日本は、中南米諸国との経済関係を強化しつつ、これら諸国の安定的な発展のための貢献を行うとともに国際社会におけるこれら諸国との協力を重視した外交を行っている。
中南米地域は、世界経済においてその重要性を増しているブラジルやメキシコなどの新興国を擁している。日本の貿易にとり重要な役割を果たすパナマ運河は、その拡張工事完了を2015年に控えている。また、中南米地域は多くの天然資源と食料の供給地であるとともに、6億人弱の巨大市場でもあり、今後も更なる成長が見込まれる。
日本は、中南米地域を有望な経済的パートナーとして重視し、官民一体となって様々な取組を行っている。日本政府としても日系企業のビジネス環境を整備するため、EPA、投資協定、租税協定などの法的枠組みの構築を促進している。2012年は、日・ペルーEPAの発効(3月)、日・メキシコEPA改正議定書の発効(4月)、日・コロンビアEPA交渉開始(12月)、日・ウルグアイ投資協定交渉開始(12月)と数多くの具体的進展があった。また、発効済みEPAの円滑な運用や進出企業のビジネス環境の改善を目的として、EPAビジネス環境整備小委員会をメキシコ(4月)及びペルー(11月)との間で開催した。
日本は、中南米各国の政権が民主主義を堅持しながら貧困や社会格差是正に向けた適切な努力を行い、安定的に経済成長を遂げることを重視しており、そのための協力を行ってきている。
特に教育や保健・医療など生活水準の向上、再生可能エネルギー、産業インフラ整備、各種研修や専門家派遣などの人材育成の分野などにおいて、ODAを通じた積極的な支援を行っている。また、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン及びチリといった国と共に開発途上国を支援するいわゆる三角協力を進めている。
中南米地域は、ハリケーン、地震、火山噴火などの自然災害に脆弱(ぜいじゃく)な地域である。日本は、自然災害による被害が発生した際には、緊急援助物資の供与や緊急無償資金協力により、迅速な支援を行うことに努めている。2012年11月にハリケーン・サンディが襲来したキューバとハイチに対しては、日本は、3,100万円を上限とした緊急援助物資と約9,700万円の緊急無償援助(ユニセフ経由)をそれぞれ供与した。また、11月に地震に見舞われたグアテマラには1,200万円相当の緊急援助物資を供与した。
国際社会の支援の下、大地震からの復興、治安の確保及び民主主義の定着に取り組んでいるハイチに対して、日本は、2010年3月に表明した1億米ドルを超える支援を供与している。2010年2月から国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に派遣中であった自衛隊部隊は、ハイチの復旧に十分貢献したものと評価されることから、2012年12月末にハイチから撤収し、同部隊が使用していた資機材の一部はハイチ政府に譲与された。
民主主義と市場経済の定着が進む中南米諸国は、日本と基本的な価値観を共有しており、国際社会の諸課題に具体的な形で協力して取り組んでいくことができるパートナーである。日本は、二国間関係の強化だけでなく、太平洋同盟、アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)、メルコスール、中米統合機構(SICA)、カリブ共同体(CARICOM)、南米諸国連合(UNASUR)、といった準地域機構との関係強化を推進している。
6月に正式発足した太平洋同盟(コロンビア、チリ、メキシコ、ペルー)との間では、9月に外相会合を実施し、定期事務レベル会合を立ち上げることに合意したほか、11月にはメルコスールとの間で「第1回日・メルコスール経済関係緊密化のための対話」を開催した。また、中南米とアジアにおける環境ビジネスの推進を目的としたFEALAC環境ビジネス会合を11月に東京で開催した。