3 南部アフリカ地域
(1)アンゴラ
アンゴラでは、民主主義が定着しつつあり、安定した政治基盤を背景として、地域の安定に重要な役割を果たしている。アフリカ屈指の産油国で、ダイヤモンドなどの鉱物資源にも富むほか、漁業及び農業分野などでも高いポテンシャルを有する。ロウレンソ大統領は、経済の多角化・安定化を目指し、ビジネス環境の改善に積極的に取り組んでおり、9月の再選時には、日本から櫻田義孝衆議院議員が総理特使として就任式に出席した。3月のTICAD閣僚会合の際に実施した日・アンゴラ外相会談では、ウクライナ情勢による食料価格の高騰やサプライチェーンへの影響について議論した。
(2)エスワティニ
エスワティニは、国王であるムスワティ3世の下、アフリカ唯一の絶対君主制を維持している。2018年に国名を「スワジランド王国」から「エスワティニ王国」に変更した。アフリカで唯一台湾との外交関係を有する国である。
8月、林外務大臣は、TICAD 8に参加したムスワティ3世国王と会談を行い、9月の故安倍晋三国葬儀にはマスク副首相が参列するなど、ハイレベルの政治交流が活性化している。

(8月27日、チュニジア・チュニス)
(3)ザンビア
豊富な鉱物資源を有するザンビアは、近年では鉱物依存のモノカルチャー(単一産品)経済から脱却するため、経済の多角化を目指している。2020年11月、ユーロ建て国債の利払い不履行により新型コロナ流行後アフリカ初のデフォルトに陥り、2021年、民主的な政権交代を経て誕生したヒチレマ政権の下、経済再建を最優先課題とし、国際協調による債務再編に取り組んでおり、日本も同志国と共に支援している。2022年8月には国際通貨基金(IMF)理事会で支援プログラムが承認された。同月、林外務大臣はTICAD 8に参加したムソコトワネ財務・国家計画相と会談し、債務健全化について議論を行った。
(4)ジンバブエ
ジンバブエは、11世紀から15世紀にかけて、大規模な石造建築物群「グレート・ジンバブエ遺跡」を残した歴代の王国が栄えた内陸国であり、日本は1980年の独立以来外交関係を有する。欧米からは特定企業・個人の資産凍結や渡航禁止などの制裁措置を受けており、経済の運営に課題を抱えている。9月に行われた故安倍晋三国葬儀には、モハディ・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(与党)副党首が参列し、岸田総理大臣を表敬した。
(5)ナミビア
ナミビアは、豊富な海洋・鉱物資源を有しており、南部アフリカ地域の大西洋側の物流ハブとして、資源開発やエネルギー分野における貿易・投資の拡大が見込まれる。貧困・格差問題、高失業率、腐敗防止、社会インフラ整備不足などの課題を抱えているが、1990年の独立以降、安定した政治状況にあり、南部アフリカ地域協力にも積極的である。
(6)ボツワナ
ボツワナは、独立以来、政情が安定的に推移するグッド・ガバナンス(良い統治)国であり、ダイヤモンドなど鉱物資源に富む。2013年にアフリカで初めて地上デジタル放送日本方式(ISDB-T方式)を採用し、2022年には日本方式の導入国で初めて地上デジタル放送への完全移行を達成した。近年ではダイヤモンド依存型経済からの脱却を目指し、産業の多角化と貧困削減に力を入れている。
(7)マラウイ
マラウイは1964年の独立以来、比較的安定した内政を維持しており、現在はチャクウェラ大統領の下、周辺諸国との友好外交に努めている。財政再建や農業の生産性向上、一次農産品依存の経済体質が課題となっている。
(8)南アフリカ
アフリカの経済大国である南アフリカは、ビジネス展開の拠点として、日本を含む外国企業から引き続き関心を集めており、アフリカ唯一のG20メンバーとして国際場裡(り)でも存在感を示している。今後、エネルギーや鉱物資源をめぐる協力の深化も期待されている。日本は、6月のG7サミットの際に同国と首脳会談を実施したほか、7月のG20外相会合や、10月に東京で9年ぶりに開催された日・南アフリカ・パートナーシップ・フォーラムにおいて、外相会談を実施し、二国間関係や国際情勢について議論を重ねた。9月に行われた故安倍晋三国葬儀にもシスル観光相が参列するなど、2022年はハイレベルの政治交流が活性化した。
(9)モザンビーク
モザンビークは、南東部アフリカの玄関口としてFOIPを西側から望む要衝である。ニュシ大統領の下、政治的な安定が確保され、石炭や天然ガスといった豊かな天然資源を背景に、外国資本による開発が進展している。日本企業も同国北部における液化天然ガス(LNG)開発事業に参画しているが、周辺地域における武装集団による襲撃事件を背景とした治安の悪化により、現在事業が中断されており、再開に向け、日本としても同志国と協力している。2023年からは日本と共に国連安保理非常任理事国を務めている。
同国のエネルギー安全保障上の重要性も念頭に、日本として、避難民に対する食糧支援などの人道支援や、地域住民の経済的自立のための開発支援を行ってきている。6月には、小田原潔外務副大臣が訪問中のニューヨークでマカモ外務協力相と会談した。
(10)レソト
国土の大部分が山岳高地の内陸国であるレソトは、自然資源を活用して建設されたカツェダムのダム湖でニジマスの養殖が行われ、日本への主要な輸出品となっている。10月に国民議会選挙が平穏かつ円滑に実施され、マテカネ新首相が就任している。
日本は、8月のTICAD 8の際に外相会談を実施したほか、岸田総理大臣が、9月の故安倍晋三国葬儀に参列したマジョロ首相と首脳会談を実施し、日本からの投資促進を通じた二国間関係の更なる発展に向け議論を行った。