主として、南・東南アジア地域の経済社会開発を促進し、その生活水準を向上させることを目的とし、1950年1月コロンボで開かれた英連邦外相会議でコロンボ計画協議委員会を設置して発足した協力機構。26加盟国が協議と協力を通じ、加盟国独自の開発計画または開発援助計画の実施を促進することが目的。日本は1954年に加盟。
産業貿易政策への配慮の事例については、様々な学術的研究が行われているが、例えば次のようなものがある。
(1)第1次対中円借款(1979~84年、3,309億円)及び第2次対中円借款(1984~89年、4,700億円)は中国の石炭・石油の主産地である山西省及び黒龍江省(大慶)で生産された石炭・石油の対日輸出を促進するための輸出港湾及び輸送ルートの近代化建設にあてられた。生産の近代化そのものは日本輸出入銀行(当時)のほぼ同額の2回にわたるバンクローンにより支援された。中国が改革開放政策に転じた当初の約10年間のマクロ経済的困難の克服と経済貿易構造改善の方向付けが、これらによって可能となった。(S. Ishikawa, Sino-Japanese Economic Cooperation, The China Quarterly(London Univ.) March 1987)
(2)総計1,337億円の円借款供与により支援したタイ政府の「東部臨海開発計画」は、タイ国がコメなどの一次産品輸出経済の成功の上に自立的な工業化の土台作りを試みる1980年代はじめに発足させたもの。途中の予期しない経済変動のために計画の延期や部分的削除もあったが、インフラのボトルネックを緩和させつつ、直接投資の急速な流入増加に寄与した。日本政府はほぼ一貫してこれを支持した。(下村恭民「途上国のオーナーシップと援助効果-タイ「東部臨海開発計画」の事例」『人間環境論集』1-1、2000年3月)
主要供与国に対する円借款による貢献事例は次の通り。
(注4)ケルンサミット後小渕総理(当時)の記者会見(99年6月20日)(抜粋)
「(中略)ODAも含めてこうした各国に対する経済協力のあり方については、今後、検討の余地があるのではないかと考えている。それぞれの国に対し、借款という形で協力を行っても、なかなか十二分に活用しきれないということであれば、短期的経済協力の方がより効果的であるかどうか、今回を契機に改めて検討すべき時期にきているのではないか。いずれにしても、どのような形にせよ日本としては国民の理解と協力を求めつつ、多くの世界の国々が共に繁栄していくことができるように我が国の経済協力を最大限に活用していくことについては何ら変わりはない。戦後1945年、全く灰燼に帰して無一文になった日本が、諸外国の協力と理解のもとで多くの借款を得て今日の日本の繁栄に結びつけた。かかる気持ちを持ちつつ歴史に積極的に各国に対する協力に取り組むという意思に変わりないと申し上げたい。」
1999年8月に発生したトルコ北西部地震に対する我が国支援の概要は以下の通り。
ODAは外交政策上、安定的な国際環境の醸成、二国間関係の増進等を達成する上で重要な政策手段となってきているが、ODAの外交政策における貢献度を検討する際には、「短期相対的決済」と「長期多角的決済」の2つを区分して考える必要がある。
ここでいう「短期相対的決済」とは、あるODA案件の供与を以って被援助国からの見返りを短期的に得ること(例えば、国際場裏において我が国の支持を取り付ける)を意味し、これに対し「長期多角的決済」とは複数年にわたるODAの供与によって得られる長期的な見返り(すなわち、二国間関係の安定、地域の安全保障の達成、地域経済の発展)を得ることを指す。
開発に関する問題は、生産性や所得の向上、マクロ経済指数の安定化など、その効果が比較的把握しやすいのに対して、外交はその成果が国民には見えにくい。ODAの支持率を維持するためには、もちろん、ODAが適正かつ効率的に使用され、開発途上国の貧困削減に資することが重要であるが、それと並んで、あるいはそれ以上にODAの供与によって我が国国民にとってどのような利益があるのかを示す努力が必要である。
99年に行われた総理府の「外交に関する世論調査」によれば、引き続き約7割の国民がODAの維持もしくは強化を支持している。国内の厳しい経済情勢にもかかわらず、ODAを通じて国際貢献を行うことについては、国民のコンセンサスがあると見てよいであろう。しかし、長引く景気後退とそれに伴う財政赤字の増大という現実から、ODAをなるべく少なくすべきだと回答する人の割合は、平成4年以降漸増し平成11年には19.3%にまで達している。
開発援助委員会(Development Assistance Committee)の略称。経済協力開発機構(OECD)の下部機関として1961年に設立された。開発途上国の生活水準向上のために、開発援助の拡充とその効果の増大を目的とし、開発援助に関連するあらゆる問題について討議、検討を行う委員会。2000年7月現在主要援助国22ヶ国とヨーロッパ共同体で構成されている。
1993年10月、アフリカ諸国の自助努力を支援し、国際社会での対アフリカ協力を促進する目的で日本、国連、アフリカのためのグローバル連合(GCA)と共催で開催された国際会議。アフリカ諸国、国際機関、NGO等の参加があった。アフリカ開発の具体的目標等を示した「東京行動計画」が採択された。1998年には第2回会議が開催され、「東京行動計画」が採択された。
持続可能かつ社会的平等を実現する開発のためには、マクロ経済面と構造的、社会的、人間的な側面のバランスのとれた発展を同時に達成する必要があるとの認識に基づき、多くの開発課題を包括的に取り組むことを目的とした開発アプローチ。99年1月、ウオルフェンソン世界銀行総裁が提唱。
