世界貿易機関(WTO)

平成30年9月4日

前文

加盟国は,

ドーハ閣僚宣言に基づいて開始された交渉を考慮し,

ドーハ閣僚宣言(文書番号WT/MIN(〇一)/DEC/一)の第二十七項,二千四年八月一日の一般理事会において採択されたドーハ作業計画の決定(文書番号WT/L/五七九)の附属書D並びに香港閣僚宣言(文書番号WT/MIN(〇五)/DEC)の第三十三項及び同宣言の附属書Eに定める授権及び原則を想起し,及び再確認し,

物品(通過物品を含む。)の移動,引取り及び通関が一層迅速に行われることを目的として,千九百九十四年のガット第五条,第八条及び第十条の規定に関連する諸側面を明瞭なものとし,及び改善することを希望し,

開発途上加盟国,特に後発開発途上加盟国の特別のニーズを認識し,かつ,この分野における能力の開発のための援助及び支援を強化することを希望し,

貿易の円滑化及び関税法令の遵守に関する問題についての加盟国間の効果的な協力の必要性を認識して,

ここに,次のとおり協定する。

第一節

第一条 情報の公表及び入手可能性

  1. 公表
    1. 加盟国は,政府,貿易業者及び利害関係を有する他の者が知ることができるようにするため,次に掲げる情報を無差別な,かつ,容易に知ることができる方法で速やかに公表する。
      1. 輸入,輸出及び通過のための手続(港湾手続,空港手続その他の入国地点における手続を含む。)並びに所要の様式及び書類
      2. 輸入若しくは輸出について又はそれらに関連して課される全ての種類の税の実行税率
      3. 輸入,輸出若しくは通過について又はそれらに関連して政府機関により又は政府機関のために課される手数料及び課徴金
      4. 産品の関税上の分類又は評価に関する規則
      5. 原産地規則に関連する法令及び一般に適用される行政上の決定
      6. 輸入,輸出又は通過の制限又は禁止
      7. 輸入,輸出又は通過の手続の違反に対する罰則
      8. 異議の申立て又は審査の請求のための手続
      9. 一又は二以上の国との間の輸入,輸出又は通過に関する合意又はその一部
      10. 関税割当ての運用に関する手続
    2. これらの規定のいずれも,加盟国が自国の言語以外の言語により情報を公表し,又は提供することを要求するものと解してはならない。ただし,2.2の規定が適用される場合を除く。
  2. インターネットを通じて入手可能な情報
    1. 加盟国は,次に掲げる情報をインターネットを通じて入手可能なものとし,可能な限り,及び適当な場合には,これらの情報を更新する。
      1. 輸入,輸出及び通過のための手続(異議の申立て又は審査の請求のための手続を含む。)の概要(注)であって,輸入,輸出及び通過のために必要な実際的な手順を政府,貿易業者及び利害関係を有する他の者に周知するもの

        注 加盟国は,この概要についての法律上の制約を自国のウェブサイトにおいて明記する裁量を有する

      2. 当該加盟国の領域への輸入,当該加盟国の領域からの輸出又は当該加盟国の領域の通過のための所要の様式及び書類
      3. 自国の照会所の連絡先の情報
    2. 2.1(a)に規定する概要は,実行可能なときはいつでも,世界貿易機関のいずれかの公用語で入手可能なものとする。
    3. 加盟国は,更なる貿易関連の情報(関連する貿易関連法令及び1.1に規定する他の事項を含む。)をインターネットを通じて入手可能なものとするよう奨励される。
  3. 照会所
    1. 加盟国は,自国の利用可能な資源の範囲内で,政府,貿易業者及び利害関係を有する他の者からの1.1に規定する事項に関する妥当な照会に応じ,並びに1.1(a)に規定する所要の様式及び書類を提供するため,一又は二以上の照会所を設置し,又は維持する。
    2. 関税同盟の加盟国又は地域統合に関与する加盟国は,共通の手続に関して3.1に規定する要件を満たすため,地域的規模の共通の照会所を設置し,又は維持することができる。
    3. 加盟国は,照会への応答並びに所要の様式及び書類の提供に関する手数料の納付を要求しないよう奨励される。加盟国は,手数料及び課徴金がある場合には,その額を提供された役務の費用の概算額に限定する。
    4. 照会所は,要請の性質又は複雑性によって異なり得る加盟国が定める妥当な期間内に照会に応答し,並びに様式及び書類を提供する。
  4. 通報

    加盟国は,第二十三条1.1の規定に従って設置される貿易の円滑化に関する委員会(この協定において「委員会」という。)に対して,次の事項を通報する。

    1. 1.1(a)から(j)までに掲げる情報が公表された公的な場所
    2. 2.1の規定により情報を掲載したウェブサイトのURL
    3. 3.1に規定する照会所の連絡先の情報

第二条 意見の表明の機会,効力発生前の情報及び協議

  1. 意見の表明の機会及び効力発生前の情報
    1. 加盟国は,実行可能な範囲において,並びに自国の国内法及び国内法制に適合する方法により,貿易業者及び利害関係を有する他の者に対して,一般に適用される法令であって物品(通過物品を含む。)の移動,引取り及び通関に関するものの導入又は改正の提案について,意見を表明する機会及び適当な期間を与える。
    2. 加盟国は,実行可能な範囲において,並びに自国の国内法及び国内法制に適合する方法により,一般に適用される新たな又は改正された法令であって物品(通過物品を含む。)の移動,引取り及び通関に関するものについて,貿易業者及び利害関係を有する他の者が知ることができるよう,その効力発生前にできる限り速やかに公表され,又は他の方法により公に入手可能なものとされることを確保する。
    3. 関税率の変更,軽減する効果を有する措置,1.1又は1.2の規定の遵守の結果として効果が損なわれる措置,緊急事態の場合に適用される措置並びに国内法及び国内法制の軽微な変更については,1.1及び1.2の規定の適用から除外する。
  2. 協議

    加盟国は,適当な場合には,自国の国境機関と自国の領域内に存在する貿易業者その他利害関係を有する者との間の定期的な協議の機会を設ける。

第三条 事前教示

  1. 加盟国は,全ての必要な情報が記載された書面による要請を提出した申請者に対して,合理的な方法で,定められた期限までに事前の教示を行う。加盟国は,事前の教示を行うことを拒否する場合には,当該申請者に対して関連事実及びその決定の根拠を書面により速やかに通知する。
  2. 加盟国は,申請において提起された問題が次のいずれかに該当する場合には,申請者に対して事前の教示を行うことを拒否することができる。
    1. 政府機関,上級の審判所又は裁判所に付託された当該申請者の事案において既に係争中のものである場合
    2. 上級の審判所又は裁判所により既に決定されたものである場合
  3. 事前の教示は,当該事前の教示の基礎となった法律が変更され,又は事実若しくは状況が変化した場合を除くほか,当該事前の教示を行った後の合理的な期間,効力を有するものとする。
  4. 加盟国は,事前の教示を取り消し,修正し,又は無効とする場合には,申請者に対して関連事実及びその決定の根拠を書面により通告する。加盟国が事前の教示を遡及して取り消し,変更し,又は無効とすることができるのは,当該事前の教示が不完全な,不正確な,虚偽の又は誤解のおそれのある情報に基づいていた場合に限る。
  5. 加盟国が行う事前の教示は,当該事前の教示を要請した申請者について当該加盟国を拘束する。当該加盟国は,当該事前の教示が当該申請者を拘束する旨を定めることができる。
  6. 加盟国は,少なくとも次の事項を公表する。
    1. 事前の教示の申請に関する要件(提供すべき情報及び様式を含む。)
    2. 事前の教示を行う期限
    3. 事前の教示が効力を有する期間
  7. 加盟国は,申請者が書面で要請する場合には,事前の教示又は事前の教示を取り消し,修正し,若しくは無効とする決定の審査を行う(注)。

    注 この規定において,(a)審査は,当該事前の教示が実際に適用される前又は適用された後に,当該事前の教示を行った職員,官署若しくは当局,上級の若しくは独立した行政当局又は司法当局によって行われるものとし,(b)加盟国は,当該申請者に対して,次条1の規定を利用する権利を与えることを要求されない。

  8. 加盟国は,商業上の秘密の情報を保護する必要性を考慮しつつ,事前の教示に関する情報であって利害関係を有する他の者にとって重要な利益があると認めるものを公に入手可能なものとするよう努める。
  9. 定義及び範囲
    1. 事前の教示とは,申請の対象となる物品の輸入に先立ち,加盟国が申請者に対して提供する書面による決定であって,当該加盟国が当該物品に対しその輸入の時に次の事項について与える待遇を定めるものをいう。
      1. 当該物品の関税分類
      2. 当該物品の原産地(注)

        注 物品の原産地に関する事前の教示は,この協定及び原産地規則に関する協定の要件を満たす場合には,原産地規則に関する協定の適用上,物品の原産地の認定とすることができることが了解される。同様に,原産地規則に関する協定に基づく原産地の認定は,両方の協定の要件を満たす場合には,この協定の適用上,物品の原産地に関する事前の教示とすることができる。加盟国は,この条の要件が満たされる場合には,原産地の認定に関して原産地規則に関する協定に従って設けられた手続に加えて,この規定に基づく別の手続を設けることを要求されない。

    2. (a)に定義する事前の教示に加えて,加盟国は,次の事項に関して,事前の教示を行うよう奨励される。
      1. 特定の事実関係に基づいて,課税価額を決定する上で使用される適当な方法又は基準及びそれらの適用
      2. 関税の軽減又は免除に関する加盟国の要件の適用
      3. 割当て(関税割当てを含む。)に関する加盟国の要件の適用
      4. 加盟国が事前の教示を行うことが適当であると認めるその他の事項
    3. 申請者は,輸出者,輸入者若しくは正当な事由を有する者又はそれらの者の代理人とする。
    4. 加盟国は,申請者が自国の領域内において法的代理人を有し,又は登録することを要求することができる。その要求は,中小企業の特定のニーズに特別の考慮を払い,可能な限り,事前の教示を申請する資格を有する者の範囲を制限するものであってはならない。当該要求は,明確な,かつ,透明性があるものとし,恣意的又は不当な差別の手段となってはならない。

