経済協力開発機構(OECD)

平成28年6月15日
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6月13日から14日までの間,濵地外務大臣政務官はベトナム・ハノイを訪問し,2016年「OECD東南アジア地域フォーラム」(OECDとベトナム政府との共催,6月14日開催。)に出席したところ,結果概要は以下のとおりです。

1 概要

今回の「OECD東南アジア地域フォーラム」は,「東南アジアにおける生産性及び包摂性の向上(Boosting Productivity and Inclusiveness in Southeast Asia)」をテーマに,4つのセッションを設け,フランツOECD事務次長,モクタンASEAN事務次長の他,ハディヤント・インドネシア財務大臣顧問(前財政政策庁長官)をはじめとするASEAN加盟国代表,OECD加盟国代表,ERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)等の地域国際機関,学識経験者,企業関係者など,幅広い層からの参加を得て,活発な議論が行われた。

濵地政務官は,本フォーラムにおいてオープニングスピーチを行った他,本フォーラムに出席したソン・ベトナム外務次官,フランツOECD事務次長,ハディヤント・インドネシア財務大臣専門補佐官との会談を行った。

2 濵地政務官によるオープニングスピーチ概要

ソン・ベトナム外務次官及びフランツOECD事務次長に続いて,濵地政務官から,オープニングスピーチを概要以下のとおり行った。

  • 日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミット(5月26日~27日開催)では,世界経済の低迷に対し,G7として,(1)経済政策による対応を協力して強化すること,(2)金融・財政政策と構造政策の3つの政策手段を総動員すること,特に,機動的な財政戦略の実施と構造政策を果断に進めることについて,協力して取組を強化することの重要性に合意した。
  • 日本が副議長国を務めたOECD閣僚理事会(6月1日~2日開催)では,「包摂的な成長に向けた生産性の向上」が論題とされ,成長の低迷の背景にある「生産性上昇率の低下」と「格差の拡大」への対応のため,教育・スキル開発,イノベーション,デジタル経済,貿易・投資等の果たす役割の観点から議論し,OECDとして,スキル,生産性及び包摂的成長の間の関係性への理解を深めつつ,活力あるビジネス環境と包摂的労働市場を育む取組を行っていくことを決定した。
  • 世界経済の成長センターであり,東アジアの政治的枠組みの核であるASEANとのパートナーシップは,日本にとって極めて重要であり,日本はASEAN統合を全面的に支持してきた。今般の「OECD東南アジア地域フォーラム」では,OECD閣僚理事会における議論を反映するとともに,ASEANには,域内格差の是正や連結性の改善等の課題があることから,「生産性の向上」と「包摂的成長」が議題となった。また,本フォーラムと併せ,6月12日,OECDは東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)と共同で,グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)に関するセミナーを開催し,活発な議論が行われた。
  • 日本は,先般のOECD閣僚理事会にて,16年ぶりにOECD開発センターに復帰する旨表明。同センターは,開発課題を議論する場として存在感を増しており,また同センターが発行する「東南アジア・中国・インド経済アウトルック」は,日本が議長国を務めた2014年の閣僚理事会で開始された「OECD東南アジア地域プログラム」の重要な要素。日本は,「OECD東南アジア地域プログラム」の精神である「Linking」,「Listening」,「Learning」の「3つのL」の考え方に基づき,OECD開発センターの知見を活用する手助けをはじめ,OECDと東南アジアとの橋渡し役として,引き続き両者の協力を全面的に支援していく。

