第5節 海外移住

1.新規移住の状況

84年は中南米の経済的混乱・カナダ等における不況等を反映して新規移住者数は約2,500人と伸び悩み,83年とほぼ同じレベルにとどまった。

2.移住施策

(1)国際協力事業団(JICA, Japan International Cooperation Agency)の業務

JICAは,移住希望者及び既移住者に対する援助を行っている。外務省は,84年度においてJICAの行う移住事業のため,20億81万円の交付金及び12億3,000万円の出資金を支出した。JICAは,右により,(イ)移住希望者の訓練・講習,(ロ)送出,(ハ)営農普及,(ニ)医療・教育,(ホ)道路・電化等の生活環境整備,(ヘ)事業資金の融資等の業務を行った。84年度におけるJICA扱いの移住者数は137人(うち渡航費支給82人)である。なお,JICAは83年3月の臨時行政調査会の答申に基づき,移住部門の整理・合理化と移住事業の見直しを求められ,83年11月以降3名の学識経験者に委嘱して移住事業の評価調査を実施し,その結果は84年6月に報告された。同報告は,海外移住のもたらした成果を高く評価するとともに,今後の移住事業の進め方について種々の建設的提言を行っている。

(2)都道府県の移住事業

外務省は,84年度において,都道府県による県費留学生その他の移住事業に対し,6,223万円の補助金を交付した。

(3)農業研修生派米事業

農業研修生派米協会は,66年以降,我が国の農村青年を2年間米国に派遣し,学課研修及び農業実習を通じ,農業分野において移住及び国際交流に資する青年の育成事業を行っているが,84年度において同事業のため,9,289万円の補助金を同協会に交付した。84年度における派遣者数は145人である。

(4)その他の移住関係補助事業

日本海外移住家族会連合会による移住者家族子弟研修及び初期移住者訪日団受入事業に対し84年度において4,054万円,海外日系人協会による日系留学生中央研修事業に対し401万円の補助を行った。

3.海外移住審議会

海外移住審議会(海外移住政策に関する政府の諮問機関)は,84年7月に第47回総会を開催し,海外移住における国の役割等について審議会の意見を取りまとめるため小委員会を設けた。同小委員会は,84年度中に2回の会合を開き検討を行った。

なお,同審議会は,84年7月施行された「総理府設置法の一部を改正する等の法律」により総理府から外務省に移管された。

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