外交青書・白書
慰安婦問題 参考資料

慰安婦問題 参考資料

衆議院議員高市早苗君提出「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問に対する答弁書(1997年12月16日)

衆議院議員高市早苗君提出「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問に対する答弁書(1997年12月16日)QRコード
一の1について

御指摘の教科書の検定の時点は、平成七年四月に検定の申請の受理を行った時から、平成八年二月に検定の決定を行うまでの期間である。

一の2及び3について

御指摘の教科書の記述に係る検定については、教科用図書検定調査審議会(以下「検定審議会」という。)において、検定当時に発表されていた調査研究をも参考としつつ、平成五年八月の政府調査結果(「いわゆる従軍慰安婦問題について」)(以下「政府調査結果」という。)に照らして審議されたところである。

一の4について

教科書の検定に関しては、検定審査終了後、申請図書、検定合格した見本本、検定意見箇所の一覧、主な検定意見の概要及び不合格となった図書についての不合格理由書を公開しているところである。

検定審議会教科用図書検定調査分科会の審議内容については、この分科会が検定の決定又は検定審査不合格の決定という行政処分に係る審議を行っており、委員の自由な議論を確保し審査の公正を担保する等の観点から、従来より非公開としているところである。

二の1について

検定当時においては、「慰安婦」の問題に関する数多くの出版物等が存在していたと認識している。

二の2について

いわゆる従軍慰安婦問題に関する政府調査においては、発見された公文書等には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接的に示すような記述は見られなかった。他方、調査に当たっては、各種の証言集における記述、大韓民国における元慰安婦に対する証言聴取の結果等も参考としており、これらを総合的に判断した結果、政府調査結果の内容となったものである。

政府調査結果は、政府として全力を挙げて誠実に調査した結果を全体的に取りまとめたものであり、政府としては、これまでのところ、政府調査結果の内容を変更すべき事由はないものと考えている。

二の3について

中学校教科書に係る次回の検定審議においては、著作者又は発行者によって文部大臣に検定申請された図書について、検定審議会において当該検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議されるものと考える。

二の4について

「慰安婦」の問題については、御指摘のような見解があることは承知している。このため、「慰安婦」に関する記述についても、著作者又は発行者によって文部大臣に検定申請された図書について、検定審議会において検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議が行われ、その結果、この記述が認められたところである。

三の1及び3並びに四の1及び2について

「従軍慰安婦」という用語については、検定審議会における審議を踏まえ、複数の辞書等にもその用語が収録されていることを始め、広く社会一般に用いられている状況にあることから、教科書においてもその用語を許容しているところである。

三の2について

「従軍慰安婦」という用語については、検定審議会における審議を踏まえ、複数の辞書等にもその用語が収録されていることを始め、広く社会一般に用いられている状況にあることから、教科書においてもその用語を許容しているところであり、このことは、辞書の記述が正確であることに責任を持つことを意味するものではない。

三の4及び5について

歴史教科書の検定は、特定の用語がいつから広く社会一般に用いられていたのかを審議するものではなく、著作者又は発行者によって文部大臣に検定申請された図書について、検定審議会において検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議された結果に基づいて行われるものである。

平成九年度から使用されている中学校社会科(歴史的分野)の教科書の検定の時点においては、「従軍慰安婦」という用語は、辞書等にも収録されるなど、広く社会一般に用いられているものと認識していた。

四の3について

平成九年度から使用されている中学校社会科(歴史的分野)の教科書の中で、第二次世界大戦中のこととして、再質問主意書に例示されているもの以外に「従軍」を付した用語を使用しているものはない。

なお、辞書等の中には、例えば「従軍作家」という用語を収録しているものもあるところである。

五の1について

検定審議会においては、「慰安婦」の問題は先の大戦の悲惨な状況を学習する際の歴史的事象の一つと判断されたところである。

五の2について

「慰安婦」の問題は、性の問題とも関連を有すると考えるが、歴史教科書においては、歴史的事象の一つとして扱われているものである。

五の3から5までについて

中学校の段階においては、一般的に、心身の発達が著しく、性的にも成熟し、また、知的な面でも抽象的、論理的思考が発達するとともに、社会性なども発達してくると言われており、検定審議会において、「慰安婦」の問題を先の大戦の悲惨な状況を学習する際の歴史的事象の一つとして理解することが可能な発達段階と判断されたものである。

