7 地域協力・地域間協力
世界の活力の中核であるインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現し、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくことは重要である。こうした観点から、日本は、日米同盟を基軸に、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、インド、太平洋島嶼国、欧州の同志国などとも連携しながら、日米豪印、日米韓、日米比、日米豪を始めとする多国間協力の枠組みや、日・ASEAN、日・メコン、ASEAN+3、EAS、ARF、APECなどの多様な地域協力枠組みを通じ、FOIPの実現に向けた取組を戦略的に推進してきている。
特に、日本は、2019年にASEANが策定し、FOIPと開放性、透明性、包摂性、国際法の尊重といった本質的な原則を共有する「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」(34)を一貫して支持しており、その主流化を後押ししている。日本は、引き続き、ASEANの中心性と一体性を尊重しつつ、FOIPとAOIPの掲げる原則に資する具体的な協力を実施することで、インド太平洋地域全体の安定と繁栄に寄与していく考えである。
(1)東南アジア諸国連合(ASEAN)情勢全般
インド太平洋の中心という地政学的要衝に位置するASEANは、FOIP実現の要である。2019年には、ASEANのインド太平洋地域への関与の指針であり、FOIPと本質的な原則を共有するAOIPが採択された。また、ASEANは、地域協力の中心としても重要な役割を担っており、ASEAN+3、EAS、ARFなど多層的な枠組みを主導している。
ASEANは、その設立の経緯から共同体の構築を目指しており、2015年に「ASEAN共同体」の設立を宣言し、「ASEAN共同体ビジョン2025」に沿って統合の深化を図ってきたが、共同体発足10周年の節目として、5月のASEAN首脳会議において、同ビジョンを引き継ぐ「ASEAN共同体ビジョン2045」を採択した。また、10月には東ティモールが正式に加盟し、ASEANは、「ASEAN共同体ビジョン2045」の実施も通じて、一層の統合深化を図っている。
経済面では、ASEANは、以前から製造業を中心とする日本企業の重要な生産拠点となってきたが、近年では、活力ある世界の成長センター、拡大する消費市場として注目を集めている。また、日本との日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定を始め、域外国とのFTA(35)や地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などの締結を通じ、地域における自由貿易と、緊密な経済関係構築の中心となっている。
(2)南シナ海をめぐる問題
南シナ海においては、領有権をめぐる問題がある中、中国が、係争地形の軍事化(196ページ 第3章第1節3(3)エ参照)や沿岸国などに対する放水銃の使用や衝突などの危険な操船を始め、法の支配や開放性に逆行する力又は威圧による一方的な現状変更の試みや地域の緊張を高める危険で威圧的な行動を継続している。また、中国は、比中仲裁判断(36)の受入れを引き続き拒否し、国連海洋法条約(UNCLOS)と整合的でない海洋権益に関する主張を続けている。
南シナ海をめぐる問題は、紛争当事国だけでなく、地域の平和と安定に直結する国際社会全体の正当な関心事項であるとの立場から、日本は国際社会と共に、中国による力又は威圧による一方的な現状変更の試みや地域の緊張を高める行為に対し、深刻な懸念や強い反対を重ねて表明している。また、日本は、「海における法の支配の三原則」(232ページ 第3章第1節6(2)参照)を貫徹すべきとの立場から、南シナ海をめぐる問題の全ての当事者が、UNCLOSを始めとする国際法に基づく紛争の平和的解決に向け努力することを極めて重視している。さらに、中国の南シナ海における主張がUNCLOSの関連規定に基づいていないこと、中国の主張する、国際法上の根拠が明らかでない「九段線」に基づく「歴史的権利」の主張がUNCLOS違反であることなどを判示した比中仲裁判断は、最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであり、当事国が同判断に従うことの重要性を繰り返し指摘してきている。
法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のためには、同盟国・同志国との連携も重要である。
2月の日米首脳会談において、両首脳は、南シナ海における中国による不法な海洋権益に関する主張、埋立地形の軍事化及び威嚇的で挑発的な活動に対する強い反対を改めて確認した。
