にとって、ODAがいかに重要かということがあります。例えば、アフガニスタン、パレスチナ、ミャンマーなど国造りが非常に必要な状況にあるところに対して、我が国として何をしていくかというと、経済大国の一つとしての国際的な責任の果たし方は、ODAを以てそうした国造りに貢献をしていくことです。
 今まさにカナダのカナナスキスで開催されているG8サミットの主要課題の一つは途上国の開発問題であり、アフリカも一つの大きなテーマになります。先般、小泉総理は、アフリカ諸国を含む低所得国に対して教育分野で今後5年間で2,500億円(約20億ドル)以上の支援を行うこと表明いたしました。
 このように、ODAを積極的に使って外交課題に応えていくことが重要だと思います。今年は8月の終わりから9月にかけて、ヨハネスブルグでWSSDが開かれる予定であり、ODAの果たす役割は今後益々重要になっていくのではないかと思います。
 ここでの議論を通じてODAの意義・役割を発信していくことによって、国民のODAに対する理解が更に深まるということも、私がこの会議の役割として期待をしていることの一つです。

(2)渡辺議長代理の挨拶

 おはようございます。第2次ODA改革懇談会は昨年5月に発足して、以来フォーマルな会議だけでも16回、その他タスクフォースの会議、それから結構密度濃くタウンミーティングを全国各地で行ったきました。それらを勘定しますと、相当多くの会合を経て、御案内のような大臣へ提出する報告書ができました。
 この報告書を大臣に提出致しましたところ、ODAについては改革すべきところがまだまだ多い、着手可能な改革についてはできるだけ早くこれを実行に移していこうと、私どもメンバーにとりましては大変心強い御返答を頂き、全員心を熱く致しました。
 「第2次ODA改革懇談会」の内容については、皆様御案内のことでしょうから、細かいことまで申し上げるのを差し控えます。お手元に配られた資料の中に、最終報告の概要がありますのでお目を通して頂きたいのですが、その資料の最後の4行、これが報告書のサマリーのサマリーです。
 3つ書いてありまして、1つ目が「国民各層、各分野の貴重な知見を吸収するための具体的枠組みを構想」。2つ目が「限られた資金を有効活用するために、ODAの重点的供与分野を定め、そこに資金、人材を集中投入するための「国別援助計画」策定の重要性を提言」、3つ目が「広く国際協力に参加したいと考える人々を発掘し、育成し、活用する方策を提言」で、この3つが我々のメッセージを簡潔に表した表現だと思います。
 コメントをさせて頂きますと、1つ目に「国民各層、各分野の貴重な知見を吸収するための具体的枠組みを構想」とありますが、今日お集まり頂いている「ODA総合戦略会議」が、この具体的枠組みの第一歩と御認識頂きたいと思います。
 更に一言申し上げなければなりませんことは、「第2次ODA改革懇談会」の中で、この「ODA総合戦略会議」の提言をしたわけですが、この提言では常設であるとはいえ、外務大臣に対する諮問機関という位置付けでした。
 ところが、報告書を大臣にお持ちしたところ、大臣はより積極的でして、大臣自ら議長となり、議長の下でこれを審議するという形にこの戦略会議がなりました。改革の執行者といいますか、実行者である外務大臣自身が議長としてこの会議をオーガナイズするということですから、我々にとっては大変心強いことです。
 もう一点だけ申し上げますと、この会議で何を議論したらいいか。いろいろなことを議論していかなければなりませんけれども、最低限次のことはやっていかなければならないと思います。
 ODAは上流の基本政策から一番下流の個別プロジェクトの立案・企画・実施まで、長い過程が存在しますけれども、まず我々がやらなければならないのは、その基本政策についてです。
 基本政策とは国別援助計画のことがありますが、この基本政策と、それぞれの川中、川下のODA過程がどのくらい整合性を持っているのかをウオッチングし、議論していくことも我々の仕事です。
 そのようなことを通じて、日本のODAをより戦略的なもの、より重点的なもの、従ってより効率的なものに変えていく、そういう方向に舵を大きくとる今はいいチャンスであろうと考えております。この会議は世の注目を浴びるでしょう。注目を浴びながら、その分だけいい改革案を次々と出していければと思います。
 挨拶として申し上げることは以上ですが、図らずも大臣から議長代理の御指名を頂きました。大変光栄なことですが、同時にえらいことになったなという気分もございます。しかし、かくなった以上は皆様方の御協力を頂きながら、少しでも実のある議論を続けたい。提言は出したけれども実効性を持たなかったというような、時に今まであったものとは違うものにしていきたい。出された提言については実行に移す段階までもきちんとフォローしていく役割を担いたいと思います。微力ではありますが、全力を尽くすつもりですので、どうか皆様方の御協力を頂きたいと思います。有り難うございました。

(3)委員による自己紹介

(川口議長) それでは、委員の方、私も必ずしも全員を存じ上げているわけではないのですが、それぞれの方御面識必ずしもおありにならない方もいらっしゃると思いますので、アイウエオ順に簡単に自己紹介を頂けますでしょうか。

(青山委員) 名古屋大学大学院医学系研究科の青山温子と申します。この度はこのような重要な会にお招き頂きまして有り難うございます。
 私は国際保健医療学という分野を専門にしておりまして、保健医療分野の開発に関わって参りました。以前は国立国際医療センターにおりまして、日本の政府開発援助の保健医療分野の技術協力専門家などをしておりました。それから、世界銀行のヘッドクォーターのほうに参りまして、中東・北アフリカ地域の保健医療分野の仕事をさせて頂きました。その後大学に移りましたので、まだ大学の教官になってから、1年5カ月です。
 私はODAの現場で仕事をしてきましたし、また逆に、世界銀行のような国際機関の立場から日本のODA等を見るような機会もありましたので、その経験から考えたことをこの会議に反映させていきたいと思っております。ODAというのは、先ほど大臣がおっしゃったとおり、防衛費とも言ってもいいような本当に大切なものですので、よい方向に発展できるように貢献できればと思っています。
 また、私は、中東諸国、例えば、大臣もお越しになられたパレスチナですとか、それから、パキスタン、エジプト、或いは先般行く機会がありましたアフガニスタン、といったところに関わっておりましたので、保健医療の分野が平和構築などにも何か役割を果たせるのではないかという考えも持っています。そのようなことがこの会議の中で反映されていくように努力していきたいと思っています。どうか今後ともよろしくお願いいたします。