なお、小学校における、基本的人権の尊重、男女の体のつくりや年齢による体の変化などの学習の上に立って、中学校においては、例えば、男女の人間関係の在り方や、心身の機能の発達を学習する中で身体各器官の機能や身体の発達に伴う二次性徴の出現などについて学習することとされている。

「慰安婦」の問題については、先の大戦の悲惨な状況を学習する中で扱われることとなるが、生徒から質問があった場合、教員は質問の趣旨などを踏まえ、それぞれに応じて対応すべきものと考える。

五の6について

前回の教科書検定の時期と平成九年度から使用されている教科書の検定の時期とを比較して、中学生の心身の発達段階に大きな変化があったとは考えていない。

五の7について

平成九年度から使用されている中学校社会科(歴史的分野)の教科書については、著作者又は発行者によって文部大臣に検定申請された図書について、義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成元年文部省告示第四十三号)の定めるところを検定の基準として、検定審議会において検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議された結果に基づいて検定が行われたものであり、中学校学習指導要領(平成元年文部省告示第二十五号)に定める社会科及び歴史的分野の目標に照らして適切なものであると考える。

歴史教育においては、教科書を主たる教材として使用しつつ、客観的、学問的な研究成果を踏まえて、事実は事実として正しく教えるとともに、生徒が歴史の教訓を未来に生かし、我が国の歴史や文化を大切にし、日本人としての自覚を持って、国際社会の中で生きていくことができるよう、指導の充実を図ることが重要であると考える。

日韓両外相共同記者発表(2015年12月)

日韓両外相共同記者発表(2015年12月)QRコード
1 岸田外務大臣

日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。

(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。

安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯(しんし)に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

(3)日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。

あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

2 尹(ユン)外交部長官

韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。

(1)韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記1.(2)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。

(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。

(3)韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査
(2016年2月16日、ジュネーブ)
(質疑応答部分の杉山外務審議官発言概要)

女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査(2016年2月16日、ジュネーブ)QRコード

2016年2月16日、国連ジュネーブ本部において、女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査が行われたところ、質疑応答部分の杉山外務審議官の発言概要は以下のとおり。

1 女子差別撤廃条約の国内適用

(ブルン委員からの質問に応え、)

我が国は、日本国憲法第98条第2項に基づき、我が国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することとしており、条約は国内法に優位するものと考えられている。

2 慰安婦問題

(ホフマイスター委員からの質問に応え、)

書面でも回答したとおり、日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった。

「慰安婦が強制連行された」という見方が広く流布された原因は、1983年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造して発表したためである。この本の内容は、当時、大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた。しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されている。

その証拠に、朝日新聞自身も、2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪している。

また、「20万人」という数字も、具体的裏付けがない数字である。朝日新聞は、2014年8月5日付けの記事で、「『女子挺身(ていしん)隊』とは戦時下の日本内地や旧植民地の朝鮮・台湾で、女性を労働力として動員するために組織された『女子勤労挺身隊』を指す。(中略)目的は労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別だ。」とした上で、「20万人」との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、ここでいう慰安婦を誤って混同したことにあると自ら認めている。

なお、「性奴隷」といった表現は事実に反する。

日韓両政府間では、慰安婦問題の早期妥結に向けて真剣に協議を行ってきたところであるが、先ほど申し上げたとおり、昨年12月28日、ソウルにて日韓外相会談が開催され、日韓外相間で本件につき妥結に至り、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることが確認された。同日後刻、日韓首脳電話会談が行われ、両首脳はこの合意に至ったことを確認し、評価をした。

冒頭申し上げたとおり、このときの日韓合意を表す資料は、書面の回答に添付されているので、ここでその内容の詳細を繰り返して説明することはしない。

日本政府は、これまでも「アジア女性基金」等を通じて本問題に真剣に取り組んできた。今後、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算、10億円程度であるが、資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととなった。

