NATOは冷戦後の安全保障環境が変容する中で、国際的な平和と安定のための取組を強化し、アフガニスタンにおけるISAFやソマリア沖での海賊対策など、域外での展開に力を入れている。11月にリスボン(ポルトガル)で開催された首脳会合では、国際テロ、サイバー攻撃を始めとする21世紀の安全保障環境上の新たな課題に効果的に対処するため、1999年以来11年ぶりに新たな戦略概念(「新戦略概念」)が採択され、NATOの役割を再定義した。
日本とNATOは、基本的価値及びグローバルな安全保障上の課題の解決に向けた責任を共有するパートナーであり、具体的な協力を着実に進展させている。
アフガニスタンでは、2007年以来、NATOのPRTと連携しつつ、日本が草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて非政府組織(NGO)などを支援する枠組みにより、16のPRTと連携し、100事業(2010年12月現在)が実施されている。また、日本は、NATOのアフガニスタン国軍(ANA)信託基金を通じ、アフガニスタンの治安維持を担うアフガニスタン国軍の医療に関する活動も支援している。11月の首脳会合の際に行われたアフガニスタン会合には、伴野外務副大臣が出席し、アフガニスタンの安定復興に関する日本の考え方を各国に説明した。
また、他の地域についても、ソマリア沖などの海賊対策のため日本が派遣している海上自衛隊は、NATO及びEUを含む他国艦艇に対し、情報の提供などの協力を行い、海賊行為の防止に貢献している。さらに、日本は、タジキスタンにおける不発弾処理プロジェクトの立ち上げに向け、NATO平和のためのパートナーシップ(PfP)信託基金に拠出するなど、NATOとの連携を深めている。日本は、引き続きNATOとの協力を一層強化していく考えである。
OSCEは、北米、欧州、中央アジアの56か国が加盟する世界最大の地域安全保障機構であり、日本は1992年から「協力のためのパートナー」として関与している。2010年12月には、11年ぶりにアスタナ(カザフスタン)で首脳会合が開催された。同首脳会合では、欧州安全保障情勢やOSCEの今後の役割に関して加盟国などの各国代表が演説を行った他、「アスタナ宣言」が採択され、OSCEの活動の諸原則やパートナー国との連携強化に関して一致した。日本からは伴野外務副大臣が参加して演説を行い、北朝鮮の拉致(らち)問題・核・弾道ミサイル、韓国に対する砲撃及び中国の透明性を欠いた国防力の強化などに言及し、東アジアの安全保障環境に対する参加国の理解を求めた。また、パートナー国として、今後もOSCEとの連携を深める旨を表明した。
CoEは、民主主義、人権、「法の支配」などの分野における国際社会の規準づくりに重要な役割を果たす、47か国が加盟する欧州の地域国際機関であり、東欧や中央アジア・コーカサス諸国などで民主化支援事業などを実施している。日本は、アジアで唯一のオブザーバー国として、様々な会合に積極的に参加した。また、10月にクロアチアにおいて開催された南東欧地域やコーカサス地域の国々における政治、経済、文化分野の次世代指導者育成を目的とする政治研究スクールに対する支援も行った。