ODAとは? 援助政策

タンザニア国別援助計画/【注釈】

<1>最近の政治・経済・社会情勢

(1)政治情勢

*1:アフリカ型社会主義

 ニエレレ初代大統領(在職1964~85年)は、「社会主義と自力更生」のスローガンの下、国内的には主要産業の国有化、農業の共同化を図るウジャマー(スワヒリ語で「同胞」)村建設運動を推進した。また、対外的には、反植民地、反人種差別主義、非同盟主義などを標榜し、共産主義国との関係が緊密であった。

*2:東アフリカ共同体(EAC)

 99年11月にタンザニア、ケニア、ウガンダの大統領が設立条約に署名し、今後3カ国の批准手続きを経て発効予定。3カ国間の政治、経済、社会、文化、安全保障、司法といった広範な分野での協力の推進を目的とした地域協力機構。

*3:南部アフリカ開発共同体(SADC)

 92年に設立された南部アフリカの経済統合を目指す地域国際機関。タンザニア、ザンビア、マラウィ、ジンバブエ、アンゴラ、モザンビーク、ボツワナ、レソト、スワジランド、ナミビア、南アフリカ、モーリシャス、コンゴー(民)、セーシェルの14カ国がメンバー国。

(2)経済情勢

*4:構造調整

 世界銀行や国際通貨基金(IMF)の指導下、市場原理の強化、規制緩和、経済自由化などの経済改革プログラムを進め経済の建て直しを図ること。

*5:キャッシュ・バジェット方式

 中央銀行からの借入を禁止し、歳出を利用可能な現金歳入に厳格に制限する緊縮財政方式。歳出と歳入を均衡させ、財政の健全化を図ることを目的とする。

<2>開発上の課題

(1)タンザニアの開発計画

*6:DAC新開発戦略

 1996年5月、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)において、21世紀の援助の目標を定めるものとして「新開発戦略(21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献)」と題する文書が採択された。この開発戦略は、地球上の全ての人々の生活向上を目指し、具体的な目標と達成すべき期限を設定している。具体的には、(A)2015年までの貧困人口割合の半減、(B)2015年までの初等教育の普及、(C)2005年までの初等・中等教育における男女格差の解消、(D)2015年までの乳幼児死亡率の1/3までの削減、(E)妊産婦死亡率の1/4までの削減、(F)性と生殖に関する健康(リプロダクティヴ・ヘルス)に係る保健・医療サービスの普及、(G)2005年までの環境保全のための国家戦略の策定、(H)2015年までの環境資源の減少傾向の増加傾向への逆転という目標を掲げている。この目標達成に向け、先進国及び開発途上国が共同の取組を進めていくことが不可欠として、グローバル・パートナーシップの重要性を強調している。

(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取り組み

*7:債務削減措置

 開発途上国の対外累積債務問題に対しては、パリクラブにてかつては一定の債務につき10年程度の債務繰延を認めていただけであるが、88年、パリクラブ初の債務削減策である「トロント・スキーム」(債務削減率:33%)が成立。それ以降は、債務削減率を上げる形で削減策が推進されてきた。91年には「新トロント・スキーム(ロンドン・スキーム)」(債務削減率:50%)が、94年には「ナポリ・スキーム」(債務削減率:67%)が成立した。「ナポリ・スキーム」成立以後、二国間債務に加えて、世銀・IMF等の国際金融機関に対する債務負担軽減にも焦点が当てられ、96年国際金融機関、二国間債権者、商業債権者を包含する全債権者による重債務貧困国(HIPCs)に対する債務の持続可能なレベルまでの低減を目的としたHIPCイニシアティヴが成立し、99年ケルン・サミット時にHIPCイニシアティブが拡充され、政府開発援助(ODA)債権を二国間ベースで様々な選択肢を通じて100%削減することについて合意された。

*8:拡大HIPCイニシアティブ

 99年6月のケルン・サミットにおいては、HIPCイニシアティブを拡充し、二国間ODA債権の100%削減を含む「より早く、深く、広範な」救済を行うこと等につき合意がなされた。なお、我が国は、HIPCイニシアティヴの下で債務救済削減が行われた後は、適用国に対し新たな円借款供与は困難となり資金協力を行う場合には無償資金協力が原則となる旨表明している。

