核軍縮・不拡散
ミサイル技術管理レジーム(MTCR)釜山総会
パブリック・ステートメント(仮訳)
平成28年10月21日
- MTCRは2016年10月17日から21日まで,釜山において第30回総会を開催した。冒頭,林聖男(イム・ソンナム)韓国外交部第一次官(外務大臣代行)が歓迎スピーチを行った。総会の議事進行は,2017年の次回総会までMTCR議長を務めるハム・サンウク韓国外交部原子力・不拡散外交企画官(局長級)が担当した。
- MTCR参加国は,新規メンバーとして今回初めて総会に参加するインドを歓迎した。
- 今回の総会は,過去12か月にわたるMTCRの活動について検討と評価を行い,大量破壊兵器が運搬可能な無人システムの拡散を防止するという参加国の取組を強化することを主な目的として開催された。
- MTCR参加国は,国連安保理決議第1540号において認識されているとおり,大量破壊兵器(核・化学・生物兵器)とその運搬手段の拡散が国際の平和と安全に対する脅威であり続けていることを想起した。参加国は,大量破壊兵器の運搬手段に寄与し得る移転を規制することで拡散リスクを抑えるというコミットメントを改めて表明した。参加国は,2015年のロッテルダム総会以降のミサイル拡散の展開について詳細な情報交換を行った。
- MTCR参加国は,MTCRガイドラインとその附属書の規制リストが,ミサイル関連品目・技術の輸出管理における国際的な最適事例の基準となっていることを歓迎し,この基準を遵守するMTCR非参加国が増大していることや,いくつかの国連安保理決議にも同基準が盛り込まれていることに留意した。
- MTCR参加国は全ての国に対し,国内法及び国際法に合致した形で,大量破壊兵器運搬のためのミサイル計画に寄与し得る品目・技術の移転を防止するべく最大限の警戒を行うよう呼びかけた。参加国は,MTCRの目的を支持する関心国等に情報提供や支援を行うというコミットメントを確認した。
- 地域及び国際的な安全保障のため,MTCR参加国は全ての国に対し,MTCRガイドラインの遵守や,適切な国内法令及び法執行メカニズムの確立を通じて,不拡散というMTCRの目的を支持するよう呼びかけた。参加国は,可能な限り多くの国が同ガイドラインを遵守することが,大量破壊兵器運搬システムの拡散リスク抑制と国際安全保障に大きく寄与することを強調した。参加国は,2014年のオスロ総会以降,エストニアとラトビアがミサイル技術に関する輸出管理の国内基準として同ガイドラインの遵守を宣言したことを歓迎した。参加国は,その他の非参加国もガイドラインの自発的な遵守を宣言するとともに,MTCR附属書の全ての品目を同ガイドライン(附属書とガイドラインの事後的な改訂内容も含む)に従って規制するという政治的コミットメントをMTCR事務局に書面で正式に通知するよう呼びかけた。
- MTCR参加国は,宇宙計画を含む技術開発が大量破壊兵器の運搬手段に寄与し得ないものである限りは,それを妨げないようにMTCRガイドラインが作成されていることを強調した。
- MTCR参加国はまた,関連する地域機関等に対し,大量破壊兵器の運搬が可能なミサイルの拡散防止に関する輸出管理の役割に注意を払うよう促した。
- MTCR参加国は,世界的なミサイル拡散活動,特に中東,北東アジア及び南アジアで進んでおり,他の地域でのミサイル拡散活動をあおり得るミサイル計画に関する懸念を表明した。参加国は,MTCRの権限の範囲内で,北朝鮮やイランを含む様々な国の問題について幅広い議論を行った。前者(北朝鮮)については,国連安保理決議第1695号,第1718号,第1874号,第2087号,第2094号及び第2270号を,決議における弾道ミサイルに関する規定を念頭に置きながら,忠実に履行するとのコミットメントを確認した。特に,2016年2月以降の北朝鮮による弾道ミサイル発射の急激な増加を受け,北朝鮮の弾道ミサイル計画に寄与し得る移転の規制に際して最大限の警戒を行うという確固たるコミットメントを確認した。後者(イラン)については,国連安保理決議第2231号で承認された包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action)の履行の進展を歓迎するとともに,同決議を,その附属書Bにおける弾道ミサイルに関する規定を念頭に置きながら履行するとのコミットメントを確認した。参加国は,ミサイル計画の展開について意見交換を続けることで一致した。
- MTCR参加国は,共同議長国(オランダ及びルクセンブルク)のデ・クラーク大使・前議長によるアウトリーチ活動に謝意を表明した。新議長は,MTCRについての透明性を高め,その目的を促進し,これまでに訪問した国との対話のモメンタムを維持するため,フォローアップと更なるアウトリーチ活動や接触を行うよう奨励された。参加国はまた,国連安保理決議第1540号で求められているミサイル関連の輸出管理の履行に関してMTCR非参加国やその他の関心国等を支援し,それを議長に報告することについての個別的,集団的及び地域的な努力の継続を奨励した。
- MTCR参加国は,MTCRで進められている技術的な作業が極めて重要であることを再確認した。参加国は,機微な品目や技術に関する急速な技術発展や拡散者の調達慣行の変化が,これらに対する幅広い認識と効果的な行動を引き続き必要とすることを強調した。参加国は,設備,ソフトウェア及び技術に関するMTCR附属書が,ミサイル拡散を防止するMTCRの取組の礎であることを認識し,技術専門家会合(TEM)の業績に対して深い謝意を表明した。
- MTCR参加国はまた,審査・執行官会合(LEEM)と情報交換会合(IEM)の取組に深い謝意を表明した。参加国は両会合において,大量破壊兵器運搬手段の計画に資する調達活動・戦略や拡散動向,無形技術移転(ITT)がもたらす深刻なリスクと課題,ミサイル計画の主要な技術動向,規制リスト以外の品目に対するキャッチ・オール規制,仲介・通過・積替に関する問題やこれらを悪用した輸出規制回避の試みなど,数々の問題について議論を継続した。議論を通じて,不断の注意や,最良の実践例等の情報共有,参加国の輸出管理・執行の仕組みの最新化が極めて重要であり,大量破壊兵器運搬手段の拡散防止をめざす取組に大きな影響を及ぼすものであることが示された。
- IEM・LEEM・TEM合同会合において,MTCR参加国は積層造形技術(3Dプリンティング)が国際的な輸出管理の取組にとって大きな課題であるとの認識を共有し,今後も議題として取り上げることで一致した。
- MTCR参加国は,新規参加国に関する問題について意見交換を行い,個々の参加申請を詳細に議論した。この問題は今後も議題として取り上げられることとなった。
- MTCR参加国は,議長職の継続性や実効性など,MTCRの内部運営に関する数々の問題について検討を行った。アイルランドとアイスランドによる2017年~2018年共同議長国就任の申し出を歓迎し,承認した。
- MTCR参加国は,カナダ及び前共同議長国(オランダ及びルクセンブルク)の努力で改善された MTCRウェブサイト
を歓迎した。
- MTCRには以下の35か国が参加している:アルゼンチン,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブラジル,ブルガリア,カナダ,チェコ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,ハンガリー,アイスランド,インド,アイルランド,イタリア,日本,ルクセンブルク,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポーランド,ポルトガル,韓国,ロシア,南アフリカ,スペイン,スウェーデン,スイス,トルコ,ウクライナ,英国,米国。