欧州は、日本にとり、民主主義、人権、法の支配などの基本的価値や市場経済などの原則を共有し、国際社会の平和と繁栄に向けて共に主導的な役割を果たすパートナーである。欧州は、世界のGDPの25%強を占める巨大な経済力を擁するとともに、有力メディアやシンクタンクの影響力、言語、文化、芸術などの力を背景に国際世論を大きく喚起する力を有している。また、国連安保理常任理事国5か国のうち2か国(英国、フランス)、G8メンバーのうち4か国(英国、フランス、ドイツ、イタリア)と1機関(欧州連合(EU))が欧州諸国等により占められている。さらに、その他の欧州各国や北大西洋条約機構(NATO)などの国際機関もそれぞれが独自の強みをいかした分野で行動力と存在感を増している。世界経済、大量破壊兵器の不拡散、テロとの闘い、エネルギー安全保障、気候変動等の地球規模の諸課題に効果的に対処し、新興国の台頭により世界のパワーバランスが変化している中で日本の政策を実現していくためにも、このような欧州と日本との関係強化は重要である。
こうした認識の下、2012年10月に玄葉外務大臣がフランス、英国、ドイツを訪問し、国際社会の諸課題について幅広く意見交換を行ったほか、キャメロン英国首相を始めとする欧州各国の要人訪日や5月のG8首脳会合、9月の国連総会、11月のアジア欧州会合第9回首脳会合(ASEM9)といった国際会議の機会を捉えた首脳・外相間の会談を通じ、日本は欧州との関係強化を図った。
また、経済面においては、世界経済最大のリスク要因であった欧州債務危機への対応策として、欧州は、短期的な金融市場安定化への対応に加え、財政同盟、銀行同盟及び経済成長といった中長期的な構造的課題への対応を進めてきた。日本としても、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)債と欧州安定メカニズム(ESM)債を継続的に購入したり、IMFの資金基盤強化にいち早く貢献を表明して合意形成につなげるなど、積極的な支援を行ってきた。
さらに、文化などの幅広い分野においても市民交流を通じて、日欧間の緊密な関係が維持されている。