現在、日韓両国政府はそれぞれ、合意内容を誠実に実行に移すべく取り組んでいるところであり、この点は現時点でも全く変わりはない。このような日韓両国政府の努力につき国際社会の御理解を頂けると、大変有り難く思う。ちなみに、潘基文(パンギムン)国連事務総長を含め、国際社会は、日韓両国が合意に達したことに歓迎の意を表明していると承知している。

もう1点だけ、最後に付け加える。ホフマイスター委員は他の国の例も挙げた。先の大戦に関わる賠償並びに財産及び請求権の問題について、御指摘の点も含め、日本政府は、米、英、仏等45か国との間で締結したサンフランシスコ平和条約、それだけではなく、その他の二国間の条約等、これは、日韓請求権・経済協力協定も含むし、日中の処理の仕方も含むが、こういったものによって、一々を細かく法律的に説明することはしないが、誠実に対応をしてきており、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題を含めて、法的に解決済みというのが、日本政府の一貫した立場である。

にもかかわらず、日本政府は、アジア女性基金を構築し、我が国の予算からの拠出と一般からの募金によって、一定の活動をした。アジア女性基金の活動についての詳細は説明しないが、恐らくここにおられる皆様は、よく御存じのことと思う。

(ゾウ主査からの質問に応え、)

昨年の12月28日、岸田大臣とユン外交部長官の間で、(慰安婦問題が)最終的かつ不可逆的に解決されていることは、文書の回答の添付を見ていただければ明確であると思う。

日本政府がこの問題について、例えば歴史の否定をしているとか、この問題について何の措置もとっていないという御批判は、事実に反すると言わざるを得ない。

いわゆる強制ということは、我々が調査した中では裏付けられなかったと申し上げたが、この岸田大臣の合意の中には、慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷付けた問題であり、日本政府は責任を痛感している、全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する、そして、額は10億円程度ということであるが、日本の予算の措置により、財団を設立する等ある。中身については時間がないのでそれ以上は言わないが、ここでいう「当時の軍の関与の下に」というのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設置されたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について日本軍の関与があったこと、慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者がこれに当たったということは、従来から認めていることである。私が先ほど申し上げたことは、そのことと共に、例えば「20万人」という数字は完全な間違いであると、その新聞社が認めているということを明確にするために申し上げたわけである。

それから、「性奴隷」という表現も事実に反するということをもう一度繰り返しておきたい。書面の回答に添付した両外相の共同発表の文書の中にも、「性奴隷」という言葉は1か所も見つからないのも事実である。

したがって、非常に残念だが、ゾウ主査からの御指摘は、いずれの点においても、日本政府として受け入れられるものではないだけではなく、事実に反することを発言されたという風に残念ながら申し上げざるを得ないということを明確に発言をしておきたい。

(ゾウ主査から日韓合意に関する質問があったことに応え、)委員のお手元に届けてある合意、これは日韓間の合意であって、これを現在、日韓両国政府はそれぞれ誠実に実行に移すべく、取り組んでいるところであり、この点は全く変わっていない。このような日韓間の合意について、是非理解をしていただきたい。

米国グレンデール市慰安婦像訴訟
日本国政府の意見書提出(2017年2月)

米国グレンデール市慰安婦像訴訟日本国政府の意見書提出(2017年2月)QRコード

1.カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像について、現地在留邦人等が原告となり、グレンデール市を相手取った訴訟が行われています。現在、連邦裁判所における裁判とカリフォルニア州裁判所における裁判の二つが同時進行していますが、前者については、2017年1月に連邦最高裁判所に上告がなされました。これを受け、同年2月22日、我が国政府は、同裁判所に対して意見書(アミカス・キュリエ・ブリーフ)を提出しました。

2.我が国政府は、これまでも様々な関係者に対し、慰安婦問題に関する我が国政府の基本的立場や取組について適切に説明し、正確な理解を求めてきています。今回の意見書提出も、その一環として行ったものです。

3.提出した意見書では、米国連邦政府が過去に示した立場や米国内の判例を引用しつつ、上告が認められるべきと考える理由を説明するとともに、慰安婦問題に関する我が国政府の基本的立場や取組について記載しています。

