外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

第4節 日本への理解と信頼の促進に向けた取組

総論
〈2016年の対外発信〉

2016年は、不透明さを増す世界経済や国際秩序に対する一方的な現状変更の試み等の喫緊の課題を踏まえ、G7の議長国として、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった基本的価値の重要性や、日本が引き続きアジア太平洋地域や世界の平和と発展に大きな貢献を果たしていくことなどを発信した。また、G7広島外相会合の機会を捉え、「核兵器のない世界」の実現に向けたメッセージを世界にアピールした。さらに、初のアフリカ開催となった第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)では、アフリカの平和と安定のために官民が連携して取り組んでいくことを発信した。

〈戦略的対外発信の取組〉

2015年度には、対外発信の最前線である在外公館の体制強化を図りつつ、①日本の「正しい姿」の発信、②日本の多様な魅力の発信及び③親日派・知日派の育成という3本の柱に基づいて戦略的に対外発信を実施するため、2014年度補正予算及び2015年度当初予算を合わせて500億円増の戦略的対外発信予算を計上したが、2016年度においても同水準を維持し、引き続き発信の取組を強化してきた。

「正しい姿」の発信については、G7伊勢志摩サミットやG7広島外相会合等の外交機会を捉えた総理大臣や外務大臣からの直接的な発信、各在外公館長による各任国における積極的な発信に加え、メディア等に対する迅速な情報提供・取材協力、さらには各国の有識者・メディア関係者の招へいやシンクタンクとの連携を通じた発信を積極的に行った。

「多様な魅力」の発信については、ロンドン(英国)、ロサンゼルス(米国)及びサンパウロ(ブラジル)において、現地のニーズを踏まえ、日本の魅力をオールジャパンで発信していくジャパン・ハウスを創設すべく、準備を進めている。また、世界各地の在外公館における文化事業、「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト」を始めとする国際交流基金事業及び第10回日本国際漫画賞を実施した。さらに、国内外の関係者などと協力し、世界の有形・無形の文化遺産の保護への取組と、日本の文化遺産の世界遺産一覧表及び人類の無形文化遺産の代表的な一覧表への記載を推進した。

「親日派・知日派」の育成については、人的・知的交流や日本語の普及に努め、日本語教育拠点の大幅な拡充、アジア、米国、欧州及び中南米との青少年交流の拡充、日米文化教育交流会議(CULCON:カルコン)の開催、主要国の大学における日本研究強化を進めている。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策「Sport for Tomorrow(SFT)」を推進した。

これらの取組を引き続き戦略的かつ効果的に実施していくため、外務省の2017年度予算案には、前年度の規模を維持する形で、戦略的対外発信に充てる予算を計上した。同予算を効果的に活用しながら、上記3本の柱に基づいて日本の「正しい姿」を強く発信していくとともに、日本の多様な魅力を生かして、親日派・知日派を拡大し、日本の対外発信を強化していく。

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