第四条 異議の申立て又は審査の請求のための手続

  1. 加盟国は,税関が行政上の決定(注)を行う対象となる全ての者が,自国の領域内において,次の(a)及び(b)の行為を行う権利を有する旨を定める。

    注 この条に規定する行政上の決定とは,個々の事例において特定の者の権利及び義務に影響を及ぼす法的効果を有する決定をいう。当該行政上の決定には,千九百九十四年のガット第十条に規定する行政上の措置又は加盟国の国内法及び国内法制に定める行政上の措置若しくは決定を行わなかったことが含まれることが了解される。そのような不作為に対処するため,加盟国は,1(a)に規定する異議の申立て又は審査の請求を行う権利に代えて,税関当局に対して速やかに行政上の決定を行うことを命令するための代替的な行政上の制度又は司法手続を維持することができる。

    1. 一の行政当局であって,当該行政上の決定を行った職員若しくは官署より上級のもの若しくはそれらから独立したものに対する行政上の異議の申立て又は当該行政当局による審査の請求
    2. 当該行政上の決定に関する司法上の異議の申立て又は審査の請求
  2. 加盟国は,司法上の異議の申立て又は審査の請求の前に,行政上の異議の申立て又は審査の請求が開始されることを自国の法令により義務付けることができる。
  3. 加盟国は,異議の申立て又は審査の請求のための自国の手続が無差別な態様で実施されることを確保する。
  4. 加盟国は,1(a)に規定する異議の申立て又は審査の請求についての決定が次のいずれかに該当する場合において,申立人が,行政当局若しくは司法当局に対して更なる異議の申立てを行い,若しくはこれらの当局による更なる審査を請求し,又は司法当局にその他の方法で訴える権利を有することを確保する(注)。

    注 この4のいかなる規定も,加盟国が,異議の申立て又は審査の請求について行政上の措置をとらないことをその国内法令に従い申立人にとって有利な決定であると認めることを妨げるものではない。

    1. 自国の法令に定める一定の期間内に行われない場合
    2. 不当に遅延することなく行われない場合
  5. 加盟国は,1に規定する者が,必要な場合には異議の申立て又は審査の請求のための手続を利用することができるよう,行政上の決定の理由を提供されることを確保する。
  6. 加盟国は,税関以外の関連する国境機関が行う行政上の決定についてこの条の規定を適用するよう奨励される。

第五条 公平性,無差別待遇及び透明性を向上させるためのその他の措置

  1. 管理又は検査の強化のための通達

     加盟国が,自国の領域内において人,動物又は植物の生命又は健康を保護するための通達又は指導の対象としている飲食物又は飼料に関して,自国の関係当局に対し,国境における管理又は検査の水準を向上させるための通達又は指導を発出する制度を採用し,又は維持する場合には,当該通達又は指導の発出,終了又は停止の方法について次に掲げる規律を適用する。

    1. 当該加盟国は,適当な場合には,危険度に応じた当該通達又は指導を発出することができる。
    2. 当該加盟国は,当該通達又は指導の基礎となった衛生植物検疫の条件が当てはまる入国地点にのみ,一律に適用されるように当該通達又は指導を発出することができる。
    3. 当該加盟国は,当該通達若しくは指導の契機となった事情が存在しなくなった場合又は事情の変化について一層貿易制限的でない態様で対応することができる場合には,当該通達又は指導を速やかに終了し,又は停止する。
    4. 当該加盟国は,当該通達又は指導を終了し,又は停止することを決定するに当たり,適当な場合には,その終了又は停止を無差別な,かつ,容易に知ることができる方法により速やかに公表し,又は輸出加盟国若しくは輸入者に速やかに通知する。
  2. 留置

     加盟国は,税関その他の権限のある当局による検査のため,輸入申告が行われた物品を留置する場合には,運送者又は輸入者に速やかに通知する。

  3. 試験手続
    1. 加盟国は,輸入申告が行われた物品が到着した時に採取された見本の最初の試験の結果が輸入者にとって不利なものであった場合には,要請に応じ,二回目の試験の機会を与えることができる。
    2. 加盟国は,当該二回目の試験を実施することができる研究所の名称及び住所を無差別な,かつ,容易に知ることができる方法により公表し,又は3.1に規定する機会が輸入者に与えられる際に当該輸入者にこの情報を提供する。
    3. 加盟国は,3.1の規定に基づいて二回目の試験が行われた場合には,物品の引取り及び通関のために当該試験の結果を検討するものとし,適当な場合には,当該試験の結果を受け入れることができる。

第六条 輸入及び輸出について又はそれらに関連して課する手数料及び課徴金並びに罰に関する規律

  1. 輸入及び輸出について又はそれらに関連して課する手数料及び課徴金に関する一般的規律
    1. 1の規定は,物品の輸入若しくは輸出について又はそれらに関連して加盟国が課する全ての手数料及び課徴金(輸入税,輸出税及び千九百九十四年のガット第三条の規定の範囲内の租税を除く。)について適用する。
    2. 手数料及び課徴金に関する情報については,第一条の規定に従って公表する。この情報には,適用する手数料及び課徴金,当該手数料及び課徴金を課する理由,責任を有する当局並びに納付の時期及び方法を含める。
    3. 緊急事態の場合を除くほか,新たな又は改正された手数料及び課徴金の公表とその効力発生との間には,十分な期間を与える。当該手数料及び課徴金は,それらに関する情報が公表されるまで,適用してはならない。
    4. 加盟国は,実行可能なときは,手数料及び課徴金について,それらの数及び種類を減少させることを目的として,定期的に検討する。
  2. 輸入及び輸出について又はそれらに関連して課する税関手続の処理のための手数料及び課徴金に関する特定の規律税関手続の処理のための手数料及び課徴金に関しては,
    1. その額は,対象となる特定の輸入若しくは輸出の業務について又はそれらに関連して提供された役務の費用の概算額を限度とする。
    2. 物品に関する税関手続の処理に密接に関係する役務について課される場合に は,特定の輸入又は輸出の業務に関連付けられることを要求されない。
  3. 罰に関する規律
    1. 3の規定の適用上,「罰」とは,加盟国の関税法令又は税関手続上の要件の違反に対して当該加盟国の税関当局が科する罰をいう。
    2. 加盟国は,関税法令又は税関手続上の要件の違反に対する罰が,自国の法律に基づき,当該違反について責任を有する者に対してのみ科されることを確保する。
    3. 科される罰は,事案に関する事実及び状況によるものとし,並びに違反の程度及び重大性に応じたものとする。
    4. 加盟国は,次の事項を回避するための措置を維持することを確保する。
      1. 罰及び税を評価し,及び徴収する際に生ずる利益相反
      2. 3.3の規定に適合しない罰の評価又は徴収の誘因を創出すること。
    5. 加盟国は,関税法令又は税関手続上の要件の違反について罰を科する場合には,当該罰が科される者に対し,当該違反の性質及び当該違反に対する罰の額又は範囲を定める適用される法令又は手続を特定する説明を書面により提供することを確保する。
    6. 関税法令又は税関手続上の要件の違反の状況にある者が加盟国の税関当局による当該違反の発見前に当該税関当局に対して当該状況を自発的に明らかにする場合には,当該加盟国は,適当なときは,その者に対する罰を確定する際に,当該罰を軽減する要素としてこの事実を考慮するよう奨励される。
    7. 3の規定は,通過運送に関する罰(3.1に規定するもの)について適用する。

第七条 物品の引取り及び通関

  1. 到着の前の手続の処理
    1. 加盟国は,物品の到着の時にその引取りを迅速に行うことを目的として,物品の到着の前に手続の処理を開始するため,輸入書類その他の所要の情報(積荷目録を含む。)の提出を認める手続を採用し,又は維持する。
    2. 加盟国は,適当な場合には,物品の到着の前に手続の処理を行うため,電子的な様式による書類の事前の提出について定める。
  2. 電子的な納付

     加盟国は,実行可能な範囲において,輸入及び輸出の時に課される関税,租税,手数料及び課徴金であって税関が徴収するものについて,電子的に納付することを選択することを認める手続を採用し,又は維持する。