我が国政府の意見書(仮訳:一部抜粋)

(仮訳)

日本は、グレンデールの当該像の碑文が、日本政府が長期にわたって調査してきた歴史的文献を正確に描写していないと強く反対している。昨年、ジュネーブでの女子差別撤廃委員会において、日本の外務審議官は、1990年代に日本が実施した全面的な事実関係の調査結果について証言した。(「杉山晋輔外務審議官による国連女子差別撤廃委員会質疑応答での発言要旨」(2016年2月16日)参照。(20万人の女性を強制的に性奴隷にしたとする主張を裏付ける証拠の不存在を含む日本の調査結果について議論した。))

慰安婦を含む個人の請求権は、1965年の「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」で処理されている。この1965年協定は、慰安婦問題が政府間の外交問題として取り扱われるべきであることを強調している。実際、本問題に関する日韓の継続した外交が、米国政府の支持も得て、前述の2015年の合意にもつながった。日本政府は、2015年の合意を尊重し、非常に誠実に同合意を実施し続けている。

日本は、州やグレンデールなどの地方公共団体が、アメリカ合衆国がその外交政策の形成において発信すべき統一されたメッセージを損なうことのないよう、特に本件のような機微な問題について、外交関係に関わってこないことを最も重視している。

第37回人権理事会ハイレベルセグメント堀井学外務大臣政務官によるステートメント(一部抜粋)(2018年2月)

第37回人権理事会ハイレベルセグメント堀井学外務大臣政務官によるステートメント(一部抜粋)(2018年2月)QRコード

議長、

韓国の代表が言及した慰安婦問題については、日本政府は長きに亘って真摯に対応してきましたが、2015年12月には、日韓両政府による多大な外交努力の末、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認するとともに、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控えることとしました。合意を受け、韓国政府が設立した財団には、日本政府から10億円を拠出し、実際に元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の癒やしのための事業が実施されてきました。合意時点で生存していた元慰安婦の方々47名のうち、7割以上の方々がこうした事業を受け入れるなど、多くの韓国人元慰安婦の方々も合意を評価しています。日韓合意は、国と国との約束であり、たとえ政権が代わったとしても責任をもって実施されなければならないことは国際的かつ普遍的原則です。日本側は、合意で約束したことを全て誠実に実行しており、合意が着実に履行されることが重要です。

なお、先週、女子差別撤廃委員会において、韓国代表団が「性奴隷」との言葉を使用しました。「性奴隷」という言葉は事実に反するので使用すべきではないというのが日本側の考えであり、この点は日韓合意の際に韓国側とも確認していたものです。

これに関連して、日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行いましたが、得られた資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはありませんでした。「慰安婦が強制連行された」という見方は、1983年、「私の戦争犯罪」という本の中で、故人になった吉田清治氏が、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造(ねつぞう)して発表し、当時、日本の大手新聞社の一つにより、事実であるかのように大きく報道されたことにより、国際社会にも広く流布されました。しかし、これは、後に、完全に想像の産物であったことが証明されています。この大手新聞社自身も、後に、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪しています。

人種差別撤廃条約第10回・第11回政府報告審査における大鷹総合外交政策局審議官(国連担当大使)の発言(一部抜粋)
(2018年8月)

人種差別撤廃条約第10回・第11回政府報告審査における大鷹総合外交政策局審議官(国連担当大使)の発言(一部抜粋)(2018年8月)QRコード

先ほどシェパード委員から言及があり、昨日も何人かの委員からも言及があった慰安婦の問題についてです。昨日、冒頭色々申し上げたので、繰り返しは避けるようにいたします。いずれにしても、人種差別撤廃条約との関係或(ある)いは個人の請求権についての日本の法的な立場は昨日(冒頭ステートメントで)申し上げたとおりです。

