平成19年4月
麻薬等薬物問題は、地球規模の深刻な問題であり、国際社会が一丸となって取り組むべき重要な問題である。比較的早期に対策がとられてきたヘロイン、コカインの使用については横這い乃至減少が見られる一方、覚せい剤の乱用が世界的に拡大傾向にあり、我が国は覚せい剤対策分野に重点を置き、以下のような国際的な取り組みに協力している。
国際的な薬物対策への取組みを強化すべく、従来より薬物関連諸条約の整備が進められ、1961年には麻薬単一条約が、1971年には向精神薬条約が、更に1988年には麻薬新条約がそれぞれ採択され、各国とも早期批准を進めている(我が国は既に上記3条約とも批准済み)。
(1)麻薬委員会(CND)
麻薬委員会は国連経済社会理事会の下部機関として53カ国のメンバーで構成されており、薬物関連諸条約(上記1.)履行の監視、薬物統制の強化に関する勧告等薬物統制にかかる政策を決定する機関である。
我が国は1961年以降継続してメンバーとなっており、本年3月の委員会において「薬物取締機関の情報収集活動等の捜査活動を支援し、薬物情勢を分析するための薬物分類及び成分分析の活用」決議案(詳しくはこちらへ→)を提出しコンセンサス採択に導くなど、その議論に積極的に貢献してきている。
(2)国際麻薬統制委員会(INCB)
経済社会理事会で選挙される13名の委員(個人資格)で構成され、関連条約の対象薬物の生産、流通、消費について監視、管理を通じた不正取引と乱用の防止を図っている。
(3)国連薬物犯罪事務所(UNODC)
UNODCは、国連において薬物問題を包括的かつ一体的に取り扱う機関であり、我が国は、継続して資金を拠出し、その活動を支援してきている。(詳しくはこちらへ→)
薬物問題については、86年の東京サミットで取り上げられて以来、度々議長声明等において国際協力の強化が唱われ、種々の対応がとられてきている。最近の動き等以下のとおり。
(1)2000年の九州・沖縄サミットでは、薬物及び原料物質の不正流用等に対する国際的な協力を強化し、アドホックの専門家会合を開催することがコミュニケに表明され、同年12月、フォローアップとして、「G8薬物専門家宮崎会合」が開催された。
(2)2001年のジェノバ・サミットでは、薬物の不正取引及び使用を抑制するための努力を強化することが確認された。
(3)2002年のカナナスキス・サミットでは、薬物の密輸等の犯罪活動とテロ組織との潜在的な結びつきを明らかにすべく情報を共有していくことが確認され、翌2003年のエビアン・サミットで右約束事項が再確認された。
(4)2004年のシーアイランド・サミット議長声明、また、2005年のグレンイーグルズ外相声明において、アフガニスタン麻薬対策のための国際的支援の必要性が確認された。
(1)ダブリン・グループ全体会合
主要先進国間で薬物関連援助政策等につき相互理解を深め、政策の調整を図ることを目的として90年ダブリンにおいて発足。参加国・機関は、日、米、加、豪、ノルウェー、EU25か国及びUNODCで、年2回の全体会合(於:ブラッセル)を開き、薬物関連の援助政策等の協調のため、情報交換・協議を行っている。
(2)ミニ・ダブリン・グループ会合
ダブリン・グループ参加国の不正薬物生産・経由地(約70か国)にある現地大使館間において開催されているアドホック会合。任国の薬物事情について情報交換を行うとともに、必要に応じ任国政府等と連携を図りつつ、各国の援助政策を相互調整し、全体の薬物対策効果を高めることを目的とし、その結果は上記DG会合に報告される。我が国は隔年で豪と共に東・東南アジア地域グループの議長を務め、東・東南アジア諸国における支援のあり方についての意見交換を行っている。2006年から2008年まで角ウィーン代表部大使が議長を務める等我が国より積極的な貢献を行っている。
平成15年に改定された政府開発援助(ODA)大綱において、麻薬を含む地球的規模の問題への取組を重点課題の一つと位置付けたほか、人間の生存・生活・尊厳に対する多様な脅威に晒されている人間一人ひとりに着目し、保護と能力強化をもって人間が尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す「人間の安全保障」の視点からも、この問題を重視している。(各年の支援については、『ODA政府開発援助白書』参照。)
(1)2000年薬物対策東京会合
2000年1月に東京において開催され、アジア・太平洋地域を中心とした37カ国・地域の薬物対策機関より約130名が参加した。アジア太平洋地域における覚せい剤対策を含む薬物関係機関の国際協力の推進をうたったコミュニケが採択された。
(2)G8薬物専門家宮崎会合
2000年12月13日から15日、宮崎において開催され、G8及び国連薬物統制計画(UNDCP)から約60名の専門家の参加を得て、覚せい剤及びその他合成薬物対策・薬物原料物質の規制に関して議論が行われ、G8としての薬物問題に対する今後の協力のあり方が、議長サマリーとしてまとめられた。
(3)アジア太平洋国際組織犯罪対策会議
2001年1月に東京においてアジア地域を中心とした30を超える国と地域から法執行機関の幹部等約230名が参加して開催。銃器対策、薬物対策、ハイテク犯罪対策などの分野で協議を行い、組織犯罪対策の重要性について再認識する宣言を採択した。
(4)国際麻薬統制サミット
国際麻薬統制サミットは米及び欧州の薬物に関心のある議員が集まる非公式な会議。
年 | 会議 |
---|---|
1998年 | 欧州議員側主催(於:英国(ドゥンダス)) |
1999年 | UNDCP主催(於:オーストリア(バーデン)) |
2000年 | 米国議会・UNDCP共催(於:米国(ワシントン)) |
2001年 | ボリビア政府・UNDCP・CICAD共催 (於:ボリビア(サンタクルス・デ・ラ・シエラ)) |
2002年 | 我が国・UNODC共催(於:我が国(東京)) |
2003年 | スウェーデン・UNODC共催(於:スウェーデン(ストックホルム)) (詳しくはこちらへ→) |