経済外交
APEC(アジア太平洋経済協力)
エネルギー作業部会(EWG)について
平成28年9月23日
1 設立の経緯
1989年の第1回APEC閣僚会議において,エネルギー問題を専門に議論する場を設けることが合意され,翌1990年に設立されました。
2 活動目的
- (1)APECの活動の中で貿易・投資の自由化・円滑化と相互に補完する活動として位置づけられている経済・技術協力において,エネルギー分野での具体的な協力を推進するための作業部会として活動しています。
- (2)経済成長(Economic growth),エネルギー安全保障(Energy security),環境保全(Environmental protection)の3つのEの同時達成を目指し,エネルギー供給及び使用の環境負荷を軽減しつつ,APEC地域に経済的・社会的利益のために貢献することです。
3 組織・機構
- (1)APECエネルギー作業部会(以下,EWG)は,APEC高級事務レベル会合(SOM)の下に設けられた15の作業部会(ワーキング・グループ)の1つで,米国が議長及び事務局を務めています。会合は原則年2回開催されています。現在の議長は陳炯曉(Dr. Jyuung-Shiauu Chern)台湾経済部能源局総合企画課長です。
- (2)EWGの活動に弾みとガイダンスを与える目的で,APECエネルギー大臣会合が開催されています。本会合及びAPEC閣僚・首脳会議やSOMからの指示・提言に基づき,EWGは活動を行っています。
- (3)EWG会合には,APEC参加国・地域(エコノミー)の他,4つの専門家会合,2つのタスクフォース,及びEWGビジネス・ネットワークの代表が出席し,セミナー,研修,調査研究,情報交換等の様々な活動を実施しています。
- 【4つの専門家会合】
- エネルギー需給データ・分析専門家会合(Expert Group on Energy Data Analysis:EGEDA)
- クリーン化石エネルギー専門家会合(Expert Group on Clean Fossil Fuel Energy:EGCFE)
- エネルギー効率・省エネルギー専門家会合(Expert Group on Energy Efficiency Conservation:EGEEC)
- 新エネルギー・再生可能エネルギー技術専門家会合(Expert Group on New & Renewable Energy Technologies:EGNRET)
- 【2つのタスクフォース】
- 低炭素モデルタウン タスクフォース(Low Carbon Model Towns Task Force:LCMTTF)
- エネルギー強靱性タスクフォース(Energy Resilience Task Force : ERTF)
4 活動概要
- (1)1995年大阪APEC閣僚会議にて承認された「APECエネルギー行動計画」をEWGの活動に基本として,以下の4つの事項を優先課題として取り組んでいます。
- 域内のエネルギー問題に関する共通認識を醸成する
- エネルギー部門における投資を促進する
- エネルギー部門が環境に与える影響を軽減する
- 認証の同等性の受け入れ及びエネルギー基準調和を促進する
- (2)また,エネルギー安全保障及び持続可能な開発の達成に向けた戦略として,一時的なエネルギー供給途絶へ対応するための短期的方策,及び地域のエネルギー供給が直面している様々な課題に対する長期的政策の2つから構成される「エネルギー安全保障イニシアティブ(ESI)」が2001年APEC首脳会議にて承認され,その活動は,ア 石油・ガスの供給途絶時を想定したシナリオに基づくセキュリティ・エクササイズ,イ ネットワーク構築,ウ 調査研究からなる「APEC石油・ガス・セキュリティ・イニシアチブ(OGSI)」によって継続的に進められています。
- (3)さらに近年では,エネルギー効率に向けた各エコノミーの政策実施状況を,他エコノミーの省エネ政策専門家が評価し改善提案を行うエネルギー効率ピアレビュー(Peer Review on Energy Efficiency:PREE)を10エコノミーで実施したほか,再生可能エネルギー等の低炭素エネルギーに関するピアレビュー(Peer Review on Low Carbon Energy:PRLCE)を5エコノミーで実施しています。
5 日本にとってのEWGの意義
- (1)日本の最重要貿易パートナーの一つであるとともに重要な投資先となっているアジア太平洋地域と日本の密接な経済的相互依存の関係から,アジア太平洋地域のエネルギー安全保障強化や関連インフラ整備促進は日本経済にとって大きな意味を有しています。
- (2)近年,アジア太平洋地域のエネルギー需要は急速な経済成長を背景として増加の傾向にあり,エネルギー安全保障の確保,エネルギー関連インフラの整備及び環境問題への取り組みが大きな課題となっています。これらの分野でアジア太平洋地域諸国との協力を推進するための地域的枠組みとしてEWGは重要な役割を担っています。