7月の日米豪印外相会合において4大臣は、南シナ海における放水銃の危険な使用並びに衝突・妨害行動といった危険で挑発的な行動及び係争地形の軍事化に対する深刻な懸念を表明し、また、国際法と整合的な妨げられない商業活動を堅持することの重要性を改めて強調した。同月の日米比外相会合において、3大臣は、力や威圧による一方的な現状変更の試みに改めて反対し、法の支配を尊重し、航行の自由を確保していくことの重要性を確認した。
9月の日米韓外相会合の際に発出した共同声明において、3か国の閣僚は、南シナ海における不法な海洋権益に関する主張及びそのような主張を強制する試みに強く反対した。11月のG7外相会合において、G7の外相は、南シナ海における、特に力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに対する強い反対と、比中仲裁判断が重要なマイルストーン(節目)であり、当事者を拘束することを改めて表明した。また、南シナ海における危険な操船及び放水銃の使用並びに、軍事化と威圧を通じて航行及び上空飛行の自由を制限しようとする活動に対する深刻な懸念を表明した。
さらに、日本は、中国とASEANの間で長年にわたり協議が続いている南シナ海行動規範(COC)(37)については、実効的かつ実質的でUNCLOSを含む国際法と整合的で、南シナ海を利用する全てのステークホルダーの正当な権利と利益を尊重するものとなるべきとの立場を表明してきている。
(3)日・ASEAN関係
FOIP実現の要であるASEANの安定と繁栄は、地域全体の安定と繁栄にとって極めて重要である。日本は2015年のASEAN共同体設立以降、「ASEAN共同体ビジョン2025」に基づき、更なる統合に向けた取組を進めるASEANを全面的に支援してきており、今後も「ASEAN共同体ビジョン2045」に基づく支援を継続していく。
現在、2023年12月の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議において採択された「日・ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント」とその具体的な「実施計画」に基づく三つの柱((ア)「世代を超えた心と心のパートナー」として、長年の信頼関係を次世代につなぎ、強化していく、(イ)「未来の経済・社会を共創するパートナー」として、共通の課題への解決策を見いだしていく、(ウ)「平和と安定のためのパートナー」として、自由で開かれたインド太平洋を推進する)の下、幅広い分野で協力の強化が進められている。
また、AOIPに関しては、2020年に採択した「AOIP協力についての第23回日・ASEAN首脳会議共同声明」に加え、10月に採択した「AOIPの更なる推進と実行に関する第28回日・ASEAN首脳会議共同声明」を指針として、海洋協力、連結性、国連持続可能な開発目標(SDGs)、経済等というAOIPの四つの優先協力分野を中心に、具体的な協力を進めている。
7月の日・ASEAN外相会議では、岩屋外務大臣から、FOIP実現の要であり、世界の成長センターであるASEANの役割は地域全体の平和と繁栄にとり、ますます重要であること、ASEANの中心性・一体性を尊重しつつ、ASEANの更なる統合を支えていくことを述べた。地域・国際情勢についても、岩屋外務大臣は、ミャンマー情勢、東シナ海・南シナ海情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応に関する日本の立場を表明した。ASEAN各国外相からは経済分野、人的交流、安全保障分野での日本との更なる協力の強化に対する高い期待が示されたほか、朝鮮半島の非核化や拉致問題の解決の重要性について発言があった。
10月の日・ASEAN首脳会議では、高市総理大臣から、日本とASEANは「心と心」のつながる「信頼のパートナー」として関係を構築してきたことを述べ、FOIPと本質的な原則を共有するAOIPを一貫して支持しており、FOIPとAOIPの相乗効果と更なる協力の促進を確認する共同声明を採択できたことへの歓迎と、AOIPとの連携を一層強化し、日本とASEANが共に強く、豊かになるための協力を進めていくとの強い決意を表明した。さらに、ODAやOSA、安全、安心で信頼できるAIエコシステムを共に構築するための「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」の立ち上げ、地域への日本語パートナーズ(日本語補助教員)の派遣、様々な人的交流事業などに言及しつつ、2023年の日・ASEAN特別首脳会議で発表した共同ビジョン・ステートメントの三つの柱に沿って協力が着実に進展していることを説明した。