  3. 関税,租税,手数料及び課徴金の最終的な決定からの引取りの許可の分離
    1. 加盟国は,物品の到着の前,到着の時又は到着の後できる限り速やかに関税,租税,手数料及び課徴金の最終的な決定が行われない場合においてその他全ての法的な規制が満たされているときに,当該決定の前に物品の引取りを許可することができる手続を採用し,又は維持する。
    2. 3.1の引取りを行うことができる条件として,加盟国は,次のいずれかを要求することができる。
      1. 物品の到着の前又は到着の時に決定した関税,租税,手数料及び課徴金の納付並びにいまだ決定していない額についての保証人による保証,保証金又は自国の法令に定める他の適当な保証手段の形態による保証
      2. 保証人による保証,保証金又は自国の法令に定める他の適当な保証手段の形態による保証
    3. 当該保証については,当該保証の対象となる物品について最終的に納付されるべき関税,租税,手数料及び課徴金の納付を確保するために当該加盟国が必要とする額を超えてはならない。
    4. 罰金又は科料を科することが必要とされる違反行為が発見された場合には,科され得る当該罰金又は科料については,保証を要求することができる。
    5. 3.2及び3.4に規定する保証が必要でなくなった場合には,当該保証は,解除される。
    6. この3の規定は,加盟国が物品を検査し,留置し,差し押さえ,没収し,又は当該加盟国の世界貿易機関協定の下での権利及び義務に反しない他の方法により処理する権利に影響を及ぼすものではない。
  4. 危険度に応じた管理手法
    1. 加盟国は,可能な限り,税関管理のために危険度に応じた管理手法の制度を採用し,又は維持する。
    2. 加盟国は,恣意的若しくは不当な差別又は国際貿易に対する偽装した制限を回避するような方法で,危険度に応じた管理手法を設計し,及び適用する。
    3. 加盟国は,危険度の高い貨物に税関管理及び可能な限りその他の関連する国境管理を集中させ,危険度の低い貨物の引取りの許可を迅速に行う。加盟国は,危険度に応じた管理手法の一部として,当該税関管理及び国境管理のため貨物を無作為に選定することもできる。
    4. 加盟国は,危険度に応じた管理手法を,適当な選定の基準による危険性の評価に基づいて適用する。当該選定の基準には,特に,統一システムコード,物品の性質及び品名,原産国,仕出国,物品の価額,貿易業者の遵守に関する記録並びに輸送手段の種類を含めることができる。
  5. 通関後の監査
    1. 加盟国は,物品の引取りを迅速に行うため,関税法令その他関連する法令の遵守を確保するための通関後の監査を採用し,又は維持する。
    2. 加盟国は,危険度に応じた方法により,通関後の監査の対象となる者又は貨物を選定するものとし,当該方法には,適当な選定の基準を含めることができる。加盟国は,透明性のある方法で,通関後の監査を実施する。ある者が監査の対象となり,当該監査につき明確な結果が得られたときは,当該加盟国は,その記録について当該監査を受けた者に対し,その結果,当該者の権利及び義務並びに当該結果の理由の根拠を遅滞なく通知する。
    3. 通関後の監査において得られた情報については,更なる行政上又は司法上の手続において使用することができる。
    4. 加盟国は,実行可能なときは,危険度に応じた管理手法を適用するに当たり,通関後の監査の結果を利用する。
  6. 引取りまでに要する平均的な時間の確定及び公表
    1. 加盟国は,特に世界税関機構(この協定において「WCO」という。)の引取りまでに要する時間の調査等の手段を利用し,定期的に,かつ,一貫した方法により,自国の物品の引取りまでに要する平均的な時間を測定し,及び公表するよう奨励される(注)。

      注 加盟国は,自国のニーズ及び能力に従い,引取りまでに要する平均的な時間の測定の範囲及び方法を決定することができる。

    2. 加盟国は,引取りまでに要する平均的な時間の測定に関する自国の経験(使用された方法,特定された障害及び当該調査が効率性に及ぼした影響を含む。)を委員会と共有するよう奨励される。
  7. 認定事業者のための貿易の円滑化に関する措置
    1. 加盟国は,特定の基準を満たす事業者(以下「認定事業者」という。)に対して,7.3の規定に従い,貿易の円滑化に関する追加の措置であって輸入,輸出又は通過の方式及び手続に関連するものを提供する。これに代えて,加盟国は,全ての事業者にとって一般的に利用可能な税関手続により当該措置を提供することができるものとし,別の制度を制定することを要求されない。
    2. 認定事業者としての資格を有するための特定の基準は,加盟国の法令又は手続に定める要件の遵守に関連するもの又は当該要件の不遵守の危険性に関連するものとする。
      1. 当該基準は,公表されるものとし,次のものを含めることができる。
        1. 関税法令その他関連する法令の遵守に関する適当な記録
        2. 必要な内部の統制を可能にするために記録を管理する制度
        3. 財務上の支払能力(適当な場合には,十分な保証の提供を含む。)
        4. サプライチェーン・セキュリティ
      2. 当該基準は,次の要件を満たすものとする。
        1. 同様の条件の下にある事業者の間において恣意的又は不当な差別をもたらすように設計し,又は適用しないこと。
        2. 可能な限り,中小企業の参加を制限しないこと。
    3. 7.1の規定に従って提供される貿易の円滑化に関する措置には,次に掲げる措置のうち少なくとも三つを含めるものとする(注)。

      注 7.3(a)から(g)までに掲げる措置は,全ての事業者にとって一般的に利用可能なものである場合には,認定事業者に対して提供されているものと認められる。

      1. 適当な場合には,書類及びデータの要求の低減
      2. 適当な場合には,物理的な検査の割合の低減
      3. 適当な場合には,引取りまでに要する時間の短縮
      4. 関税,租税,手数料及び課徴金の納期限の延長
      5. 包括的な保証の利用又は保証の軽減
      6. 一定の期間内の全ての輸入又は輸出について一括した税関申告
      7. 認定事業者の施設又は税関が許可した他の場所における物品の通関
    4. 加盟国は,国際的な基準が存在する場合には,当該基準に基づいて認定事業者に係る制度を構築するよう奨励される。ただし,当該基準が,追求される正当な目的を達成する方法として適当でなく,又は効果的でない場合は,この限りでない。
    5. 加盟国は,事業者に対して提供される貿易の円滑化に関する措置を強化するため,他の加盟国に対し,認定事業者に係る制度の相互承認について交渉する可能性があることを認める。
    6. 加盟国は,実施中の認定事業者に係る制度について,委員会において関連情報を交換する。
  8. 急送貨物
    1. 加盟国は,税関管理を維持しつつ,少なくとも航空貨物施設を通じて輸入される物品の迅速な引取りの許可を申請する者に対してそのような待遇を認めることができる手続を採用し,又は維持する(注1)。加盟国は,申請資格を制限する基準(注2)を採用する場合には,公表された当該基準において,申請者に対し,急送貨物に対する8.2に規定する待遇を申請する資格を有するための条件として,次に掲げることを義務付けることができる。

      注1 この規定は,加盟国が8.2に規定する待遇を与える既存の手続を有する場合には,当該加盟国に対し,別の迅速な引取りの許可の手続を導入することを要求するものではない。

      注2 当該申請に係るこのような基準を採用する場合には,当該基準は,加盟国が航空貨物施設を通じて輸入される全ての物品又は貨物について運用する要件に対して追加して課するものとする。

      1. 急送貨物の手続の処理に関し,十分な基盤を提供し,かつ,税関の費用を納付すること。ただし,当該手続の処理が専用の施設において行われるために当該加盟国が課する要件を当該申請者が満たす場合に限る。
      2. 急送貨物の到着の前に,引取りの許可のために必要な情報を提出すること。
      3. 8.2に規定する待遇を与えるに当たって提供された役務の費用の概算額を限度とする額の手数料を課されること。
      4. 内部のセキュリティ,物流管理及び集荷から配達までを追跡する技術の利用により,急送貨物に関する高い水準の管理を維持すること。
      5. 急送貨物について集荷から配達まで自ら行うこと。
      6. 物品に関する全ての関税,租税,手数料及び課徴金を税関当局に納付する責任を引き受けること。
      7. 関税法令その他関連法令の遵守についての良好な実績を有すること。
      8. 8.2に規定する待遇を与えることに特に関連する当該加盟国の法令及び手続上の要件の効果的な実施に直接に関連するその他の条件を遵守すること。
    2. 8.1及び8.3の規定に従い,加盟国は,次のことを行う。
      1. 第十条1の規定に従い急送貨物の引取りの許可のために必要な書類を最小限にすること及び特定の貨物について一括して提出した情報に基づいて引取りを許可することを可能な限り定めること。
      2. 通常の状況において,引取りの許可のために必要な情報が提供されているときは,到着の後可能な限り速やかに急送貨物の引取りを許可することを定めること。
      3. (a)及び(b)に規定する待遇をあらゆる重量又は価額の貨物について適用するよう努めること。もっとも,加盟国は,追加の輸入手続(申告書及びその裏付けとなる書類の提出並びに税の納付を含む。)を要求することを認められ,及び当該待遇が書類等の低価額の物品に限定されない場合には,物品の種類に基づいて当該待遇を限定することが認められる。
      4. 可能な限り,特定の定められた物品を除くほか,関税及び租税を徴収されない僅少の価額の貨物又は僅少の税額について定めること。千九百九十四年のガット第三条の規定に適合して輸入について課される付加価値税,物品税等の内国税に関しては,この(d)の規定を適用しない。
    3. 8.1及び8.2のいかなる規定も,加盟国が危険度に応じた管理手法の制度の使用に関連して実施することを含めて,物品を検査し,留置し,差し押さえ,没収し,若しくはその輸入の許可を拒否し,又は通関後の監査を実施することについての権利に影響を及ぼすものではない。さらに,8.1及び8.2のいかなる規定も,加盟国が引取りの許可の条件として追加の情報を提出すること及び非自動許可の要件を満たすことを要求することを妨げるものではない。
  9. 腐敗しやすい物品(注)

    注 この9の規定の適用上,腐敗しやすい物品とは,特に適当な保管条件を欠く場合において,その自然の特徴により急速に腐敗する物品をいう。

    1. 加盟国は,腐敗しやすい物品の回避可能な損失又は品質の低下を防止することを目的として,全ての法的な規制が満たされている場合には,次のことについて定める。
      1. 通常の状況においては,可能な限り最短の時間内における腐敗しやすい物品の引取り
      2. 例外的な状況において,適当と認めるときは,税関その他関係当局の執務時間外における腐敗しやすい物品の引取り
    2. 加盟国は,必要とされる検査の日程を決定するときは,腐敗しやすい物品を適切に優先する。
    3. 加盟国は,腐敗しやすい物品の引取りの許可を保留する間,当該腐敗しやすい物品を適切に保管するための手配を行い,又は輸入者がその手配を行うことを認める。当該加盟国は,当該輸入者が手配する保管施設について,自国の関係当局により承認され,又は指定されたものであることを要求することができる。当該保管施設への物品の移動(物品を移動する事業者に与えられる許可を含む。)は,必要な場合には,関係当局の承認を条件とすることができる。当該加盟国は,実行可能であり,かつ,国内法令に適合する場合には,引取りの許可のために必要な手続を当該輸入者の要請に応じ当該保管施設において行われるよう定める。
    4. 輸入加盟国は,腐敗しやすい物品の引取りが著しく遅延する場合において,書面による要請があるときは,実行可能な範囲においてその遅延の理由について通知する。

