2012年には、中南米諸国のうち、3か国で大統領選挙が行われ、5か国で新政権が発足し、1か国で大統領が再任された。このうち、グアテマラ(1月)、ニカラグア(1月)、ドミニカ共和国(8月)では、それぞれ新大統領就任式が行われ、メキシコでは、7月に行われた大統領選挙の結果、2000年まで71年間政権の座にあった最大野党の制度的革命党(PRI)が勝利し、12月にはペニャ大統領が就任した。ベネズエラでは、10月に大統領選挙が行われ、チャベス大統領が勝利したが、12月、同大統領は悪性腫瘍再発を公表し、マドゥーロ副大統領を後任指名した。ジャマイカ(1月)、バハマ(5月)では、総選挙で勝利した野党の代表が新首相に就任した。
また、地域統合機構においても大きな動きが見られた。中南米地域諸国とアジア太平洋地域との政治経済関係強化、加盟国間の経済統合深化などを目的とした太平洋同盟加盟国のチリ、コロンビア、メキシコ、ペルーの4か国は、チリで6月に首脳会合を行い、太平洋同盟の目的などを規定した枠組協定に署名した。南米南部共同市場(MERCOSUR/MERCOSUL(メルコスール))では、6月に首脳会合が行われた結果、パラグアイ議会によるルゴ大統領に対する弾劾手続がメルコスールの民主主義条項(1)に反するとして、パラグアイのメルコスール参加権停止が決定された。また、8月にはベネズエラがメルコスールに正規加盟を果たした。
2011年に創設されたラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)は中南米地域の将来的な政治的統合を目指している。CELACは、2013年1月に初の首脳会合を実施した。
なお、2012年、中南米地域ではメキシコにおけるG20サミット、ブラジルにおける国連持続可能な開発会議(リオ+20)といった大きな国際会議が開催された。
2012年、世界経済が欧州債務危機の影響を受ける中、5.5%以上の経済成長率を記録したコロンビア、チリ、ペルーを始めとして、中南米の経済は安定的に成長した。また、経済成長に伴い1人当たりGDPも32%の成長を記録しており、中間層が確実に拡大している。
ブラジルの経済成長は、約1.5%と中南米諸国の平均値より低くなる見通しだが、2011年に引き続き世界第6位の経済規模を維持している。また、2014年のFIFAワールドカップ、2016年のリオデジャネイロ夏季オリンピックを控えており、今後、同国において内需の拡大と経済成長が見込まれる。
世界第14位のGDPを擁するメキシコの経済成長は堅調であり、約3.5%の成長率を達成する見通しとなっている。米州市場のゲートウェイとして、自動車関連分野を中心に世界各国からメキシコへの企業進出が相次いでおり、設備投資や雇用の増加が見込まれている。また、メキシコは、11月からTPP協定の交渉に参加している。
一方、南米においては、アルゼンチンの各種産品に対する輸入制限措置やブラジルによるメキシコとの自動車協定の見直しなど、保護主義的傾向の強まりも見られた。
中南米地域は、世界でも有数の食料供給地域であるとともに、銀、銅鉱石、亜鉛、鉄鉱石、石油などの重要資源、電気自動車などの電池用として今後大幅な需要増が見込まれるリチウムを始めとするレアメタルの主要産地でもある。一次産品価格の変動の影響や一部の国における資源の国家管理強化といった懸念材料はあるものの、経済発展の潜在力は高い。
1 メルコスール諸国において民主主義の秩序が失われた場合、メルコスール設立基本文書であるアスンシオン条約上の権利などの停止を可能とすることを定めている「メルコスールの民主主義へのコミットメントに関するウシュアイア附属議定書」の規定。