<3>我が国の対タンザニア援助政策

(1)対タンザニア援助の意義

*9:日・タンザニア二国間関係

 貿易関係については、我が国はタンザニアからコーヒー等を輸入し(98年輸入額6735万ドル)、同国に自動車、タイヤ等を輸出している(同輸出額7,752万ドル)。98年12月にはムカパ大統領が来日した。また、99年10月のニエレレ初代大統領逝去に際しては、愛知和男衆議院議員が特派大使として葬儀に参列した。99年12月には、高円宮同妃両殿下が我が国皇室関係者としては16年振りにタンザニアを御訪問された。

*10:第2回アフリカ開発会議(TICAD II)

 1998年10月、我が国、国連及び「アフリカのためのグローバル連合」(GCA)の共催によるアフリカ諸国、ドナー国及び国際機関の会議。同会議において、21世紀に向けたアフリカ開発のため、アフリカ諸国とそのパートナーの具体的な政策に指針を与えることを目的に「21世紀に向けたアフリカ開発:東京行動計画」が採択された。東京行動計画は、アフリカにおける貧困を削減するため、また、急激にグローバル化している世界経済にアフリカ経済が一層参画できるようになるため、短期的な緊急課題について、アフリカの指導者とそのパートナーの長期に亘る議論に基づき作成された。次の分野で具体的目標を定め、優先的政策行動につき合意した。

(1)社会開発:教育、保健と人口、貧困層を支援する施策、(2)経済開発:民間セクター開発、工業開発、農業開発、対外債務及び(3)開発の基盤:良い統治、紛争予防と紛争後の開発。

(2)ODA大綱原則との関係

*11:政府開発援助大綱(ODA大綱)

 我が国のODAの理念と原則を明確にするため、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、(A)人道的見地、(B)相互依存関係の認識、(C)自助努力、(D)環境保全の4点を掲げている。また、「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち(A)環境と開発の両立、(B)軍事的用途及び国際紛争助長への使途回避、(C)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、(D)民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。

*12:汚職撲滅

 汚職撲滅は95年大統領選挙の際の与党革命党(:Chama Cha Mapinduzi:CCM)の選挙綱領に含まれている。これを受けて、ムカパ大統領は就任後の96年1月、政府内部の汚職撲滅のためにワリオバ元首相を首班とする汚職撲滅委員会を設置した他、97年には大統領直属の機関である汚職防止局(PCB:Prevention of Corruption Bureau)を設置した。

(3)我が国援助の目指すべき方向性

*13:政府開発援助に関する中期政策

 政府開発援助に関する中期政策(以下中期政策)は、今後5年程度にわたるODAの進め方を体系的・具体的にまとめたものであり、援助の一層効果的・効率的な実施を目指すととともに、内外に我が国のODAについての基本的考え方や具体的援助の進め方をより明らかにしていくことにある。
 厳しい我が国の経済財政事情の下で、99年発表の今次策定の中期政策には数値目標は掲げず、策定過程においてODAの改革に関する各界の提言や意見、国会での議論、NGOとの意見交換など国民の意見を最大限取り入れる努力を行った。
 中期政策は、「はじめに」、「基本的考え方」、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法」、「実施・運用上の留意点」の6つの部分からなっており、今次政策ではDACの新開発戦略を踏まえ、重点課題においては、経済・社会インフラ整備への協力とのバランスを配慮しつつ、従来以上に「人間中心の開発」及び「人間の安全保障」という概念を強調している。

*14:BHN(Basic Human Needs

 従来の開発援助が開発途上国の貧困層の生活レベル向上に必ずしも結びついていないとの認識に基づき、生活必需品や基本的な社会サービスなど低所得層の民衆に直接役立つ援助を提供しようとする援助概念。

(4)重点分野・課題別援助方針

*15:キリマンジャロ州農業開発

 70年代より開始。無償資金協力によって建設したキリマンジャロ農業開発センターを活用し、灌漑システムの確立や稲作・野菜栽培技術の現地農民への技術移転を図り、更には有償資金協力によって同州ローアモシ地域に整備した2,300ヘクタールに及ぶ水田・畑地の入植農家に対しても技術の普及に努めた。協力対象地域では米の反あたりの収穫量が増加したほか、周辺地域にも農業技術や小規模灌漑技術が普及するなど、大きな効果を挙げた。現在では、タンザニア全土への農業技術の普及を目的とした農業技術者の訓練を実施中である。

*16:小規模融資(マイクロ・クレジット)