第八条 国境機関の協力

  1. 加盟国は,国境管理並びに物品の輸入,輸出及び通過を処理する手続について責任を有する自国の当局及び機関が,貿易の円滑化のために相互に協力し,及びその活動を調整することを確保する。
  2. 加盟国は,国境を越える貿易の円滑化のために国境通過点における手続を調整することを目的として,可能な限り,かつ,実行可能な範囲において,国境を共有する他の加盟国と相互に合意する条件に基づいて協力する。その協力及び調整には,次のものを含めることができる。
    1. 執務日及び執務時間の調整
    2. 手続及び方式の調整
    3. 共用施設の設立及び共有
    4. 共同管理
    5. ワンストップサービスによる国境管理所の設置

第九条 税関の管理下における輸入を予定している物品の移動

 加盟国は,実行可能な範囲において,全ての法的な規制の要件が満たされる場合には,輸入を予定している物品が,入国地点の税関官署から,引取り又は通関が行われることとなる自国の領域内の別の税関官署まで,自国の領域内を税関の管理下で移動することを認める。

第十条 輸入,輸出及び通過に関連する手続

  1. 手続及び所要の書類
    1. 輸入,輸出及び通過の手続の範囲及び複雑性を最小限にし,並びに輸入,輸出及び通過のための所要の書類を減少させ,及び簡易なものとするため,加盟国は,正当な政策上の目的その他の要素(例えば,事情の変化,関連する新たな情報,商慣習,技術の利用可能性,国際的な最良の慣行,利害関係を有する者からの意見)に考慮を払い,所要の手続及び書類を検討し,その検討の結果に基づき,適当な場合には,当該所要の手続及び書類が次に掲げる条件を満たすことを確保する。
      1. 物品,特に腐敗しやすい物品の迅速な引取り及び通関のために採用され,又は適用されること。
      2. 貿易業者及び事業者が法令を遵守するために要する時間及び費用を削減することを目的とする方法で採用され,又は適用されること。
      3. 政策上の又は問題となっている目的を果たすために二以上の代替的な措置が合理的に利用可能なものである場合には,最も貿易制限的でない措置が選ばれること。
      4. 必要でなくなった場合には,その一部であっても維持されないこと。
    2. 委員会は,適当な場合には,加盟国が関連情報及び最良の慣行を共有するための手続を定める。
  2. 写しの受理
    1. 加盟国は,適当な場合には,輸入,輸出又は通過の手続に必要な裏付けとなる書類の書面による又は電子的な写しを受理するよう努める。
    2. 加盟国の一の政府機関が当該書類の原本を既に保有している場合において,当該加盟国のその他の政府機関は,適用可能な場合には,原本の書類の代わりに,原本を保有する機関から書面による又は電子的な写しを受理する。
    3. 加盟国は,輸入の要件として,輸出加盟国の税関当局に提出された輸出申告書の原本又は写しを要求してはならない(注)。

      注 この2.3の規定は,加盟国が管理された物品又は規制された物品についての輸入の要件として書類(例えば,証明書,許可証又は免許証)を要求することを妨げるものではない。

  3. 国際的な基準の使用
    1. 加盟国は,この協定において別段の定めがある場合を除くほか,輸入,輸出又は通過の方式及び手続の基礎として関連する国際的な基準又はその一部を使用するよう奨励される。
    2. 加盟国は,自国の資源の範囲内で,適当な国際機関による関連する国際的な基準の作成及び定期的な再検討に参加するよう奨励される。
    3. 委員会は,適当な場合には,加盟国が国際的な基準の実施に関して関連情報及び最良の慣行を共有するための手続を作成する。また,委員会は,国際的な基準に関する作業について議論するため,関連する国際機関を招請することができる。委員会は,適当な場合には,加盟国にとって特に価値のある特別の基準を特定することができる。
  4. シングルウィンドウ
    1. 加盟国は,貿易業者が単一の入口を通じて参加する当局又は機関に対して物品の輸入,輸出又は通過のための所要の書類又はデータを提出することを可能とするシングルウィンドウを設置し,又は維持するよう努める。参加する当局又は機関が当該書類又はデータを審査した後,その結果は,時宜を得た方法で当該シングルウィンドウを通じて申請者に通知される。
    2. 所要の書類又はデータがシングルウィンドウを通じて既に受理された場合には,緊急事態その他公表されている限定的な例外の場合を除くほか,参加する当局又は機関は,同じ書類又はデータを要求してはならない。
    3. 加盟国は,シングルウィンドウの運用の詳細について委員会に通報する。
    4. 加盟国は,可能な限り,かつ,実行可能な範囲において,シングルウィンドウを支援するために情報技術を利用する。
  5. 船積み前検査
    1. 加盟国は,関税分類及び関税評価に関して,船積み前検査を利用することを要求してはならない。
    2. 5.1の規定の対象とならない他の種類の船積み前検査を利用する加盟国の権利を害することなく,加盟国は,自国が船積み前検査を利用することに関して新たな要件を導入し,又は適用しないよう奨励される(注)。

      注 この5.2に規定する船積み前検査とは,船積み前検査に関する協定の対象となる船積み前検査をいい,衛生植物検疫のための船積み前検査を排除するものではない。

  6. 通関業者の利用
    1. 加盟国は,この協定の効力発生から通関業者を利用することを義務付けてはならない。ただし,通関業者の特別な役割を現在維持する一部の加盟国の重要な政策上の関心事項を妨げてはならない。
    2. 加盟国は,通関業者の利用に関する措置を委員会に通報し,及び公表する。当該措置のその後のいかなる変更も,速やかに通報し,及び公表する。
    3. 加盟国は,通関業者の許可に関し,透明性のある,かつ,客観的な規則を適用する。
  7. 共通の国境手続及び統一的な所要の書類
    1. 加盟国は,7.2の規定に従うことを条件として,自国の領域における物品の引取り及び通関のために共通の税関手続及び統一的な所要の書類を適用する。
    2. この条のいかなる規定も,加盟国が次のことを行うことを妨げるものではない。
      1. 物品の性質及び種類又は輸送手段に基づいて自国の手続及び所要の書類に差異を設けること。
      2. 危険度に応じた管理手法に基づいて物品についての自国の手続及び所要の書類に差異を設けること。
      3. 輸入税から全部又は一部を免除するために自国の手続及び所要の書類に差異を設けること。
      4. 電子的な提出又は手続の処理を適用すること。
      5. 衛生植物検疫措置の適用に関する協定に適合する方法により自国の手続及び所要の書類に差異を設けること。
  8. 輸入が許可されなかった物品
    1. 衛生植物検疫規則又は強制規格を満たしていないことを理由として,加盟国の権限のある当局が輸入のために提示された物品の輸入を許可しない場合には,当該加盟国は,自国の法令に従い及びこれらに合致するように,輸入者に対し,輸出者又は輸出者が指定した他の第三者に向けて輸入が許可されなかった物品を再度積送し,又は返却することを認める。
    2. 8.1の規定に基づく選択が与えられた場合において,輸入者が合理的な期間内に当該選択を行わないときは,当該権限のある当局は,法令に適合しないこのような物品の処理のために異なる措置をとることができる。
  9. 物品の一時輸入並びに国内加工及び国外加工
    1. 物品の一時輸入

      加盟国は,特定の目的のために自国の関税地域に持ち込まれる物品が,特定の期間内に再輸出することが予定され,及び当該物品を使用することによる通常の価値の低下及び消耗を除くほか,いかなる変更も加えられなかった場合には,自国の法令の定めるところにより,輸入税の納付につき条件付で全額の又は部分的な免除を受けて当該物品が自国の関税地域に持ち込まれることを認める。

    2. 国内加工及び国外加工
      1. 加盟国は,自国の法令の定めるところにより,物品の国内加工及び国外加工を認める。国外加工が認められた物品は,当該加盟国の法令に従い,輸入税の全額の又は部分的な免除を受けて再輸入することができる。
      2. この条の規定の適用上,「国内加工」とは,特定の物品を,製造し,加工し,又は修繕し,その後に輸出することを予定していることを前提として,輸入税の納付につき条件付で全額の又は部分的に免除を受けているもの又は税が払い戻されるものとして加盟国の関税地域に持ち込むことができる税関手続をいう。
      3. この条の規定の適用上,「国外加工」とは,加盟国の関税地域内で自由に流通する物品を,外国において製造し,加工し,又は修繕するために一時的に輸出し,その後再輸入することができる税関手続をいう。

