原子力の平和的利用

令和5年11月21日

1 概要

  • (1)2010年4月にワシントンDCで開催された核セキュリティ・サミットの後、第2回ソウル核セキュリティ・サミット(2012年)に向け、日米間で核セキュリティ分野での協力を推進するための作業グループを設置することについて検討がなされ、2010年11月の日米首脳会談でその設立が公表された。
  • (2)ソウル・サミット終了後は、同年7月に発足した民生用原子力に関する日米二国間委員会の傘下にある5つの作業グループの一つに位置付けられ、活動を継続している。第4回米国核セキュリティ・サミット(2016年3月)の核セキュリティ協力に関する日米共同声明においても日米核セキュリティ作業グループの活動継続が明記されている。
  • (3)これまでに、第1回会合を2011年1月(於:東京)、第2回会合を同年8月(於:サバンナリバー国立研究所)、第3回会合を2012年2月(於:東京)、第4回会合を2013年1月(於:サンディア国立研究所)、第5回会合を2014年6月(於:東京)、第6回会合を2015年7月(於:オークリッジ(Y-12)国立研究所)、第7回会合を2016年7月(於:東京)、第8回会合を2017年6月(於:アイダホ国立研究所)、第9回会合を2018年8月(於:東京)、第10回会合を2019年7月(於:ローレンス・リバモア国立研究所)、第11回会合を2022年11月(於:東京)、第12回会合を2023年8月(於:オークリッジ国立研究所) に開催。
  • (4)日本側からは、外務省、内閣官房(事態対処・危機管理担当室)、内閣府、原子力規制委員会、警察庁、文科省、資源エネルギー庁、国交省、海保庁及び防衛省が参加。米国側からは、国家安全保障会議(NSC)、エネルギー省、国務省、国防省、国土安全保障省、連邦捜査局(FBI)及び原子力規制委員会(NRC)が参加。

2 協力分野

 具体的な協力分野は、以下のとおり。日米間で議論した結果、これまでゴール11~14が新設され、ゴール4、8及び10が終了した。

(1)ゴール1:核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)での協力

 アジア初の核不拡散・核セキュリティの人材育成の中核拠点として、2010年12月に我が国の日本原子力研究開発機構(JAEA)に設立されたISCNにおける研修プログラムの開発等に米国が支援を提供してきた。DOEとの協力が深化し、ISCNにおける核セキュリティトレーニングコース、キャパシティビルディング、アウトリーチ活動が発展的に展開している。

(2)ゴール2:核鑑識、測定及び核検知に係る技術の研究開発

 JAEAと米国エネルギー省は、ウラン年代測定や核燃料の特徴分析、また、JAEAにおける国家核鑑識ライブラリーの試行版の立ち上げに関する4つの技術協力プロジェクトを通じて核鑑識能力を向上させた。さらに、新規プロジェクトを立上げ、日米間で協力してデータベースの拡充と核鑑識の技術的能力向上のための研究開発を共同で進める。

(3)ゴール3:保障措置の実施に係る協力

 2023年2月に、JAEAと米国エネルギー省は保障措置の開発協力35周年を迎えた。日米協力の成果がIAEAの国際的な保障措置の有効性の向上を促進させるとともに、新たな優先分野への協力の拡大を目指すこととなった。

(4)ゴール4:新規施設の設計における核セキュリティに関する良好事例の国際的共有(終了)

 両国関係者は相互に六ヶ所村及びサバンナリバーに所在する建設中のMOX(ウラン-プルトニウム混合酸化物)施設を見学。JAEAとサンディア国立研究所(SNL)はセキュリティ・バイ・デザインに係るハンドブックを第三国向けに共同開発し、この成果をもって日米間で合意の上、ゴール4を終了させた。

(5)ゴール5:輸送中の核物質

 日米両国は、2012年3月にハワイにおいて輸送セキュリティに関する机上演習を実施し、さらに2013年8月には、日本において机上演習の設計と活用に関するワークショップを開催した。このワークショップは、2013年11月に開催された輸送セキュリティに関するバスケット提案の関連行事を準備する上で参考となった。2015年4月には、日本が机上及び実働演習を行い、同年5月米国の机上演習を視察、同年10月米国は日本の陸上輸送に関する机上演習を視察、2016年2月米国は日本の実働演習を視察した。
 これらの演習及び数次の輸送セキュリティギフトバスケット会合の成果を踏まえ、昨年3月末の米国核セキュリティ・サミットにおいて、輸送セキュリティに関する共同声明及びグッド・プラクティス指針が発出された。更に2016年12月のIAEA核セキュリティ国際会議の機会に同ギフトバスケットをIAEA文書化した。