その上で、昨日も申し上げた立場ですけれども、日本として慰安婦問題が多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるとの認識に基づき、日本政府及び日本国民のお詫びと反省の気持ちをいかなる形で表すかにつき国民的な議論を尽くした結果、1995年7月19日、元慰安婦の方々に対する償いの事業を行うことを目的に、日本国民と政府が協力して「アジア女性基金」を設立するということに結びついたわけです。既に高齢になられた元慰安婦の方々の現実的な救済を図るため、元慰安婦の方々への医療・福祉支援事業やいわゆる「償い金」の支給等を行う「アジア女性基金」の事業に対し、最大限の協力を行ってきました。また、これらの事業が実施される際には、現職の内閣総理大臣から元慰安婦の方々ひとりひとりに対し、「おわびの手紙」を送付しました。

この関連で、この問題は、朝鮮人以外にも関わる問題ではないかとの指摘がありましたが、「アジア女性基金」は、慰安婦の方々の現実的な救済のために政府拠出金それから国民基金を原資として事業を行ってきましたが、その対象は、具体的には韓国、フィリピン、台湾の元慰安婦に対するものでした。詳しくは申し上げませんが、償い金、或いは福祉事業、その時点での内閣総理大臣からの「おわびの手紙」が代表になっています。

また、今申し上げなかった国として、政府による元慰安婦の特定が困難である等としているインドネシアにおいては、高齢者のための福祉施設整備のための財政支援を実施し、オランダにおいては、アジア女性基金の開始当時、元慰安婦の認定が行われていないことを踏まえ、慰安婦問題に関し、先の大戦中心身にわたり癒やしがたい傷を受けた方々の生活状況の改善を支援するために、財政支援を行いました。このように、その他の国々に対しても、日本は可能な限りのことを行ってきているということを是非とも御理解頂ければと思います。

そして、もう一つあえて申し上げたいのは、韓国国内では日本政府による国家賠償を求める声があり、アジア女性基金の事業を受け入れる意思を示した元慰安婦は批判や圧力を受けました。

そのような状況にありながらも、最終的には実際は61名の韓国人元慰安婦に対して「アジア女性基金」の事業を実施することができました。

そしてこの事業を受け取った元慰安婦からは、日本政府及び日本国民に対して御礼の言葉が寄せられています。その意味で、日本政府と国民の気持ちが元慰安婦の方々に通じたと考えます。なお、61名という数字に関し、最近まで、長い間公表することを控えていました。これは、事業を受け取った人々の立場を配慮してのことです。

さらに、この場であえて申し上げたいが、慰安婦問題に関し、否定したり、事実を歪曲するような発言があるのではないかとの指摘がありますが、日本は慰安婦問題を否定していないということを明確にしておきます。ただ、一部に不正確な情報や理解があるのではないかというのも事実ではないかと考えます。

例えば、この慰安婦問題が世の中に注目されるに至った経緯は若干不幸な側面があったのではないかと考えます。特に、1983年、「私の戦争犯罪」という本の中で、故人になった吉田清治氏が、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造して発表し、当時、日本の大手新聞社の一つにより、事実であるかのように大きく報道されたことにより、この問題が注目を集め、同問題のイメージを作った大きな一翼となるとともに、国際社会にも広く流布されました。そういう意味で、非常にインパクトがありました。しかし、これは、後に、完全に想像の産物であったことが証明されています。この大手新聞社自身も、後に、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪しています。この事実・経緯については、十分知られておらず、ある意味で無視・ネグレクトされていると感じます。是非慰安婦問題に関し、客観的な見方をしながら議論や評価をしていかなければならないと思います。その意味で、有識者や学者による色々な研究成果が発表され、英訳も進められているので、そういうものも是非ご覧頂ければと思います。

2015年12月に日韓両政府は、問題の解決のために多大な外交努力、お互いに相当の時間とエネルギーを割いて、その末に合意に至り、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認しました。この日韓合意は、当時の潘基文(パンギムン)国連事務総長を始め、国際社会が歓迎しているのみならず、多くの韓国人元慰安婦もこれを評価していると認識しています。

実際に、合意に基づき韓国で設立された「和解・癒やし財団」は、日本が拠出した10億円を基に、元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を実施しています。合意の時点で生存していた元慰安婦47名のうち、36名が事業に賛成し既に34名が医療や介護といった支援を受けています。

元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしを達成するためにも、日韓両国で約束し、国際社会と元慰安婦の方々も評価している合意が着実に実施され、この問題を次の世代に決してひきずらせないことが極めて重要ではないかと思います。