さらに、ASEAN各国首脳から、デジタル、グリーンといった新たな分野を含む日本との協力強化に加え、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定などを通じた経済連携の推進への高い期待が示されたことを受け、高市総理大臣から、日・ASEAN経済関係強化のためのワーキンググループを立ち上げ、幅広い方策について議論することを提案し、ASEAN側より歓迎された。地域・国際情勢について、高市総理大臣は、世界中のどこであれ、力又は威圧による一方的な現状変更の試みを許容してはならないと述べつつ、東シナ海、南シナ海、台湾、北朝鮮情勢、ミャンマー、中東、ウクライナ情勢に関して、日本の立場を説明した。
(4)日・メコン協力
メコン地域(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ及びベトナム)の平和と繁栄は、ASEAN域内の格差是正や地域統合にも資するものであり、日本を含む地域全体にとって極めて重要である。
7月には、2024年に続けて日・メコン外相会議をマレーシアにおいて開催し、「日・メコン協力戦略2024」を踏まえた協力の進展状況について議論し、各分野での協力を一層深化させていくことで一致した。共同議長を務めた岩屋外務大臣から、各国と二国間で進めている連結性・防災・脱炭素化・デジタル化といった協力をメコン地域の「面」でも連携・展開するとともに、組織的特殊詐欺など越境犯罪対策を強化していきたいと述べた。引き続き、日本として、様々な分野での日・メコン協力プロジェクトの実施を通じて、同地域の繁栄及び発展に貢献していく。
(5)ASEAN+3
ASEAN+3は、1997年のアジア通貨危機を契機として、ASEANに日中韓の3か国が加わる形で発足し、金融や食料安全保障などの分野を中心に発展してきた。現在では、金融、農業・食料、教育、文化、観光、保健、エネルギー、環境など24の協力分野が存在し、「ASEAN+3協力作業計画(2023-2027)」の下、各分野で更なる協力を進めている。
7月の外相会議では、岩屋外務大臣から、チェンマイ・イニシアティブ(38)における「緊急融資ファシリティ」が5月に創設に至り、パンデミックや自然災害などに対する地域の金融セーフティネットが強化されたことや、3月のミャンマーの地震に際したASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)の迅速な対応、ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)(39)やASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)(40)の取組の重要性、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を通じた能力構築やバンコク(タイ)での実務者間の情報共有の支援にも触れつつ、日本として重視する分野で取組が実施されていることを述べた。さらに、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応に係る日本の立場を説明した。
10月の首脳会議では、高市総理大臣の代理で出席した茂木外務大臣が、ASEAN+3が地域のセーフティネット構築に貢献してきたこと、金融や食料安全保障に加え、災害対応、少子高齢化、組織犯罪といった共通課題解決に大きな可能性を有していることを指摘した。また、日本が全面的に支持している「ASEAN共同体ビジョン2045」に沿ってASEAN+3での協力を更に強化していく考えを示しつつ、日本が特に重視している金融分野での協力、持続可能な社会に向けた協力、国民の安全のための協力について、それぞれASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)(41)の役割への期待、APTERR、AFSISへの貢献及び東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)(42)における取組、並びにASEAN+3各国に多大な経済被害を与えている組織犯罪に対する、UNODCを始めとする国際機関などを通じた法執行能力強化などの協力を紹介した。さらに、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮に係る日本の立場を表明した。
(6)東アジア首脳会議(EAS)
EASは、政治・安全保障・経済などの戦略的課題に関する議論及び協力を目的に、2005年に発足した。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、分断と対立が深まる地域を協調に導くためにも、首脳主導の地域のプレミア(主要な)・フォーラムとして、地域の主要国が一堂に会し、率直な議論を行うEASの重要性は一層高まっている。
7月のEAS参加国外相会議において、岩屋外務大臣は、国際情勢の厳しさと不確実性が増す中、地域を分断と対立から対話と協調に導く上で、EASの果たす役割が極めて大きいこと、日本はASEAN中心性・一体性に加え、「ASEAN共同体ビジョン2045」及びAOIPを全面的に支持しており、開放性、包摂性、透明性、ルールに基づく枠組みといった諸原則に基づき、具体的な協力を進めることを表明した。