 明確な定義は存在しないが、一般的には、担保手段を持たないために民間銀行等からは融資対象として不適当と見なされやすい貧困層(特に女性)に対し、生産・所得向上のために、少額・無担保(数千円から数万円)にて供与される信用を指す。

*17:セクター・プログラム(Sector Program

 1993年に、サブサハラ・アフリカの調整政策支援に取り組んでいる「サブサハラ・アフリカ特別援助プログラム」(SPA:Special Program of Assistance for Low-Income Debt-Distressed Countries in Sub-Saharan Africa)において、従来の構造調整支援中心の協力から、生産セクターへも資金を振り向けるべきとの観点から、我が国が提唱したアプローチ。援助国間の援助の重複や援助国の人材・財源の非効率的利用、被援助国の開発計画との整合性の不足等の問題を解決すべく、被援助国が中心となって各セクターの開発計画を作成し、被援助国・ドナー間で同計画を吟味し、ドナーが右計画に従って調整を行った上で援助を行うという開発アプローチである。当初セクター・インべストメント・プログラム(SIP:Sector Investment Program)と呼ばれたが、現在はセクター・プログラムと呼ばれている。上記DAC新開発戦略との関係でも、被援助国のセクター開発計画の策定や援助国間協調における主体性の発揮(オーナーシップ)、それを踏まえた援助国間の協調等の支持体制構築(パートナーシップ)という考え方とも合致している。

*18:リファーラル体制

 患者の容態に応じて順次上級の病院に診察・治療を委ねていく体制のこと。

*19:人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティヴ(GII)

 人口の抑制は、地球環境や食料・資源エネルギー問題と共に地球規模の問題になっているが、こうした中で、94年2月、我が国は、94年から2000年度までの7年間でODA総額30億ドルを目途に、この分野での援助を積極的に推進していくことを内容とする「人口・エイズに関する地球規模イニシアティヴ(Global Issues Initiatives on Population and AIDS: GII)」を発表した。GIIは、人口や家族計画及びエイズに関する直接的な協力に加え、女性と子供の健康に関する基礎的保健医療、初等教育、女性の地位の向上等、間接的に人口増加・エイズの抑制に資する協力を含めた包括的なアプローチを目指すものである。
 GII推進にあたっては、98年度までに15ヶ国に対して98年度までに調査団を派遣し、案件発掘・形成を推進してきた。また、この分野で国際機関との連携に努めているほか、調査段階からNGOとの参加、協力を得ている。

*20:開発福祉支援事業

 開発福祉支援事業は、日本の社会福祉分野での経験を踏まえつつ、開発途上国における福祉向上活動を推進するため、現地で活動を展開しているNGOや地域組織の協力を得て、住民参加による福祉向上のモデル事業を実施するものである。
 この事業は、現地JICA事務所が中心となって、現地で雇用するローカル・コンサルタントを活用して、現地NGOにモデル事業を実施させることとしている。事業分野としては、例えば、保健衛生改善、高齢者・障害者・児童等支援、女性自立支援及び地場産業振興支援等がある。また、その分野に関する短期専門家の派遣を通じ現地NGO等への技術指導も実施する。

*21:緑の推進プロジェクト

 専門家派遣、海外青年協力隊派遣及び研修生受入を連携させ植林等による砂漠化防止及び緑の回復を図る事業。

(5)援助実施上の留意点

*22:環境・社会開発セクター・プログラム無償

 世銀、国際通貨基金などと合意した経済構造調整計画の促進に必要な物資を輸入するための資金を供与する一方で、その見返資金の使途を被援助国が立案し、我が国政府との間で合意した保健、教育、都市開発などの環境・社会開発のための特定セクター開発に活用することを義務づけることで当該被援助国を支援し、DACの新開発戦略の趣旨に沿った援助を行うもの。

*23:貧困削減戦略ペーパー(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)

 貧困削減に向けて、如何に被援助国自身の取組を促進させ、パートナーによる援助を効果的なものにするかとの議論が高まる中、貧困削減と債務救済とのリンクを強化するために、HIPCイニシアティヴ対象国は同イニシアティヴ適用決定までに貧困削減戦略ペーパーを策定すべきことが99年9月の世銀・IMF合同開発委員会で決定された。同ペーパーは、各国の「国家開発戦略」をベースに貧困削減という目的に焦点を絞ったもので、全ての開発パートナーにとっても当該国を支援するにあたっての指針となり、国家開発戦略のプライオリティ付け及び開発実施のプロセスを促進させるものである。

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る目次へ戻る