第十一条 通過の自由

  1. 通過運送に関する加盟国が課するいかなる規則又は手続も,
    1. その制定の契機となった事情若しくは目的が存在しなくなった場合又は事情の変化若しくは目的の変更について合理的に利用可能な一層貿易制限的でない態様で対応することができる場合には,維持されてはならない。
    2. 通過運送に対する偽装した制限となるような態様で適用されてはならない。
  2. 通過運送については,輸送料金又は通過に伴う行政的経費若しくは提供された役務の費用に相応する課徴金を除くほか,通過に関して課される手数料又は課徴金の徴収により条件を付してはならない。
  3. 加盟国は,通過運送に関する自主規制その他同様の措置をとろうとし,とり,又は維持してはならない。これは,輸送の規制に関連する現行及び将来の国内規則又は二国間若しくは多数国間の取極であって世界貿易機関の規則に適合するものの適用を妨げるものではない。
  4. 加盟国は,他の加盟国の領域を通過する産品に対し,その産品が当該他の加盟国の領域を通過することなく原産地から仕向地へ輸送される場合に許与する待遇より不利でない待遇を許与しなければならない。
  5. 加盟国は,実行可能なときは,通過運送のために物理的に別個の基盤(例えば,車道,係留場所,それらに類似するもの)を利用可能なものにするよう奨励される。
  6. 通過運送に関連する方式,所要の書類及び税関管理は,次のことのために必要以上に負担を重くしてはならない。
    1. 物品を特定すること。
    2. 通過の要件を満たすことを確認すること。
  7. 物品については,通過手続がとられ,加盟国の領域における出発地から出発することが許可された後,加盟国の領域内の通過が終了する目的地に到着するまでは,税関による課徴金又は不必要な遅延若しくは制限の対象としてはならない。
  8. 加盟国は,通過物品については,貿易の技術的障害に関する協定に定める強制規格及び適合性評価手続を適用してはならない。
  9. 加盟国は,物品の到着の前の通過に関する書類及びデータの事前の提出及び事前の手続の処理を認め,並びにこれらについて定める。
  10. 通過運送により貨物が加盟国の領域の出口にある税関官署に到着した後,通過の要件が満たされた場合には,当該税関官署は速やかに通過の業務を終了する。
  11. 加盟国が通過運送について保証人による保証,保証金その他の適当な金銭的若しくは非金銭的な(注)保証手段の形態で保証を要求する場合には,当該保証は,当該通過運送から生ずる要件が満たされることを確保するものに限定される。

    注 この11の規定は,運送手段を通過運送に対する保証として利用することができる既存の手続を加盟国が維持することを妨げるものではない。

  12. 加盟国が自国の通過の要件が満たされたと決定した後,保証は,遅滞なく解除される。
  13. 加盟国は,自国の国内法令に適合する方法で,同一の事業者について複数の取引を含む包括的な保証をとること又はその後の貨物に対して解除することなしに保証の更新を行うことを認める。
  14. 加盟国は,保証(単一の取引を担保するもの及び適当な場合には複数の取引を含むものを含む。)の設定のために自国が利用する関連情報を公に入手可能なものとする。
  15. 加盟国は,高い危険性が存在する状況がある場合又は保証の利用によって関税法令を遵守することを確保することができない場合にのみ,通過運送について税関による護送の利用を要求することができる。税関による護送について適用される一般規則は,第一条の規定に従って公表される。
  16. 加盟国は,通過の自由を強化することを目的として,相互に,協力し,及び調整するよう努める。その協力及び調整には,次の事項に関する了解を含めることができるが,これらに限定されるものではない。
    1. 課徴金
    2. 手続及び法的要件
    3. 通過制度の実際の運用
  17. 加盟国は,通過の作業を適切に機能させることに関して,他の加盟国が行う全ての照会及び提案の宛先となる国内の通過に関する調整者を任命するよう努める。

第十二条 税関協力

  1. 遵守及び協力を促進する措置
    1. 加盟国は,貿易業者が義務の遵守を認識することを確保すること,輸入者が適当な状況において不利益を受けることなく自ら是正することを認める自主的な遵守を奨励すること及び遵守しない貿易業者について一層厳しい措置をとるために遵守のための措置を適用することの重要性について合意する(注)。

      注 このような活動は,法令違反の頻度を低下させ,結果として法執行を遂行するための情報の交換の必要性を減少させる全般的な目的を有する。

    2. 加盟国は,関税法令の遵守に当たり,最良の慣行に関する情報(委員会を通じて共有する情報を含む。)を共有するよう奨励される。加盟国は,遵守のための措置を運用し,及びその実効性を高めるために技術的な指導又は能力の開発のための援助及び支援において協力するよう奨励される。
  2. 情報の交換
    1. 要請に応じ,及びこの条の規定に従い,加盟国は,申告が真実を述べたものであるかないか又は正確なものであるかないかについて疑う合理的な理由がある場合には,特定された事案における輸入申告又は輸出申告の確認のため,6.1(b)又は(c)に規定する情報を交換する。
    2. 加盟国は,当該情報の交換について自国の連絡先の詳細を委員会に通報する。
  3. 確認

    加盟国は,輸入申告又は輸出申告に関する適当な確認のための手続を行った後,かつ,入手可能な関連する書類を検査した後に限り,情報について要請を行う。

  4. 要請
    1. 要請加盟国は,被要請加盟国に対し,書面による又は電子的な手段を通じて,相互に合意する世界貿易機関の公用語その他相互に合意する言語により,次の事項を含む書面による要請を行う。
      1. 問題となっている事項(適当であり,かつ,入手可能な場合には,問題となる輸入申告に対応する輸出申告を特定する番号を含む。)
      2. 判明している場合には,当該要請に関係する者の名前及び連絡先の詳細と共に要請加盟国が情報又は書類を要請している目的
      3. 被要請加盟国が求める場合において,適当な場合には,確認のための手続をとったことの確認(注)

        注 この確認には,3の規定に基づいて行った確認のための手続についての適切な情報を含めることができる。当該情報は,確認のための手続を行った加盟国が特定した保護及び秘密の取扱いの程度に従うものとする。

      4. 要請する特定の情報又は文書
      5. 要請を行う官署を特定する事項
      6. 秘密の情報及び個人情報の収集,保護,利用,開示,保有及び処分を規律する要請加盟国の国内法及び国内法制の参照規定
    2. 要請加盟国が4.1の規定のいずれかの規定を遵守することができない場合には,要請においてその旨を明記する。
  5. 保護及び秘密の取扱い
    1. 要請加盟国は,5.2の規定に従い,
      1. 被要請加盟国が提供する全ての情報又は書類を厳重に秘密のものとして保有し,並びに6.1(b)又は(c)の規定に基づいて被要請加盟国が提供するその国内法及び国内法制に基づいて与えられる保護及び秘密の取扱いの程度と少なくとも同程度のものを与える。
      2. 被要請加盟国が書面による別段の合意をする場合を除くほか,問題となっている事項を処理する税関当局に対してのみ情報又は書類を提供し,及び要請に記載する目的についてのみ当該情報又は書類を利用する。
      3. 被要請加盟国の書面による明示的な同意を得ないで当該情報又は書類を開示してはならない。
      4. 個別の状況において,疑いを解消するための判断要素として被要請加盟国からの確認が行われていない情報又は書類を利用してはならない。
      5. 秘密の情報又は書類及び個人情報の保有及び処分に関して,被要請加盟国が設定する個別の具体的な条件を尊重する。
      6. 要請に応じ,被要請加盟国に対して,情報又は書類の提供の結果として問題についてとられた全ての決定及び行動を通知する。
    2. 要請加盟国は,自国の国内法及び国内法制に基づいて5.1の規定のいずれかの規定を遵守することができない場合には,要請においてその旨を明記する。
    3. 被要請加盟国は,4の規定に基づいて受領されたいかなる要請及び確認のための情報に対しても,当該被要請加盟国が自国の同様の情報に対して与える保護及び秘密の取扱いの程度と少なくとも同程度のものを与える。
  6. 情報の提供
    1. 被要請加盟国は,この条の規定に従い,速やかに次のことを行う。
      1. 書面による又は電子的な手段を通じて,書面により回答すること。
      2. 輸入申告書若しくは輸出申告書に記載された特定の情報又はこれらの申告書を,要請加盟国に求められる保護及び秘密の取扱いの程度の概要と共に入手可能な範囲で提供すること。
      3. 要請があったときは,入手可能な範囲で,輸入申告書若しくは輸出申告書の裏付けのために提出された書類(仕入書,包装明細書,原産地証明書及び船荷証券)に記載された特定の情報又は当該書類を,要請加盟国に求められる保護及び秘密の取扱いの程度の概要と共に提供すること。書面による手段によるものであるか電子的な手段によるものであるかを問わず,提出された形態によるものとする。
      4. 提供された書類が真正な写しであることを確認すること。
      5. 可能な限り,要請の日から九十日以内に,情報を提供すること又は当該要請に回答すること。
    2. 被要請加盟国は,自国の国内法又は国内法制に基づき,情報を提供する前に,特定の情報が当該被要請加盟国の書面による明示的な同意なしに捜査,司法上の手続又は税関以外の手続において証拠として使用されないことについての保証を要求することができる。要請加盟国が,その要求に応ずることができない場合には,被要請加盟国にその旨を明示するものとする。
  7. 要請の延期又は拒否
    1. 被要請加盟国は,次のいずれかの場合には,情報を提供するための要請の一部又は全部を延期し,又は拒否することができるものとし,このため,要請加盟国にその理由を通知する。
      1. 被要請加盟国の国内法及び国内法制に反映されている公共の利益に反することとなる場合
      2. 被要請加盟国の国内法及び国内法制により情報を開示することができない場合。この場合においては,被要請加盟国は,要請加盟国に対し,関連する特定の参照条文の写しを提供する。
      3. 情報の提供が,法令の実施を妨げることとなり,又は進行中の行政上若しくは司法上の捜査,訴追若しくは手続を妨げる場合
      4. 秘密の情報又は個人情報の収集,保護,利用,開示,保有及び処分を規律する被要請加盟国の国内法及び国内法制により輸入者又は輸出者の同意が要求され,当該同意が得られない場合
      5. 書類の保有のために被要請加盟国の法令が定める期限が経過した後に情報の要請が受領される場合
    2. 4.2,5.2又は6.2に規定する状況においては,当該要請の実施は,被要請加盟国の裁量に委ねられる。
  8. 相互主義

