湾岸協力理事会(GCC)諸国(10)は、近年、石油輸出以外の分野も視野に入れた産業の多角化に向けた努力を行っているが、石油・天然ガスの輸出収入や外国人労働力に大きく依存するという経済構造は大きく変化していない。2010年の1年間、原油価格は比較的高値で安定しており、各国の国内経済状況は概ね安定していた。
例年開催されるGCC首脳会議は、12月に第31回会合(於:アブダビ(アラブ首長国連邦))が開催された。同会合においては、テロ対策の重要性が強調されるとともにイランの核問題の平和的解決が強く訴えられた。
貧困や治安維持能力などの問題を抱えるイエメンについては、同国内を拠点とするテロ組織が2009年12月に米国旅客機爆破未遂事件を引き起こし、国際社会の注意が集まった。イエメンの安定回復のため、1月には「イエメンに関する国際会議」(於:ロンドン)が、また、7月にはイエメン・フレンズ第1回閣僚会合(於:ニューヨーク)が開催された。しかし、10月には、英国とアラブ首長国連邦の空港においてイエメン発米国宛て航空貨物から不審物が発見される事件が発生した。ソマリア沖・アデン湾では海賊事件の発生件数は増加し続けており、引き続き日本を含む域内外諸国による海賊対策の取組が行われている。また、7月には、日本の石油輸入量の8割強が通過するホルムズ海峡において、日本の船会社が運航する大型原油タンカーの船体が損傷を受ける事案が発生した。この事案により、湾岸の安全航行の重要性が改めて認識されることとなった。
日本とGCC諸国間では、5月に第10回日・サウジアラビア合同委員会、6月に第1回日・クウェート政府間合同委員会、9月に日・カタール合同経済委員会第5回会合がそれぞれ、東京で開催され、エネルギー分野を始めとする幅広い分野での協力関係強化について話し合われた。また、2月にクウェートとの間で、11月にサウジアラビアとの間で租税条約が署名された。また、同月に日本の招待を受けて訪日したカルビー・イエメン外相と前原外務大臣が会談し、テロや海賊の対策などについて意見交換が行われた。
2011年1月下旬以降、エジプト、チュニジアの長期政権崩壊の影響を受け、イエメン、オマーン、バーレーン、クウェート、サウジアラビアでも反政府デモが発生した。
10 バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6か国からなる。