シリアは、着実な経済成長を遂げ、レバノンも2006年の対イスラエル戦争の被害から順調に復興を遂げている。シリアと米国の関係については、オバマ政権の歩み寄り政策もあり、要人往来も見られるが、対シリア経済制裁は継続されている。一方、隣国との関係強化が進んでおり、トルコとは経済関係を中心に進展している。また、7月にアサド大統領は、サウジアラビア国王陛下と共にレバノンを訪問し、レバノン大統領と3か国首脳会談を行うなど、レバノン安定化に向けた積極的な動きも見られる。
レバノンでは、ハリーリ元首相暗殺の真相解明のために設置された国際法廷である、レバノン特別法廷(STL)による起訴状の発出をめぐって、2011年1月、STLへの協力を拒否する閣僚の一斉辞任により、内閣が崩壊した。ヒズボラが擁立する首相が任命されたことで、それに一斉に反発するハリーリ元首相支持グループによる暴動が発生した。その後も、閣僚をめぐる政治的対立は継続している。
ヨルダンはイスラエル及びパレスチナと隣接しており、中東の平和と安定のため非常に重要な位置にある。伝統的に親欧米派、アラブ穏健派の国で、アラブ世界ではイスラエルと外交関係を有する数少ない国(エジプトとヨルダンのみ)である。さらに、日本とヨルダンは、両国の皇室・王室の親密な関係を含め、伝統的に友好関係にある。アブドッラー国王陛下の訪日歴は10回(国王即位以降は7回)に及び、2010年4月にも訪日した。また、10月にはリファーイ首相兼国防相も訪日した。日本が推進する「平和と繁栄の回廊/ジェリコ農産業団地」構想には、ヨルダンはパートナー国として参画している。
現在、ヨルダンは国内に、13の難民キャンプに約195万人のパレスチナ難民を受け入れ、2003年のイラク戦争後は、約50万人(ヨルダン総人口の約10%)のイラク人難民も受け入れるなど、地域の平和と安定に貢献をしている。さらに、国連平和維持活動(PKO)活動においても、要員派遣数第7位(文民警察要員を含む)と、世界の平和にも貢献している。
経済面では、近年大規模インフラプロジェクト(原子力、水、鉄道、再生可能エネルギーなど)を国家事業として掲げ、国家開発を進めており、2010年9月10日には、日・ヨルダン原子力協定が署名された。
2011年に入り、エジプト及びチュニジアの情勢を受け、周辺国においてはデモが発生している。