(川口議長) 有り難うございました。次に荒木さん、お願い致します。

(荒木委員) 荒木でございます。私は国際開発ジャーナル社の社長兼編集長ををやっており、先だっての「第2次ODA改革懇談会」の委員でもあります。ODAの世界、或いは広く国際協力の専門ジャーナリストとして30年ほどこの分野を歩いて参りました。経済界からNGO、或いは官界、或いは世界銀行等国際機関、大体みんなフォローした感じです。主にODA政策を中心としたテーマの勉強というのが中心だったと思っております。よろしくお願い致します。

(川口議長) 有り難うございました。それでは磯田さん、お願いします。

(磯田委員) 磯田厚子と申します。よろしくお願い致します。
 本職は女子栄養大学の教員をしております。この会議への参加はNGOからということで、私は日本国際ボランティアセンター(略称JVC)の副代表をしております。もともとの専門は、地域保健の中の栄養分野です。その後JVCの現場で長いこと活動し、難民キャンプや農村開発の仕事などをしておりました。現場での経験はNGOだけです。そういう意味では、ODAとの関係は直接的にはほとんどありませんが、間接的には、難民支援の時に、国連のイヤーマークを受けていたり、いろいろな形で日本のODAがどう関わっているかということは、現場にいる時にも見させて頂いてきました。
 そのような立場から、現場で見ている中で考えてきたことなどありますので、今回の会議でいろいろな提言なり、建設的な戦略づくりに向けての発言ができればと思っています。「第2次ODA改革懇談会」の提言に挙げられている、国民の総意というか、いろいろな意見を吸収し、開かれたODAにしようということに私も何らかの助力ができればということで参加させて頂いております。
 それからODAの一番問題なのは、やはり効果ということでしょうか。効率性や透明性も同じくらいの重みで問題と認識しておりますが、同時に、どれほど有効なのかというところだと思うのです。その辺に関してこの戦略会議でどのように関わっていけるのかということについて、いろいろ議論をさせて頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。

(川口議長) 有り難うございました。伊藤さん、お願いします。

(伊藤委員) おはようございます。私は国際協力NGO活動推進センターの常務理事です。私は1975年から草の根分野で国際協力に携わってきました。以前は(財)日本国際交流センターの中でアジア・コミュニティ・トラストの運営委員会の事務局長を務め、事務局責任者として、日本国内で募金を行い、他方、アジアを走り回り、援助対象先を調査し見つける仕事を行い、アジアで延べ約400団体のNGOを訪問してきています。その後、草の根の協力が大切だという認識をさらに深め、仲間とNGO活動推進センター(現在の国際協力NGOセンター)を設立し、その後14年が経ち、現在、他のネットワークNGOとともに、一応国際協力NGO間の全国レベルネットワークをつくることができたと思っています。
 私の役割というのは、NGOの仲間とこの戦略会議との間を取り持つことだと思います。それからアジアを中心にNGOの仲間がたくさんいます。そのNGOのリーダーの中には、大臣や長官になっている人もかなりいます。そうしたアジアのNGOの仲間達と接点を持ちながら戦略会議に貢献していきたいと思っています。私自身、アジア11カ国、傘下に約3,000団体が入っているANGOCというアジア農地改革・農村開発NGO連合の副理事長もしており、そのような立場からこの戦略会議に貢献できればと思っています。
 それから磯田委員もおっしゃったように、また、渡辺議長代理も確認されたように、この戦略会議そのものが「国民参加」の概念を形にできるか一つの試金石になると思います。そのためにも、国民参加・市民参加を進める形で、この会議に貢献していきたいと思っています。

(川口議長) 有り難うございました。1人平均2分になっていますので、すみません、ちょっと短めにお願いします。大野さん、お願いします。

(大野委員) 政策研究大学院大学で学者をやっております。最近の関心はベトナム経済でして、昨年も7回行って、政策対話をやりました。もう一つは、ODA政策について余りにも何もない、対外的発信がないので、それについて少し仕事をしております。私の大学でそのようなユニットを立ち上げましたので、ここで発信させて頂きたいと思います。一つだけ言いたいことは、国民に対する責任は非常に重要ですけれども、国別戦略を考える時には、途上国に対する責任、それからドナーコミュニティの中のポジションもよく考えないといけないということです。向こうからの要請もこちらからの発信も大事であり、要請主義だけでも、コンディショナリティーだけでも駄目だという体制にしないといけないということを申し上げたいと思います。

(川口議長) 有り難うございました。草野さん、お願いします。

(草野委員) 慶應大学の草野です。戦後日本外交論だとか、或いは国際関係論、政策過程論というのを大学で教えております。
 ODAの世界に関心を持ちましたのは、渡辺先生と東京工業大学で十数年前に御一緒している時に研究会に誘われた以降のことです。当時は、メディアの日本のODAに対する報道が如何にも被虐的、自虐的ではないかということで、本当は一体どうなっているのだろう、いいところもあるのではないかという観点からODAを見て参りました。その視点というのは私の心の中では失われておりませんけれども、それ以来十数年2つのことに特に関心を持っております。
 1つは所謂構造の問題で、既得権益がかなり発生をしていること。これは6、7年前から私自身がいろいろなところで書いておりますけれども、国内においては、例えば技術協力分野でも、外務省だけでなく他省庁が扱っているものもあり、予算の配分の比率を見ますと、公共事業と同じような固定化があります。無償、円借款、技術協力という3分野に関して、勿論公共事業ほどではありませんけれども、基本的には単年度主義ということもあって、惰性が続いているという構造の問題があります。途上国側、つまり援助される側でもある種の既得権益が発生しています。
 もう一つは、この戦略会議とは直接関係はありませんけれども、ODAだけではなく、緊急援助はODAの世界ですけれども、国際協力全体として、PKOを含めた日本の国際協力の役割の重要性に最近は大変関心を持っています。以上です。