3 濵地政務官と本フォーラム出席者との意見交換の概要

(1)ソン・ベトナム外務次官 

  • 濵地政務官から,「OECD東南アジア地域フォーラム」のベトナムでの開催に謝意を表明しつつ,目下日本政府及び日本企業がベトナムの潜在力と市場に大きく着目している旨述べた。また,ベトナムのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加を高く評価し,既存の日ベトナムEPAに加えて,さらに経済的な協力を進めていきたい旨述べた。さらに,今回,ベトナムが「OECD東南アジア地域フォーラム」をホストし,OECDのような国際的スタンダードを参考としつつASEAN統合を進めようとしていることに敬意を表する旨述べた上で,日本は16年ぶりにOECD開発センターに復帰し,OECDと新興国,開発途上国との橋渡し役を務めていきたい旨述べた。
  • これに対し,ソン次官から,「OECD東南アジア地域フォーラム」やG7伊勢志摩サミットを例に,世界における日本の役割が高まっている旨指摘があったほか,ベトナムにおけるインフラ整備やASEAN連結性を高める取組への日本の支援への謝意と今後の期待が表明された。
  • この他,両者は,南シナ海における力による一方的な現状変更に反対する旨で一致した他,構造改革やTPP等,幅広い分野について意見交換を行った。

(2)フランツOECD事務次長 

  • 濵地政務官から,OECDグローバル議員ネットワーク(OGPN)東京会合(本年4月12日~13日開催)の成果及び日本のOECD開発センターへの復帰について言及するとともに,タイ等メコン地域をはじめ,ASEAN諸国がOECDによるレビューや知見を活用することで,自由貿易や国際スタンダードが拡大し,同地域に自由化の機運が生まれることを期待する旨述べた。また,日本の強みである中小企業と質の高いインフラの分野で,ASEAN諸国との協力を今後強化したい旨,また地域の伝統的な親日感情を基礎として「OECD東南アジア地域プログラム」を進めたい旨述べた。
  • これに対し,フランツ事務次長から,日本のOECD開発センター復帰を歓迎する旨述べるとともに,「OECD東南アジア地域プログラム」における日本の主導的な役割を受け,OECD各地域プログラムの中小企業分野において,日本との協力を進めたい旨の希望が表明された。

(3)ハディヤント・インドネシア財務大臣専門補佐官

  • 濵地政務官から,「OECD東南アジア地域プログラム」運営グループ共同議長国として,インドネシアの持つ知見を活かした更なるリーダーシップへの期待を表明するとともに,今後は,日本が復帰したOECD開発センターと「OECD東南アジア地域プログラム」との連携を密にしていきたい旨述べた。また,ジョコ大統領の訪日を通じて,日インドネシア関係は新たなステージを迎えており,今後も様々な分野で両国関係を強化していきたい旨述べた。
  • これに対し,ハディヤント補佐官から,OECDスタンダードはASEAN経済共同体の質を高める上で貢献できるとして,OECD諸国による「OECD東南アジア地域プログラム」への支援に感謝するとともに,共同議長として今後も緊密に協力していきたい旨述べた。また,日本のOECD開発センター復帰に対する歓迎の意が表明され,東南アジアにおける活動でも協力していきたい旨の言及があった。
  • この他,両者は,インフラ協力や支援のスキーム等,幅広い分野について,意見交換を行った。

4 評価

  • (1)今回の「OECD東南アジア地域フォーラム」は,6月1日~2日に開催されたOECD閣僚理事会において重要なテーマとされた「生産性上昇率の低下」と「格差の拡大」を,東南アジアの文脈で正面から扱い,OECDの知見を東南アジアの経済統合・経済成長に活用していくとの観点から,時宜を得た画期的な会合となった。
  • (2)日本からは,(ア)濵地政務官が出席し,前年及び前々年に引き続き,OECD加盟国として唯一オープニングスピーチを行うことで,「OECD東南アジア地域プログラム」運営グループ共同議長国であり,東南アジア地域の今後の発展に資するOECDとの関係強化に対する日本のコミットメントを示しつつ,(イ)個別セッションにも日本からの参加者等を得て,具体的な議論の中で知的貢献を行う等,OECDと東南アジアとの関係強化の橋渡しを担う日本の役割を印象づける結果となった。
  • (3)濵地政務官が,フランツOECD事務次長,ハディヤント・インドネシア財務大臣専門補佐官をはじめ,OECD,ASEAN,インドネシア等域内国との間で会談や対話を行い,OECDの活動や,二国間関係,地域問題,世界経済やグローバルな課題等幅広い分野における意見交換を通じて,これら機関・諸国との一層の関係強化に貢献した。

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