核軍縮・不拡散

平成28年12月14日

1 全体概要

(1)12月11日から13日まで,長崎市において「核兵器のない世界へ 長崎国際会議(共催:外務省,国連。協力:長崎県,長崎市,長崎大学,長崎大学核兵器廃絶研究センター及び核兵器廃絶長崎連絡協議会)」が開催されました。

(2)11日に開催された「ユース非核特使フォーラム」では,日本及び海外のユース非核特使経験者が核兵器のない世界の実現に向けた議論及び提言を行いました。また,長崎の原爆投下をテーマとした映画「母と暮らせば」の上映後,ユース非核特使経験者代表のほか,山田洋次監督,吉永小百合さん,土山秀夫元長崎大学学長,武井俊輔外務大臣政務官及びキム・ウォンス国連軍縮担当上級代表による意見交換が行われました。

(3)12日から13日に開催された第26回国連軍縮会議には,キム・ウォンス国連軍縮担当上級代表を始めとする国連関係者に加え,各国の政府関係者,有識者,NGO,メディア関係者等約60名が出席しました。我が国からは,武井俊輔外務大臣政務官が出席し,核軍縮・不拡散に関する日本の取組について述べた他,岸田文雄外務大臣がビデオメッセージにおいて,参加者が長崎で被爆の実相への理解を深め,この会議における議論が核軍縮への国際社会の一致した取組につながることを期待する旨を表明しました。

(4)会議においては,(ア)核軍縮を巡る近年の動向や各国の取組,(イ)非核兵器地帯を含む地域安全保障,(ウ)市民社会の役割,(エ)来年以降の2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討プロセスに向けた国際社会の取組について議論が行われました。

(5)また,会議の参加者は,平和記念公園や原爆資料館を訪問し,被爆者の話を聴講するなど,長崎の被爆の実相を伝えるプログラムに参加しました。

2 国連軍縮会議における議論概要

(1)セッション1「核軍縮のアプローチの現状」では,核軍縮を巡る国際社会の議論の現状を振り返った上で,次なるステップについて議論が行われました。来年核兵器禁止条約交渉が行われる予定であることを念頭に,核軍縮の進展のためには新たなアプローチが必要との声があった一方,核兵器を真に廃絶させるためには全ての核兵器国の関与を得ることが必要であり,そうでなければ核軍縮はかえって遠のくとの意見も出されました。

(2)セッション2「非核地帯を含む地域安全保障」では,世界の各地域の核軍縮・不拡散を巡る現状について,安全保障の視点を交えて議論が行われました。北朝鮮による核実験・弾道ミサイル発射については,安全保障上差し迫った重大な脅威であるとの認識で意見の一致がみられました。また,2015年NPT運用検討会議の最終文書が合意に至らなかった原因である中東非大量破壊兵器地帯構想についても活発な議論が行われました。

(3)セッション3「市民社会の役割」では,来年に核兵器禁止条約交渉が行われる予定であることを念頭に,市民社会や被爆者,国際人道機関等が今後果たすべき役割について議論がなされました。

(4)セッション4「2020年NPT運用検討プロセスに向けて」では,NPT運用検討プロセスを強化するための方策について議論を行いました。NPT運用検討プロセスと核兵器禁止条約交渉の関係性やNPT運用検討プロセスにおける議論の在り方の見直しなど,様々な議論が行われました。

3 評価

(1)今次会議は,G7広島外相会合やオバマ米国大統領の広島訪問が実現した本年の締めくくりとして,また,来年には2020年NPT運用検討プロセスが開始されるという重要な時期に開催されたという意味で時宜を得たものとなりました。

(2)ユース非核特使フォーラムには,本年3月に岸田外務大臣が発表したユース非核特使の国際ネットワーク化構想を受けて,海外から初めてユース非核特使経験者4名が出席して活発な意見交換が行われ,被爆の実相についての正しい認識が世代と国境を越えて広げていくことの重要性が改めて確認されました。

(3)国連軍縮会議における議論では,国際社会の核軍縮へのアプローチの違いも認識されましたが,NPT強化の重要性については意見の一致がみられました。また,全てのセッションにおいて核兵器禁止条約に関する議論が行われ,この問題への関心の高さが伺われました。

(4)今般,世界の様々な地域から政府関係者・有識者及び若者が集い,長崎の原爆の実相に触れたうえで核軍縮・不拡散について自由闊達に議論し,核兵器のない世界の実現という共通の目標に向けて一層協力する必要があることを確認することができました。この会議における議論が,2020年NPT運用検討プロセス等の来年以降の核軍縮に関する国際社会の取組につながることが期待されます。

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