(6)ゴール6:高濃縮ウランの利用を低減するための原子炉の転換及び希釈作業の完了

 日本は、米国の協力を得て、JAEAの高速炉臨界実験装置(FCA)からの高濃縮ウラン(HEU)燃料とプルトニウム燃料の全量撤去、東京大学の弥生炉及び京都大字の臨界集合体実験装置(KUCA)からのHEU燃料の全量撤去を完了した。さらに、JAEAの材料試験炉臨界実験装置(JMTRC)等からのHEUの米国への輸送、京都大学KUCA等のHEUの低濃縮化について引き続き取り組んでいく。

(7)ゴール7:INFCIRC/225/Rev.5の実施

 原子力規制委員会と米国エネルギー省は、IAEAによる核物質及び原子力施設の防護に関する核セキュリティ勧告(INFCIRC/225/Rev.5)の理解の深化と国内規制への取入れを継続的に推進してきた。また、原子力規制委員会と米国エネルギー省は、更なる連携と情報交換のための一連の専門家会合も開催している。

(8)ゴール8:施設における盗取及び妨害破壊行為に対処する対抗部隊統合(終了)

 2010年12月、米国側は、警察、海上保安庁及び事業者が共同参加した六ヶ所再処理工場での核物質防護訓練を視察し、東京での武力対抗演習ワークショップに参加した。2011年11月、日本側は、米国のクーパー原子力発電所での武力対抗演習を視察し、米・原子力規制委員会本部でのワークショップに参加した。
 2013年には、米国原子力規制委員会とエネルギー省は、区分IIIの核物質を扱う施設の防護及び事案対応に必要となる要件に関して、日本の原子力規制委員会と協議を行った。2015年11月、日本側は、米国における緊急時対応訓練のメニュー項目となっているホスタイルアクションベース(HAB)の訓練に関して、米国のクリントン原子力発電所を訪問し、訓練の状況を視察し、この視察をもって日米間で合意の上、ゴールを終了させた。

(9)ゴール9:高濃縮ウラン及びプルトニウムの管理に係る共同研究:核物質の魅力度低減

 原子力施設に対する核セキュリティ上の3つの脅威である、核起爆装置(NED)及び放射性物質の飛散装置(RDD)の製造を目的とした盗取並びに原子力施設の妨害破壊行為に対し、包括的な核物質・放射性物質の魅力度評価手法を日米共同で開発している。核物質等の盗取に対する魅力度評価手法の開発成果の取りまとめを行うとともに、原子力施設の妨害破壊行為のリスク評価研究に取り組んでいく。

(10)ゴール10:核物質の魅力度低減に向けた取組のインパクト分析(終了)

 研究を主なテーマとするゴール9から分岐し、実際に管理を実施する上でのコストや技術的課題を検討するゴールとして設立されたが、当初のゴール9の研究チームの解散、インパクト分析実施の困難が判明し、日米間で合意の上、終了させた。

(11)ゴール11:規制管理外の核物質及びその他の放射性物質に係る事案への総合的国家対応の可能な枠組みに関する情報交換

 研究開発を主なテーマとするゴール2から分岐した、具体的な事案への対応のためのゴールとして設立。核物質及びその他の放射性物質に係る事案に、タイムリーかつ有効に対応すべく、政府全体の調整、犯罪捜査等につき日米間で知見を共有していく。

(12)ゴール12:放射線物質セキュリティに係る協力(直近の第12回会合で新設)

 既存のゴールでも扱われていたが、放射線物質セキュリティに焦点を当てたゴールとして設立。セキュリティ規制に関する知見の交換等を行っていく。

(13)ゴール13:阻止活動(直近の第12回会合で新設)

 事案発生時の対応を主とするゴール11に対し、予防を主とするゴールとして設立。阻止活動に関する双方の体制について日米間で知見を共有していく。

(14)ゴール14:核・放射性物質セキュリティに関する国際的な法的文書及び多国間イニシアティブに関連する協力(直近の第12回会合で新設)

 国際会議等の場において、条約の普遍化や実施強化の促進のための協力を、日米間で効果的かつ戦略的に行っていく。


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