地域・国際情勢についても、岩屋外務大臣から、東シナ海を含め、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ決して認められないこと、南シナ海で地域の緊張を高める行為が強化されていることを深刻に懸念すること、台湾海峡の平和と安定が国際社会全体にとって重要であることを強調した。また、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向けた、連携した対応の重要性を説明しつつ、拉致問題の即時解決に向け、引き続き各国の理解と協力を要請した。さらに、ミャンマー情勢、国際組織犯罪対策、中東情勢及びウクライナ情勢に関する日本の立場を説明した。
10月の第20回EASでは、高市総理大臣の代理で出席した茂木外務大臣から、日本は自由で、民主的で、人権を守り、法の支配を尊ぶ平和国家として地域の平和と繁栄に貢献してきており、この平和国家としての歩みの延長線上にあるFOIPの推進を通じて、これからも地域の平和と安定、繁栄に取り組んでいくことを表明した。また、地域を対話と協調に導くためにも、法の支配に基づくFOIPを推進し、EASを始めとするASEAN主導の地域枠組みに積極的に貢献していくことを述べた。

(10月27日、マレーシア・クアラルンプール)
地域・国際情勢については、茂木外務大臣から、東シナ海を含む世界中のどこであれ、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは決して認められないこと、南シナ海で危険で威圧的な活動が強化されていることを深刻に懸念しており、海における法の支配の貫徹を支持する観点から、紛争当事国による比中仲裁判断の遵守と紛争の平和的解決を望んでいること、台湾海峡の平和と安定は国際社会全体にとって重要であることを強調した。また、北朝鮮は、暗号資産窃取も資金源に核・ミサイル能力を向上させ、露朝軍事協力を通じ実戦経験を積んでおり、その脅威が日々増大していることを踏まえつつ、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化のため、連携した対応を改めて呼びかけるとともに、急務である北朝鮮による拉致問題の即時解決について、引き続き各国の理解と協力を要請した。中東情勢についても、中東の平和と安定が日本にとっても極めて重要であり、ガザの人道状況の改善や早期復旧・復興、そして二国家解決の実現に向け、積極的な役割を果たしていくとの日本の立場を説明した。加えて、ミャンマー情勢に対する深刻な懸念や、カンボジア・タイ停戦合意を仲介した米国及びマレーシアの外交努力への敬意を表明しつつ、越境犯罪やウクライナ情勢に関しても日本の立場を説明した。
(7)日中韓協力
日中韓3か国は、地理的な近接性と歴史的な深いつながりを有しており、世界経済において重要な役割を果たし、東アジア地域の繁栄を牽(けん)引する原動力となっている。3か国が人的交流や相互理解を促進し、国際社会の様々な課題に協力して取り組むことは、大きな潜在性を秘めている。
日本は、2024年5月のサミット後に韓国から議長国を引き継ぎ、3月には、東京において、第11回日中韓外相会議を開催した。岩屋外務大臣からは、地域・国際社会の平和と繁栄に大きな影響力と責任を有している3か国が未来志向の交流と協力を推進していく意義は大きいと述べ、中韓両外相からも日中韓協力の重要性に関する発言があった。3外相は、(1)相互理解の推進、(2)暮らしを創り、守るための協力、(3)全世代による共通の課題解決の三つの柱の下、未来志向の協力を進め、次回の日中韓サミットに向けて具体的成果を得るための調整を加速することで一致した。また、3外相は、北朝鮮情勢、ウクライナ情勢に加え、ASEAN・APECといった東アジア協力などの地域・国際情勢について議論を行い、岩屋外務大臣からは拉致問題の即時解決に向けた引き続きの理解と協力を改めて求めた。

(3月22日、東京)
外相会議に加え、2025年には日中韓の枠組みで計七つの閣僚級会合を実施し、そのうち五つの会合で共同声明及び共同声明に類する文書を採択した。12月には、第18回日中韓三国保健大臣会合が開催され、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のためのAIとデジタルヘルス」、「健康な高齢化の推進」及び「メンタルヘルス」をテーマとして、意見交換を行い、共同声明が採択された。
日中韓サミットについては、2025年に調整がつかなかったことから、引き続き日本の議長下で、適切な時期での日本における開催を調整中である。
(8)アジア太平洋経済協力(APEC)(284ページ 第3章第3節3(5)参照)
