核軍縮・不拡散
オーストラリア・グループ(AG)総会
2016年6月6日~10日,パリにおいて,オーストラリア・グループ(AG)(生物・化学兵器関連物資・技術の拡散防止のための国際輸出管理レジーム)の総会が開催されたところ,同総会後に発出された議長声明の主要点は以下のとおり。
1 総論
AGメンバーは,生物・化学兵器の不拡散を強化するために,特に次の措置をとることに合意した。
- 生物・化学兵器の開発に使用され得る新興の技術及び生物・化学テロの防止に対してAGの主力を注いでいくこと。
- 無形技術移転,拡散者による非リスト品目の調達,拡散金融,オンラインでの調達及び積替えによる課題への取組を共有すること。
- 生物・化学兵器を開発する能力の獲得を試みようとしている国及び非国家主体の脅威を強調すべく,AG非参加国,関連する国際的枠組並びに産業界及び学界に対するアウトリーチを拡大していくこと。
2 技術的な事項
生物・化学関連の機微な汎用資機材の拡散防止の取組を強化すべく,輸出審査及び執行の専門家の間で経験及び関連情報の共有が行われた。AGは,新興の技術に関連する拡散リスクについて検討を行った。今次総会に参加した専門家は,AGの規制品目リストに掲載されている生物・化学関連品目に適用される輸出管理を改善するための取組を継続した。更新されたAG規制品目リスト及びガイドラインは,AGのウェブサイトで閲覧が可能である。
3 アウトリーチ
AGメンバーは,生物・化学兵器の拡散を防止するための協力を更に促進するため,2016年から2017年においても国際的なアウトリーチ活動に関する積極的な計画を継続していくことで合意した。AGガイドラインの遵守の慫慂,増大する生物・化学テロの脅威への対策,キャッチオール規制の必要性並びに産業界及び学界に対するアウトリーチの重要性が特に強調された。合意された主な取組は以下のとおり。
- 国内の主要な産業界及び学界に対するアウトリーチに関する情報をAGメンバー間で共有すること。
- AG非参加国に対して,拡散を防止するために当該国が国内で行うアウトリーチ活動の重要性について注意を喚起すること。
- 拡散問題への認識向上のため,産業・学術分野の国際的な会合に対して直接に働きかけること。
4 AGガイドラインの遵守
AGメンバーは,カザフスタンが,2014年の総会における決定に従い,AGガイドラインを遵守する旨を公式に通知したことを評価した。このような遵守を促進していくことは,関連品目の輸出管理に関する国際的なベスト・プラクティスの指標としてAGの規制品目リスト及びガイドラインを使用する多くのAG非参加国との協力を強化するために重要である。また,輸出管理の実施により一貫性を高めることは,拡散者やテロリストにより活用され得る抜け穴を減少させる。
AGガイドラインを遵守する国に対しては,同国による輸出管理の国際的なベスト・プラクティスの実施を支援するため,AGメンバーから幅広い情報が提供される。AGメンバーは,全ての国に対し,AGガイドライン(その改訂を含む。)に従い,AG規制品目リストに掲載されている全ての品目について輸出管理を行うとの政治的なコミットメントをAG議長に対して書面により通知することを通じて,遵守を表明することを要請する。
5 生物兵器禁止条約(BTWC)及び化学兵器禁止条約(CWC)
AGメンバーは,生物・化学兵器を禁止する国際的な法的レジームの基礎であるCWC及びBTWCへの強い支持を重ねて表明した。また,両条約への未締結国に対し遅滞なく締結することを呼びかけるとともに,2016年11月に開催されるBTWCの第8回運用検討会議においてBTWCを強化することへのコミットメントを表明した。また,AGメンバーは,AGの取組がBTWC第3条の義務の遵守に直接貢献するものであること,及び同第10条の規定に完全に総ものであることを表明した。更に,AGメンバーは,第7回運用検討会議においてその整備が求められた「効果的な各国の輸出管理制度」に必要な要素を検討することを含め,来る運用検討会議を同第3条の履行強化に資するものとするよう強く求めた。
6 国別の状況
AGは,シリア及びイラク国民に対する化学兵器の使用により,CWCの普遍的な遵守及び効果的な実施を通じた全ての国による化学兵器の完全な廃絶の必要性が強調されたとの認識を確認した。AGは,2013年のシリアのCWC加入以降,同国による申告された化学兵器の廃棄に関する進捗を歓迎する。しかしながら,シリア及びイラクにおいて,化学兵器を用いた攻撃は継続している。AGは,当該攻撃の実施主体を特定するための,国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査メカニズムを通じた取組を支持する。AGメンバーは,国家及び非国家主体への関連資材及び技術の拡散防止に焦点を当てた取組を強化することに合意した。
AGはシリアに対し,シリアが国連安保理決議第2118号及び同第2209号並びにCWC上の義務を完全に履行しているとの認識を国際社会が持ちうるため,化学兵器開発計画の全てを完全かつ検証される形で破棄することを進めること,OPCWへの申告の曖昧さを解消することを強く求める。
AGメンバーは,北朝鮮により継続されている生物・化学兵器関連の活動に対し懸念を表明した。また,AGメンバーは,国連安保理決議第1718号や同第2270号といった関連する決議に規定される,生物・化学兵器関連の資機材及び技術の移転に係る制限を全ての国が遵守することの重要性を強調した。かかる制限に関するリスト(S/2006/853,S/2016/308)は,国連HPで入手可能であり,AGのウェブサイトの「Publication」欄でも入手可能となる。
7 今後の取組
2015年にウィルトンパークで開催された会合において提起された,AGの効率性及び戦略的な計画の改善に係る提案を議論した。AGメンバーは,同会合において提起された,AGの取組に係る非政府主体の見解が有益なものであるとの見解で一致した。
次回の実施会合中間会合,親発展技術専門家会合及びAGダイアローグをアルゼンチンで開催することに合意した。これは,AGが中南米・カリブ地域の非参加国により密接に関わる機会となる。
AG参加国は,2017年にパリで次回総会を主催するとのフランスの提案を受け入れた。