日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成26年3月24日

議長,
ご列席のリーダーの皆様,
発言の機会をいただき感謝します。

大方針

 日本は,核廃絶に向けた世界的な核不拡散・核軍縮の推進のため,核セキュリティの強化に,国内的にも国際的にも引き続き尽力します。これは,世界の平和と安定にこれまで以上に貢献するという日本の「積極的平和主義」の実践でもあります。

世界の中での日本の責任

 唯一の戦争被爆国であり,原子力先進国でもある日本は,原子力の平和的利用の推進の前提となるスリー・エス(3S),すなわち保障措置(Safeguards)・原子力安全(Safety)・核セキュリティ(Security)の確保を一貫して推進しています。日本の原子力利用は厳に平和目的に限られ,保障措置に関し長年一点の曇りなく対応しています。福島第一原子力発電所事故を経験した日本は,原子力安全とともに核テロ対策にも役立つ教訓を,各国と共有しています。
 日本には,核セキュリティ強化を主導する責任があります。私自身が先頭に立って取組を進めます。具体的な成果と更なる取組の表明として,以下3つの観点から申し上げます。

具体的な成果と更なるコミットメント

 1つ目は,サミットの議題の中核である核物質の最小化と適正管理です。
これまでも我が国は,国際的な核セキュリティ強化に貢献するため,核物質を米国に移転・処分するなど,核物質の最小化の取組を続けてきました。このたび日本は,米国の協力の下,研究炉の一つである高速炉臨界実験装置(FCA)で使用してきた高濃縮ウランと分離プルトニウムを全量撤去することを決定し,日米首脳による共同声明を発出しました。これら燃料を用いる予定であった最先端研究は,代替燃料を用いて日米の協力の下で行うことなどにも合意しました。核テロ対策ニーズと研究開発ニーズを両立させることができました。今後も,同様の考え方で,これらの核物質の最小化に取り組んでいきます。
 また,プルトニウムについては,「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持します。これを実効性あるものとするため,プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮します。プルトニウムの適切な管理も引き続き徹底します。

 2つ目は,日本国内の取組強化です。
 まず,2012年9月に,スリー・エス(3S)を一元的に扱う原子力規制委員会を設置し,体制を強化しました。昨年末に閣議決定した政府の総合的な犯罪対策である「世界一安全な日本」創造戦略でも,原発等の核テロ対策強化を位置づけています。原発の再稼働プロセスが進む中でも,しっかりと対応していきます。
 また,核物質や関連施設の防護体制につき国際的な知見を得るため,来年春までにIAEAのアイパス・ミッション(IPPAS:核物質防護諮問サービス)を受け入れます。国内における核セキュリティ文化の醸成活動も推進します。核物質防護条約の改正については,2月にこの改正を国会に提出しました。

 3つ目は,国際貢献の強化です。
 日本は,フランス・韓国・英国・米国が参加する輸送セキュリティに関する自発的な協力枠組みを主導しています。本日,5か国による共同声明と,昨年実施した机上演習のレポートを発表しました。
 また,日本原子力研究開発機構(JAEA)などにおいて,核鑑識や核検知といった最新技術に関する研究開発を,より一層推進します。2010年12月に立ち上げた,アジア初の拠点である核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)における活動を拡充し,各国の人材育成や能力構築にも貢献します。IAEAやその他の関係機関との連携を引き続き強化しつつ,各国の拠点(CoE)とのネットワーク強化も推進します。

総括

 国内の核テロの懸念を解消し,世界からの日本に対する期待に応えます。私自身責任を持って国内及び国際的な核セキュリティ強化を進めます。
 また,世界各国の皆さんとも,さらに連携を深めていきたいと思います。
 ありがとうございました。

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