
効率化、省エネルギー及び多様化を通じたエネルギー安全保障と持続可能な開発の実現に関するダーウィン宣言
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APECエネルギー担当閣僚からのメッセージ(仮訳)
1.我々、アジア太平洋経済協力(APEC)エコノミーのエネルギー担当閣僚は、2007年5月29日、「効率化、省エネルギー及び多様化を通じたエネルギー安全保障と持続可能な開発の実現」という主題のもと、オーストラリアのダーウィンにおける第8回会合に参集した。
2.我々は、エネルギー安全保障が我々の経済、社会及び環境面での厚生に根本的に結びついているというコンセンサスが世界的にますます高まりつつある中、会合を持った。我々は、ハノイ宣言が対応を求めた環境への影響を最小限に抑えつつ急速に増大するエネルギー需要を満たすという課題について協議した。
3.我々は、緊急事態への備えを強化し、短期的なエネルギー供給の途絶というリスクとそれがもたらす影響への対応措置に参加する必要性を強調した。
4.我々はまた、より長期的なエネルギーの将来に向けて、よりクリーンなエネルギーの開発、エネルギー効率の改善、及び省エネルギーを促進するための政策・技術を追求することの重要性を認識した。
5.我々は、エネルギー安全保障及び持続可能な開発という課題への対応は、自由で開かれた貿易、安全で透明性の高い投資枠組み、市場に基づく価格シグナル、市場の透明性、グッド・ガバナンス及び実効的な競争等によりますます特徴づけられる、十分に機能する市場を基盤とすべきであると判断した。
6.我々は、国際エネルギー機関(IEA)事務局長による、世界と地域のエネルギー安全保障上の課題に関する基調講演を歓迎した。我々は、APECとIEAによる協力の発展・実践を奨励した。
7.我々は、環境面での課題(特に良質の空気と気候変動に関する目的)に対応する必要性がある為に、エネルギー効率・省エネルギーの推進、よりクリーンで効率のよい技術の開発と普及、エネルギー関連投資を阻む障壁への対処と国境を越えたエネルギー貿易を促進していくために、協調して対応しなければならないことを認識した。
8.我々は、エネルギー多消費部門における効率向上及び多様化を実現するための行動について協議した。我々は、産業、建築及び商業におけるエネルギー効率の改善とよりクリーンな発電技術(再生可能エネルギー、クリーンな石炭・天然ガス/LNG、また関心のあるエコノミーにとっては原子力技術を含む)が、より炭素排出の低い、より安定的で多様性のあるエネルギー供給と利用システムをもたらすことに注目した。
9.我々は、石油需要の主要牽引者である運輸エネルギー部門における一層の効率向上と多様化を達成するための行動について協議した。我々は、燃料効率のよい運輸、並びに、持続可能な方法によるバイオ燃料及びその他の代替輸送燃料の利用を促進するための政策策定及び技術開発を奨励した。
10.我々は、APECエネルギー・ビジネス・フォーラムにおけるエネルギー関連企業の会合とエネルギー・ビジネス・ネットワーク議長による講演を歓迎した。我々は、エネルギー・ビジネス・ネットワークの提言に注目した。我々は、エネルギー・ビジネス・ネットワークがその組織を強化し、参加企業を拡大しようとの努力を奨励する。
11.我々は、2007年に行うべしとのAPEC首脳会議の指示に応え、各エコノミーが環境への影響を抑制しつつ増大するエネルギー需要を満たし、気候変動の目的への対応を可能とするよりクリーンなエネルギーの開発とエネルギー効率の改善を促進するための政策及び技術に、APECが今後さらに貢献していくための様々な方策について、報告を行った。
APECエネルギー担当閣僚からの指示
石油安全保障の確保
12.APECの石油輸入依存率は、2002年の36%から2030年には52%に上昇すると予想される(注1)。最近の原油価格上昇の原因は、需給ファンダメンタルズ、地政学的リスク、供給途絶への懸念、及び投機的取引である。これに対応する為、我々はAPECエコノミーに対し、供給安全保障を高め、燃料効率のよい運輸及び現実性のある代替燃料の利用を促進する為の幅広い措置を採用することを奨励する。
(a)石油市場の下流・上流における投資・貿易の促進
13.よりクリーンな燃料を含む増大する需要を満たす、精製施設への十分な投資を確保するために、我々はAPECエコノミーに以下を奨励する。
- こうした投資に関して、透明性の高い簡素化された規制枠組みを提供すること。
- 石油製品貿易の一層の自由化を促進すること。
- 精製事業者がよりクリーンな石油製品を効率よく生産できるよう、技術開発に有利な環境を創出すること。
14.上流部門に対する十分かつ持続可能な国際的投資を呼び込むには、契約履行能力も含め、透明で、信頼性が高く、公平で、効果的な法的・規制枠組みが不可欠である。