APECは、アジア大洋州地域の21の国・地域(エコノミー)で構成されており、同地域の持続可能な成長と繁栄を目的とした、経済分野の協力枠組みである。国際社会の成長と繁栄の中心であるアジア太平洋地域における経済協力の促進と信頼関係の強化は、日本の一層の発展を目指す上で極めて重要である。
10月末から慶州(キョンジュ)(韓国)で開催されたAPEC首脳会議では首脳宣言である「慶州宣言」が採択された。首脳会議に出席した高市総理大臣は、ルールに基づく自由で公正な国際経済秩序や世界貿易機関(WTO)改革の推進などの重要性について発信した。また、日本が2031年のAPEC議長を務めることが決定された。
(9)南アジア地域協力連合(SAARC)(43)
SAARCは、南アジア諸国民の福祉の増進、経済社会開発及び文化面での協力、協調などを目的として、1985年に正式発足した。2025年12月時点で、加盟国はインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ、アフガニスタンの8か国、オブザーバーは日本を含む9か国・機関で、首脳会議や閣僚理事会(外相会合)などを通じ、経済、社会、文化などの分野を中心に、比較的穏やかな地域協力の枠組みとして協力を行ってきている。ただし、首脳会議は2014年、閣僚理事会は2016年を最後に開かれていない。日本は、SAARCとの間の青少年交流の一環として、2025年末までに8,956人を招へいしている。
(10)環インド洋連合(IORA)(44)
IORAは、環インド洋地域における経済面での協力推進を主な目的とした地域機構であり、日本は1999年から対話パートナー国として参加している。

―ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)との協力を通じた強靱(じん)な地域の構築を目指して―
2004年12月に地域に大きな傷跡を残したスマトラ沖地震が発生してから20年余りが経過しました。この地震を契機に、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、地域全体として防災や災害対策に取り組んできました。
地震発生翌年の2005年、ASEANは地域における防災・緊急対応のための政策の基本となる、ASEAN防災緊急対応協定(AADMER)1を策定します。同協定の中で、現在東南アジア地域の防災対応の調整における司令塔として活躍するASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)2の設立が定められました。
2011年の運用開始以降、AHAセンターは地域の防災対応を進める上で欠くことのできない存在として役割を拡大しています。日本はその司令塔機能を強化するため、設立から今日に至るまで、<1>災害のモニタリング(緊急オペレーションセンターやICT機器の整備)、<2>事前準備・緊急対応(緊急物資の備蓄・放出システムの整備、緊急対応評価チームの訓練)、<3>防災関連の人材育成(各国防災担当機関の幹部育成)の三つの大きな柱に焦点を当て、日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて同センターの活動を力強く支援してきました。そのような日本の貢献に対し、日ASEAN防災閣僚級会合や日ASEAN首脳会議などにおいて、ASEAN各国から毎年高い評価と感謝の意が示されています。
日ASEAN間の防災協力の積上げが大きな成果を上げたのが、2025年3月28日にミャンマー中部で発生した地震に際する対応です。AHAセンターは迅速に現地入りし、翌日には活動を開始しました。日本の支援で訓練を積んだASEAN10か国のメンバーで構成される緊急対応評価チームが、被災状況に係る迅速なニーズ・影響調査や被災コミュニティへの聞き取りを通じて現場のニーズを確認したり、支援物資の受け取り・輸送調整を行ったりするなど、幅広く活躍しました。地震発生から2日後には、日本が支援してきた緊急物資の備蓄・放出システムを通じて支援物資が早くもミャンマーに送られ、その後被災コミュニティの元に届けられています。一時的なシェルターに避難中の被災者から、「家庭用キットを受け取ったことは、私たちの家庭にとって本当に天からの恵みでした。主婦として、私はキットの中の全ての物品が信じられないほど役に立つと感じました。」という声が聞かれたことは、この防災分野での協力が被災者にとって真に役立つものであることを示しています。
このような協力は、災害に対するレジリエンス(耐性、回復力)を高め、人道サプライチェーンの強靱(じん)化にもつながるなど、地域の安定と繁栄を目指す上で欠かすことができません。これからも、ASEANと共に、より強靱で豊かな地域を作り上げるために協力を進めていきます。


(写真提供:AHAセンター)
3月28日、ミャンマー第2の都市である中部マンダレー付近を震源とするマグニチュード7.7の大地震が発生し、ミャンマー及びタイで多数の死傷者が出ました。東南アジアにおける地震被害は自然災害の多い日本にとって他人事ではなく、現地の人々に寄り添った支援を行いました。
