第5節 行財政問題
1.国連は,政治・軍縮・経済・社会などのあらゆる分野で活発な活動を続けていることに伴い,これらを支える行財政面,すなわち,組織・経費・人事等の面で多くの課題を持つに至っており,これについての加盟各国の関心が高まっている。
2.第39総会では,84/85年計画予算の改訂(補正)が承認された。その支出総額は,約16億1,155万ドルで,前会計期間(82/83年)予算(約14億7,296万ドル)から,約9.4%,実質約1.5%の増大となっている。また84/85年当初予算(約15億8,716万ドル)からは約1.5%の増大となった。
上記改訂予算額は,当初承認額に比してそれほど大きな増大を示したものではなかったが,これはドル高・インフレ鎮静等によるところが大きい。他方,事務局の運営合理化努力は十分でなく,不要・不急な活動の承認等も依然として見られたため,同予算承認の票決に際し,我が国は,東西の主要先進国(米国,英国,西独,ソ連圏等)とともに反対投票を行った。
3.同総会では,国連通常予算次期(86-88年)分担率算出のための方法論に関する審議が行われた。
開発途上国(77か国グループ(G77))側が数の力を頼りに一方的な決議案を提出し,それの強行採択必至の状況となったが,我が国を中心とする一部先進国等の努力により最終的にはこれは回避され,結論作成は翌年に持ち越しとなった。
すべての加盟国が妥協しうる算出方法策定を目指してその後も協議を続けた結果・開発途上国側が実質的に大幅な譲歩を示し,同総会再開会期(85年4月)にて,ほぼ我が国の主張が盛り込まれた決議が無投票で採択された。
4.第39総会では,人事関係議題についても厳しい議論が展開された。
まず特筆すべきことは,7月に国際人事委員会(ICSC)が決定したニュー・ヨークの地域調整手当て指数引上げのうちの未実施分(12月実施予定分)につき,総会が実施停止を決定したことである。実施される場合には職員の所得の米国連邦公務員の所得水準との乖離が大きくなりすぎることを理由に財政的主要負担国は実施に強硬に反対したが,ICSCの決定は手続き的には正当なものであり,事務局・ICSCはG77の同調をも得て実施が当然との立場をとったため,決定を覆すことは不可能かと思われた。しかし,我が国が中心となって妥協案を作成,開発途上国説得に努めた結果,大勢の同意を取り付け得たものである。さらにこれと併せて,米国連邦公務員との給与較差の適正水準の検討がICSCに求められた。
また,退職者増加によって悪化している国連合同職員年金基金の収支改善措置が,年金基礎給表の改訂等,部分的ながらも導入されるとともに,その算出方法,定年延長等について引き続き検討されることとなった。
国連事務局職員の任用については,地理的配分の原則が再確認されるとともに,採用手続きの迅速化,競争試験制度の整備,キャリア・ディベロップメント(生涯啓発計画)の拡充等が図られることとなった。
なお,国連事務局に勤務する邦人職員は,その望ましい範囲が172~233名であるのに対し,84年6月末に113名(前年同期比7名増)である。