エネルギー安全保障
APEC(アジア太平洋経済協力)
エネルギー大臣会合
1 第1回会合(1996年8月,於:オーストラリア・シドニー)
経済成長,エネルギー安全保障,環境保全のいわゆる3Eの同時達成を目標とすることが改めて確認され,「合理的エネルギー消費のための14の非拘束原則」が承認されました。
2 第2回会合(1997年8月,於:カナダ・エドモントン)
「合理的エネルギー消費のための14の非拘束原則」の実施状況の報告が行われ,EWGを中心に作成された「独立発電事業者(IPP)ベスト・プラクティス・マニュアル」や「環境調和インフラを促進するための非拘束原則」が奨励されました。今後取り組むべき新たな活動として,日本より「エネルギー利用効率向上のためのプレッジ・アンド・レビュー・システム」,米国より「天然ガス関連インフラ促進のための研究」がそれぞれ提案されました。
3 第3回会合(1998年10月,於:日本・沖縄)
アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)が作成した域内エネルギー需給見通しを基に予想されるエネルギー需給構造の脆弱性をいかに克服していくかについて,各国毎にエネルギーミックス,省エネ努力を相互に見直すといった域内エネルギー政策協調の可能性について具体的な議論が行われました。また,第2回会合で提案された「天然ガス・イニシアティブ」,「エネルギー効率向上プレッジ・アンド・レビュー」などが承認されました。
4 第4回会合(2000年5月,於:アメリカ・サンディエゴ)
21世紀に向けたAPEC地域のエネルギー諸問題と優先課題について議論を行い,エネルギーインフラの整備,エネルギー効率の改善などに関する過去の大臣会合で合意された諸原則の実施促進の方策について合意されました。また,今後予想されるAPEC地域のエネルギー需要の増大を背景に,エネルギー安全保障問題等への協力強化の重要性およびエネルギー効率向上,再生可能エネルギー等の技術の開発・普及などエネルギーの環境問題への取り組み強化について意見が一致しました。
5 第5回会合(2002年7月,於:メキシコ・メキシコシティー)
これまでAPECが提唱してきたイニシアティブ等の進捗状況についての報告および評価が行われるとともに,2020年までの域内エネルギー需給見通しに基づき,エネルギー協力のための長期ビジョンの策定について意見交換が行われました。また,会合では,「エネルギー基準ラベリング協力イニシアティブ」や日本が提唱している「エネルギー理解促進イニシアティブ」等が支持されました。
6 第6回会合(2004年6月,於:フィリピン・マニラ)
APEC地域におけるエネルギー需給見通しの報告やエネルギー安全保障とその課題について議論が行われ,原油価格の上昇が経済に及ぼす影響を懸念し,原油市場の安定のために短期的な供給途絶に対応するための方策を一層促進すること等が確認されました。また,エネルギー源の多様化の重要性が確認され,APEC地域における原子力の役割をまとめた原子力枠組文書および水素,燃料電池の能力構築や規格,標準等の分野での協力に関する暫定枠組文書を基に,今後も協力を進めることが奨励されました。
7 第7回会合(2005年10月,於:韓国・慶州)
数年来の油価高騰を重視し,石油輸出国機構(OPEC)を会合に招待するなど原油価格高騰に伴う影響を中心に議論が行われ,市場の長期的安定を実現するために,国際機関の連携強化,対話促進および精製施設等の下流部門への投資促進が重要であることが確認されました。また,LNGの重要性や安全性の理解増進を図るための新しいイニシアティブが支持された他,代替輸送燃料の開発,導入促進の重要性が認識され,バイオ燃料タスクフォースが設立されました。
8 第8回会合(2007年6月,於:オーストラリア・ダーウィン)
9 第9回会合(2010年6月,於:日本・福井)
日本が議長を務め,エネルギー安全保障の強化,省エネルギーの促進,及び低炭素排出エネルギーの導入促進について議論が行われました。石油供給途絶等の緊急時対応能力の強化のため,石油備蓄や緊急時対応訓練の重要性が確認された他,APEC地域における非在来型ガス開発利用促進の必要性が示されました。また,エネルギー効率目標の再設定,エネルギー効率専門家レビュー,及び効率化デザイン協力を通じた省エネルギーの一層の促進,エネルギー消費機器の省エネ性能基準の統一化,クリーン石炭技術やスマートグリッドの普及促進等の取組みが合意されました。なお,低炭素排出エネルギーの利用促進に関しては原子力の他,炭素回収貯蔵や石炭ガス化複合発電などの新たな技術利用の重要性ついて意見が一致しました。
10 第10回会合(2012年6月,於:ロシア・サンクトペテルブルク)
エネルギー安全保障問題を中心に,経済成長,気候変動,エネルギー効率の向上,原子力エネルギーの安全な利用等の課題について議論が行われました。低炭素な経済への移行にむけて,天然ガスの生産と貿易割合を拡大すべく,シェールガスをはじめとする非在来型天然ガス資源の開発利用推進が重要になるとの認識が共有された他,エネルギー効率を改善するためにスマートコミュニティに関する計画・プロジェクトを推進していくことの重要性が確認されました。また安全かつ確実な原子力発電の利用確保によってエネルギーの最終用途効率を増加させる効果とその重要性についても認識が共有されました。日本は,福島第一原子力発電所における事故の経験から得た知識を通じて,世界の原子力安全に対して貢献にすることを表明しています。
11 第11回会合(2014年9月,於:中国・北京)
「アジア太平洋地域の持続可能なエネルギー開発に向けた協力」をテーマとし,エネルギー安全保障の強化,貿易・投資の拡大,エネルギー効率の向上,クリーンエネルギーの推進について議論が行われ,成果文書として「北京宣言」が採択されました。
エネルギー安全保障の更なる強化に向けて,石油・ガスの供給に係る緊急時対応能力を強化する他,LNG市場を支えるために,仕向地条項の緩和を含む,良好な貿易・投資環境を作り上げることの重要性が認識されました。また,発電を含むAPECのエネルギーミックスにおいて,再生可能エネルギーの比率を2030年までに2010年比で倍増させることを目指すことが合意されました。その他,APEC地域における,高効率石炭火力発電や炭素回収・利用・貯留(CCUS)等の技術開発,及び適用を強化する他,ベースロード電源として機能するクリーンで質の高い原子力の安全且つ効率的な開発を支援することが合意されました。なお,日本が主導する「APEC低炭素モデルタウン・プロジェクト」の進展が称賛されるとともに,中国が提案した「APECサステイナブル・エネルギー・センター」(APSEC)の設立が承認されました。
12 第12回会合(2015年10月,於:フィリピン・セブ)
「エネルギー・レジリエントなAPEC地域の実現に向けて」をテーマとし,エネルギーの強靱性,エネルギー効率の向上,クリーンエネルギーの推進,貿易・投資の促進について議論が行われ,成果文書として「セブ宣言」が採択されました。
エネルギー安全保障と持続可能な発展を推進する上で,天災及び人災に対するエネルギーインフラ関連施設の強靱性の重要性が認識されたほか,運輸及び発電分野におけるクリーンエネルギー技術の貢献の重要性が確認されました。日本から,APEC地域の電力インフラの質向上を通じて,災害に強い電力供給体制の実現に貢献する「APEC質の高い電力インフラ・イニシアチブ」を提案し,歓迎されました。また,遠隔地への安定したエネルギー供給に向け,フィリピンが提案した「オフ・グリッド地域に於けるエネルギー強靱性の改善のためのワークショップ」が歓迎されました。