日本の安全保障と国際社会の平和と安定

2014年ハーグ核セキュリティ・サミット

国別報告書
日本

平成26年3月24日

I 総論

 日本は,核廃絶に向けた世界的な核不拡散・核軍縮の推進のため,核セキュリティの強化に,国内的にも国際的にも引き続き尽力する。これは,世界の平和と安定にこれまで以上に貢献するという日本の「積極的平和主義」の立場に沿うものである。

 原子力先進国である日本は,原子力の平和的利用に当たって,保障措置,原子力安全,核セキュリティの「3S」を確保する重要性を,2008年G8北海道洞爺湖サミットで提唱し,これまで一貫して推進している。日本における原子力利用は厳に平和的利用に限定されており,核物質が核兵器等に転用されないことを担保するための保障措置を,長年誠実に実施している。また,東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した日本は,原子力安全とともに核テロ対策にも役立つ教訓を,各国とも共有している。

 日本は,2013年12月に閣議決定した「世界一安全な日本」創造戦略において,原子力発電所へのテロ対策強化を重要課題と位置付けて取り組んでいる。また,2014年1月,核不拡散に関する「3つの阻止」として(1)「新たな核兵器国出現の阻止」(2)「核開発に寄与し得る物資,技術の拡散の阻止」(3)「核テロの阻止」を提唱した。多くの国が核テロ対抗能力を構築・強化することは,各国間での安全保障上の信頼醸成にもつながる。核セキュリティのシステム強化のため,関係者間で必要な規範を根付かせ,優れた取組から相互に学ぶことが重要である。

 また,唯一の戦争被爆国として日本は,核兵器国が核軍縮を推進し,保有する核兵器,兵器用の高濃縮ウラン及び分離プルトニウムを安全に保管すべきであると考える。また,軍事用核物質について,少なくとも民生用核物質と同程度のセキュリティが保たれるべきであると考える。核テロが起これば,核兵器が使用された場合の壊滅的な人道面での結末と同様の事態を招きかねず,そのような事態を生じさせないためにも,あらゆる核物質に関して核セキュリティを強化する必要がある。

 以上の点を踏まえ,日本は核セキュリティ強化のために以下の措置を実施している。

II 我が国の取組状況

1 高速炉臨界実験装置(FCA)等で保有する高濃縮ウラン及び分離プルトニウムの撤去及び処分

 日本は,米国との協議を積み重ね,日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速炉臨界実験装置(FCA)の高濃縮ウラン及び分離プルトニウムについて,その全量を撤去することを決定した。併せて,これら燃料を用いる予定であった最先端研究について,代替燃料を用いて日米の協力の下で行うこと,さらに,日本における原子力基礎基盤研究の継続的な推進に米国が協力することで一致した。この協力により,両国は核テロ対策と研究開発の双方を強化することができる。今回のサミットで本件に関する日米共同声明を発表した。
 また,京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の原子炉を低濃縮ウラン使用炉に転換することについての実現可能性に関する調査を継続しているほか,東京大学原子炉「弥生」(2011年3月永久停止)及び産業技術総合研究所(AIST)の高濃縮ウランの希釈,JAEAの材料試験炉臨界実験装置(JMTRC)の高濃縮ウランの米国への搬出については,実施に向けた取組を進めている。

2 プルトニウム管理

 我が国の原子力利用は,原子力基本法に則り,厳に平和の目的に限り行われてきている。プルトニウムについては,「利用目的のないプルトニウム,すなわち余剰プルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持する。この政策を具体化するために,プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮する。プルトニウムについては,電気事業者等がプルトニウム利用計画を公表して,その妥当性を我が国の原子力委員会が確認してきている。また,今後ともプルトニウムの適切な管理を徹底する。
 なお,日本は,NPT(核兵器不拡散条約)を遵守し,IAEA(国際原子力機関)の保障措置を受け入れ,我が国における平和的原子力活動に軍事転用がないとの保証を得つつ,全ての原子力活動を行っている。その上で,特にプルトニウムに関しては,その利用の透明性の向上を図ることにより国内外の理解を得ることが重要であるとの認識に基づいて,1994年から毎年「日本のプルトニウム管理状況」を公表してきている。直近では2013年9月に「平成24年末における日本の分離プルトニウム管理状況」を公表している。