(川口議長) 小島さん、お願いします。

(小島委員) 同じ慶應大学の小島です。私も荒木さん共々第2次ODA改革懇のメンバーでした。私自身、ODAは極めて重要だと思っています。そして、日本外交にとって極めて効果があるものだと思っています。今年初めのアフガン支援復興会議は非常に成果があったと思いますが、いろいろな問題があって成果が見えてこないというのは非常に残念だと思っています。
 私自身は、中国研究を37年やっておりまして、この会議においても中国を中心に議論していかなければいけないのだろうと思っていますが、ただ一つ申し上げたいことは、中国については、重視するけれども、過大に重視すべきではないだろうという点、そしてもう一点は、中国については東アジアの地域協力という、これから日本外交が最重要視していかなければいけない戦略の中にどう位置付けていくのか、もっと率直な言い方をさせて頂ければ、どう組み入れていくのか、そのような視点を是非ここで主張したいと思っています。
 つまり、対中ODAについてもそのような視点でやるべきであり、対中ODAというのが東アジアの地域協力枠組み、ひいては世界に対する日本の途上国支援の中に効果的に取り込められるような方向で、例えば「南南協力」や「第三国支援」といったような形で対中ODAが生かされるような方向を是非ここで御議論して頂ければと思っています。よろしくお願いいたします。

(川口議長) 砂川さん、お願いします。

(砂川委員) 日商岩井総合研究所の砂川と申します。私はもともと輸出入銀行の出身でして、31年ほどおりましたが、その間、アジア開発銀行に5年ほど出向しました。輸銀を退職した後、米州開発銀行に3年おりまして、中南米の民営化を促進する民間部門の初代局長をやった経験があります。3つを通じて、開発金融という観点から開発問題を見てきました。
 その後、開発を実際にやっている民間部門ということで、日商岩井に入ったのですが、時機を得ませんで、3年間経営改善即ちリストラ専担をやっていまして、民間の会社のいわば構造改革のフロントにいました。これは考えてみますと、いわばイグジットということだと思いますが、進むということとは別に、止まって引くというところも非常に難しいことで、かつ大事なことだと思っています。これらを通じまして、開発に対して私は非常に熱い気持ちを持っていまして、何とかODAを良きものにしていきたいと思っています。
 一言、第2次ODA改革懇談会の提言を読んでおりまして、3つ感じたことがあったのですが、1つは、国際金融機関等と、目的を同じくする部分が多いのですが、協調が余りなされていないという点があります。それから民間の活力を十二分に使われていない。それは官にも責任があるのですが、民にも責任がある。ある種の汚いものが見えるということもあるのでしょうが、そういうものを除いた形での民間の活力を如何に使うかというのが非常に重要な問題であろうと思っています。3番目は、政策を上から実施するということは当然であるけれども、実施する側の下から上に上がるというフィード・バックのルートが余り見えない。これが非常に効率を悪くしていると私は思っています。川上と川下との連携というか、平等な立場での一体感が重要であると思っています。本会議には、是非積極的に参画をしたいと思っています。

(川口議長) 有り難うございます。じゃあ脊戸さん、お願いします。

(脊戸委員) おはようございます。脊戸明子と申します。1980年から82年までコンピューター企業に勤めていましたが、休職して、青年海外協力隊員に参加しまして、タンザニアで2年間過ごして参りました。その後、「帰国後が本当のあなたのライフタイムのボランティア事業である」という、アメリカの平和部隊のパンフレットをたまたま目にしまして、「そうだ」と、国民の税金を使わせて頂いて、2年間大変貴重な途上国の体験を致しましたので、これを如何に社会に還元していくかということを、企業の社員ではありましたが、一方で、ボランティアをライフワークとして今日まで過ごして参りました。
 現在は、世界的なボランティア事業を推進していくNGOであるIAVEという団体の副理事長を務めており、一方で、日本外国語専門学校の副校長をしています。青年・教育・ボランティアが私の3つのキーワードとして常に考えていることです。
 昨今、私どもこれとは別に21世紀のボランティア事業ということで、国家のボランティア事業としての位置付けである青年海外協力隊員を如何にもっと発展させていくか、或いは透明性、評価、社会還元というような問題を別途国際協力事業団で検討しており、8月に報告が出るところです。特に日本は、日本国憲法の前文にあるように、「平和のうちに生存する権利」ということを頭の入れて、国民一人一人が何ができるのかということを発信し、具現化していくことが必要であると考えます。
 アメリカのピース・コー(Peace Corps)が40年を迎えました。本来ならば昨年だったのですが、あのような悲惨な事故があったので延期され今年開催となり、私も参加し昨日帰ってきました。ピース・コーは1961年に創設され、135ヶ国、16万2,000人の帰国隊員がいます。ブッシュ大統領が最近発表したODA倍増計画に、ピース・コーも含まれています。日本の青年海外協力隊の場合、帰国隊員数が2万2,000人ですから、数の上でも大きな違いがあります。
 人づくりを柱にしたボランティア事業に、何かしたい、役に立ちたいという若者たちをいかに取り込んでいくか、今後に向けてより柔軟な対応が求められるでしょう。また人と人が結び付くという「顔が見える支援」として、国別、分野別、縦に横に効果的なODA事業を、ボランティア事業という視点からも考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

(川口議長) 有り難うございました。では千野さん、お願いします。

(千野委員) 産経新聞の論説委員をやっております千野と申します。私は「第2次ODA改革懇談会」の委員を渡辺座長の下務めさせて頂きました。このような戦略会議がその中から発足したということは大変結構なことだと思っております。ODAは今転換点にあるということを本当に痛感致します。この転換点を乗り越えて、内外にODAの存在感を示すことが日本にとって極めて重要だと思っています。

(川口議長) 次に宮原さん、お願い致します。

(宮原委員) 宮原賢次と申します。私は住友商事の会長をしております。同時に、日本貿易会会長もしております。日本貿易会というのは、貿易業界、とりわけ商社の業界と考えて頂いてよいのですが、先ほど渡辺さんがおっしゃった上流から下流という意味では、下流の部分で、ビジネスという観点から最も関与している業界ではないかと思います。
 日本貿易会には経済協力委員会がありまして、ODAのあり方も含めODAをどのように活用してビジネスに生かしていくかというようなことを研究しており、私には、そのようなフロントの声をできるだけこの会議に反映させる役目があるのではないかと考えております。とりわけ皆さんのお話を聞いていますと、ビジネスサイドというのはこのメンバーの中では少ないので、時には少し違った意見になるかもしれませんけれども、そのような意味で考えて頂きたいと思います。
 同時に、日本貿易会というのは、先ほど人材の話が出ましたけれども、国際社会貢献センターというNPOをつくっておりまして、これは商社のシニアの人材を活用しようということで、商社をリタイアした人が多いのですが、1,000人以上に登録して頂いていまして、あらゆる方面でいろいろ活躍をして頂いています。このような人材の活用もこのような場で発信させて頂きたいと思います。以上です。

