3 外交における有識者などの役割
変動著しい世界における国際秩序の構築に当たっては、民間有識者が前面に立って、各国の政府の公式見解にとらわれない国際的政策論議を行い、それが国際世論や各国政府の政策決定に影響力を及ぼすという状況が顕著となっている。
各国の対外経済政策に大きな影響を持つダボス会議、各国の著名な有識者や閣僚がアジアの安全保障について議論する場となっているアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)、中東の安全保障をテーマとしたマナーマ対話などはその代表例である。主要国において、このような協議の場に参画できるようなシンクタンク(調査研究機関)や研究者等の人材の育成や大学等有識者の活用の重要性がこれまで以上に高まっている。
日本の外交・安全保障についての知的基盤を広げ、国民の幅広い参画を得た外交を推進することが中長期的な外交力の強化につながる。このような考えの下、外務省は、日本の外交・安全保障関係シンクタンクの活動への支援を通じ、これらシンクタンクの情報収集・分析・発信・政策提言能力を高めることを目的として、外交・安全保障調査研究事業費補助金制度等を実施している。これに加え、外務省は、2017年度から、領土・主権・歴史調査研究支援事業補助金制度を実施している。
また2018年12月、G20のエンゲージメント・グループ(国際社会におけるステークホルダーにより形成された政府とは独立した団体)の一つであるT20(Think20)のキックオフ会合を東京で開催し、G20各国の有識者等200人が出席した。同会合においては、G20サミット主要テーマと関連する政策課題が議論され、G20に提出する提言書の策定プロセスが開始された。なお、2019年5月にはT20の本会合の開催が予定されている。