貧困削減戦略ペーパー(PRSP)
被援助国政府のオーナーシップの下、幅広い関係者(各ドナー、NGO、市民社会、民間セクター等)が参画して作成する、貧困削減に焦点を当てた当該国の開発の重点課題とその対策を包括的に述べた経済・社会開発計画。各ドナー等の関係者の参画を得て作成されるPRSPは、CDFを具現化するものであり、各ドナーの協力の方向性や優先度のベースとなりえるものである。途上国政府は、PRSPに基づき、中期的な財政・資金手当計画である中期支出枠組(MTEF)を作成する。
従来の開発支援は、援助国や国際機関がそれぞれの計画に基づき行われていたが、この方式では、個々のプロジェクト相互の調整が十分でない場合があり、被援助国の吸収能力の問題も相まって、効果的な援助にならない危険があった。このため、援助国等と被援助国が協力して、保健や教育など個別の分野(セクター)毎に整合性がある開発計画(プログラム)を策定・実施するというセクター・ワイド・アプローチが提案され、特にサブ・サハラ・アフリカにおいて主流になっている。
貧困支援案件については、援助機関別に異なる基準で集計しているため、単純な比較はできない。例えば、国際協力銀行では、DACの援助実績統計における基準(貧困者に対する直接的支援)を利用しており、98年度の円借款事業における貧困層支援案件は、「地方開発・生活環境改善計画」(ベトナム)等10件、金額ベースでは全承諾額の約25%(2758億円)となっている。国際協力事業団(JICA)では、世銀目標介入プログラム(注15参照)における貧困案件の定義に従い、特に貧困層を目標とした案件であるか、案件の受益者の中で貧困層の占める割合が全人口に占める貧困人口の割合より大きい事業を貧困支援案件としている。このように貧困案件を比較的広く捉える同基準に基づいて試算すると、例えば、98年度のJICA研修員受入人数約8500人の内約半数が貧困削減に資するものとなっている。
稀少な援助資金の効率的な運用のために、現地でのドナーミーティング等を通じて、セクター毎の全体的な開発計画を策定し、各ドナーは各々の援助を同計画に沿って実施しようとする動きが、特にサブ・サハラ・アフリカにおいて大きな流れの一つとなっている。EU諸国等の一部ドナーはコモンバスケット方式や援助手続きの共通化に積極的である。例えば、ガーナでは保健セクターにおいて、世銀、EU、蘭、ノルウェー等がコモンバスケットを開設した他、調達手続共通化によるガイドラインを策定した。また、タンザニアでは教育セクターにおいて、英、EU、蘭、スウェーデンが教科書普及のためのコモンバスケットをパイロット的に開始している。
開発途上国の経済全体の開発・安定に寄与することを主な目的として、プロジェクト形態ではない案件に供与される援助。その形態は、国際収支支援型援助、債務救済、構造調整借款に大別される。
Program of Targeted Interventions: PTI。世界銀行は、貧困層を直接的な対象とした案件の貸付全体に占める割合の統計をとっている。例えば、ある案件に貧困層を対象とする特別な仕組みがあるか、受益者全体の中で貧困層の割合がかなり高い場合、世銀はPTIプロジェクトとして分類している。
プロジェクトの収益性を示す指標の一つであり、案件そのものの収益性に加え、国民経済全体あるいは社会全体が当該案件から得られると期待される便益を含めたもの。
開発途上国政府が作成する3年から5年の支出計画。PRSP(注10参照)に基づいた中期的な財政・資金手当計画として、途上国政府が作成を求められているもの。
アジア諸国等の経済構造改革支援のため、我が国企業の事業参加機会の拡大を図りつつ、1999年度からの3年間で6,000億円を上限とする特別円借款を実施。
特に近年は、電力や通信など、民間資金が導入されるケースが増加しており、このことをもって一部には円借款などの公的資金によるインフラ整備は、民間資金をクラウド・アウトしているとの批判がある。
しかしながら、全体としてみれば民間資金と円借款のような公的資金は開発途上国への資金フローという意味では、代替的な側面に加え、補完的な側面がある。民間資金によるインフラ整備事業は、開発途上国にとっては財政負担なしにインフラが整備されるという利点を有しているが、現実にはインフラの建設から運営・維持管理まで全てを民間資金で賄うことは民間企業にとってリスクが大きいことから、多くの開発途上国において期待されているほどに事業が進捗しているわけではない。他方、インフラの完成後は民間に運営を委託することにより効率的な運営・維持管理が期待されることから、例えばインフラの建設は円借款資金等の公的資金を活用し、完成後の運営・管理は民間の持つノウハウを活用して効率化を図ることが考えられる。これらのインフラ運営・管理に我が国企業や人材が参加できれば、「顔の見える援助」の実施にもつながることになる。なお、円借款事業への日本企業の参加機会の拡大等のために日本政府は99年度より特別円借款による供与を行ってきている。
例えば、現在、世界銀行の職員数が約8,000人であるのに対し、円借款関係省庁担当部局と実施機関である国際協力銀行の職員は計約960人とその規模は約10分の1強に過ぎない。
(注21)グローバル・ディベロップメント・ネットワーク(GDN)
開発分野の政策・調査機関のネットワーク化を図り、ワークショップ開催や訓練の実施等の各種機会を提供するための世銀のイニシアティブ。99年12月、ボンにて第1回GDN会合が開かれた。第2回GDN会合は東京で2000年12月11~13日に予定されている。
円借款により被援助国に対し国際収支支援を行うとともに、同支援の外貨から発生した見返り資金(現地通貨)を当該国の重点部門の開発計画に充当するもの。