(川口議長) 有り難うございました。それでは、牟田さん、お願いします。

(牟田委員) 東京工業大学の牟田でございます。よろしくお願い致します。先ほど大臣がODAには効率化・透明化が大事だとおっしゃいましたけれども、そのためにはきちんとした評価が必要なのだろうと思います。
 私はこれまで外務省におかれた幾つかの評価に関する委員会のお世話をさせて頂きまして、現在も「外部有識者評価フィードバック委員会」の座長をさせて頂いています。
 評価にはいろいろな問題があります。例えば、どのように評価をするかということもありますが、より大事なことは、ODAの中に評価の仕組みをどう組み入れていくかという仕組みの問題です。それから視点の問題もありす。従来評価というと、個々のプロジェクトが役に立ったか、立たなかったかということですが、視点を広げて、より広い分野で役に立ったのかというようなプログラム的な面で評価をするということも大事です。更に、川上ということでは、果たしてその政策がどうなのかと政策の評価もしなければいけないのではないかというように、評価の視点も変わってきているのだろうと思います。
 「ODA総合戦略会議」は大変上流の話をする会議だと思いますが、そこでも評価の視点は重要だと思いますので、そのような視点から何か貢献ができれば有り難いと思っています。よろしくお願い致します。

(川口議長) 有り難うございました。それでは今村政務官お願いします。

(今村委員) おはようございます。私はODAを担当する大臣政務官の今村です。本来なら強力に推進すべき立場であるべきですが、反面、有権者の代表ということもありまして、昨今の外務省不祥事、或いは年間3万人を超す自殺者という厳しい経済事情の中、ODAに対する風当たりは相当なものです。しかし、この風当たりを正にエネルギーにして、筋肉質のODAを作り上げていきたい。今ワールドカップやっていますが、正に筋肉質の体で国民の皆さんは大変興奮させてもらっています。日本のODAも国民の皆さんから大声援を受けるようなものにして参りたいと思いますので、よろしくお願い致します。

(川口議長) それでは杉浦副大臣、お願いします。

(杉浦委員) おはようございます。ODAを担当しています副大臣の杉浦です。ODAとの関わりの古さだけから言えば、この中で一番古いのではないかと思います。昭和31、32年に、多くはアジアからの留学生を学校で受け入れ、お世話を始めたのがきっかけで、若い頃35歳まで、今で言えばNGOにあたる駒込にありますアジア学生文化協会、それから通産省所管の海外技術者研修協会に創立から関わり活動していました。国会議員になってからもODAには関心を持って、いろいろと推進をしてきた立場です。
 「第2次ODA改革懇談会」が持っていた我が国のODAは現在転換点にあるという問題認識は私も共有しています。委員に指名されましたので、副大臣という立場を離れて、積極的に議論に参加させて頂きたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

