8 北アフリカ(マグレブを含む)

(1)エジプト

2010年エジプト政府は、2009年の経済成長率を5.2%と発表し、世界的な経済低迷の中、比較的堅調な経済運営を行ってきた。外国からの直接投資誘致や国営企業の民営化などの経済改革を引き続き進める一方、高い失業率や貧富の格差拡大に対応するため、雇用機会創出、貧困対策にも取り組んできた。内政面では、国会に当たる人民議会選挙が11月に行われ、与党国民民主党が80%以上の議席を獲得し圧勝した。外交面では、中東和平直接交渉開始のためムバラク大統領が訪米し、9月1日にオバマ大統領と会談した。また、9月14日には、直接交渉第二回会合の開催(於:シャルム・エル・シェイク)など、中東和平を始め地域の諸問題解決に向けた努力を継続して行ってきた。

日本との関係では、3月に大ムフティ(イスラム最高法官)であるゴマア師が訪日し、岡田外務大臣と、異なる文化間の対話などについて意見交換した。6月には、日本・エジプト科学技術大学(E-JUST(イージャスト))の開校式典がカイロ郊外で行われた。9月には武正外務副大臣がエジプトを訪問した。また、11月、アブ・ゼイド・アラブ水評議会会長(前水資源・灌漑相)が旭日大綬(じゅ)章を綬与された。

2011年1月、チュニジアの政変を受け、ムバラク大統領の退陣を求める民衆の大規模デモがエジプト全土で発生し、2月11日、同大統領が辞任、国軍が全権を掌握した。これ以降6か月以内の憲法改正、議会及び大統領選挙の実施に向け、政治改革プロセスが進められている。

(2)マグレブ諸国

アルジェリアは、中東、アフリカ及び地中海地域にまたがり、地域の安定・発展に重要な役割を担っている。豊富な天然資源に恵まれており(天然ガス確認埋蔵量世界第10位、石油同第17位)、特に、液化天然ガスについては世界第5位の輸出を誇り、欧州などへの主要な供給地となっている。2010年12月には、前原外務大臣が、48年間の日・アルジェリア外交関係史上、日本の外務大臣として初めて訪問した。これを契機に、アルジェリアとの連携・関係の更なる強化が期待される。

チュニジアは、順調な経済発展を遂げる一方、失業問題を抱え雇用確保のため外国投資を積極的に誘致している。近年は再生可能エネルギー11の推進にも積極的に取り組んでいる。5月には幅広い意見交換の場として第7回日・チュニジア合同委員会が開催された。12月には第2回日本・アラブ経済フォーラムに出席のため、前原外務大臣が大畠章宏経済産業大臣と共にチュニジアを訪問し、ベン・アリ大統領及びガンヌーシ首相を表敬するとともに、日・チュニジア外相会談を実施した。

その後、12月中旬に発生した失業中の若者の焼身自殺を契機に、貧困・雇用対策を求めるデモ及びベン・アリ長期政権そのものに対する大規模抗議デモが発生した。2011年1月14日にベン・アリ政権は崩壊し、ムバッザア代議院議長が暫定大統領に就任した。今後、暫定政府にとって、大統領選挙の円滑な実施を含めた、政治・経済・社会改革を進めることが優先課題となっている。

近年モロッコは、年平均約5%の経済成長率を実現し、様々な分野における開発計画に基づいた積極的な国家開発を進めている。2009年にモロッコ政府が発表した大規模太陽エネルギー発電開発プロジェクトには、日本を含む国内外の企業が強い関心を寄せている。3月から4月にかけて、アフヌッシュ農業・漁業相が訪日した。

リビアは、アフリカ第1位の埋蔵量の原油など、豊富な天然資源を有し、一人当たり国内総生産(GDP)は1万米ドルを超えている。同国は、2003年末の大量破壊兵器計画放棄以降、欧米諸国などとの関係改善が急速に進んだ。近年は、国連総会議長国、アフリカ連合(AU)議長国、アラブ連盟議長国を務め、積極的な外交を展開している。

2011年2月中旬から、東部の都市ベンガジで発生した反政府デモが全土に拡大し、カダフィ指導者を始めとするリビア政府と反政府派で激しい戦闘が起きている。政府側の武力弾圧に対し、国際社会は一斉にリビア政府を非難し、2月26日には国連安全保障理事会が、対リビア制裁に関する安保理決議第1970号を全会一致で採択した。

日・アルジェリア外相会談での前原外務大臣(左)とメデルチ・アルジェリア外相(12月13日、アルジェリア・アルジェ)
日・アルジェリア外相会談での前原外務大臣(左)とメデルチ・アルジェリア外相(12月13日、アルジェリア・アルジェ)

(3)対マグレブ協力

12月、日本はマグレブ諸国(上記4か国及びモーリタニア)との間で初となる日・マグレブ諸国閣僚懇談会(日本から前原外務大臣及び大畠経済産業大臣が出席)を開催し、特にインフラ整備、人材育成分野での日・マグレブ協力の有用性につき意見交換を行った。

11 バイオマス、地熱、水力、海洋、太陽光、風力など再生可能な資源から持続可能な態様で生産されるエネルギーのこと。

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