2 東部アフリカ地域
(1)ウガンダ
ウガンダは、ムセベニ大統領による長期政権の下、安定した内政を背景とした経済成長を維持し、東部アフリカの主要国として地域の安定に貢献している。同国北部に滞在する南スーダン難民も含め、難民の受入れも積極的に行っている。3月のTICAD閣僚会談及び8月のTICAD 8で外相会合を実施し、アフリカの食料安全保障などについて議論を行った。
(2)エチオピア
エチオピアは、アフリカ連合(AU)の本部が所在し、アフリカ政治において重要な位置を占めている。経済面では、アフリカ第2位の人口(1.1億人)を有し、2004年から2019年まで10%前後の高い成長率を記録した(2020年は6%)。
2020年10月から北部エチオピアにおいて連邦政府とティグライ人民解放戦線(TPLF)の間で武力衝突が続いていたが、2022年11月にAUなどの仲介により政府とTPLFの間で和平合意が署名された。今後は全ての当事者が合意を誠実に履行することが重要であり、日本は「アフリカの角」担当大使の活動も通じて、同志国と協力しつつ和平合意の実現を後押ししていく。
・貿易:輸出先としてかつては米国が大きなシェアを占めていたが、近年中国のシェアが首位に。アンゴラやナイジェリアなどの資源国からの米国向け輸出が減少し、中国が新たな輸出先として存在感を増している。輸入面では中国は南アフリカやナイジェリアなど地域大国との取引が大きい。2021年ではこの地域の輸出に占めるシェアにおいて日本は第10位、輸入では第11位2。
・投資:域内シェア最大のモーリシャス向け直接投資で首位となる米国と、旧宗主国として、南アフリカ、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダ、ガーナなどで目立つ英国のシェアが拮抗。中国はニジェールやザンビアで存在感があるが地域全体では米英には及ばない。インドもモーリシャスなどで一定のプレゼンスを有する。
・金融:かつては特定の国への偏りはなく、様々な国への債務が存在していたが、2010年代に入りアンゴラなどで対中債務が急増。2021年では日本は第5位の二国間債権国。

1 本データに関する留意事項について179ページ参照
2 本グラフでは日米中など一部の国のみ表示しているが、文中の順位はデータが入手可能な全ての国・地域(当該地域の国・地域を含む。)における順位
(3)エリトリア
エリトリアは、インド洋とスエズ運河・欧州を結ぶ国際航路である紅海沿岸に位置する国である。鉱物・水産・観光資源に恵まれているが、国際的に孤立している。エチオピア北部情勢を含め地域の安定にエリトリアの果たす役割は重要である。日本は、1月、在エリトリア兼勤駐在官事務所を開設し、8月のTICAD 8の際に実施された日・エリトリア外相会談において、地域の平和と安定のための協力について働きかけた。
(4)ケニア
ケニアは、地域経済の中心を担っており、エチオピア、ソマリア、コンゴ民主共和国の紛争の解決にも尽力するなど、東アフリカの安定勢力として地域の平和と安定のための重要なパートナーであり、日本も「アフリカの角」担当大使を通じて協力している。大統領選挙の結果、9月に新たにウィリアム・ルト大統領が就任した。日本から、牧原秀樹衆議院議員が総理特使として大統領就任式に参加した。
日本は、3月、同国との首脳会談でウクライナ情勢について緊密に連携して対処していくことを確認した。経済・ビジネス面では、5月に日・アフリカ官民経済フォーラムをケニアで実施し、外務省から鈴木貴子外務副大臣が参加して関係強化に尽力した。さらに、8月のTICAD 8及び11月のG7外相会合に際して外相会談を実施し、アフリカにおける食料安全保障などについて議論を行い、両国関係の一層の発展に取り組んでいくことで一致した。