(川口議長) 有り難うございました。


(4)西田経済協力局長よりの説明

(川口議長) 西田局長から、これから何をどのように取り組んでいくか、何を審議していくか、日程はどうなるのかということについての説明をして頂きます。

(西田経済協力局長) 有り難うございます。経済協力局長の西田です。
 最初に、「第2次ODA改革懇談会」を含め、いろいろな場、グループ等々から頂いております改革の提言を踏まえて、現在省内で行っております改革について、簡単に紹介し、それから間もなく予算の時期が始まりますので、それに対する事務方の考え方を紹介した後、この会議の具体的な取り進め方について事務局として是非諮り頂きたいことについてお願い致したいと思います。
 まず、ODA改革について、大臣から御紹介がありました通り、「第2次ODA改革懇談会」最終報告、或いは4月17日に出された自由民主党外務省改革小委員会の外務省の改革案、更には大臣が所謂外務省改革の一環として作っております「変える会」の5月9日に出されました中間報告では、ODAのあり方、改革の方向について具体的な提言等を頂いております。
 このような提言を踏まえて、外務省として、外部監査の導入、評価体制の強化、情報公開或いは広報、ODA総合戦略会議、NGOとの連携、人材の発掘・育成・活用という6つの主要分野を取り上げ、それぞれについてタスクフォースを立ち上げ、現在具体的な改革の中身について、鋭意作業を行っております。
 基本的な考え方は、大臣がつとに話をしておりますが、できるものは直ちに今日からでも実施をするということです。また、既存の枠組みにこだわることなく、徹底的に改革の努力をするという基本的な考え方から、必要なものについては、予算或いはこれまでの枠組みを変えていくことも視野に入れて、明年度の予算にこれを反映させていきます。具体的には、概算要求、本予算の作成というようなプロセスを通じて対応することも考えているところです。省内の検討も具体的内容が煮詰まりつつありますので、近く川口大臣より内容についてしかるべきタイミングで発表できますよう、事務当局としては最善の努力をしております。
 ODA予算については、「資料4」を御覧頂きながら、説明を聞いて頂きたいと思います。「資料4」は予算にフォーカスを当てた形になっていますので、当然のことながらODA全体について視野に入れた、でき上がった資料ではありませんことを念のため申し上げます。
 ODA予算については、「1.」にも書いてありますが、ODAは1954年以来、既に半世紀にわたっての経験があります。その意味では長い間の政府の施策の積み重ねがあります。先生方御案内の通り、日本のODAはアジアに重点的に関わってきており、主としてASEANの経済社会開発に寄与してきたという自負を持っております。同時にアジアを中心とした世界における日本のODAは、世界のLDC諸国から高い評価を受けているということが歴史的なパースペクティブであると考えております。現在、我が国は既に世界の150の国に対して広く援助を実施しておりますが、同時にメリハリのある、重点的な援助に向けての努力も着々としております。具体的には、現在、地域的にはアジアが約55%、分野的には環境が既に30%を超えており、それなりの色付けはされてきていると考えております。また、当然のことながら、近年特に人造りの保健・教育といった社会セクターにも大きく重点を移してきております。
 また、国際的な活動と表裏の関係にありますけれども、今先生方からも話が出ましたが、ODAに対する厳しい見方が昨今つとに出てきているという状況も踏まえて、ODAの関係省庁間の連携の強化、或いは評価、情報公開、更にそれらを通じた効率性・透明性の向上もODA政策の大きな柱として努力してきております。勿論、それが不十分であるが故に、国民から引き続き厳しい意見を頂いているということは我々としても重々承知をしており、その点更なる努力をすべきと固く考えております。
 特に、国際的には昨年9月11日のテロの以降、アメリカを中心として貧困とテロ或いは平和の問題の関係について、これまでに倍加する厳しい認識が出て参り、今般のサミットを含めて、国際場裏においてはアフガン復興問題という一つの核を中心として、貧困問題に対する或いは開発の重要性に対する認識が更に強まってきております。このような状況を踏まえて、政府としても本年度の予算を作る過程で、アフガンの復興をはじめとする平和構築、紛争予防といった新しい分野に対して、如何にして対処することができるのかということを、ODAの外延を広げるのかという試みをも通じて、予算という形で努力をしてきており、それなりに認めて頂いたということで、現在その予算を使って何ができるかということについて、アウトプットを生むべく努力をしております。
 大臣から発言がありましたが、ますます新しいニーズが出てきています国際社会の諸問題に対して、軍事的な手段を有しない我が国が如何にして国際的責任を応分な形で果たすのか、国際条理、秩序の形成において、如何に積極的な参画者として関わっていけるのかという広いコンテクストにおいて、ODA改革、それから、ODAを今後ともどのようなものとして位置付け、どのようなものとして発展させていくのかということは、非常に大きな課題になっております。国際的な面のみならず、国内的な更なるオープンアップの過程において、特に若い世代に対する非常に大きなアピール手段にもなり得ると考えておりますこともあって、予算についての重要性についても関係方面に話をしております。
 参考としまして、モントレーの会議等々で発表されました、アメリカ或いはEUのODAの量及び質についての様々なコミットメント或いはプレッジを紹介しております。
 「別添1」にありますように、アメリカは3月14日ブッシュ大統領が演説をして、次予算年度から3年間にわたり、開発援助額を最大で総額50億ドル増額するということを発表しました。
 また、EUも3月15日の首脳会議の結論文書で、EU全体として2006年までにODAの対GNI比0.39%実現する、従って全ての加盟国が少なくとも同年までに0.33%実現するということをコミットしました。
 「別添2(PDF)」PDF「別添3(PDF)」PDFはそれをもとに、簡単なモデルを作成したものです。1枚目が、先ほどの米欧のプレッジが実施に移されたという仮定で、主要ドナーのODA実績の予測です。日本については、全くの仮定として、本年度の予算規模が維持される場合、日本がこれから2006年に至るまでマイナス5%のカットを続けた場合、更に日本が本年度同様、毎年10%のカットを続けた場合、それぞれにおいて米国等他の主要なドナーとの比較で、日本はどのような地位になるかを描いたものです。非常に端的なのは、仮にブッシュ大統領のプレッジが果たされると、日本は横ばいであっても、2006年にはアメリカの半分程度になるということです。
 次の頁は今度はEUのプレッジの関係だが、主要のドナーの対GNI比は同様との仮定のもとにおいて推測すると、日本は仮に毎年10%カットすると、2006年には主要ドナーのうちで最も低い対GNI比率のドナーになってしまいます。
 最後は、これまでの日本の予算ですが、日本の予算の他の主要経費、例えば一般歳出、公共事業、防衛関係費との対比において本年度までのODA予算がどういう形で推移をしてきたかを示しております。これは他の予算歳出費目に対して、ODAはかなり極端な形でここ数年カットされていることを明らかにしております。大変手短ですけれども、予算についての現状は以上のとおりです。
 次に、「資料3」の本会議の審議事項及び日程等について、審議の事項については、平成14年末にかけて、従来の国別援助計画の策定プロセスのレビューを行った上で、新規に国別援助計画を策定を致します。その間、必要に応じて代表委員による現地視察、或いは外部専門家からの意見聴取等、機動的に実施頂ければと考えております。また、先生方に集まって頂きますので、その時々のODAを巡る主要課題、例えば改革や予算の進捗状況、更にはODAを巡る国際的な動向、大臣からも話がありましたが、例えばサミットやWSSD、その他二国間等々の動きについても、可能な範囲で、事前に問題意識等を紹介し、貴重な意見を頂ければと考えております。
 スケジュールについては、原則として月1回のペースでの開催を考えております。第2回の会合については、事務局としては先生方の都合がよろしければ7月15日の週にも開催をしたいという方向で検討しております。
 最後になりますが、議事の公開方法については、ODAの透明性を高めるということを一つの目的としている会議ですので、会議自身についても、可能な範囲内で透明性を高めたいという問題意識があります。
 具体的には、議論の概要の公開ということで、1つは議事録の公開と、それから会合終了後の記者ブリーフィングです。具体的には議事録を外務省のODAホームページ上で公開を致します。議事録は原則として発言者の名前を入れた形で発表することも一案と考えておりますが、それらの是非について委員方にお諮り致したいと思います。
 それから、終了後の記者ブリーフにつきましては、原則として、差し支えなければその都度渡辺議長代理より行って頂くことを考えております。
 2番目は資料の公開についてです。事務局としては配付資料をテーマに従って、可能な範囲で提出し、審議の材料として頂きたいと考えております。他方、外交政策の円滑な実施、相手国政府との関係上、公開が必ずしも適当とは思われないものについては、必ずしも資料を配付ということにはできないかもしれませんが、その範囲内において、原則として資料についても議事録と一緒にODAのホームページ上で公開するということについて審議頂きたいと思います。
 最後、議場への立ち入りについて、原則として委員、オブザーバーとして参加させて頂いている関係府省庁・実施機関、それに事務局のみとするのか、或いはそれ以外の市民に対しても完全にオープンにするのかということについても意見を伺いたいと考えております。


(5)委員による討議

(川口議長) 議事の公開方法について決めることが必要ですけれども、今の西田局長から説明のうち、この「資料3」の紙について質問を出して頂いた上で、議事の公開方法について委員の御同意を頂くということにしたいと思います。

(大野委員) この紙について2つあります。第1に、お話伺いますと、新規に国別援助計画を策定することがメインの目的になっているということですけれども、私のイメージしている国別援助計画というものは、おそらく、具体的にはこのようなレベルでできるものではなくて、その国を知り尽くした人がタスクフォースを作って策定するようなものだと思いますので、この会議では、策定するためのスケジュール、日程、国の選定、内容をどのようにするべきかといった方針を決めるという理解でよろしいのでしょうか。
 第2に、議場への立ち入りについて、完全に公開するのもいいですけれども、誰でも構わないということになると、場所を確保できるのかという問題、それから内容にもよりますけれども、本当に詰めなければいけない時に、そのような場所でいいのかという問題があると思います。

(川口議長) 有り難うございました。他にあればどうぞ。

(草野委員) 先ほど、川上と川下の話で渡辺議長代理がおっしゃったかもしれませんけれども、この会議では主として個別プロジェクトではなくて、川上について議論するいうお話でしたが、その中にはODA大綱の見直しも含まれるのでしょうか。