昨日色々とお話頂いた中で、1度だけ「sexual slavery」という表現が使われました。慰安婦を「性奴隷」と称することは事実に反するので不適切であるというのが日本の立場です。つまり、この表現については、日本として強く反対しています。

なお、この点は日韓合意の際に韓国側とも確認しており、日韓合意の中でも、「性奴隷」という表現は一切使われていません。

強制失踪委員会による対日審査総括所見の公表に際しての岡村政府代表発ジャニーナ委員長宛書簡(仮訳)
2018年11月30日

強制失踪委員会による対日審査総括所見の公表に際しての岡村政府代表発ジャニーナ委員長宛書簡(仮訳)2018年11月30日QRコード
スエラ・ジャニーナ強制失踪委員会委員長

11月19日、ジュネーブにおいて、強制失踪委員会が、日本政府報告審査を受けた総括所見を公表しました。11月5日及び6日に実施された日本に対する政府報告審査における日本政府代表団の説明・反論等にもかかわらず、この度公表された対日審査総括所見が日本政府の説明を十分に反映していないことは極めて遺憾であり、厳重に抗議します。

本総括所見には、刑法や刑事訴訟法を始めとする我が国の国内法制及び慰安婦問題について、審査における日本政府からの説明及び事前に送付された総括所見案への反論を踏まえない、重大な事実誤認に基づくと思われる記述が少なからず含まれています。詳細は添付のファクトシートを御覧ください。

そもそも、強制失踪条約は本条約が発効する以前に生じた問題に対して遡(さかのぼ)って適用されないため、慰安婦問題を本条約の実施状況に係る審査において取り上げることは不適切です。また、本条約第35条1には、「委員会は、この条約の効力発生後に開始された強制失踪についてのみ権限を有する。」と明記されています。委員会は強制失踪犯罪の継続性と被害者の権利を重視する方針であることは理解しますが、何ら根拠を示すことなく70年以上前の案件を取り上げること自体に疑義があります。被害者の権利についても、根拠がある場合には救済を受けることができる旨、審査の場で説明したとおりです。

このような原則にもかかわらず、今般の審査では、日本政府は、委員からの質問を受けて、日本政府が実施した調査の結果や、虚偽の事実をねつ造した証言に基づく誤解が広がった経緯等も丁寧に、かつ、真摯に説明したところです。それにもかかわらず、今般公表された総括所見のパラ25及び26において慰安婦問題に関する言及があり、しかもその内容が根拠のないものであって、本件に関する根本的な誤解と偏見に基づく一方的な内容であることは、深刻な問題です。

本総括所見の公表に際し、慰安婦問題について、日本政府としての主たる主張は次の三点です。第一に、委員会は、あたかも慰安婦が本条約第2条が規定する強制失踪の被害者であるかのような前提に基づき、指摘や勧告を行っていますが、この点は、重大な誤認です。審査の場で説明したとおり、慰安婦問題を含め、現在までに本条約第12条に基づく「申立て」が日本政府に対してなされたことはない上に、1990年代に実施された本格的な事実調査においても、政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たりませんでした。それにもかかわらず、委員会が、このような前提に基づいた指摘を行うのであれば、適切な根拠を提示すべきでありますが、適切な根拠は示されていません。適切な根拠が示されることもなく、このような言及を総括所見に含めることは極めて不適切です。日本政府としては、以上に述べた疑問に、委員会からの法的な根拠を明記した回答を求めます。

第二に、慰安婦問題について日韓両国が確認した「最終的かつ不可逆的な解決」に対して、委員会側が遺憾の意を表明している箇所は、日韓両国の真摯(しんし)な取組を軽視するものであり、極めて不適切です。このような記述は、2015年12月に日韓両国が多大な外交努力の末に合意に至り、かつ、この合意が国連事務総長(当時)を始め、国際社会から広く歓迎された経緯を全く踏まえていません。そして第三に、日本政府に対する勧告内容は、他国の審査における総括所見及び他の委員会の対日審査の総括所見と比較してもバランスを欠いています。