(5)コモロ連合
コモロ連合は、日本と同じ海洋国として「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を支持しているパートナーである。2023年2月からAU議長国を務めている。
8月にはTICAD 8の機会に日・コモロ首脳会談を行い、開発金融の透明性・公正性の重要性について確認した。9月の故安倍晋三国葬儀にもアザリ大統領とドイヒール外相が参列し、同国との首脳会談が実現した。
(6)ジブチ
ジブチは、インド洋を挟んでヨーロッパとアジア諸国を結ぶ国際安全保障上の要衝に位置しており、FOIPを実現する上で重要なパートナーである。世界貿易の大動脈に面し、地域の物流ハブを目指している。日本は、2011年から海賊対処行動のための自衛隊の拠点を設置している。在外邦人などの保護・輸送など、この地域における運用基盤の強化などのため連携していくほか、「アフリカの角」担当大使を通じて今後一層関与を深めていく。8月には、TICAD 8の機会にアブドゥルカデル首相との間で首脳会談が行われ、海賊対策を含む地域の安定について議論を行った。
(7)スーダン
スーダンは、サブサハラ・アフリカ第2位の国土面積を持ち、原油、鉱物資源、ナイル川からの水資源や肥沃な耕地に恵まれている。同国は潜在的な経済発展の可能性を秘めているが、独立以来、合計約40年に及ぶ長い内戦によって発展が妨げられてきた。
2019年4月にバシール政権が崩壊し、同年8月には新暫定政府が発足、2020年10月にはスーダン革命戦線との和平協定が署名された。しかし、2021年10月25日に国軍による軍事的政権奪取が発生。日本は同志国と共に早期の民政移管の実現を求めている。
(8)セーシェル
セーシェルは、インド洋の安全保障及び経済的に重要なシーレーン上に位置する、FOIPの実現のために重要なパートナーであり、観光・水産資源に恵まれた島嶼(しょ)国である。8月のTICAD 8にはラムカラワン大統領が参加し、林外務大臣との間で会談を行い、アフリカの食糧安全保障の強化などについて議論を行った。日本は、2023年度には現地に日本大使館を新設する予定である。
(9)ソマリア
ソマリアは、2022年5月、大統領選挙の結果、ハッサン大統領が就任し、平和裡(り)に政権移行が完了した。干ばつや洪水などの人道危機の発生、アル・シャバーブによる活動が継続している中で、日本は同大統領による平和の定着に向けた取組を支援している。8月、林外務大臣とTICAD 8に参加したバレ首相の会談で、今後の更なる協力を確認した。11月には、国連世界食糧計画(WFP)を通じウクライナ産小麦をソマリアに輸送・配布するため、政府は1,400万ドルの緊急無償資金協力を決定した。
(10)タンザニア
タンザニアは、安定した内政運営と経済成長に支えられた東アフリカ交易の要衝であり、2021年4月に就任したサミア大統領の下、投資・ビジネス機会の拡大が期待されている。
8月のTICAD 8及び9月の故安倍晋三国葬儀の際に実施されたマジャリワ首相との会談でも、更なる経済関係の発展に向けた協力を確認した。
(11)ブルンジ
ブルンジは、アフリカ大陸中央部に位置する内陸国であり、2020年5月に就任したンダイシミエ大統領の下、近隣諸国との善隣友好、西側諸国との経済協力を重視した現実的全方位外交を展開している。林外務大臣は、8月のTICAD 8に参加したンダイシミエ大統領、9月に故安倍晋三国葬儀に参列したシンギロ外相と会談し、地域の平和と安定について議論を行った。
(12)マダガスカル
マダガスカルは、アフリカ東南部沖に位置する島国で、ニッケル・コバルト地金の一貫生産事業を日本企業が運営するなど、鉱物資源供給先としても日本にとって重要な国である。
8月には、林外務大臣とTICAD 8に参加したラジョリナ大統領が会談し、アフリカの食糧安全保障の強化や経済の脆(ぜい)弱性について議論を行った。
(13)南スーダン
南スーダンは、2013年12月の衝突以降混乱が続いたが、2018年9月には再活性化された衝突解決合意が署名された。
日本は、2022年5月に完成したナイル架橋などの事業を通じて南スーダンの平和と安定に向けた取組を支援しており、8月のTICAD 8に参加したアブデルバギ副大統領との首脳会談でも岸田総理大臣から同国の国造りを引き続き支援していくと表明した。
(14)モーリシャス
モーリシャスは、広大な排他的経済水域(EEZ)を抱える、日本と同じ海洋国であり、FOIP実現のためのパートナーである。2020年に発生した貨物船ワカシオ油流出事故への対応における協力を通じ、日本とモーリシャスの関係は一層緊密化している。8月のTICAD 8に際し実施された外相会談で、両国は「二国間ビジネス環境改善委員会」の立上げなどを通じて、経済関係を発展させていくことを確認した。
(15)ルワンダ
ルワンダではカガメ大統領の下、経済開発及び国民融和に向けた努力が続けられている。近年、特に情報通信技術分野において急速な発展が見られ、スタートアップを含む日本企業の進出も増加しているほか、宇宙分野でも協力などが進んでいる。
日本側の経済的関心も踏まえ、5月には鈴木外務副大臣がルワンダを訪問し、ビルタ外務・国際協力相と会談したほか、11月のG20サミットに際し実施された首脳会談でも二国間関係を一層深化させていくことを確認した。

(11月14日、インドネシア・バリ 写真提供:内閣広報室)