3 核物質防護条約及びその改正

 日本は,現行の核物質防護条約を1988年10月に締結しており,1992年10月,同条約第14条1に基づき条約を実施する法令を寄託者であるIAEA事務局長に通報した。
 未発効の核物質防護条約改正について,ソウル・コミュニケやIAEAにおける関連の閣僚宣言及び総会決議に示されているとおり,本改正の早期発効による核物質及び原子力施設の防護に関する国際的な取組の強化は喫緊の課題である。日本としてこの改正の締結及び早期発効を極めて重要視しており,このような考えの下,2014年2月に核物質防護条約改正及び関連国内法を国会の承認を得るため提出した。
 なお,核テロ防止条約については,日本は2007年8月に締結している。

4 輸送セキュリティ向上に向けた取組

 日本は,2012年3月のソウル・サミットにおいて,核物質及び放射性物質の輸送分野における核セキュリティ向上に関するバスケット提案のリード国を務め,フランス・韓国・英国・米国と共に共同声明を発出した。2013年11月にはこれらの国々及びIAEAほかの参加を得て,世界核セキュリティ協会(WINS)及び世界原子力輸送協会(WNTI)の協力の下,輸送セキュリティに関する机上演習を実施した。今回のサミットで,上記5か国による共同声明とともに,他国の輸送セキュリティ強化にも参考となる点をまとめた机上演習報告書を発表した。
 国内では,原子力規制委員会の下に核セキュリティに関する検討会を設置し,INFCIRC/225/Rev.5の輸送分野の国内取入れ等,輸送セキュリティ向上に向けた取組について検討作業を加速している。
 また,2012年3月に米国ハワイにおいて,輸送セキュリティに関する日米共同机上演習を実施した。

5 IAEA及びその他国際的なイニシアティブとの協力

 日本は,IAEAが2002年に設立した核セキュリティ基金にこれまで累計で300万ドル以上を拠出している。今般新たに約113万ユーロを拠出することを決定した。日本はIAEAに対する支援を今後も継続していく。
 2013年7月にIAEAにより初めて開催された閣僚級による核セキュリティに関する国際会議には,日本から鈴木俊一外務副大臣が出席した。また,IAEAによる核セキュリティ・シリーズ文書の作成に対する技術的貢献を継続する。
 日本は,核テロリズムに対抗するためのグローバル・パートナーシップ(GICNT)及び大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ(GP)にその創設段階から積極的に参画してきている。また,国連安保理決議1540号に基づく委員会(1540委員会)に対し,決議の実施に関する報告を提出している。
 その他,WINS,WNTI等の国際NGOとも緊密に協力している。

6 IPPASミッションの受入れ

 日本は,IAEAの国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)ミッションを受け入れることが日本の核セキュリティを強化する上で望ましいと判断し,2013年12月に東京でIAEAによるワークショップを実施した上で,2014年1月,IAEAに対してミッションの派遣を正式に要請した。今後,2015年春までの受入れを想定し,IAEAと調整していく。

7 「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」(ISCN)を通じた人材育成・能力構築支援

 日本は,国際的な核セキュリティ強化に貢献するために,2010年4月のワシントン核セキュリティ・サミットにおけるコミットメントを実現させるべく,「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」(ISCN)を2010年12月にJAEAの下に立ち上げた。
 ISCNはIAEA等と協力しながら,主にアジア諸国の規制当局者等を対象に,核物質防護実習フィールド施設やバーチャル・リアリティー施設などを活用したトレーニング等を実施し,各国及び国内の人材育成・能力構築支援を行ってきている。
 ISCNは,活動を開始してからの3年間で,国内外から1500人以上に対して,原子力の平和的利用に関するセミナーや核物質防護に関するトレーニング等を実施した。今後もこうした貢献を継続・強化していく。
 また,このような活動の実施に当たっては,世界各国・地域の研究拠点との連携・協力も重要であり,IAEA等の場を通じて引き続き推進していく。これに関連して,日本のJAEAとIAEAとの間での協力を更に進めるべく,2013年9月,両者間のプラクティカル・アレンジメントを作成した。