    要請加盟国は,被要請加盟国が行う同様の要請に応ずることができないと認める場合又はこの条の規定をいまだ実施していない場合には,当該要請においてその事実を明記する。当該要請の実施は,被要請加盟国の裁量に委ねられる。

  9. 行政負担
    1. 要請加盟国は,情報の要請に応ずる被要請加盟国の関連する資源及び費用負担に考慮を払う。要請加盟国は,要請の追求を通じて得られる自国の財政上の利益と情報の提供に当たり被要請加盟国が払う努力との間の均衡を考慮する。
    2. 被要請加盟国は,一又は二以上の要請加盟国から処理することができない数の情報の要請を受ける場合又は処理することができない範囲の情報の要請を受ける場合であって,合理的な期間内に当該要請に応ずることができない場合には,当該一又は二以上の要請加盟国に対して,自国の資源の範囲内における実際的な制限について合意するために優先順位を付与するよう要請することができる。相互に合意する方法がない場合には,当該要請の実施は,被要請加盟国の優先順位の付与の結果に基づき当該被要請加盟国の裁量に委ねられる。
  10. 制限

    被要請加盟国は,次のことを行うことを要求されない。

    1. 自国の輸入申告書,輸出申告書又は輸入若しくは輸出の手続に関する様式を修正すること。
    2. 6.1(c)に規定する輸入申告書又は輸出申告書と共に提出された書類以外の書類を要求すること。
    3. 情報を得るために照会を開始すること。
    4. 情報の保有期間を修正すること。
    5. 電子的な様式が既に導入されている場合において,書面による書類の様式を導入すること。
    6. 情報を翻訳すること。
    7. 情報の正確さを確認すること。
    8. 公私の特定の企業の正当な商業上の利益を害するような情報を提供すること。
  11. 認められていない利用又は開示
    1. この条の規定に基づいて交換した情報の利用又は開示の条件に違反する場合には,情報を受領した要請加盟国は,認められていない利用又は開示の詳細について速やかに情報を提供した被要請加盟国に通報し,次のことを行う。
      1. 違反を是正するために必要な措置をとること。
      2. 将来の違反を防止するための必要な措置をとること。
      3. (a)及び(b)の規定に基づいてとられた措置を被要請加盟国に通報すること。
    2. 被要請加盟国は,11.1に規定する措置がとられるまで,この条の規定に基づく要請加盟国に対する義務を停止することができる。
  12. 二国間の及び地域的な協定
    1. この条のいかなる規定も,加盟国が税関の情報及びデータの共有又は交換(自動的な方式のような安全性及び迅速性に基づくもの又は貨物の到着の前に行われるものを含む。)に関する二国間の,多数国間の又は地域的な協定を締結し,又は維持することを妨げるものではない。
    2. この条のいかなる規定も,そのような二国間の,多数国間の若しくは地域的な協定に基づく加盟国の権利若しくは義務を変更し,若しくは影響を及ぼすものと解してはならず,又は他の協定に基づく税関の情報及びデータの交換を規律するものと解してはならない。

第二節 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国に対する特別なかつ異なる待遇の規定

第十三条 一般原則

  1. 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,二千四年七月の枠組合意(文書番号WT/L/五七九)の附属書Dにおいて合意された態様並びに香港閣僚宣言(文書番号WT/MIN(〇五)/DEC)の第三十三項及び附属書Eに基づくこの節の規定に従い,この協定の第一条から前条までの規定を実施する。
  2. 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国には,この協定の規定の実施に資するため能力の開発のための援助及び支援(注)が,その性質及び範囲に従って供与されるものとする。この協定の規定の実施の程度及び時期は,開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国の実施する能力と関連させる。開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国が引き続き必要な能力を欠く場合には,当該開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,実施する能力を得るまで,関連する規定を実施することを要求されない。

    注 この協定の適用上,「能力の開発のための援助及び支援」は,技術上及び資金上の援助及び支援その他相互に合意する援助の形態をとることができる。

  3. 後発開発途上加盟国は,個別の開発上,資金上及び貿易上のニーズ又は行政上及び制度上の能力と両立する範囲内において,約束を行うことを要求される。
  4. これらの原則は,この節に定めるところにより適用される。

第十四条 規定の区分

  1. 規定の区分は,次のとおりとする。
    1. 区分Aには,開発途上加盟国若しくは後発開発途上加盟国が次条の規定に従って指定する規定であってこの協定の効力が生ずる時に実施するもの又は後発開発途上加盟国の場合にあってはこの協定の効力が生ずる時から一年以内に実施するものが含まれる。
    2. 区分Bには,開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国が第十六条の規定に従って指定する規定であって,この協定の効力が生じた後,移行期間を経過した後の日に実施するものが含まれる。
    3. 区分Cには,開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国が第十六条の規定に従って指定する規定であって,この協定の効力が生じた後,移行期間を経過した後の日に実施し,かつ,能力の開発のための援助及び支援の供与により実施する能力を得ることが必要であるものが含まれる。
  2. 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,個別に,A,B及びCの各区分に含まれる規定を自ら指定する。

第十五条 区分Aの通報及び実施

  1. 開発途上加盟国は,この協定の効力が生ずる時に,区分Aの約束を実施する。区分Aに指定する約束は,この協定の不可分の一部を成す。
  2. 後発開発途上加盟国は,この協定の効力発生の後一年を超えない期間内に,区分Aに指定した規定を委員会に通報することができる。後発開発途上加盟国の区分Aに指定する約束は,この協定の不可分の一部を成す。

第十六条 区分B及び区分Cの実施のための確定日の通報

  1. 開発途上加盟国は,自国が区分Aに指定しなかった規定について,この条に定める手続に従って実施を遅らせることができる。
    • 開発途上加盟国の区分B
      1. 開発途上加盟国は,この協定の効力が生ずる時に,自国が区分Bに指定した規定及びそれらの実施のためのそれぞれの目標日を委員会に通報する(注)。

        注 提出される通報には,通報する当該開発途上加盟国が適当であると認める更なる情報を含めることができる。加盟国は,実施について責任を有する自国の機関又は団体に関する情報を提供するよう奨励される。

      2. 開発途上加盟国は,この協定の効力発生の後一年以内に,自国が区分Bに指定した規定の実施のためのそれぞれの確定日を委員会に通報する。開発途上加盟国は,当該期限の前に当該確定日を通報するための追加的な時間が必要であると認める場合には,当該確定日を通報するために十分な期間の延長を委員会に要請することができる。
    • 開発途上加盟国の区分C
      1. 開発途上加盟国は,この協定の効力が生ずる時に,自国が区分Cに指定した規定及びそれらの実施のためのそれぞれの目標日を委員会に通報する。透明性の観点から,提出される通報には,当該開発途上加盟国が実施するために必要な能力の開発のための援助及び支援に関する情報を含めるものとする(注)。

        注 開発途上加盟国は,自国の貿易の円滑化の実施のための計画又は事業計画,実施について責任を有する自国の機関又は団体及び支援を提供するための取極を自国との間で既に有している拠出者に関する情報を含めることができる。

      2. 開発途上加盟国及び関係する拠出加盟国は,この協定の効力が生ずる時から一年以内に,既に有している取極,第二十二条1の規定に従って行われた通報及び(c)の規定に従って提出された情報に考慮を払い,区分Cの規定を実施することができる能力の開発のための援助及び支援の提供に必要な,維持された又は締結された取極に関する情報を委員会に提供する(注)。当該取極に参加する開発途上加盟国は,速やかに当該取極を委員会に通報する。また,委員会は,非加盟国の拠出者に対しても既存の又は締結された取極に関する情報を提供するよう招請する。

        注 当該取極は,第二十一条3の規定に適合するよう二国間で又は適当な国際機関を通じて,相互に合意した条件に基づくものとする。

      3. 拠出加盟国及び開発途上加盟国は,(d)に規定する情報を提供した日から十八箇月以内に,能力の開発のための援助及び支援の提供に係る進捗状況について委員会に通報する。開発途上加盟国は,同時に,実施のための確定日の表を通報する。
  2. 後発開発途上加盟国は,自国が区分Aに指定しなかった規定について,この条に定める手続に従って実施を遅らせることができる。
    • 後発開発途上加盟国の区分B
      1. 後発開発途上加盟国は,この協定の効力発生の後一年以内に,自国が区分Bに指定した規定を委員会に通報するものとし,後発開発途上加盟国のための最大限の柔軟性に考慮を払い,それらの実施のためのそれぞれの目標日を通報することができる。
      2. 後発開発途上加盟国は,(a)に規定する通報の日の後二年以内に,自国が指定した規定を確定すること及びそれらの規定を実施するためのそれぞれの期日を委員会に通報する。後発開発途上加盟国は,当該期限の前に当該確定日を通報するための追加的な時間が必要であると認める場合には,当該確定日を通報するために十分な期間の延長を委員会に要請することができる。
    • 後発開発途上加盟国の区分C
      1. 後発開発途上加盟国は,透明性の観点から,かつ,拠出者との取極を促進するため,この協定の効力が生じた一年後に,後発開発途上加盟国のための最大限の柔軟性に考慮を払い,区分Cに指定した規定を委員会に通報する。
      2. 後発開発途上加盟国は,(c)に規定する日から一年後に,自国が実施するために必要な能力の開発のための援助及び支援のための情報を通報する(注)。

        注 後発開発途上加盟国は,自国の貿易の円滑化の実施のための計画又は事業計画,実施について責任を有する自国の機関又は団体及び支援を提供するための取極を自国との間で既に有している拠出者に関する情報を含めることができる。