(川口議長) 他に質問はありますか。

(杉浦委員) 草野委員との関連で、私の意見ですが、日本のODAの理念としてODA大綱がありますけれども、その見直しが必要であるなら見直しを含めて検討をすべき時期に来ていると思いますので、是非審議事項に入れて頂きたいと思います。
 戦後50年の歩みの中でもODAを必要とする事情は一変していると思います。アジアも中国をはじめ非常に発展しました。もうODAが必要のない国がかなり増えています。どの地域・国、分野に限られたリソースを配分するのか検討する必要があると思います。
 また、ベルリンの壁が崩壊してから世界一変し、アフガニスタン、中近東等、様々なところで地域紛争多発しております。そのような新しい事態に対して、ODAが果たす役割はあるのではないでしょうか。例えば、核保有大国である中国、インド、パキスタンに対するODAはいいのかどうか。日本が限られたリソースを各地の軍事大国の抑制ではなく、むしろ助長に使っているとすれば問題ではないかという点も含めて、ODA大綱を検討すべき大転換点にあると認識しておりますので、その点の検討もお願いしたいと思います。

(川口議長) 小島さんどうぞ。

(小島委員) 委嘱書では期間が2年となっています。また、審議事項(1)(2)を見ると、今年度の末までは大体何をやるのか書かれていますけれども、2年の中でこの会議、メンバーで何を議論していくべきかについてどこか早い段階で少し議論を出して、テーマのスケジュールを是非作って頂ければと思います。

(川口議長) 有り難うございます。砂川さんどうぞ。

  今までの議論に関係すると思いますが、国の選択、援助計画について、どのようなところを選び、どのように選択と集中をしていくのかということがまさに日本のODAの戦略だと思います。従って、従来何ヵ国か既に策定されたと聞いておりますけれども、どのような基準で国が選ばれ、どのような援助計画が少なくとも今まで策定されたのか、それに対する是非の議論というのが初めにあるのだろうと想定しております。

(川口議長) ここに書いてある国の援助計画の策定の方法、或いはその時の視点というのは内容に入る議論だと思いますので、それは先の議論として、今までのところで、公開の立ち入りについて、何を審議するのかというスケジュール或いはタームズ・オブ・レファレンスの内容自体について、事務局からコメントを下さい。

(西田経済協力局長) フリーなアクセスが仮にあっても、場所を含め、そのようなことが実際フィージブルなのかという質問があったと思いますけれども、我々はあくまでも事務局ですので、委員の方々が立ち入りについてはこのような形で考えたいという方針を示して頂ければ、その方向で最善の努力をするということです。事務局としては、先ほど紹介したような形での議事の公開方法について、会としての意見をまとめて頂ければ、その方向の中でできることをやるということで考えていきたいと思っております。
 また、国別援助計画そのものについては、御指摘のように幾つかの国については既に策定しておりますし、それをどのような形で作ってきたのかということについては、次回会合の冒頭に、差し支えなければ事務局から紹介させて頂きたいと思います。大野先生からも指摘がありましたように、このメンバー、この場を使って全くの更地から最終的に作り上げるということは、様々な意味において困難だと思いますので、これまでのやり方をも踏まえて、どのような形でこの戦略会議が関わっていくのかということについても審議頂ければと思います。
 これまでは基本的には現地の大使館を中心に、NGOも含めその地域における関係者が参加して、それぞれの国の現場から作ったものが上がってきて、それを東京で関係省庁と実施機関と議論し、また先方の被援助政府等とも意見交換を致します。その間、有識者の意見も伺うということを踏まえまして、最後に政府としての意見をとりまとめるというのがプロセスの概要です。それが結果的に必ずしも本来の成果物を生んでいないのではないか、或いは、今後更に重点的なメリハリのある形にする、或いは計画策定プロセス自体がより透明性があるべきということも、この場を使って検討して頂くべき問題だと考えております。

(磯田委員) 公開の問題と議場への立ち入りについて、事務局から伺っておりますように、委員がどう考えるかということだと思います。この会議の設置される経緯であります「第2次ODA改革懇談会」の提言の中を読みますと、委員がODAについての国民的な議論を積極化させる触媒の役割を果たすということが提案されておりまして、要するに各界からの相応の意見を集約するという役割があると認識しておりますので、私個人がこの会で意見を言うというだけではなく、できるだけ様々な層の人達の意見を集めるという役割も私自身持っていると認識して参加させて頂いております。
 その意味では、議論の公開だけでなく、事前にどれだけ意見を吸い上げるかということもこの会議の運営方法として非常に重要なことだと認識しております。従いまして、そこの仕組みをきちんと考えないと、設置した意味がないと思っているので、立ち入りが可能であれば、できる限りその方向も模索したいと私は思っております。ただ、具体的にようにするかということについては更に議論が必要だと思います。また、「第2次ODA改革懇談会」の時にもありましたように、事前に議題を出して意見をホームページで集めたり、或いは各委員がそのようなことをしても構わないという許可を頂ければと思います。事前に他の人に、何が話されるか話してはいけないということでは、私としても参加しにくいところがあります。事前に議題を頂いて、意見を他の人から幾つか頂いた上で発言するとか、或いは議論に必要なプレゼンテーションが出きる人を同席者として許可して頂くといった仕組みを確保したい思います。

(川口議長) それでは、荒木さん。

(荒木委員) 公開方法についての意見ですけれども、「第2次ODA改革懇談会」でも国民参加とがキーワードでした。私が先月名古屋のタウンミーティングに行った際、戦略会議のメンバーに名古屋からも出して頂きたいという意見が現実にありました。自分も何か問題提起をしたいという人々が全国各地にいると感じております。従いまして、一つの提案ではありますが、この戦略会議を中心とした各界各層、各地の意見を吸収するという意味の専門のタウンミーティングを行って、その地域の代表発言者と我々メンバーとの間で懇談をしながら、その周辺に多くの聴衆者、参加者に地域ごとに集まって頂き、公開討論をする。このようなことで国民参加という理念を実現できればいいと思います。メンバーを見ましても、地理的、時間的問題があって、どちらかというと東京中心ですので、これは東京中心の会議かという意見が出てくる恐れもありますので、是非地域別のオープンな専門の戦略会議を開いて頂きたいと思います。