8 核鑑識・核検知研究

 JAEAでは,核セキュリティ強化に有益な核鑑識及び核検知の最新技術の研究を行っている。核鑑識については,ウラン年代測定,核鑑識のための核燃料の特徴分析,核鑑識国内ライブラリーの構築等について,日米共同研究を実施している。また,核検知については,ガンマ線を使って核物質の量を正確に測定する技術の試験装置が近く稼働する。また,2014年1月,「核不拡散と核セキュリティのための核物理とガンマ線源」と題する国際シンポジウムをISCNで開催した。ガンマ線による非破壊測定技術に焦点を合わせたシンポジウムとしては,世界初である。

9 セキュリティ・バイ・デザインのハンドブック作成

 JAEAは米国サンディア国立研究所と共に,原子力施設の新規設計プロセスにおける初期段階から核セキュリティを考慮に入れる上でのベスト・プラクティスを特定する共同研究プロジェクトを行い,その成果として,第三国向けの「セキュリティ・バイ・デザイン・ハンドブック」を作成した。今後,両者は共同で国際社会に共同で働きかけを行っていく。

10 原発テロ対処合同訓練

 日本は,従来から,関係機関が合同で原子力発電所等を対象としたテロ対処合同訓練を着実に実施してきた。東京電力福島第一原子力発電所事故後には,関係機関が実践的な共同訓練の実施等において更に連携を強化することとし,2013年中は警察と海上保安庁及び事業者による合同訓練を18の原子力発電所等で30回,警察と自衛隊による原子力発電所を利用した共同実動訓練を2回実施した。さらに,警察と自衛隊は原子力発電所を含む重要施設へのテロに対処するための治安出動を想定した共同実動訓練を2013年中に30回実施している。こうした具体的な核セキュリティ対策を今後とも継続していく。

11 独立した原子力規制機関の設立

 日本は,2012年9月,原子力規制機関を強化するため,原子力利用推進機関から独立した行政機関として原子力規制委員会を設置した。この原子力規制委員会は,核セキュリティ,原子力安全及び保障措置を一元的に扱う組織であり,核セキュリティ分野については,規制業務と総合調整機能を集約し,体制を抜本的に強化した。

12 内部脅威対策制度

 2012年3月のソウル・サミットにおいて,個人の信頼性確認制度の導入について検討を進める旨表明した。現在,日本では,同制度の構築に向けて,原子力規制委員会の下で核セキュリティに関する検討会を設置して検討を加速している。内部脅威対策としては,出入り管理や二人ルール等の措置を引き続き徹底・強化していく。

13 放射線源のセキュリティ強化

 日本では,国内関係法令に基づき,放射性同位元素(RI)に係る核セキュリティ(以下「RIセキュリティ」という。)について,以下の制度を導入している。

輸出確認証の交付制度の整備(2005年12月)
IAEAの「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」及び「輸出入ガイダンス」への対応のため,放射性同位元素の輸出の際に輸出確認証を交付する制度を整備。
放射線源登録制度の整備(2011年1月)
「行動規範」への対応のため,人体への放射線影響を及ぼすおそれが高い放射線源について,特定放射性同位元素に係る登録制度を整備。

 日本におけるRIセキュリティについては,当面優先する検討課題の1つとして,原子力規制委員会において,これに係る措置の現状把握,課題の整理,日本で整備すべき措置について,具体的な検討を行っている。

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