      3. 後発開発途上加盟国及び関係する拠出加盟国は,(d)に規定する通報の後二年以内に,(d)の規定に従って提出された情報に考慮を払い,区分Cを実施することができる能力の開発のための援助及び支援の提供に必要な,維持された又は締結された取極に関する情報を委員会に提供する(注)。当該取極に参加する後発開発途上加盟国は,速やかに当該取極を委員会に通報する。後発開発途上加盟国は,同時に,援助及び支援の取極の対象となる区分Cのそれぞれの約束を実施するためのそれぞれの目標日を通報する。また,委員会は,非加盟国の拠出者に対して既存の又は締結された取極に関する情報を提供するよう招請する。

        注 当該取極は,第二十一条3の規定に適合するよう二国間で又は適当な国際機関を通じて,相互に合意した条件に基づくものとする。

      4. 関連する拠出加盟国及び後発開発途上加盟国は,(e)に規定する情報を提供した日から十八箇月以内に,能力の開発のための援助及び支援の提供に係る進捗状況について委員会に通報する。後発開発途上加盟国は,同時に,実施のための確定日の表を委員会に通報する。
  3. 拠出者の支援がなく,又は能力の開発のための援助及び支援の提供に係る進捗がないために,1及び2に規定する期限内に実施のための確定日を提出するに当たって困難に直面している開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,当該期限の満了前に可能な限り速やかに委員会に通報すべきである。加盟国は,関係する加盟国が直面している特定の状況及び特別の問題に考慮を払い,そのような困難に対処するに当たり支援するために協力することについて合意する。委員会は,適当な場合には,当該困難に対処するための措置(必要に応じ開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国が確定日を通報するための期限を延長することによるものを含む。)をとる。
  4. 1(b)若しくは(e)に規定する期限又は後発開発途上加盟国の場合には2(b)若しくは(f)に規定する期限の三箇月前に,加盟国が区分B又は区分Cに指定した規定の実施のための確定日を通報していなかった場合には,事務局は,当該加盟国に対して注意を喚起する。開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,期限を延長するため,開発途上加盟国にあっては1(b)及び3の規定,後発開発途上加盟国にあっては2(b)及び3の規定を利用せず,実施のための確定日をいまだ通報していない場合には,開発途上加盟国にあっては1(b)若しくは(e)に規定する期限の後一年以内又は3の規定によって延長された期限の後一年以内に,後発開発途上加盟国にあっては2(b)若しくは(f)に規定する期限の後一年以内又は3の規定によって延長された期限の後一年以内に,自国が区分B又は区分Cに指定した規定を実施する。
  5. 委員会は,1,2又は3の規定に従い区分B及び区分Cの規定の実施のための確定日の通報があった日の後六十日以内に,区分B及び区分Cの規定の実施のための加盟国の確定日を含む附属書(4の規定に基づいて設定される期日を含む。)について了知することとし,それにより当該附属書はこの協定の不可分の一部を成す。

第十七条 早期警報制度(区分B及び区分Cの規定を実施する期日の延長)

    1. 開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国は,開発途上加盟国にあっては前条1(b)又は(e)の規定に基づいて,後発開発途上加盟国にあっては同条1(b)若しくは(e)又は同条2(b)若しくは(f)の規定に基づいて設定した確定日までに,区分B又は区分Cに指定した規定を実施するに当たり困難に直面していると認める場合には,委員会に通報すべきである。開発途上加盟国は,実施の期日が経過する百二十日前までに委員会に通報する。後発開発途上加盟国は,当該期日の九十日前までに委員会に通報する。
    2. 委員会に対する通報においては,開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国が関連する規定を実施することができると予想される新たな期日を示すものとする。また,当該通報は,当該実施が遅延すると予想される理由を示すものとする。当該理由には,当初に予測されなかった能力の開発のための援助及び支援の必要性又は能力の開発のための追加的な援助及び支援の必要性を含めることができる。
  1. 開発途上加盟国が要請する実施のための追加的な時間が十八箇月を超えない場合又は後発開発途上加盟国が要請する実施のための追加的な時間が三年を超えない場合には,要請する当該加盟国は,委員会が更なる措置をとることなく,当該追加的な時間が与えられる。
  2. 開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国は,最初の延長において2に規定する期間よりも長い期間の延長が必要であると認める場合又は二回目若しくはそれ以降の延長が必要であると認める場合には,最初の実施の確定日又はその後に延長された実施の確定日が経過する前,開発途上加盟国にあってはその経過の百二十日前までに,後発開発途上加盟国にあってはその経過の九十日前までに,1(b)に規定する情報を含む延長の要請を委員会に提出する。
  3. 委員会は,要請を提出する加盟国の特定の状況に考慮を払い,延長の要請を承認することについて好意的な考慮を払う。これらの状況には,能力の開発のための援助及び支援を得ることに関する困難及び遅延を含めることができる。

第十八条 区分B及び区分Cの実施

  1. 開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国は,第十六条1又は2及び前条に定める手続を満たしつつ,要請した延長が認められなかった場合又は当該開発途上加盟国若しくは当該後発開発途上加盟国が同条の規定に基づいて認められる延長を妨げる予見されなかった状況に直面する場合において,区分Cに指定した規定を実施する自国の能力が引き続き不足していると自ら評価するときは,第十三条2の規定に従い,関連する規定を実施することができない旨を委員会に通報する。
  2. 委員会は,速やかに,また,いかなる場合にも関連する開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国から通報を受領した後六十日以内に専門家部会を設立する。同部会は,問題を検討し,同部会が構成された日から百二十日以内に委員会に対して勧告を行う。
  3. 専門家部会は,貿易の円滑化並びに能力の開発のための援助及び支援の分野において高い資質を有する独立した五人の者で構成される。同部会の構成については,開発途上加盟国の国民と先進加盟国の国民との間の均衡を確保する。後発開発途上加盟国が関与する場合には,同部会には,少なくとも一人の後発開発途上加盟国の国民を含める。委員会が同部会の設立から二十日以内に同部会の構成について合意することができない場合には,事務局長は,委員会の議長と協議して,この3に定める条件に従って同部会の構成を決定する。
  4. 専門家部会は,能力が不足しているとの加盟国の自らの評価について検討するものとし,委員会に対して勧告を行う。後発開発途上加盟国に関する同部会の勧告について検討する場合には,委員会は,適当な場合には,持続可能な実施の能力の取得を促進する措置をとる。
  5. 加盟国は,開発途上加盟国が関連する規定を実施することができない旨を通報した時から委員会が専門家部会の勧告を受領した後最初に開催される委員会の会合まで,この問題について紛争解決了解に基づく手続を行うことができない。委員会は,当該会合において,専門家部会の勧告について検討する。後発開発途上加盟国については,それぞれの規定を実施することができない旨を委員会に通報した日から当該問題について委員会が決定を行うまで又は当該委員会の最初に開催される会合の日の後二十四箇月以内のいずれか早い方まで,当該規定について紛争解決了解に基づく手続は,適用しない。
  6. 後発開発途上加盟国は,区分Cの約束を実施する能力を喪失する場合には,委員会にその旨を通報して,この条に定める手続に従うことができる。

第十九条 区分Bと区分Cとの間の移動

  1. 区分B及び区分Cに指定する規定を通報した開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,委員会に対する通報により,それらの区分の間で規定を移動させることができる。加盟国は,区分Bから区分Cに移動させることを提案する場合には,能力の開発のために必要な援助及び支援に関する情報を提供する。
  2. 加盟国は,区分Bから区分Cに移動させた規定を実施するために追加的な時間を必要とする場合には,次のことを行うことができる。
    1. 第十七条の規定(自動的な延長の機会を含む。)を利用すること。
    2. 規定を実施するための追加的な時間並びに必要な場合には能力の開発のための援助及び支援(前条の規定に基づく専門家部会による検討及び勧告の可能性を含む。)に関する加盟国の要請について委員会が検討するよう要請すること。
    3. 後発開発途上加盟国の場合には,区分Bについて通報した最初の期日から四年を超える新たな実施日については,委員会による承認を必要とする。後発開発途上加盟国は,また,第十七条の規定を引き続き利用する。能力の開発のための援助及び支援は,区分Bから区分Cへの移動を行う後発開発途上加盟国にとって必要であることが了解される。

第二十条 紛争解決に係る規則及び手続に関する了解の適用のための猶予期間

  1. この協定の効力発生の後二年間,紛争解決に係る規則及び手続に関する了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条の規定は,開発途上加盟国が区分Aに指定した規定に関する当該加盟国に対する紛争の解決については,適用しない。
  2. この協定の効力発生の後六年間,紛争解決に係る規則及び手続に関する了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条の規定は,後発開発途上加盟国が区分Aに指定した規定に関する当該加盟国に対する紛争の解決については,適用しない。
  3. 後発開発途上加盟国が区分B又は区分Cの規定を実施した後八年間,紛争解決に係る規則及び手続に関する了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条の規定は,当該区分B又は区分Cの規定に関する当該後発開発途上加盟国に対する紛争の解決については,適用しない。
  4. 紛争解決に係る規則及び手続に関する了解の適用の猶予期間にかかわらず,千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条に従って行われる協議の要請を行う前に並びに後発開発途上加盟国の措置に関する紛争解決手続の全ての段階において,加盟国は,後発開発途上加盟国の特別な事情に特別の考慮を払う。これに関し,加盟国は,紛争解決に係る規則及び手続に関する了解に基づいて後発開発途上加盟国に係る問題を提起することについて妥当な自制を行う。
  5. 加盟国は,この条の規定に基づいて認められる猶予期間中,他の加盟国に対し,その要請に応じて,この協定の実施に関するあらゆる事項についての議論のための機会を十分に与える。

