ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)
よくわかる!ハーグ条約
1 ハーグ条約の概要
ハーグ条約の正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といいます。国境を超えた子の不法な連れ去りや留置は、子にとって、それまでの生活基盤が突然急変し、異なる言語・文化環境へ適応しなくてはならなくなる上に、一方の親や親族・友人との交流が断絶されるなどの悪影響を与える可能性があります。また、一方の親による子の不法な連れ去りや留置があった場合には、子を一旦元の居住国(常居所地国)に戻し、子がそれまで生活を送っていた国の司法の場で子の今後(例えば、子の親権や、子が誰とどこに住むかなど)について決めることが望ましいと考えられます。ハーグ条約は、このような考えに基づき、子の利益の観点から、子の不法な連れ去りや留置があった場合に原則として子を常居所地国へ迅速に返還することや、国境を越えた親子の交流を実現するための手続及び国際協力について定めています。
- 常居所地国
「常居所地国」とは、子が「常居所」(人が常時居住する場所で、単なる居所とは異なり、相当長期間にわたって居住する場所をいうものと解されています。)を有していた国のことをいいます。例えば、子が生まれてからずっとA国に住んでいたのであれば、子の常居所地国はおそらくA国になるというのはイメージしやすいと思います。もっとも、裁判でどこが子の常居所地国かということが争われることもあり、その判断は裁判所にゆだねられます。連れ去られる前に子がいた国=常居所地国になるとは限らず、住んでいた期間、目的、住んでいたときの状況のほか、様々な要素を総合的に勘案して、裁判所が子の常居所地国を判断します。 - 不法な連れ去り・留置
「不法な子の連れ去り」とは、一方の親の監護の権利を侵害する形で、子を常居所地国から外国へ連れ出すことをいいます。
「留置」とは、子が常居所地国から出国した後に、その子の常居所地国への渡航が妨げられている状態のことをいいます。例えば、期限付きの約束で子を連れて外国に行き、約束した期限を過ぎても子を常居所地国に帰さない場合等が挙げられます(外国に行くことについて事前にもう一方の親から同意を得ていても、期限までに帰国させなければ留置に当たります。)。
ハーグ条約は、締約国に対して、中央当局の設置を義務付けています。中央当局をどの機関とするかは各締約国にゆだねられており、日本では中央当局を外務大臣とし、その実務を外務省領事局ハーグ条約室が担っています。
2 条約の適用対象(子の返還事案について)
子の返還について、ハーグ条約が適用されるのは次のような場合です。子や親の国籍は問われません。日本人同士の場合や、子や親が締約国の国籍を有していない場合でも、ハーグ条約の適用対象になり得ます。
- 子が16歳未満であること
- 子の常居所地国と、子が現在所在する国のいずれもがハーグ条約の締約国であること
- 子の連れ去りや留置によって、残された親の監護の権利が侵害されていること
他方、次のような場合は、ハーグ条約の適用対象とはなりません。
- 16歳以上の子の連れ去りや留置
- 同じ国の中での子の連れ去りや留置
- 締約国以外の国への子の連れ去りや留置
- 締約国以外の国からの子の連れ去りや留置
3 中央当局への援助申請
子が他のハーグ条約締約国から日本へ連れ去られた方・日本に留置されている方や、日本から他のハーグ条約締約国へ子を連れ去られた方・他のハーグ条約締約国に留置されている方は、ハーグ条約の中央当局に対し、子の返還についての援助の申請を行うことができます。また、ハーグ条約は、別の国に暮らす子との交流についても定めており、日本又は別の締約国にいる子との交流を希望する方は、ハーグ条約の中央当局に対し、子との交流についての援助の申請を行うことができます。外務省(日本国中央当局)では、このような事案の当事者双方に対し、さまざまな支援を行っています。
- 【注意】
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- ハーグ条約に基づく子の返還手続は、子を常居所地国へ返還するかどうかを決める手続であり、子の親権や監護権について決める手続ではありません。また、条約に基づく子の返還先は、子の常居所地国であり、残された親のもとに返すための手続ではありません。
- 子の返還や子との交流について最終的に判断するのは子が所在する国の裁判所等です。中央当局がこの点について決定をすることはありません。中央当局によって援助決定がなされたことは、子の返還や子との交流について何らかの決定がなされたことを意味しません。











