わが外交の近況

 

1985年版(第29号)

 

外務省

 

 

 

昭和60年版「わが外交の近況」の刊行にあたって

今年,昭和60年は,戦後40年という節目の年に当たります。40年前,大戦の荒廃の中から復興を始めた我が国は,今や,自由世界第2の経済力を持つ安定した民主主義国家としての地位を確立し,政治的,経済的に国際社会において重きをなすに至りました。この間,我が外交は,我が国,そして世界の平和と繁栄を確保するため,着実な努力を積み重ねてきました。「外交青書」も,昭和32年の創刊以来,今年で29号を数えます。

私は,外務大臣に就任して2年半余りの間,多くの外国要人と接し,我が国の国力と地位の高まり,世界各国の我が国に対する期待をひしひしと感じてまいりました。私は,外交を推進するに当たっては,誠意を尽くし相手の信頼を得ることが重要であると唱えております。我が国が,国際社会において信頼を得るためには,その国際的地位の向上に伴い,国際社会における自らの責任を自覚し,それを積極的に果たすよう努力することが必要であります。また,このような努力によって,初めて,我が国自身の平和と繁栄も維持されうると考えます。

ますます相互依存の高まる今日,我が国が,より積極的かつ創造的に国際社会に貢献するためには,経済的にも社会的にも開かれた国となることが必要です。これは21世紀へ向けての国民的な課題であり,国民と政府が一体になって,この課題に取組んでいかなければなりません。

この青書が,戦後40年を振り返り,今後の我が外交を展望する上で,国民各位の一助となれば幸いです。

昭和60年7月

外務大臣安倍晋太郎

 

本書の構成と内容

本書は,世界の情勢と我が国が行った外交活動の概要を1984年1月から85年3月に至る期間を中心に取りまとめたものであるが,本年が戦後40年に当たることから,この40年を振り返るとの観点も含めて編集されている。

第1部総説は,第1章において我が外交の基本課題について述べ,第2章で1984年を中心とした世界の主要な動きを概観し,さらに,第3章で戦後40年間の我が国の外交努力を振り返りつつ,1984年に行った主要な外交活動について説明している。

第2部各説は,1984年について,世界の諸地域ないし諸国の情勢及び我が国とこれらの諸地域・諸国との関係について述べ,次に我が国の関係する重要な国際問題について事項別に具体的に説明している。

第3部資料編の統計・年表は,1984年を中心にして,統計類については過去との比較を行い,また,年表については戦後40年間の主な動きを付け加えている。

 

 

目 次

 

第1部 総説

第1章 我が外交の基本課題

第2章 1984年の世界の主な動き

第3章 戦後の日本外交と1984年の我が国の主要な外交活動

第1節 対外経済関係一復興,繁栄,そして積極的貢献へ

第2節 国際連合40年の歩みと我が国の国連への協力

第3節 各国との関係の増進

第4節 経済協力活動一被援助国から主要援助国へ

第5節 官約移住から100年の歩み

第6節 諸外国との相互理解の増進

第2部 各説

第1章 各国の情勢及び我が国とこれら諸国との関係

第1節 アジア地域

第2節 大洋州地域

第3節 北米地域

第4節 中南米地域

第5節 西欧地域

第6節 ソ連・東欧地域

第7節 中近東地域

第8節 アフリカ地域

第2章 国際経済関係

第1節 総論

第2節 国際貿易

第3節 国際投資問題

第4節 国際通貨・金融問題

第5節 開発途上国との関係

第6節 資源エネルギー問題

第7節 科学技術及び原子力問題

第8節 食積・漁業問題

第9節 環境問題

第3章 経済協力の現況

第1節 総論

第2節 技術協力

第3節 無償資金協力

第4節 政府直接借款

第5節 国際機関を通ずる協力

第4章 国連における活動とその他の国際協力

第1節 政治問題

第2節 軍縮問題

第3節 経済問題

第4節 社会・人権・文化問題

第5節 行財政問題

第6節 海洋法に関する国際連合条約

第7節 国連専門機関

第5章 文化交流及び報道・広報活動

第1節 我が国の文化交流の現状

第2節 報道協力・広報活動の現状

第6章 邦人の渡航と保護・援助

第1節 概要

第2節 邦人の渡航

第3節 緊急事態・事件に際する邦人保護

第4節 邦人に対する援助

第5節 海外移住

第6節 外国人に対する査証

第7章 その他の活動

第1節 外交体制の整備充実

第2節 外交問題に関する記録の整理・刊行及び閲覧

第3部 資料編

I  資料

II  付表

III 年表