第3節 中南米

中南米の地図
中南米の地図
総論

中南米地域は、5.6兆米ドルの域内総生産(ASEANの2.5倍)と約5.9億人の人口を擁する。世界の多くの国で経済が低迷する中、同地域では、2012年は約3.1%の経済成長が見込まれる(注:世界全体経済成長率は2.2%)など、世界経済における存在感を一層高めている。また、中南米諸国における1人当たり国民所得は、過去10年間で倍増し、1億5,200万人以上を数える中間層を有する巨大市場、希少金属(レアメタル)を含めた鉱物資源・エネルギーや食料の生産地としても高い注目を集めている。さらに、経済面での存在感に加えて、中南米における民主主義の成熟が、国際社会におけるこの地域の発言力を高めている。

約170万人の中南米在住の日系人や28万人にも上る日本在住の日系人を中心とする中南米諸国出身者を通じた絆もあり、日本は、中南米諸国との間で伝統的に深い友好関係を有している。こうした友好関係を背景に、日本は、中南米諸国における民主主義の定着と経済発展を支援し、関係の緊密化を進めてきた。今日、民主主義や市場経済といった基本的価値を共有する中南米諸国は、日本にとり、国際社会における重要なパートナーとなるに至っている。日本は、中南米諸国との関係を更に進展させるために、①経済関係の強化、②地域の安定的発展の支援、③国際場裏における協力推進、④中南米における日本的価値の展開を四つの柱として、これら諸国に対する外交を展開している。

経済関係の強化については、EPA、投資協定、租税条約などの法的枠組みの構築や相手国政府との協議を通じて、現地で事業を展開する日系企業にとって良好なビジネス環境の整備に努めている。また、中南米諸国では経済成長に伴う様々なインフラ需要が見込まれていることから、これら諸国において日本の技術を活用したインフラ開発を積極的に進めているほか、資源や食料に富んだ諸国との協力関係の深化を通じ、日本への資源や食料の安定供給の確保に努めている。

中南米諸国の安定的発展のためには、各国に根強く残る貧困や社会的格差の問題も解決する必要がある。日本は、資金協力・技術協力を通じ、各国政府による問題解決に向けた取組を積極的に支援することで、持続的な経済発展の実現に向けて協力している。

中南米地域には33か国が存在しており、国際連合など多数決による意思決定が行われる国際機関において大きな影響力を持っている。日本は、環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、国連安保理改革など国際社会が直面している課題に取り組むに当たり、中南米諸国との連携や協調を図っている。

勤勉さや経済発展への貢献を高く評価されている日系人の存在は、日本にとり、重要な外交資産である。日系人は、中南米諸国民から敬愛されており、この日系人の存在もあり、中南米では親日的感情が強い。中南米諸国における親日層を更に拡大すべく、在外公館(海外にある大使館、総領事館等)を通じ、日本的価値への理解促進に努めている。

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