外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

3 科学技術外交

「科学技術外交」の推進に当たっては、世界最高水準の日本の科学技術力をいかすとともに、新興国の台頭といった国際社会の動向も踏まえながら、様々な取組を進めている。

(1)科学技術・イノベーションを促進するための二国間又は多数国間の協力

二国間の協力については、相手国との科学技術協力の原則や枠組みなどを定める科学技術協力協定7の新規締結や、こうした協定に基づく日本との科学技術協力推進に対する各国の要望が高まってきている。2013年には、米国、ロシア、欧州連合(EU)など10か国・機関8との間でそれぞれ科学技術協力協定に基づく合同委員会を開催し、協力の現状、今後の協力の方向性などについて協議した。

多国間における協力については、例えば、熱核融合実験炉を建設・運用する「イーター(ITER)計画」を始め、大規模国際科学技術プロジェクトにも積極的に関わっている。

(2)地球規模の課題の解決に向けた科学技術の活用

科学技術を活用して国際社会が抱える諸課題に対応していくことも、科学技術外交の重要な柱の1つである。例えば、安全保障の観点からは、日本は、国際科学技術センター(ISTC)への参画を通じて、大量破壊兵器の拡散防止などに貢献している。また、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症対策などの分野で、日本と開発途上国の大学や研究機関等が共同で行う地球規模の課題の解決に資する研究などを、ODA9を活用して支援している。

(3)科学技術協力を通じた二国間関係の増進

科学技術協力は、相手国との外交関係に厚みを与え、二国間関係の「重層化」に貢献している。同時に、先進国、新興国、開発途上国といった相手国ごとに異なる科学技術事情に応じ、科学技術協力を戦略的に進めることが重要である。例えば、2013年4月の第12回日米科学技術協力合同高級委員会の際には、政府間会合に続き、産学の有識者が参画するオープンフォーラムを初めて開催し、イノベーション創出のための官民連携や今後の日米協力の在り方などについて議論した10。また、先述のODAと連携した国際共同研究の推進は、発展途上国との二国間関係の増進にも貢献している。

(4)科学技術立国としてのソフトパワーの発信

日本の優れた科学技術は、文化とともに、対日理解の促進や対日イメージの向上に資する。2013年には、防災分野の著名な日本人科学者などを中南米、大洋州の5か国11に派遣し、研究者間のネットワーク構築に加え、先端的な研究の紹介によるパブリック・ディプロマシーを推進した。

越村俊一東北大学教授による講演会の様子(コロンビア)
越村俊一東北大学教授による講演会の様子(コロンビア)

7 日本は、32の科学技術協力協定を署名又は締結しており、47か国・機関に適用されている。

8 カナダ、ドイツ、米国、フランス、欧州連合(EU)、スロベニア、チェコ、ロシア、ニュージーランド、ウクライナ。

9 開発途上国のニーズを踏まえ、外務省、文部科学省、JICA、科学技術振興機構(JST)が連携し、日本と開発途上国の大学・研究機関等が環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症対策などの分野で行う共同研究や能力向上支援を行う地球規模課題対応国際科学技術協力プロジェクト(SATREPS)事業を実施している。

10 2013年6月に開催した第8回日仏科学技術協力合同委員会においても、初の試みとして、日仏の企業関係者による相手国での研究開発等についてプレゼンテーションを行うセッションを設け、日仏協力の在り方を検討するに当たり産業界との連携を図った。

11 エクアドル、ペルー、コロンビア、ニュージーランド、オーストラリア。

このページのトップへ戻る
青書・白書・提言へ戻る