核軍縮・不拡散

令和5年12月11日

 12月8日及び9日、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議第3回会合が長崎において開催されました。会合には、白石隆座長(熊本県立大学理事長)を含む日本人委員3名の他、核兵器国、非核兵器国等からの外国人委員11名の合計14名の委員に加え(1名はオンラインで部分参加、1名は欠席)、政治リーダーとしてブラウン英上院議員(元国防相)、アミーナ・モハメド・ケニア元外務長官(オンライン参加)、開催地の有識者として朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長が対面参加し、また、政府からは、8日の開会セッションに石原宏高内閣総理大臣補佐官が、9日の閉会セッションには岸田文雄内閣総理大臣及び深澤陽一外務大臣政務官がそれぞれ出席し、率直かつ忌憚のない議論が行われました。加えて、政治リーダーとして、バチェレ・チリ元大統領、メヴリュット・チャヴシュオール・トルコ前外相、サム・ナン米元上院議員及びジョン・ケリー米気候問題担当大統領特使からビデオメッセージが寄せられました。

全体日程

氏名・肩書 白石 隆(座長) 熊本県立大学理事長 アンゲラ・ケイン 元国連事務次長兼国連軍縮担当上級代表 ローズ・ゴッテメラー 元米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当) 高見澤 將林 東京大学公共政策大学院客員教授 ジョージ・パーコビッチ 米カーネギー国際平和財団副会長 グスタヴォ・スラウビネン 第10回NPT運用検討会議議長 イアン・アンソニー スウェーデン国防研究所(FOI) 防衛分析部安全保障政策分析官 ブルーノ・テルトレ 仏戦略研究所副所長(注:第1回会合はオンライン参加) ディナ・カワール 駐米ヨルダン特命全権大使 マルティ・ナタレガワ 元インドネシア外務大臣 マンプリート・セティ 印空軍力研究センター(CAPS)フェロー 秋山 信将 一橋大学国際・公共政策大学院院長 ターニャ・オグルビー・ホワイト 核軍縮・不拡散アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)リサーチディレクター アントン・フロプコフ 露エネルギー・安全保障研究センター(CENESS)センター長 趙 通(ジャオ・トン) 米カーネギー国際平和財団シニアフェロー/プリンストン大学客員研究員
8日:
平和公園における献花、原爆資料館視察、被爆者講話聴講、被爆者との対話、市民社会との意見交換、旧城山国民学校校舎訪問、石原総理補佐官主催昼食会、開会セッション(石原補佐官が岸田総理の開会挨拶を代読)、セッション1・2、長崎県知事・市長共催歓迎夕食会
9日:
セッション3・4、賢人委員から総理への報告、閉会セッション(岸田総理出席)、マルティ尼元外相と総理の懇談、ブラウン英上院議員(元国防相)と総理の懇談、賢人委員による事後記者会見、深澤外務大臣政務官主催夕食会

1 平和公園における献花、長崎原爆資料館視察(8日午前)

平和公園における献花
長崎原爆資料館視察

 大石長崎県知事及び鈴木長崎市長の立会いの下で、祈念像前で献花を行い、その後、長崎原爆資料館を井上長崎原爆資料館長の案内の下で視察しました。

2 被爆体験講話および被爆者との対話(8日午前)

築城昭平氏
被爆体験講話および被爆者との対話

 築城昭平氏(18歳の時に長崎で被爆)による英語での被爆体験の講話を聴講しました。講話に続き、築城氏ら4名の被爆者と「『核兵器のない世界』に向けた被爆者の思い」をテーマにした対話が行われました。

3 市民社会との意見交換(8日午前)

市民社会との意見交換

 高校生平和大使を含む市民社会の出席者から、それぞれの活動の紹介がなされるとともに、被爆経験を他人事とせず、誰にでも起こりうる悲劇として、しっかりと普及活動を行いたい旨の意見が示されました。委員からは、高校生や大学生などの若い世代を含む幅広い市民が被爆の実相を受け継ぎ、世界各地へ広める活動をしていることへの敬意が示されました。

4 旧城山国民学校校舎訪問(8日午後)

旧城山国民学校校舎訪問

 城山小学校被爆校舎平和発信協議会の案内の下で、爆心地の西約500メートルに位置している旧城山国民学校校舎(国指定史跡「長崎原爆遺跡」)を訪問しました。

5 石原総理補佐官主催昼食会(8日午後)