- 我々は、石油・天然ガス資源及び埋蔵量に対する投資を可能とするような環境を促進するため、消費国と生産国の間で行われている対話を支持する。
- 我々は、上流部門への投資を促進することの重要性を認識する。
15.石油/天然ガス企業の重要性が増していることに鑑み、
- 我々は、エネルギー作業部会(EWG)に対し、APECエコノミーにおける石油/天然ガス企業の役割が貿易及び投資に与える影響について、またパートナーシップ及び協力によって全体の価値を如何に高めることができるか、を検証するよう指示する。
(b)緊急事対応の拡充
16.石油供給途絶は、すべてのAPECエコノミーに影響を与え得る。これに対応する為、
- 我々はAPECエコノミーに対し、リアルタイム緊急時情報共有システム(RTEIS)に参加することを奨励する。また、供給途絶の可能性を最小限に抑え、海上輸送を含むエネルギー関連の重要インフラをよりよく保護する為、APEC緊急対応タスクフォースを通じたり、更に、例えばAPECエネルギー関連重要インフラ保護迅速対応連絡拠点ネットワークといった組織の設立を促進する目的で、RTEISを強化することを通じ、緊急時の体制及び対応計画を策定・伝達することを奨励する。
- 我々はEWGに対し、エネルギー供給途絶の際の協調努力に関して、IEAなど他の関連する国際的フォーラムとの協力を強化するよう指示する。
- 我々は、エネルギーの海上輸送が阻害されたり、制限を受けることの重大性を認識し、EWGに対し、分野横断的な問題を特定し次回会合に報告することをめざして、地域の海上の安全確保に責任を有する機関との連携を育むよう指示する。
- 我々は、関心のあるエコノミーが、戦略的石油備蓄の設置、資金提供及び管理に関するベストプラクティスの実践について、引き続き報告することを奨励する。
(c)石油に関するデータ共有の改善
17.石油市場に関する透明性・信頼性の高いデータが欠如のために、価格の不安定性が増大している。
- 我々は、共同石油データ・イニシアティブ(Joint Oil Data Initiative、JODI)を、投資家の不安感に対処し、エネルギー関連データの国際標準化に貢献し、具体的な行動を通じた生産国・消費国の対話を強化する、国際的なイニシアティブとして支持することを再確認する。
- 我々は、APECエコノミーがJODIの下、石油の埋蔵量、需給、備蓄及び生産について、迅速、正確かつ完全なデータを報告することを奨励する。我々はEWGに対し、JODIを通じて、JODIに参加する加盟エコノミー向け研修の提供と、JODI世界データベースへの貢献を引き続き行うよう指示する。
(d)エネルギー効率のよい運輸及び輸送用代替燃料の推進
18.APEC地域における石油需要増大を牽引しているのは輸送部門であり、石油価格の高騰により、車両の燃費改善及び輸送用代替燃料の開発と利用が進展している。
- 我々は、APECバイオ燃料タスクフォースによる報告を歓迎した。この報告における主要な結論は、いくつかの作物から得られるバイオ燃料は、現在の石油価格のもとではコスト競争力がある、バイオ燃料により温室効果ガスの排出量を抑制し得る、そしてバイオ燃料は、長期的には石油のかなりの部分を代替できるというものである。
- バイオ燃料生産は、持続可能な開発という目標に沿って進められるべきである。我々は、バイオ燃料の生産拡大及び温室効果ガスの削減という点で最大の可能性を秘めている、農場や森林の残滓及び草などの非食料原料を、経済的に利用するための手法の開発及び採用に向けた努力を強化するよう奨励する。
- 我々はEWGに対し、代替燃料について、IEA及び国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBeP)などの国際機関・取組みと協力することを奨励する。
- 我々は、APECエコノミーが、運輸部門におけるエネルギー効率改善を促進し、よりクリーンな燃料源を用いて燃料構成を多様化する為の政策や措置を通じて、運輸における石油依存の増大を抑制することを奨励する。
- 我々はEWGに対し、エネルギー効率のよい運輸の為のベストプラクティス原則を策定するよう指示する。
クリーンで効率の良いエネルギー生産・利用の推進
19.環境への影響を抑制しつつ、増大するエネルギー需要を満たすためには、エネルギー効率の改善の為の協力、よりクリーンで効率のよいエネルギー技術、更なるエネルギー投資の誘致、国境を越えたエネルギー貿易の促進が必要である。
(e)エネルギー効率の改善
20.エネルギー効率の改善は、エネルギー安全保障を強化し、温室効果ガス排出を軽減するうえで、経済的な方法である。発電、産業、運輸、公共、住宅及び商業部門においてエネルギー効率を向上する余地は大いにある。
