核軍縮・不拡散

平成28年12月27日

 平成28年12月6~8日,ウィーンにおいてワッセナー・アレンジメント(WA)(注1)の第22回総会が開催されたところ,同総会の後に発出された議長声明の主要点は以下のとおり。

1 冒頭

 今次総会において,5回目のWAの全般的な機能の見直し作業が完了するとともに,1996年に発足したWAの20周年が祝われた。2011年に行われた前回の機能見直し以来,WAは,通常兵器及び関連汎用品・技術の移転における透明性とより大きな責任を促進することによって国際及び地域の安全と安定に貢献する努力を継続してきた。
 本年,WA発足20周年を記念する活動として,オーストリア外務省主催の記念行事(12月6日),技術的事項に係るワークショップ(6月),新たなアウトリーチ用資料の作成等が行われた。

2 2016年の取組

(1)WAを通じた輸出管理の重要性の確認

 WA参加国は,国際の平和と安定を保証する重要なツールとしての強固な輸出管理に対する力強い支持を再確認するとともに,そのために,WAが引き続き重要性を有すること及びWA設立時の原則を遵守することの重要性を確認した。

(2)地域情勢等に係る情報交換の実施

 WA参加国は,武器及び関連汎用品に係る情報交換,並びに紛争地域を含む特定の懸念のある地域への不法な武器の流入に関連したリスク評価を引き続き実施した。

(3)テロとの闘いのための輸出管理の強化等

 WA参加国は,グローバルなテロとの闘いの一環として,輸出管理をさらに強化すること,テロリストによる武器取引並びに通常兵器及び関連汎用品・技術の入手を防止するために協力を深化させることの重要性を更に強調した。また,WA参加国は,小型武器の拡散リスクに更なる特段の注意を払った。

(4)規制リストの改正等

 WA参加国は,厳しい環境に耐え得る反応装甲攻撃用の高出力の爆発物及び特定の電子部品(MRAM:磁気抵抗メモリ)をはじめとする多くの分野における新たな輸出管理に合意するとともに,生物剤及び放射性物質,情報セキュリティ並びに「技術」の概念及び使用に関する規制を明確化し,また,民生用のレーザー及びデジタルコンピュータ並びに音声符号化装置に関する規制を緩和した。これらの品目に関しては,民生市場製品の性能の急速な進歩を考慮しつつ,規制の閾値が見直された。更に,WA参加国は,規制リストの妥当性を今後とも確保すべく,包括的かつ体系的な規制リストの見直しを継続することに合意した。

(5)新たな文書の採択

 WA参加国は,「武器の仲介に関する効果的な立法のためのベストプラクティス」(2003年発出)及び「効果的な執行のためのベストプラクティス」(2000年発出)をアップデートするとともに,既存の文書の見直し・アップデートのための定期的な手続につき合意した。

(6)国内的な輸出管理の実施の強化に向けた議論

 WA参加国は,武器貿易のリスク評価,エンドユース及びエンドユーザーの保証,再輸出,無形技術移転の規制及びキャッチオール規制といった国内的な輸出管理の実施を強化する方策に関する議論などを行った。

(7)アウトリーチ・新規参加

 WA参加国は,アウトリーチの主たる目的を見直すとともに,非参加国に対する総会後のブリーフィング,技術的事項に係るブリーフィング及び二国間の対話を含む,将来のアウトリーチ活動に係る新たなガイドラインを採択した。また,産業界や学術界の関与及び輸出管理内部規程に関する情報の交換も実施した。更に,WA参加国は,包括的かつ非差別的なアプローチに基づき,今後とも現行の新規参加基準を適用することを確認した。

(8)原子力供給国グループ(NSG)及びミサイル技術管理レジーム(MTCR)との連携

 WA参加国は,NSG及びMTCRとの間で規制品目リストに関する非公式の連携を継続した。

3 結び

(1)武器貿易条約(ATT)との協力の継続

 ATTとWAの目的の整合性に鑑み,WA事務局は,2017年も,WAの目的に沿った形で,国際的な協力にWAが貢献するための機会の模索を継続する。

(2)次回総会の予定等

 次回のWA総会は,2017年12月にウィーンで開催される。フランスが来年の総会議長を務めることとなり,ジャン=ルイ・ファルコーニ大使を議長に任命した。また,スロベニアが一般作業部会,ルクセンブルクが専門家会合,英国が審査官・執行官会合の各議長国を努める。

(3)主要関連文書

 規制リストやベストプラクティス・ガイドラインを含むWAの主な文書は, WAのウェブサイト別ウィンドウで開くに掲載されている。

(注1)WAは,通常兵器及び関連汎用品・技術の過度の蓄積を防止することによって,地域及び国際社会の安全と安定に寄与することを目的とする国際的な輸出管理レジーム。

(注2)同総会にて発出された対外発表は,WAのウェブサイト別ウィンドウで開くに掲載されている。


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