核軍縮・不拡散

概要

令和6年5月29日

1 採択の経緯

  • (1)大量破壊兵器の運搬手段となる弾道ミサイルの拡散防止に関しては、1987年にG7が中心となって発足したミサイル技術管理レジーム(MTCR)の輸出管理協調の枠組みがある。
  • (2)冷戦終焉後、MTCR非参加国間のミサイル拡散や懸念国国内におけるミサイル開発が進み、1990年代後半には世界的なミサイル拡散傾向は明白なものとなった(1990年代後半には1998年4月のパキスタン(ガウリ)、7月のイラン(シャハブ3)、8月の北朝鮮(テポドン)、1999年4月のインド(アグニ2)、パキスタン(ガウリ、シャヒーン)などミサイル発射が相次いで実施された。)。
  • (3)こうした状況の中で、MTCRでは、これまでの輸出管理の協調だけでは、弾道ミサイルの拡散を防止することはできず、これを補完する国際的な枠組みが必要であるとの気運が高まり、MTCRを中心に国際的な規範作りの検討を開始し、2001年9月のMTCRオタワ総会で、MTCR内の議論を終了した。
  • (4)その後、「全ての国に開かれた普遍化のプロセス」(2002年2月のパリ会合(78か国参加)、2002年6月のマドリッド会合(97か国参加))を経て、2002年11月、オランダのハーグで「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範(ICOC)」が93か国の参加を得て採択された。同規範は、採択地にちなんで、「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」と称することとなった。

2 ハーグ行動規範(HCOC)の法的性格と主な内容

  • (1)HCOCは、弾道ミサイル不拡散のための初めての国際的政治合意であり、弾道ミサイルの拡散防止、弾道ミサイルの開発・実験・配備の自制などの原則と信頼醸成のための措置などを主な内容とする。HCOCは法的拘束力をもつ国際約束ではなく、参加国がHCOCの原則や措置に従うとの政治的意思を示すもの。
  • (2)HCOC別ウィンドウで開くの主な内容は以下のとおり。
    • ア 弾道ミサイルの拡散を防止・抑制する。(HCOCの2.a)
    • イ 宇宙ロケット計画が弾道ミサイル計画を隠蔽するために利用されるべきではない。(HCOCの2.g)
    • ウ 弾道ミサイルの開発・実験・配備を最大限可能な限り自制する。これは、可能な場合には弾道ミサイル保有の削減を含む。(HCOCの3.c)
    • エ 軍縮・不拡散条約の義務や規範に反して大量破壊兵器の開発・取得を行っている可能性がある国の弾道ミサイル開発計画を貢献・支持・支援しない。(HCOCの3.e)
    • オ 信頼醸成措置(弾道ミサイルや宇宙ロケットの事前発射通報、政策に関する年次報告など。ただし、これらの措置は、弾道ミサイル活動を正当化することにはならない。)(HCOCの4.)
(参考)HCOCの策定過程における我が国の貢献
 HCOCの内容を策定する過程で、我が国は、北朝鮮の弾道ミサイル活動を念頭に置き、様々な具体的な提案を行ってきた。宇宙ロケット計画を用いて弾道ミサイル計画を隠蔽してはならない、事前発射通報の実施は弾道ミサイルの発射を正当化することにはならないとの趣旨は、こうした我が国の提案が反映されたものである。

3 HCOC参加国

 HCOC参加国は145か国(2024年5月現在)(参加国一覧)。

(参考)HCOCへの新規参加
 HCOCへの参加はすべての国に開かれており、中央連絡国であるオーストリア政府に、HCOCへの参加を表明する外交文書を提出すれば参加できる。

4 HCOCの組織

 議長国は任期1年。オーストリア政府が中央連絡国として事務局の役割を果たしている。

5 HCOC採択後の取組

  • (1)HCOC参加国は、2002年11月の立ち上げ以降、HCOCの各種措置の実施に取り組むとともに、参加国の更なる拡大に向けてHCOC非参加国に働きかけを行っている。この結果、HCOC参加国は着実に増加している。
  • (2)これまで10回にわたり、国連総会においてHCOCに関する決議が採択されており(第59回(2004年)、第60回(2005年)、第63回(2008年)、第65回(2010年)、第67回(2012年)、第69回(2014年)、第71回(2016年)、第73回(2018年)、第75回国連総会(2020年)、第77回国連総会(2022年))、これら決議にはいずれも、HCOCの立ち上げを歓迎し、HCOC参加を奨励する内容が盛り込まれている。このような国連の場における決議の採択は、HCOCの普遍化の表れといえる。
  • (3)我が国は、自国の安全保障、地域や世界の平和と安全のために、HCOCが普遍的かつ実効的な規範となるよう、HCOCの信頼醸成措置(宇宙ロケットの事前発射通報や年次報告の提出及び我が国射場の国際視察の実施)を着実に実施するとともに、二国間や多国間の協議などの様々な場を通じてHCOC非参加国に参加を働きかけている。
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