日本とロシアは、アジア太平洋地域における重要な隣国である。両国が、変化の激しいこの地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築し、政治、経済、文化、国際場裏などのあらゆる分野において協力と連携を深めていくことは、両国の戦略的利益に合致するのみならず、同地域の安定と繁栄に貢献し得る。この観点から、2010年を通じ、日露間で3度の首脳会談及び2度の外相会談を含め、様々なレベルにおいて対話が行われた。
ロシアは、極東・東シベリア地域の開発を進め、アジア太平洋地域への統合を目指すとともに、経済の「近代化」を推し進める方針を打ち出し、日本との協力に一定の期待と関心を示している。しかし、2010年11月にはメドヴェージェフ大統領が、ソ連・ロシアの最高指導者として初めて北方領土の国後(くなしり)島を訪問するという極めて遺憾な出来事が起きた。また、ロシアは北方四島をも対象とした経済・社会発展プログラムに力を入れている。
こうした中で、日露間の最大の懸案である北方領土問題を解決して、平和条約を締結するとの日本政府の方針に変わりはない。同時に、日露双方がウィン・ウィンとなるような交渉を行っていくことが重要であり、この観点から、両国の間で合意の上作成された諸合意及び諸文書並びに法と正義の原則を基礎として領土問題の解決に取り組むとともに、経済を含むあらゆる分野において日露関係の発展を図っていく。
中央アジア・コーカサス諸国(1)については、アジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ地政学上の要衝に位置しており、同地域が平和と繁栄を維持することは、ユーラシア全体の利益である。また、同地域はエネルギー・鉱物資源を豊富に有することから、日本の資源・エネルギー供給の多様化の観点からも重要であり、同地域諸国との更なる関係強化を図る考えである。その意味で、2004年以来、日本が進めている「中央アジア+日本」対話の枠組みによる協力は、同地域の安定と地域内協力の促進に貢献するとともに、日本と同地域との幅広い協力関係を深めていくためにも有意義である。
1 中央アジア諸国は、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5か国、コーカサス諸国は、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジアの3か国を指す。