強制失踪委員会が、このように日本政府からの説明に耳を傾けず、一方的な勧告を公表したことは、国連に求められる不偏性を欠き、誠実に条約を実施し審査に臨んでいる締約国に対し非常に不公平なやり方といわざるを得ません。同委員会を始めとする各国連人権条約体の委員会は、締約国による報告及び審査における説明を十分に踏まえ、総括所見を作成・発出すべきです。今回は、特定の情報源からの検証されていない情報にのみ基づき、審査と総括所見の作成が行われたといわざるを得ず、日本政府としては、今後、委員会において公平な審査が行われるための改善に向けた取組が必要と考えます。

岡村 善文

日本政府代表(特命全権大使(人権担当))

強制失踪委員会による対日審査総括所見に関する日本政府の立場
(ファクトシート)

強制失踪委員会による対日審査総括所見に関する日本政府の立場(ファクトシート)QRコード

1 強制失踪行為に対する管轄権(本条約第9条)(総括所見パラ21、22)日本の刑法では、全ての強制失踪行為に対して域外管轄権が適用されることを明示的に規定している。

2 強制失踪事案に関する告発及び捜査(本条約第11条及び第12条)(総括所見パラ23、24)

(1)刑事訴訟法第239条は、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と規定している。したがって、失踪者との関係いかんにかかわらず、いかなる者でも強制失踪の疑いがある事案を当局に告発することができる。

(2)刑事訴訟法第189条は、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」と規定している。したがって、警察官には、捜査をするか否かの裁量はなく、捜査を開始しなければならない。

(3)捜索状の執行において、制限や例外はない。したがって、失踪者が存在すると信じるに足りる全ての拘禁場所は、令状に基づく制約のない捜索の対象となる。

(4)日本には軍事裁判所はなく、全ての強制失踪事案は通常の裁判所において裁かれる。

3 強制失踪の被害者であるいわゆる「慰安婦」の状況(本条約第1条、第8条、第12条、第24条、第25条)(総括所見パラ25、26)

(1)強制失踪条約は、本条約が発効する以前に生じた問題に対して遡って適用されないため、日本政府としては、慰安婦問題を同条約の実施状況に係る政府報告審査において取り上げるべきものではないと考えている。その上で申し上げれば、慰安婦問題を含め、現在までに、強制失踪条約第12条に基づく「申立て」が日本政府に対してなされたことはない。

(2)1990年代初頭に日本政府が行った、関係省庁における関連文書の調査、米国国立公文書館等での文献調査、軍関係者や慰安所経営者等各方面への聞取り調査や韓国の市民団体である挺対協の証言集の分析等、一連の調査を通じて得られた、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」は確認できなかった。

(3)同調査の結果は、全て公表されており、例えば政府関連機関やアジア女性基金のホームページを通じて閲覧可能である。我が国が慰安婦関連資料を隠蔽しているとの指摘は当たらない。

(4)慰安婦問題について一部不正確な理解が広まっているが、このような見方が広く流布された原因は、1983年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造(ねつぞう)して発表したためである。この本の内容は、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた。しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されている。その証拠に、これを積極的に報じた大手新聞自身も、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪している。これらの経緯は十分に知られていないが、慰安婦問題は、客観的な事実関係に基づき議論・評価がなされるべき。

(5)総括所見では、慰安婦問題について“may have been subjected to enforced disappearance”と記載されている。まず、“may have been”という表現は、慰安婦が本条約第2条に規定する強制失踪の被害者であった可能性を前提とした指摘と理解するが、そのような指摘を行うのであれば、適切な根拠が示されることが不可欠である。

(6)また、総括所見では、本条約第24条(5)をひきつつ、慰安婦問題に対する日本の立場が慰安婦の方々の救済を否定しているとの記述があるが、そもそも本条約第12条に基づく「申立て」が日本政府に対してなされたことはないことに加えて、先の大戦に関わる賠償並びに財産及び請求権の問題については、日本政府は、米、英、仏等45か国との間で締結したサンフランシスコ平和条約及びその他二国間の条約等に従って誠実に対応してきており、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題も含めて、法的には解決済みである。韓国とは、1965年の財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定で、日韓間の財産・請求権の問題が「完全かつ最終的に解決された」ことを確認し、同協定に基づき、日本政府は韓国政府に5億ドルの経済協力を実施した。

