ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)

令和5年4月27日

1 「協議のあっせん」について

 子の連れ去り問題を解決するためには、両親が自発的に話し合った結果としての合意により友好的な解決を図ることが、子の福祉の観点から非常に有益です。
 そのため、日本におけるハーグ条約上の中央当局の役割を担う外務省ハーグ条約室では、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(以下「実施法」といいます。)第9条に基づき、申請者と被申請者(以下、申請者と被申請者を併せて「当事者」といいます。)が、話合いを通じて問題の友好的解決を図れるよう、その方法を紹介しています。
 具体的には、当事者間の連絡仲介の他、当事者間の協議のあっせんを行う裁判外紛争解決手続(ADR)機関の御紹介による当事者間の話合いの促進があります。

2 「ADR機関の御紹介」とは

(1)協議のあっせんにはどんなメリットがあるのでしょうか

  • ア 「協議のあっせん」とは、相対立する当事者に話合いの機会を与え、公正中立な第三者が双方の主張の要点を確かめ、相互の誤解を解くなどして、当事者間に和解を成立させて紛争を解決に導こうとする制度です。
  • イ 連れ去り・留置や面会交流が争われている場合、当事者の関係は、円満ではないことが普通です。また、何をどのように話し合ったら良いのか、どういったことを決めなければならないのか見当がつかず、そのために、最後は「返す・返さない」「会わせる・会わせない」の押し問答に陥ってしまうことも少なくないでしょう。
    そのため、当事者だけで話合いを行い友好的な解決を図ることが困難なケースが多くあります。
    しかし当事者双方に、子のために、話合いで解決を図りたいという意思があるのなら、協議のあっせんを利用することが可能です。
  • ウ 「協議のあっせん」における和解は、(1)相手方に出席を強制できない(あっせんに応じると言っていた相手方が翻意して欠席してしまうと、協議・解決ができない)、(2)合意しても和解契約書しかないと、合意が破られてもすぐに強制執行ができない、といったデメリットがあります。しかし他方で、(1)迅速かつ柔軟な期日の設定ができる(話合いを早く進めやすい)、(2)裁判手続きにおける和解よりも、柔軟な解決が可能(解決のための条件の選択肢が増える)というメリットがあります。
    また、あっせん手続において和解が成立した場合に、事後的に仲裁合意を書面によって作成することで(仲裁法第13条第2項ないし第5項)、仲裁手続に移行すれば、和解の合意内容を基にして、ADR機関による仲裁決定を得て債務名義(確定判決と同一の効力をもつもの。強制執行が可能となります。)とすることもできます(仲裁法第38条第1項)。
  • エ さらに、あっせん手続において和解が成立した場合、当事者間において当該和解と同一の内容で家事調停が成立したときは、当該調停は、確定判決又は確定した家事審判と同一の効力を有するものとして債務名義となります。当該和解が子の返還の合意を含むものである場合、実施法に基づく子の返還申立てが家庭裁判所になされ、当該子の返還申立事件において当事者間において上記和解と同一の内容で家事調停が成立したときは、当該子の返還の合意に係る記載部分は、確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有するものとして、子の返還の強制執行のための債務名義となります。

(2)あっせん手続の大まかな流れとは

あっせん手続の大まかな流れ

 あっせん手続の大まかな流れは次のようなものです(但し、ADR機関により、手続きには違いがありますので、詳細は、直接、個別のADR機関にお問い合わせください。)。

(3)ADR機関の探し方

ア 外務省の委託するADR機関を利用する場合

 外務省が現在委託契約しているADR機関を利用して協議を行うことができます(委託先リストはこちら)。
 この場合、ADR機関の利用手数料は外務省が負担するため、原則として利用者の費用負担はありません(ただし、各機関によって外務省の費用負担が受けられる支出項目や数量が異なりますので、詳しくは各機関までお問い合わせください。)。また、外務省の委託するADR機関を利用できるのは、原則として1回限りで、おおむね4期日(4回)程度の話し合いで合意の成立を目指す手続となります。

イ 自分で、信頼できる弁護士やADR機関を探して利用する場合

 特定の弁護士による仲介やその他利用したいADR機関等がある場合には、その機関を利用して協議のあっせんを行うことが可能です。
 この場合、ADR機関の利用手数料その他の費用は、御自身で負担していただきます。

(4)外務省の委託ADR機関の利用の流れとは

  • ア 委託先リストの中から、利用を希望するADR機関を選んでください。各ADR機関の特色等については、こちら(PDF)別ウィンドウで開く及び各機関のホームページ等を御参照ください。
  • イ 中央当局から、当事者双方に、利用を希望するADR機関名をお尋ねします。 御希望が合えば、ADR機関の連絡先をお伝えしますので、直接、そのADR機関に申立てをしてください。(中央当局がお手伝いするのは、ADR機関の決定までです。あっせん申立てやその後の具体的な手続きは、当事者がそれぞれ行ってください。)
  • ウ 利用希望のADR機関について、当事者の御希望が合わなかった場合、その旨を、当事者双方にお伝えします。その上で、他のADR機関を利用する意思があるかどうかお尋ねしますので、御希望をお知らせください。もし他のADR機関を利用する意思がある場合には、再度、利用を希望するADR機関について、中央当局が連絡の仲介を行います。
  • エ 利用希望のADR機関の調整については、中央当局がお手伝いしますが、それでも利用希望のADR機関について調整がつかなかった場合には、残念ながら、委託ADR機関を利用しての協議のあっせんを行うことができません。
  • オ ADR機関の調整ができ、協議のあっせんが行われる場合には、開始前及びその結果が出た時点で中央当局までお知らせください。

(5)協議のあっせんが行われない場合の流れはどうなるのでしょうか

 子の返還や面会交流を希望されている方は、希望すれば、裁判手続きを行うことができます。裁判を行う場合は、弁護士を依頼する等して、直接、裁判所に申立てをしてください。(中央当局は、裁判の申立てをお手伝いすることはできません。なお、法律専門家への依頼に関心をお持ちの方は、中央当局まで御連絡ください。(日本で裁判手続を行うための支援についてはこちら。))
 お子さんと同居している方は、上記の裁判手続きが行われる可能性があることに御注意ください。その対応について弁護士等法律専門家への御相談を希望される場合は、中央当局まで御連絡ください。

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