ミャンマーでは、2021年2月1日のミャンマー国軍によるクーデター以降、人道状況が悪化し続ける中、今回の地震により人々の生活が甚大なる被害を受けました。日本政府は、国際緊急援助隊(JDR:Japan Disaster Relief Team)医療チームを被災地に派遣し、20日間にわたる活動を通じて延べ2,100人の方々を診療しました。その間、JDR自衛隊部隊によって、人道支援活動を継続するために必要な薬品・検査薬を含む医療資機材等が活動地へ空輸されました。JDR医療チームは、「ミャンマーの被災者の方たちに質の高い、きめ細かな医療を届けたのはもちろんのこと、医療行為を通じて同じ被災経験を持つ日本人からの支援の気持ちも届けてきました。辛く、不自由な生活の中にもかかわらず、ミャンマーの方々から感謝の言葉や食べ物等の差し入れが届くなど、現地の人に支えられた活動となりました。」と、現地での活動について報告しました。そのほか、国連機関を通じた被災者への支援物資(水・浄水器)等の配布、また、草の根・人間の安全保障無償資金協力によって、被災した地域の学校への給水タンクやテント等の緊急支援物資の供与のほか、合計600万ドル(約9億円)規模の緊急無償資金協力を実施しました。
さらに、タイにおいては、タイ政府から道路及び建築分野の安全・耐震対策のための専門家派遣の要請がありました。同要請に基づき、日本政府は3次にわたりタイに道路・建築分野の専門家チームを派遣しました。また6月には、タイ運輸省で地震後のインフラの安全点検などに関する日タイ技術協力会議を開催しました。
1 AADMER:ASEAN Agreement on Disaster Management and Emergency Response
2 AHAセンター:ASEAN Coordinating Centre for Humanitarian Assistance on Disaster Management
(34) AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific
2019年6月、ASEAN首脳会議において採択された、ASEANのインド太平洋地域への関与の指針。地域におけるASEAN中心性の強化に加え、開放性、透明性、包摂性、ルールに基づく枠組み、グッド・ガバナンス、主権の尊重、不干渉、既存の協力枠組みとの補完性、平等、相互尊重、相互信頼、互恵、国連憲章及び国連海洋法条約その他の関連する国連条約を含む国際法の尊重といった原則を基礎として、海洋協力、連結性、SDGs及び経済などの分野での協力の推進を掲げている。
(35) 通常、FTAは自由貿易協定(free trade agreement)を指すものの、ASEANは自由貿易地域(free trade area)をFTAと呼称している。
(36) 南シナ海をめぐる同国と中国との間の紛争に関し、2013年1月、フィリピン政府が、UNCLOSに基づく仲裁手続を開始し、2016年7月12日に、同手続において組織された仲裁裁判所が最終的な判断を示した。日本は、外務大臣談話を発出し、「国連海洋法条約の規定に基づき、仲裁判断は最終的であり紛争当事国を法的に拘束するので、当事国は今回の仲裁判断に従う必要があり、これによって、今後、南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」との立場を表明してきている。
(37) COC:Code of Conduct in the South China Sea
(38) 1997年から98年のアジア通貨危機を受けて、2000年5月の第2回ASEAN+3財務大臣会談(タイ・チェンマイ)で、東アジア域内における通貨危機の再発防止を目的として合意された枠組み。金融危機の地域的な連鎖と拡大を防ぐため、外貨支払に支障を来した国に対し、通貨スワップ(交換)により短期の米ドル資金を現地通貨の対価として融通するもの
(39) 食料安全保障の強化と貧困の撲滅を目的に、大規模災害等の緊急事態に備える枠組み。台風、洪水等の緊急事態の被害者への支援や貧困緩和のための支援を実施
(40) 地域の食料安全保障の強化を目的に、農業統計データベースの整備、人材育成等を実施
(41) 地域経済の安定を目的に、域内経済の分析やASEAN+3の国々への政策提言、チェンマイ・イニシアティブの運営、メンバー国政府への技術支援を実施
(42) 地域協力への知的支援や地域の連帯感の醸成を目的とした政府公認のシンクタンクのネットワーク。年次総会で採択される政策提言はASEAN+3首脳会議で取り上げられる。
(43) SAARC:South Asian Association for Regional Cooperation
(44) IORA:Indian Ocean Rim Association