(7)加えて、日本政府及び日本国民は、1990年代以降、元慰安婦の方々の現実的な救済を図るため、元慰安婦の方々への医療・福祉支援事業や「償い金」の支給等(合計金額は、一人当たり500万円(韓国・台湾)、320万円(フィリピン))を行うアジア女性基金(AWF)の事業に対し、最大限の協力を行ってきた。また、AWFから個々の慰安婦に対して「償い金」及び医療・福祉支援が提供された際、その当時の内閣総理大臣(橋本龍太郎内閣総理大臣、小渕恵三内閣総理大臣、森喜朗内閣総理大臣及び小泉純一郎内閣総理大臣)は、自筆の署名を付したお詫びと反省を表明した手紙をそれぞれの元慰安婦に直接送り、最終的に285名(フィリピン211名、韓国61名、台湾13名)の元慰安婦が受け取った。こうした努力の結果、1998年の日韓共同宣言-21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ-では、「未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力することが時代の要請である」とされた。

(8)このような取組にもかかわらず、日韓間において慰安婦問題が改めて政治的な問題となった。元慰安婦の方々の癒やしを早期に実現するため、日韓両国は、真剣に協議を行い、多大なる外交努力を経て、2015年12月、慰安婦問題に関する合意に達した。これにより、同問題が「最終的かつ不可逆的に解決」されることや、今後国際社会において、両国が本問題について互いに非難や批判を控えることが確認されたのみならず、同合意に基づき、韓国政府は元慰安婦の方々のための事業を実施する財団を設立し、日本政府は同財団に対し10億円の支出を行った。

(9)この日韓合意については、潘基文(パンギムン)国連事務総長(当時)を始め、米国政府を含む国際社会が歓迎し、欧米メディア(ニューヨークタイムズ等)も高く評価しているのみならず、韓国人元慰安婦の多くも肯定的に評価している。引き続き日韓合意が着実に実施されることが重要である。

(10)2015年の内閣総理大臣談話に述べられているとおり、我々は20世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を胸に刻み続ける。日本は、21世紀こそ女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、リードしていく決意である。

4 追放、送還、犯罪人引渡しのメカニズム(本条約第13条及び第16条)(総括所見パラ29)

(1)本条約は、当然のことながら、非締約国には適用されない。そのことは日本側の責めによる障害とすべきではない。

(2)犯罪人引渡条約がない場合に、相互主義の保証を要件とすることは、国際社会においてごく一般的である。日本だけではなく、他国も相互主義の保証を要件としている。したがって、この要件は、犯罪人引渡しにおける障害ではない。

5 基本的な法的安全措置(本条約第17条)(総括所見パラ31、32)

(1)刑事訴訟法においては、全ての身体の拘束を受けている被疑者は、制限・禁止・審査なしに弁護人との接見交通が認められる。

(2)刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律等関連法令では、被疑者が翻訳や通訳の費用をまかなえない場合等は、必要に応じて県がその費用を支援することができる旨定められている。刑事訴訟法第39条第1項は、「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」と規定している。

6 自由を剥奪(はくだつ)された者の記録(本条約第17条、第18条、第20条、第22条)(総括所見パラ35、36)

(1)施設における記録には本条約第17条に規定された全ての情報が含まれており、情報は迅速に更新されることとなっている。

(2)職務上の義務に反して自由のはく奪に関する記録を怠ったり、情報提供を拒否したり、または不正確な情報提供をした当局の者は、懲戒の対象となる。それが意図的になされた場合には、刑事罰に問われ得る。

7 被害者の定義及び被害回復を受ける権利及び迅速、公正かつ適正な賠償を受ける権利(本条約第24条)(総括所見パラ39)

(1)刑事訴訟法と本条約における「被害者」は、文言上、条約と完全に一致しないようにみえるが、実際の運用においては、被害者本人からの要請があった場合、検察官は十分な情報及び対策を「被害者」に対して提供している。

(2)上記のとおり、日本政府の審査における説明や英文で提出した我が国の法令の関連条文等を踏まえておらず、失当である。

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