(川口議長) 磯田さんと荒木さんに対して質問があります。磯田さんが吸い上げる公開をするとおっしゃる時の公開は、ここに書いてあります資料、議論の概要の公開、議場への立ち入り全てについて賛成だということでしょうか。

(磯田委員) 私が申し上げましたのはどちらかというと事前の議題に対する意見というここにない別の項目になるかもしれません。

(川口議長) わかりました。
 荒木さんのおっしゃった「吸い上げ」のためのタウンミーティングの内容は国別の援助計画の話なのでしょうか、それともより広い援助の話なのでしょうか。

(荒木委員) 国別援助計画に言及してもいいのでしょうけれども、広く援助について、副大臣がおっしゃたような理念も含めて国民各層が考えている新しい考え方を吸い上げるという意味の公開討論をやるとよいと思います。

(草野委員) 今のコメントについて、荒木さんがおっしゃったタウンミーティングというのは大変よいと感じております。議論の効率性ということを考えますと、会議そのものの公開には慎重でありたいと思います。議論の効率性や秘匿性、秘匿性という言葉は適当ではありませんけれども、安心して自分が責任を持って発言するということからすれば、本当は非公開のほうがよいぐらいに私は思っております。しかし、このような時代の流れですので、やむを得ないということはよくわかります。しかし同時に、国民参加型のODAを進めるという意味では、今度大臣と大阪で御一緒致しますけれども、タウンミーティングという形で、別の機会を設けてツートラックでやったほうが私はよいと思います。

(川口議長) 脊戸さんどうぞ。

(脊戸委員) 全国民参加型ということを考えますと、ホームページに結果を公開する一方で、今後このようなスケジュールでいくということを事前に国民に呼びかけて、自由な意見参加ができるようなコンピュータ上の広場を設定することも一つの案だと思います。そうすることで、タウンミーティングがあり、結果の公開があり、更にコンピューター上の広場を使った参加も考えられます。

(川口議長) 有り難うございます。千野さんどうぞ。

(千野委員) 私もタウンミーティングには基本的に賛成ですけれども、既に「第2次ODA改革懇談会」の報告書があります。この報告書の方向性は私はいいと思いますので、こちら側がガイドラインを出しつつタウンミーティングを開くということも大切ではないでしょうか。そうしませんと、とかくタウンミーティングが陥りがちな「そもそもODAとは」から始まることになってしまいます。従って、開く場合には勿論その方向性に沿わなければいけないということではありませんけれども、方向性を出すことが大切だと感じております。
 もう一点、個人的なことですけれども、東京中心ということについて、自己紹介の時に敢えて触れませんでしたけれども、私は7月から大阪勤務になりますので、大阪の方の意見を代表するようにしたいと思います。

(川口議長) 千野さんのおっしゃったのは、一般論を排除するものではないけれども、一般論のタウンミーティングでなく、国別援助計画に焦点を当てたタウンミーティングということでしょうか。

(千野委員) 国別だけに絞るということよりは、もう少し広げたほうがいいとは思います。

(川口議長) ご参考までに申し上げますと、タウンミーティングは、今、外務省の経済協力局でかなり行っております。

(伊藤委員) 私も開かれた戦略会議ということがとても大事だと思います。この戦略会議の構成メンバーを見ますと、大学の先生が多いという印象を受けています。脊戸委員のように青年海外協力隊のバックグラウンドを持っている方もいらっしゃいますけれども、構成メンバーというのはとても大事だと思います。本会議が「国民各層、各分野の知見を吸収するため」のものなら、ODAの専門家だけの集まりではなく、もっと他セクターの人や納税者としての庶民感覚で意見が言えるような人が中にいてもいいのではないかと思います。ここで見ますと、私達NGO関係者と経済界と大学の先生といった、専門或いは経験の豊かな人が中心になっていますけれども、納税者の立場からの考えも大切だと思います。そのような構成によって、まさに開かれたODA改革を実現することができ、また戦略会議に対する国民・市民からの信頼感も高まると思います。従いまして、あと数名でもそのようなバックグラウンドを持った方で、いろいろなセクターとつなぎができるような人を入れたほうがいいのではないでしょうかか。
 また、会議の審議事項が国別援助計画を中心としているような印象を受けましたけれども、国別援助計画は3年ほど前から進んでおり、我々NGOもインドネシアやカンボジアへの援助計画で関係NGOを巻き込んで非公式に参加し、提案をしてきた経験があります。大野先生もおっしゃったように、私も国別援助計画の方針とかメカニズムを作ることは大事だと思いますけれども、各国別の援助計画策定はこの会議では難しいと思います。従いまして、私が期待していました戦略会議というのは、広い視野で日本のODAをどうしていったらいいのかを議論する場と考えます。ODAは日本の財産であり、国際社会の中で日本が信頼をかち取る一つの手段だと思います。「ODA総合戦略会議」を是非その方向に持っていきたいと私は願っております。審議事項として、他のODAの主要課題も挙げられてはおりますが、副次的な扱われ方をしている感じが致します。この会議を通して、ODAの今後10年、20年、30年先を考えるような議論の場にしたいと願っております。

(川口議長) 幾つかの論点が交錯をしておりますけれども、事務局からここで国別援助計画がどのようなイメージのものか簡単に説明をして頂いた方がいいと思います。

(西田経済協力局長) 国別援助計画については、伊藤委員のようにこれまで計画策定に実体上関わった方等々もいらっしゃいますので、メンバーの方の理解に若干濃淡があるという気も致します。国別援助計画がどのような性格であるかについては、先ほどとも重なりますけれども、政府としてある特定の国に対する中期的な援助プランでして、その国の政治経済、社会状況についての可能な限り客観的な分析、これまでのその国に対する我が国の援助の実績、それからその国の開発計画があれば、それを軸にして開発ニーズは何であるのか、他のドナーはどのような援助をこれまでしてきているのかについての分析を踏まえた上で、我が国の特定の国に対する今後の中期的な援助の重点分野を書き連ねて、政府として確定することにより、公開することで国民の方々の目からの批判も仰ぎつつ、透明性を持ってその国に対する援助を実施するための基本的な道具として策定してきました。経緯としましては「第1次ODA改革懇談会」の提言をも踏まえて、政府として採用致しました。そして、「第2次ODA改革懇談会」においても、このような手法或いは国別援助計画が、今後の日本のODAを進める際、その重点化やメリハリ、透明性等あらゆる観点からこの道具を軸にして考えるのが必要であろうという提言を頂いたことも踏まえて、今回の総合戦略会議の審議の柱の一本として立てさせて頂きました。