第二十一条 能力の開発のための援助及び支援の提供

  1. 拠出加盟国は,二国間で又は適当な国際機関を通じて,開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国に対して相互に合意する条件で能力の開発のための援助及び支援の提供を促進することについて合意する。この目的は,開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国が第一節の規定を実施するために援助することにある。
  2. 対象となる援助及び支援は,後発開発途上加盟国に対し,その特別のニーズに鑑み,その約束を実施するための持続可能な能力の構築を支援するために提供されるべきである。開発パートナーは,関連する開発協力の仕組みを通じて,並びに3に規定する能力の開発のための技術援助及び技術支援の原則に適合するように,既存の開発の優先事項を損なわない方法により,この分野における能力の開発のための援助及び支援を提供するよう努める。
  3. 加盟国は,この協定の実施に関する能力の開発のための援助及び支援を提供するために次に掲げる原則を適用するよう努める。
    1. 受益国及び受益地域の全体的な開発上の枠組み並びに関連し,かつ,適当な場合には進行中の改革及び技術援助の計画に考慮を払うこと。
    2. 関連し,かつ,適当な場合には,地域的及び小地域的な課題に取り組むための活動並びに地域統合及び小地域統合を促進する活動を含めること。
    3. 貿易の円滑化を改革するための民間部門による進行中の活動が援助のための活動の考慮要素に含まれることを確保すること。
    4. この援助の最大限の効果及び結果を確保するため,加盟国及び他の関係機関(地域的な経済共同体を含む。)の間の調整を促進すること。このため,
      1. 主として援助が提供される国又は地域において,パートナー加盟国と拠出者との間の調整並びに二国間及び多数国間の拠出者の間の調整は,技術援助及び能力の開発への関与における緊密な調整を通じ,援助計画における重複及び改革のための活動における一貫性の欠如を避けることを目標とすべきである。
      2. 後発開発途上加盟国については,後発開発途上国のための貿易関連の援助のための促進統合枠組みは,この(d)に規定する調整の過程の一部とすべきである。
      3. 加盟国は,また,この協定の実施及び技術援助において,首都及びジュネーブの双方の貿易担当官と開発担当官との間の内部調整を促進すべきである。
    5. 実施活動を調整し,及び監視するため,既存の国内の及び地域的な調整のための組織(ラウンドテーブル,協議グループ等)の利用を奨励すること。
    6. 開発途上加盟国に対して,可能な限り,他の開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国に対し能力の開発を提供し,並びにそのような活動を支援することを検討するよう奨励すること。
  4. 委員会は,少なくとも一年に一回,次のことを行うために会合を開催する。
    1. この協定の規定及び規定の一部の実施に関するあらゆる問題について議論すること。
    2. この協定の実施を支援するための能力の開発のための援助及び支援の提供に係る進捗状況(能力の開発のための十分な援助及び支援を受けていない開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国のものを含む。)について検討すること。
    3. 能力の開発のための進行中の援助及び支援並びに実施計画(課題及び成功を含む。)についての経験及び情報を共有すること。
    4. 次条に規定する拠出者による通報について検討すること。
    5. 2の規定の運用について検討すること。

第二十二条 委員会に提出される能力の開発のための援助及び支援に関する情報

  1. 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国に対して,第一節の規定の実施に関する能力の開発のための援助及び支援の提供に当たり透明性を与えるため,開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国がこの協定を実施することを支援する拠出加盟国は,この協定の効力発生の時及びその後は毎年,直前の十二箇月において支出された能力の開発のための援助及び支援並びに入手可能な場合には今後十二箇月間に約束した能力の開発のための援助及び支援に関する次に掲げる情報を委員会に提出する(注)。

    注 提供される情報は,能力の開発のための援助及び支援の提供における需要主導型の性質を反映するものとする。

    1. 能力の開発のための援助及び支援の概要
    2. 約束及び支払の状況及び額
    3. 援助及び支援の支払のための手続
    4. 受益加盟国又は必要な場合には地域
    5. 援助及び支援を提供する加盟国における実施機関

    当該情報は,附属書一に定める様式によって提供される。経済協力開発機構(この協定において「OECD」という。)の加盟国の場合には,提出する情報は,OECD債権国報告制度からの関連する情報に基づくものとすることができる。能力の開発のための援助及び支援を提供する立場にある旨を宣言する開発途上加盟国は,この1に規定する情報を提供するよう奨励される。

  2. 開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国を支援する拠出加盟国は,委員会に次のものを提出する。
    1. 第一節の規定の実施に関連する能力の開発のための援助及び支援の提供について責任を有する機関の連絡先(実行可能なときは,当該援助及び支援が提供される国又は地域における当該機関の連絡先の情報を含む。)
    2. 能力の開発のための援助及び支援を要請する手続及び仕組みに関する情報

    支援を提供する立場にある旨を宣言する開発途上加盟国は,この2に規定する情報を提供するよう奨励される。

  3. 貿易の円滑化に関連する能力の開発のための援助及び支援を利用する意図を有する開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,当該援助及び支援を調整し,並びにこれらの優先順位を決定することについて責任を有する部署の連絡先に関する情報を委員会に提出する。
  4. 加盟国は,インターネットを通じて,2及び3に規定する情報を提供することができるものとし,必要に応じて当該情報を更新する。事務局は,当該情報の全てを公に入手可能なものとする。
  5. 委員会は,関係する国際機関及び地域機関(国際通貨基金,OECD,国際連合貿易開発会議,WCO,国際連合地域委員会,世界銀行又はこれらの補助機関及び地域開発銀行を含む。)並びに他の協力機関に対し,1,2及び4に規定する情報を提供するよう要請する。

第三節 制度上の措置及び最終規定

第二十三条 制度上の措置

  1. 貿易の円滑化に関する委員会
    1. この協定により貿易の円滑化に関する委員会を設置する。
    2. 委員会は,全ての加盟国による参加のために開放されるものとし,議長を選出する。委員会は,この協定の運用又はこの協定の目的の達成に関する事項について協議する機会を加盟国に与えるため,必要に応じ及びこの協定の関連規定の定めるところにより,少なくとも年一回会合する。委員会は,この協定に基づく任務又は加盟国により与えられた任務を遂行するものとし,その手続規則を定める。
    3. 委員会は,必要とされる場合には,補助機関を設置することができる。全ての補助機関は,委員会に報告を行う。
    4. 委員会は,関連情報及び最良の慣行を加盟国が適当な場合に共有するための手続を作成する。
    5. 委員会は,この協定の実施及び運用のための入手可能な最良の助言を確保するため,並びに努力の不必要な重複を避けることを確保するため,貿易の円滑化の分野における他の国際機関(WCO等)と緊密な連絡を維持する。このため,委員会は,当該機関又はその補助機関の代表者を次のことを行うために招請することができる。
      1. 委員会の会合に参加すること。
      2. この協定の実施に関する特定の事項について議論すること。
    6. 委員会は,この協定の効力発生の時から四年後に,この協定の運用及び実施について見直しを行うものとし,その後は定期的に当該見直しを行う。
    7. 加盟国は,この協定の実施及び適用についての問題に関する質問を委員会に提起するよう奨励される。
    8. 委員会は,相互に満足すべき解決を速やかに図るため,この協定の下での特定の問題について加盟国間の臨時の議論を奨励し,及び促進する。
  2. 貿易の円滑化に関する国内の委員会

    加盟国は,国内の調整及びこの協定の規定の実施を促進するため,貿易の円滑化に関する国内の委員会を設置し,若しくは維持し,又は既存の仕組みを指定する。

第二十四条 最終規定

  1. この協定の適用上,「加盟国」とは,その加盟国の権限のある当局を含むものとする。
  2. この協定の全ての規定は,全ての加盟国を拘束する。
  3. 加盟国は,この協定の効力発生の日からこの協定を実施する。第二節の規定を利用することを選択する開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国は,同節の規定に従ってこの協定を実施する。
  4. この協定の効力発生の後にこの協定を受諾する加盟国は,この協定の効力発生の日から関係する期間を算定して,自国の区分B及び区分Cの約束を実施する。
  5. 関税同盟又は地域的な経済に関する取極の加盟国は,この協定に基づく義務を実施することを支援するための地域的な方法(地域機関の設立及び利用を含む。)を採用することができる。
  6. 世界貿易機関協定附属書一Aに関する解釈のための一般的注釈にかかわらず,この協定のいかなる規定も,千九百九十四年のガットに基づく加盟国の義務を減ずるものと解してはならない。さらに,この協定のいかなる規定も,貿易の技術的障害に関する協定及び衛生植物検疫措置の適用に関する協定に基づく加盟国の権利及び義務を減ずるものと解してはならない。
  7. 千九百九十四年のガットに基づく全ての例外規定及び免除(注)は,この協定の規定について適用する。世界貿易機関協定第九条3及び4の規定によって認められた千九百九十四年のガット又はその一部の適用の免除並びにこの協定の効力発生の日までに行われた全ての改正は,この協定の規定について適用する。

    注 千九百九十四年のガット第五条7及び第十条1の規定並びに千九百九十四年のガット第八条の注釈を含む。

  8. この協定に別段の明示的な定めがある場合を除くほか,紛争解決了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガット第二十二条及び第二十三条の規定は,この協定の下での協議及び紛争の解決について適用する。
  9. この協定のいかなる規定についても,他の全ての加盟国の同意なしには,留保を付することができない。
  10. 第十五条1及び2の規定に基づく開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国によるこの協定に附属する区分Aの約束は,この協定の不可分の一部を成す。
  11. 第十六条5の規定に基づき委員会が了知し,この協定に附属する開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国の区分B及び区分Cの約束は,この協定の不可分の一部を成す。

附属書一 第二十二条1の規定に基づく通報の様式

技術支援及び資金支援並びに能力の開発に係る資源の概要 約束又は支払の状況及び額 受益国又は(必要な場合には)地域 支援を提供する加盟国における実施機関 支援の支払のための手続

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