- 我々はAPECエコノミーに対し、全体及び/もしくは各部門毎のエネルギー効率の改善に向けて、各エコノミーが個別に目標を設定し行動計画を策定することを奨励する。
- 我々はEWGに対し、IEAとの協力により、上記のような自発的な目標及び行動計画の策定及び進捗状況把握に役立つ、エネルギー効率指標の策定とベストプラクティスの収集を進めるよう指示する。
- 我々はEWGに対し、エネルギー効率についての政策及び措置に関する情報共有、効果的なエネルギー効率改善アプローチの特定及びエネルギー効率目標に向けた進捗状況のレビューに関する作業を強化するよう指示する。
- 我々はAPECエコノミーに対し、APECエネルギー基準情報システム(ESIS)に貢献し、またこれを活用することを奨励する。
(f)よりクリーンで効率のよいエネルギー技術の開発と普及
21.新たなエネルギー技術は、温室効果ガス及びその他の汚染物質を削減することによりエネルギー安全保障に対処し、温室効果ガスや他の大気汚染物質の排出低下により環境面でのメリットをもたらし得る。こうした技術の導入の展開を加速するために、
- 我々は、再生可能エネルギー、クリーンな石炭、天然ガス/LNG、及び関心のあるエコノミーにとっては原子力、を含む、よりクリーンで効率の良い発電技術の開発を奨励する。
- 我々はEWGに対し、炭素回収・貯留を含む、クリーンな化石エネルギー技術の開発を進めるよう指示する。
- 我々はEWGが、資金提供、政策及び規制の面で再生可能エネルギー・エネルギー効率に関するパートナーシップ(REEEP)と協力することを奨励する。
- 我々は、APEC21世紀再生可能エネルギー開発イニシアティブを通じての、新エネルギー・再生可能エネルギーの利用を進めていくことの重要性を認識する。
- 我々は、関心を有するエコノミーが、EWGの原子力技術アドホックグループに参加し、民生用原子力エネルギーの国境を越える影響を含む安全性、核セキュリティ、地震対策、健康問題、廃棄物処理といった側面が、適切に対処されるべく確保するよう奨励する。
- 我々は、地域の原子力保障措置の専門家による会合からの勧告に関するEWGの助言を待つ。
(g)エネルギー関連投資の誘致及び国境を越えたエネルギー貿易の促進
22.APEC地域におけるエネルギー需要を満たすためには、2030年までに少なくとも6兆米ドルの新規投資が必要となろう。こうした投資を妨げる障壁を排除することにより、大きな経済的メリットが得られる可能性がある。
- 我々は、政府、企業及び金融機関が大規模な投資判断においてエネルギー節約の価値を織り込みやすくするよう、エネルギー効率・再生可能エネルギー資金調達タスクフォースが今後も継続的に努力していくことを奨励する。
- 我々はEWGに対し、APEC地域における天然ガス供給・インフラ及び貿易ネットワークへの投資促進、LNG貿易の発展促進、エネルギー関連プロジェクトへの資金提供、そして天然ガス貿易について、ベストプラクティス原則の採用・普及状況をレビューするよう指示する。
- 我々はEWGに対し、提案されているAPECエネルギー貿易及び投資に関する研究及びラウンドテーブルに貢献するよう指示する。
- 我々は、APECエコノミーがAPECガスフォーラムの提言に対応するよう奨励する。
- 我々はEWGに対し、LNGに関する公教育・広報情報共有イニシアティブの実施を継続するよう指示する。
- 我々はEWGに対し、天然ガスに関するデータ収集を改善するべく、協力作業を継続するよう指示する。
(h)APECエネルギー・ピア・レビュー・メカニズム
23.関心のあるAPECエコノミーが、エネルギー安全保障及び環境に関する目標の達成を支援する政策を策定できるよう、
- 我々はEWGに対し、当面はエネルギー効率目標の達成に向けた進展に重点を置いた、自主的なエネルギー・ピア・レビュー・メカニズムの策定を指示する。
エネルギーに関する幅広い協力の推進
24.単一のエコノミーもしくはグループとしてのAPECエコノミーの領域を超えた広がりを有するエネルギー安全保障及び環境に関する課題に対応するには、協力とパートナーシップが不可欠である。これに対応する為、
- 我々はEWGに対し、IEAを含む、他のエネルギー関係の国際フォーラムとの協力をさらに進展させるよう指示する。
- 我々は、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)の取組みを歓迎し、有望な協力分野に関するEWGからの助言を待つ。
- 我々はEWGに対し、持続可能な開発に関連する活動について、国連持続可能な開発委員会に対し引き続き報告するよう指示する。
注1:アジア太平洋エネルギー研究センター「APEC Energy Demand and Supply Outlook 2006」
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