ODAとは? 援助政策

タイ国別援助計画/【注釈】

<1>最近の政治・経済・社会情勢

(3)社会情勢

1:ソーシャル・セーフティ・ネット

 貧困軽減のための総合的施策として提供されるもので、交易条件の悪化や飢餓等の予想外のショック等から貧困層を助けるための生活保証制度の総称。具体的には、食糧補助、公的雇用制度、及び社会保障等を指す。

<2>開発上の課題

(1)タイの開発計画

2:OECD/DAC「新開発戦略」

 1996年5月、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)において、21世紀の援助の目標を定めるものとして「新開発戦略(21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献)」と題する文書が採択された。この開発戦略は、地球上のすべての人々の生活向上を目指し、具体的な目標と達成すべき期限を設定している。具体的には、(1)2015年までの貧困人口割合の半減、(2)2015年までの初等教育の普及、(3)2005年までの初等・中等教育における男女格差の解消、2015年までの(4)乳幼児死亡率の1/3までの削減、(5)妊産婦死亡率の1/4までの削減、(6)性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に係る保健・医療サービスの普及、(7)2005年までの環境保全のための国家戦略の策定、(8)2015年までの環境資源の減少傾向の増加傾向への逆転という目標を掲げている。この目標達成に向け、先進国及び開発途上国が共同の取組みを進めていくことが不可欠として、グローバル・パートナーシップの重要性を強調している。

<3>我が国の対タイ援助政策

(2)ODA大綱との関係

3:政府開発援助大綱(ODA大綱)

 我が国のODAの理念と原則を明確にするために、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、(1)人道的見地、(2)相互依存関係の認識、(3)自助努力、(4)環境保全の4点を掲げている。また「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち(1)環境と開発の両立、(2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避、(3)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、(4)民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。

(3)我が国援助の目指すべき方向

4:我が国の対タイ円借款支援の貢献例

 タイの全発電設備容量の15%、バンコク市内の主要橋梁14橋の内11橋、バンコク市内の首都高速道路の32%は我が国の円借款による支援。

5:新宮澤構想

 通貨危機に見舞われたアジア諸国の経済困難の克服を支援し、国際金融資本市場の安定化を図る必要性を踏まえ、総額300億ドルの支援策を講じることを宮澤大蔵大臣が表明したもの。具体的には、(1)実体経済回復の為の中長期の資金支援(円借款・輸銀融資など150億ドル)、(2)経済改革過程での短期資金需要への備えとしての短期の資金支援(150億ドル)から成る。

6:経済構造改革支援のための特別円借款

 98年12月のASEAN及び日中韓首脳会議の際に表明。アジア諸国における景気刺激・雇用促進及び経済構造改革に資するインフラ整備への支援等を目的とし、3年間で6,000億円を限度とする特別枠を創設。当面、金利1%、償還期間40年の優遇条件を設定。

(4)重点分野・課題別援助方針

7:プロジェクト方式技術協力

 専門家派遣、研修員受入、機材供与の3つの要素を、ひとつの協力事業(プロジェクト)として有機的に組み合わせて、計画の立案から実施、評価までを一貫して実施する技術協力の形態。

8:「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」

 我が国が、94年2月に独自の行動計画として発表。94年度からの7年間で30億ドルを目途に開発途上国の人口・エイズ分野に対する援助を積極的に推進していくもの。GIIにおいては、リプロダクティブ・ヘルスの視点を踏まえ、人口・家族計画への直接的協力に加え、女性と子供の健康に関わる基礎的保健医療、初等教育、女性の地位向上等を含めた包括的なアプローチをとっている。代表的な協力例として、インドネシアにおける母子保健手帳普及のためのプロジェクトなどがあり、妊産婦死亡率、乳幼児死亡率の低下に成果をあげつつある。GII関連案件の実績は、98年度末時点で既に上記目標額を越える約37億ドルに達した。

9:留学生円借款

 途上国政府の留学生派遣事業支援など途上国の人材育成を支援するために円借款を供与するもの。

10:タイに対する我が国の環境保全の為の支援の具体例

 バンコク首都圏や地方都市における上水道整備、火力発電所への脱硫装置設置、産業公害防止のための円借款などの供与をこれまで実施。

11:開発金融借款(TSL:ツーステップローン)

 借入国の政策金融制度の下、当該国の金融機関を通じて、中小規模の製造業や農業等の特定部門の振興や貧困層の生活基盤整備といった一定の政策実施のために必要な資金を供与するもの。最終受益者に資金が渡るまでに段階が二つ以上あるのでツーステップローンとも呼ばれる。この借款では、民間多数の最終受益者に資金を供与することができ、また、金融機関を仲介させることによって、当該金融機関の能力強化や金融セクターの開発を図る事が出来る。

12:日タイパートナーシッププログラム(JTPP)

 タイのドナー化を促進する観点から、我が国と協力して途上国の経済・社会開発事業を推進するための基本的な枠組みを取り決めたもの。主たる協力の対象地域としてインドシナ3ヵ国を想定。1994年8月東京にて、タイ側チナウットDTEC担当大臣、日本側柳沢政務次官がR/Dに署名。

13:第三国研修

 第三国研修とは、開発途上国において、社会的あるいは文化的環境を同じくする近隣諸国から研修員を受け入れて行われる研修を我が国が資金的・技術的に支援する手法を指す。例えば、タイに対して我が国が実施した技術移転をベースとして、ベトナム、ラオス等の第三国より研修員をタイに招き、第三国への技術移転を行う事業を我が国が支援する。

14:ASEAN高等教育ネットワーク構想

 産業界のニーズにあった技術者を高等教育機関が十分輩出できていないというASEAN各国共通の問題に対応するため、 (イ)ASEAN内の大学工学部の既に国際水準に達している人材を一国内にとどまらず、ASEAN域内のために有効利用し、(ロ)大学間の共同研究・交流・協力を通じて、また各国の最高学部の水準を知ることによって、良い意味での競合関係を築き、教育・研究の更なるレベルの向上を図ることを目的として、ASEAN各国の大学(各国二大学まで)のネットワークを構築する。

15:国際寄生虫対策

 我が国は、97年のデンバー・サミットにおいて、寄生虫対策の重要性を指摘し、国際的な協力の必要性を協調した。98年のバーミンガム・サミットにおいて、橋本総理(当時)は、国際寄生虫対策を効果的に推進するために、アジアとアフリカにおいて「人造り」と「研究活動」のためのセンター(拠点)を作り、国際的ネットワークを構築し、人材育成と情報交換を促進していくべき事を提案。こうした動きを踏まえ、日本は現在、タイ、ケニア、ガーナにおいて、人材研修などの南南協力の推進拠点を作るべく政府(外務省、厚生省、文部省)、JICA、日本寄生虫学会、NGOなどの関係者が集まり、WHOなど国際機関との連携についても視野に入れつつ準備を進めている。

16:ASEAN情報通信インフラ(AII)

1998年12月にハノイで開催されたASEAN首脳会議で採択されたハノイ行動計画の中で、ASEANはASEAN情報通信インフラ(AII)を構築することを決定した。AIIの下のワーキンググループには、我が国との合同セッションが設けられており、AII構築に向けた我が国の協力につき議論がなされている。

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