(大野委員) 私は国別援助戦略とその周辺に関わる理念について議論するということで参加しましたので、この会議を第3次ODA改革懇談会にしては駄目だと思います。第2次が終わったところでもう一度同じような一般的な深い素朴な疑問を議論するのではなく、その下部の具体的にこのように肉付けすればいいのではないかということにつき議論すべきであり、余りにたくさんのことを彫り込むのは良くないと思います。それから、庶民と我々の関係でも、勿論ボトムアップも必要ですけれども、我々から彼らに対してたたき台を出して、これでよいかというものが具体的になければ、向こうから来るものは殆ど発散してしまうと思います。それが我々の役割なので、もし庶民の意見を吸い上げるだけでしたら、我々はいらなくて事務局とホームページだけで十分だと思います。従いまして、我々はしっかりしたたたき台を国民にぶつけるべきです。それをどのような形でやるべきかということですから、私は我々の作ったものを事前でも事後でも報告して、Eメールやタウンミーティングで吸い上げるのはいいですけれども、議場への立ち入りはロジ的に愚だと思います。従いまして、その辺をある程度絞らないと、また発散する可能性があると思います。

(川口議長) そろそろ議長サマリーをしたいと思いますけれども、一言だけ伺って、それで終わりにしたいと思います。

(小島委員) 大野委員の意見に賛成ですけれども、私は、この会は効率性というか濃密な議論を出して、ある種の提案をするということが最大の使命だろうと思います。その上で透明性、公開性については先ほど脊戸委員もおっしゃったような、或いはタウンミーティング等様々な方法があると思いますので、まずはここでは濃密な議論ができる、そのような条件を作るべきではないかと思います。
 それからもう1点。伊藤委員から大学人が多いと言われましたけれども、大学人であると同時に、例えば草野先生、私などは、様々な形でのODA、或いはNPO、NGO活動もやっていることを申し上げておきたいと思います。

(川口議長) 有り難うございました。
 論点は2つありまして、1つはここで議論するものが国別援助計画の策定なのか、更に根っこまで戻るのか、或いはその中間のどこかということが1つ。それからもう1つは、公開の方法自体については殆ど御意見がありませんでしたが、4番目としてむしろ吸い上げ方について意見があったということで、私なりの結論を出したいと思いますけれども、その前に議長代理一言、どうぞ。

(渡辺議長代理) 公開について議長代理としてというよりも個人として述べれば、今小島委員から出された意見に私は近いです。かなりデリケートな問題も議論しなければなりません。国別援助計画である国を取り上げた場合、その国の政府、若しくは政府のガバナンス等についても、かなり率直なことを言わなければなりません。例えば、仮に対中ODAの問題が出た時などを想像すれば大体イメージできると思いますけれども、ここでの情報が野放図に外へ出ていくと、大変に議論がしにくいと思います。少なくともファーストラウンドの終わりまでは、議場への外部の人々の立ち入りについては、私は制限したほうがいいと思います。
 また、国別援助計画については、タスクフォースを立ち上げ、タスクフォースの成果に基づきながら、我々が議論を深めていくべきだと思います。差し当たり論点になった2つの大事なポイントについての私の個人的な考え方を申し上げました。

(川口議長) 有り難うございました。
 それでは私の提案として、1つは何を議論するか。国別援助計画を作ることなのか、或いは根っこまで戻って大綱という議論もありましたし、その中間的なことがありましたけれども、私は国別援助計画というのは、今まで既に作っているわけで、今後増やしていくことが大事。それから、理念の話というのはたくさんありますけれども、援助というのは具体的に下ろしたところでどうあるべきかということをきちんと議論をすべきであろうと思っております。勿論その過程で根っこの理念については戻って考えていく必要あるので、当然議論の過程でリファーをすることにはなると思います。
 ただ、大綱は、非常に基本的なものとしてあるわけで、その見直しをここで議論するということになると、それだけで1つの場を立ち上げないときちんとした議論ができないと思いますので、それは国別戦略計画を策定していく過程で、より根本的な議論として今あるものが随分違うではないかという結論になれば、その時にまた、どのようなやり方でやるか考えるということであって、今のところは国別援助計画に集中をして、その過程で基本的なところにも議論は触らざるを得ませんので、そのようなことをやりながらやっていくといことで如何かと思います。
 それから、公開方法について、議事概要の公開については、意見が全くなく、資料の公開についても事務局の説明についての意見はありませんでした。議論がありましたのは、議場への立ち入りについて、事柄の性格から少し制限的にした方がいいのではないかという議論でした。私自身は、議事録を名前入りで公開をするのであれば、五十歩百歩だと思っていますけれども、皆様の意見ですので、議場の立ち入りについては制限をし、「資料3」に書いてある「3.」の(1)(2)については事務局から説明をした通りにさせて頂きます。立ち入りについては、渡辺委員からも話がありましたように、会議の過程で2ラウンド目で更に公開をした方がいいということであれば、そこで考えるということで、当面は議場への立ち入りは制限的に行うということにしたいと思います。
 それから、吸い上げ方について意見がありましたけれども、タウンミーティング等が既に動いており、この会で行っている議論についてどのように意見を吸い上げていくかという意見がありましたので、次回事務局からどういうことがあるかを出してもらいたいと思います。

(西田経済協力局長) 多少補足致します。
 先ほど脊戸委員からの話がありましたけれども、この会を結果として議事録だけ出すのではなく、ある意味の予告をして様々な意見を伺うということ、それから、現在検討していることとして、ホームページに議事録のみならず、次回審議に関するコーナーを作って、メール等の形で意見を出して頂くということは当然行おうと思っております。

(川口議長) それでは、その辺は紙にまとめて次回出して頂きたいと思います。

(渡辺議長代理) どれほど反応があったかの数字等も紹介するといいと思います。

(磯田委員) 私が申し上げましたもう一つとして、委員がNGO関係等、他の人に事前に議題を出して情報を個別に集めることは構いませんか。

(川口議長) 委員の御意見がなければ、私は差し支えないと思います。

(磯田委員) わかりました。

(川口議長) 次回会合では、先ほど砂川さんからありましたような、どのような国の選び方をするのか、国別援助計画をどのように決めていくかという中身の議論に関わっていくと思いので、事務局から紙を作ってもらって説明をして、その辺から議論をしたいと思います。他になければ、今日は時間をオーバーして申し訳ありませんが、終わりたいと思います。有り難うございました。


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