アジア太平洋地域の戦略環境が大きく変化する中、ロシアとの協力をあらゆる分野で進め、日露関係を全体として高めていくことは、日本の国益に資するものである。2012年においては、このような認識の下、2回の首脳会談、外務大臣の相互訪問を含む4回の外相会談を始め、様々なレベルで対話が行われた。
特に安全保障分野においては、10月にパトルシェフ安全保障会議書記が訪日した際、玄葉外務大臣との間で日本外務省とロシア安全保障会議事務局との覚書が署名され、安全保障分野の対話・協力の強化が確認された。また、経済については、11月にシュヴァロフ第一副首相が訪日して玄葉外務大臣との共同議長により日露貿易経済政府間委員会が開催され、極東・シベリア地域における協力、エネルギー・省エネ、医療、近代化・イノベーション、運輸、農業など、幅広い分野の協力を進展させることで一致した。このほか、キリル・ロシア正教会総主教が訪日するなど、幅広い交流が行われた。
日露両国間の最大の懸案である北方領土問題については、日露両国の立場の隔たりは依然として大きいが、首脳級、外相級、次官級の各レベルにおいて議論が続けられた。政府としては、北方領土問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続きロシアとの交渉に精力的に取り組む方針である。
中央アジア・コーカサス諸国(1)は、アジア、欧州、ロシア、中東を結ぶ地政学上の要衝に位置しており、石油、天然ガスなどの資源が豊富である。また、アフガニスタンの安定化、テロ、麻薬、武器の拡散防止などの国際社会における重要な課題に取り組んでいく上でも、この地域の重要性はますます高まっている。
日本は、これら諸国との間で2012年に外交関係樹立20周年を迎え、活発な要人往来や「中央アジア+日本」対話・外相会合の開催等を通じて、より一層の関係強化が進められた。
1 中央アジア諸国は、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5か国、コーカサス諸国は、アルメニア、アゼルバイジャン、グルジアの3か国を指す。