 石原総理補佐官は8日昼、国際賢人会議に対面で出席した委員ら参加者を招待し、昼食会を主催しました。石原補佐官からは、参加者の訪日を歓迎しつつ、国際安全保障環境が一層厳しくなる中で、核兵器国と非核兵器国の双方からの参加者を得て、今次会議の議論が「核兵器のない世界」に向けた国際的な機運を高め、理想に向けての重要な一歩となることを期待する旨述べ、参加者との間で意見交換が行われました。

6 開会セッション(8日午後)

開会セッション

 冒頭、石原総理補佐官が歓迎の辞を述べつつ岸田総理の挨拶を代読しました。岸田総理は、「核兵器のない世界」への道は険しくとも歩みを止めてはならず、今後も、現実的で実践的な取組を着実に進めることが必要である、そのためにもプロフェッショナルかつ建設的な議論に基づく、国際賢人会議の叡智が不可欠であり、自由で忌憚のない議論を行い、「核兵器のない世界」に向けた具体的道筋について示してほしい旨のメッセージを発信しました。
 続いて、政治リーダーとして、バチェレ・チリ元大統領、チャヴシュオール・トルコ前外相、サム・ナン米元上院議員からのビデオメッセージがそれぞれ紹介され、アミーナ・モハメド・ケニア元外務長官からもオンラインで挨拶がなされました。
 開会セッション中、白石座長からは、厳しい安全保障環境において核兵器国と非核兵器国の分断が続く中で、非常に困難な課題を取り上げるが、率直かつ礼節をもった議論を行っていきたい旨発言がありました。また、各委員からも会議への期待や意気込みが述べられました。さらに、朝長名誉院長は、各国の分断が続くが、国際社会は「核兵器のない世界」の実現に向けて協同しなければならない旨発言しました。

政治リーダーから寄せられたビデオメッセージ

7 会合セッション

 委員は、2日間にわたる4つのセッションを通じ、核軍縮を進める上での課題、核軍縮分野で優先的に取り組むべき事項や国際賢人会議の今後の進め方を議題として闊達な議論を行いました。その中でも、国際安全保障環境の変化や新興技術等の今日的視点から、「核兵器のない世界」のために乗り越えなければならない根本的な課題について議論を行いました。

8 閉会セッション(9日午後)

閉会セッション
ジョン・ケリー米気候問題担当大統領特使

 日午後、岸田総理は、参加者から今回の議論の内容について報告を受けた上で閉会セッションに臨みました。同セッションにおいては、ケリー米気候問題担当大統領特使からのビデオメッセージに続き、岸田総理からは、自由闊達な議論を通じて「長崎を最後の被爆地に」という共通の決意を新たにすることに国際賢人会議の意義があり、そうした観点から、委員が被爆の実相について理解を深めたことは何物にも代えがたい、自分は、「核兵器のない世界」に向けて、引き続き国際賢人会議の叡智を得つつ強いリーダーシップを発揮していく旨述べました。
 併せて、岸田総理は、会合に参加したマルティ・インドネシア元外相、ブラウン英上院議員(元国防相)とそれぞれ懇談し、「核兵器のない世界」の実現に向け、引き続き協力していくことで一致しました。

9 事後記者会見(9日午後)

 冒頭、白石座長から、「長崎を最後の被爆地に」という点や、核兵器の不使用の規範の維持について委員間での合意があった旨述べつつ、来年は2回の会合を開催する、また次回会合は来年春頃を目処に実施する方向で調整する旨発言がありました。
 ケイン委員(元国連事務次長兼国連軍縮担当上級代表)から、長崎で被爆の実相について認識を深めるとともに、市民社会の取組に感銘を受けた、これを踏まえ、「核兵器のない世界」に向け多様な視点で議論できた旨発言がありました。
 ブラウン英上院議員から、プロフェッショナルな議論に参加することができた、こうした岸田総理のイニシアティブを高く評価する旨発言がありました。
 朝長名誉院長から、長崎、そして被爆者を代表して参加できたことに感謝、賢人委員の様々な意見を聞くことができ、意義のある議論ができた旨発言がありました。(その後質疑応答)

10 深澤外務大臣政務官主催夕食会(9日夕方)

深澤外務大臣政務官主催夕食会

 深澤外務大臣政務官は9日夕方、国際賢人会議に対面で出席した委員ら参加者を招待して夕食会を主催し、和やかな雰囲気の中で意見交換が行われた。


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