核軍縮・不拡散
オーストラリア・グループ(AG)総会
2017年6月26日~30日,パリにおいて,オーストラリア・グループ(AG)(生物・化学兵器関連物資・技術の拡散防止のための国際輸出管理レジーム)の総会が開催されたところ,同総会後に発出された議長声明の主要点は以下のとおり。
1 総論
AG参加国は,生物・化学兵器の拡散に対抗するための取組を強化するとのコミットメントを再確認し,特に次の措置をとることに合意した。
- 化学兵器禁止条約(CWC)発効20周年にかかる声明を発出し,化学兵器の使用に対して強い懸念を表明した。
- 生物・化学兵器の製造及び運搬に利用され得る新たな技術,サイバー領域の悪用,科学の発展に関する意識向上を通じ,拡散者に先んじる取組を強化する。
- AGとして,テロリスト及び非国家主体による生物・化学兵器の製造,運搬,攻撃を可能にする物資,技術及び情報の拡散防止にさらに注力する。
- 無形技術移転,拡散金融,調達,積替え及び幅広い拡散ネットワークによりもたらされる課題に対する,産業界及び学界への関与強化を含む取組を共有する。
- 国内的・国際的に協働し,輸出管理の執行における経験,情報,捜査活動の結果を共有するとのコミットメントを新たにする。
- AG対話のより定期的な開催を通じたAG非参加国へのアウトリーチ,及び,全ての国が強固な輸出管理を実施し,国際的なベスト・プラクティスとしてAGの輸出管理を採用するよう奨励する継続的な取組を強化する。
2 技術的な事項
輸出審査及び執行の専門家が,生物・化学関連の機微な汎用資機材の拡散を防止する上での経験や方策について意見交換を実施した。専門家は,技術の急速な発展に追いつくための取組を共有し,より複雑化する拡散金融及びサイバー領域の悪用によりもたらされる課題について議論した。専門家は,AG規制リストに掲載されている生物・化学関連品目の管理を改善するための取組を継続し,また,研究所の安全を確保する取組を強化することに合意した。
更新されたAG規制品目リスト及びガイドラインは,AGのウェブサイトで閲覧が可能である。
3 アウトリーチ
AG参加国は,アウトリーチの対象の拡大とAG非参加国への関与強化の取組を歓迎し,2017年から2018年においても活発なアウトリーチの計画を継続することに合意した。また,貿易を阻害することなく,生物・化学兵器による攻撃を可能とする物資,技術及び情報の拡散を防止するための協調を強化する重要性について合意した。さらに,新たな技術の急速な発展や科学の発展に鑑み,産業界や学界へのアウトリーチの重要性を強調した。
2017年2月にブエノスアイレスで開催されたAG対話の成功を受け,AG参加国は,地域的なアウトリーチのモデルとして,また,全ての国が強固で効果的な輸出管理を実施し,国際的なベスト・プラクティスとしてAGの輸出管理を採用するよう奨励するため,AG対話のより定期的な開催を検討することに合意した。
4 新規参加
AGは,複数の国からの参加申請を歓迎し,これらの国と協議していくことに同意した。2017年に新規参加は承認されなかった。
5 AGガイドラインの遵守
AGは,可能な限り多くの国が遵守を宣言し,AGガイドライン及び規制リストを採用するよう奨励するとのコミットメントを再確認した。AG参加国は,遵守国にはAG参加国から輸出管理における世界的なベスト・プラクティスを実施するに当たって助けとなる幅広い情報及び支援が与えられることを認識し,優先事項として,発展途上の輸出管理措置及び主要な通過・積替え拠点を持つ国に関与していくことに合意した。
6 化学兵器の使用に関するAG声明
CWC発効20周年に当たり,AGは,6月30日,シリア及びイラクにおける化学兵器の使用に関する証拠及び疑いに対して強い懸念と遺憾の意を表明し,これが化学兵器の使用に反対する国際的規範に脅威を与えていることを非難する声明を発出した。AG参加国は,2013年のノーベル賞受賞によっても認識された,過去20年間にわたるCWCの実施にかかる化学兵器禁止機関(OPCW)の重要な業績を強調した。
7 国別の状況
AG参加国は,北朝鮮の生物・化学兵器能力に懸念を表明した。本年2月にクアラルンプール国際空港において発生した金正男殺害事案におけるVX神経ガスの使用により,化学兵器の脅威への対処は緊急性を増している。
AG参加国は,第1718号,2270号,2321号及び2356号を含む国連安保理決議により課された,北朝鮮への生物・化学兵器関連資機材及び技術の移転制限を,全ての国が完全に実施することの重要性を強調した。
AGは,シリア及びイラクの人々に対する恐ろしい化学兵器の使用は,CWCの普遍的遵守と効果的実施を通じ,誰によるものでも,どこでも,いつでも,化学兵器の使用を完全に禁止することを支持する必要性を強調するとの見解を再確認した。AG参加国は,6月29日付のOPCW事実関係調査ミッション(FFM)による報告書の発表,及び,「OPCW・FMMが,4月4日にシリアのハーン・シェイフーンで発生した事案において,神経剤であるサリンの使用を確認した」とするOPCW事務局長の声明に留意した。
国際社会がシリアによる国連安保理決議第2118号,2209号,2235号,2314号,2319号及びCWCの義務の履行を確信できるよう,AGは,シリアに対し,全ての化学兵器プログラムの完全で検証可能な廃棄を促進し,OPCW・FFM及びOPCW共同調査メカニズムに完全に協力するよう求める。
8 次回総会
次回総会は,2018年6月4日から8日までパリにおいて開催される。