核軍縮・不拡散

2020年NPT運用検討会議第2回準備委員会

平成30年5月17日

 4月23日より5月4日まで,国連欧州本部(ジュネーブ)において2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第2回準備委員会が開催された(議長:ブガイスキー・ポーランド駐ウィーン代表部大使)。我が国からは,河野外務大臣,髙見澤軍縮代表部大使,北野ウィーン代表部大使他が出席した。

1 概要

  • (1)第2回準備委員会は,2020年運用検討会議に向け,昨年第1回準備委員会で合意した議題に基づいて実質的議論を深める場との位置付け。
  • (2)初日冒頭に,手続事項として以下の3つの決定が採択された。
    • ア 決定1:Muhammad Shahrul Ikram Yaakobマレーシア国連代表部大使を第3回準備委員会議長に選出。
    • イ 決定2:第3回準備委員会は,2019年4月29日から5月10日までNYで開催。
    • ウ 決定3:2020年の運用検討会議は,2020年4月27日から5月22日までNYで開催。
  • (3)上記決定の採択後,一般討論,NGOセッションに続き,核軍縮,核不拡散(北朝鮮,イラン,中東非大量破壊兵器地帯等の地域問題を含む),原子力の平和的利用の各クラスターについての討論が行われ,いわゆるNPT三本柱の内容が議論された。
  • (4)NGOセッションでは,広島・長崎市長等によるステートメントや被爆者の方による被爆証言が行われた他,中満国連軍縮部上級代表が初日にステートメントを実施した。
  • (5)核軍縮については,核兵器禁止条約や悪化する安全保障環境と軍縮の関係等につき,核兵器国と非核兵器国との間及び非核兵器国間で見解の相違はあったが,2020年NPT運用検討会議の成功に向けてNPT体制の維持・強化が必要であるとの認識は共有されていた。多くの国が核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT),包括的核実験禁止条約(CTBT),核軍縮検証といった現実的且つ実践的な措置の必要性について言及した。
  • (6)不拡散では,北朝鮮の核・ミサイル問題につき,日米韓を含む多数の国より,北朝鮮の核・ミサイル関連活動は,関連国連安保理決議等に明白に違反しており,NPTを中心とする国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な脅威であるとして,北朝鮮の活動を厳しく非難し,安保理決議等の遵守を求める発言が相次いだ。また,2015年運用検討会議決裂の直接の原因となった中東非大量破壊兵器地帯構想については,米国が域内諸国の責任を強調する立場を表明し,これにアラブ諸国が反発するなど様々な考えが表明された。イランの核問題に関しては,包括的共同作業計画(JCPOA)の履行及びIAEAによる監視・検証の重要性が強調された。
  • (7)原子力の平和的利用では,不拡散,原子力安全及び核セキュリティを確保しつつ,原子力の平和的利用を促進していくことの重要性について各国の発言は一致した。特に,原子力の平和的利用を進める取組みとして,天野IAEA事務局長の掲げる「平和と開発のための原子力」がSDGs達成にも貢献するものとして評価され,我が国も主要なドナーであるIAEA平和的利用イニシアティブ(PUI)への支持が多く示された。
  • (8)5月3日,参加国に,一般討論,各クラスターの議論及び各国作業文書の内容を踏まえた議長責任の下での議長サマリー案及び今次準備委員会の報告書案(手続き事項関連)が共有され,翌4日,同報告書案が締約国からの特段の異論無く採択された後,議長サマリーにつき各国が見解を述べた。
  • (9)シリア化学兵器事案,核シェアリング,JCPOAをめぐって関係国間で答弁権の行使の応酬が行われた。

2 日本の対応

  • (1)4月24日,河野外務大臣が一般討論演説を行い,核軍縮をとりまく厳しい国際環境の中,「軍縮と安全保障の両立」を可能とするNPTの維持・強化が引き続き日本の取組の中心であることを強調し,国際社会のアプローチの違いを橋渡しする「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の取組として,透明性,検証や対話型討論を紹介し,国際社会に具体的な行動を呼びかけた。また,北朝鮮による核実験とICBM試験発射中止等の発表を前向きな動きと歓迎しつつ,核武装した北朝鮮は決して認められず,北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法での廃棄を実現するため,国際社会が一致して北朝鮮に対する最大限の圧力を維持する必要性を国際社会に呼びかけた。また,CTBT早期発効,FMCT早期交渉開始,軍縮不拡散教育や人材育成の重要性についても強調した。
    更に,ブガイスキー議長との個別会談やサイドイベント出席等を通じて賢人会議の提言の取組みの重要性を強調。また中満国連軍縮担当上級代表や軍縮不拡散イニシアティブ(NPDI)(注:日本を含む12か国の地域横断的グループ)首席代表とも意見交換を実施した。
  • (2)髙見澤軍縮代大使,北野ウィーン代大使他が各クラスターや特別時間において個別事項(核軍縮,安全保証,核不拡散,北朝鮮や中東を含む地域問題,原子力の平和的利用,運用検討プロセス強化等)についてのステートメントを行った。
  • (3)我が国として,「賢人会議」の提言を紹介する作業文書の提出,サイドイベントを実施した。加えて,NPDIとして,4本の作業文書(透明性,北朝鮮,NPT運用検討プロセス強化,保障措置)を提出し,透明性・報告に関するNPDIサイドイベントを開催した。また,ドイツが一般討論においてNPDIの共同ステートメントを実施し,NPDIとして,核兵器国(N5)や非同盟運動(NAM)諸国,新アジェンダ連合(NAC)との対話を行った。
  • (4)髙見澤軍縮代表部大使や北野ウィーン代表部大使等が中心となり,広島市や長崎市が参加する平和首長会議のユース非核特使関連イベント,広島県主催のイベントに参加する等,被爆者,被爆二世,若者を含む市民社会と対話を行うとともに,核兵器国を含む各国や会合参加中の専門家と活発に意見交換を行った。

3 評価

  • (1)日本は,河野外務大臣が演説を実施したことに加えて,「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の提言のインプット等も実施して,各分野別の議論にも積極的に関与し,存在感を示した(議長サマリーは個別のパラグラフ45を設け「賢人会議」の紹介を行った河野大臣の取組みが歓迎された旨を記載)。また,NPDIは,作業文書の提出,サイドイベントの開催等を通じて今次準備委員会に積極的に貢献した。日本及びNPDIの主張が「賢人会議」の提言も含めて,議長サマリーに然るべく反映された。
  • (2)各国が2020年運用検討会議の成功に向けてNPT体制の維持・強化が必要であるとの共通認識を示し,NPTへのコミットを再確認できた。核軍縮分野については,CTBTやFMCTの重要性等については概ね意見の一致が見られた一方,核兵器禁止条約の位置づけや核軍縮の進め方については意見の相違が見られ,核兵器国の取組みが不十分であること,環境の悪化を軍縮の条件とすべきでないこと,議長サマリーが核兵器国や核抑止に過度に配慮しているのではないかとの指摘もなされた。核不拡散と原子力の平和的利用については概ね意見の一致が見られた。
  • (3)北朝鮮の核・ミサイル問題が国際的な核不拡散体制に対する重大な脅威となる中で,我が国を含む多くの国が,北朝鮮による核兵器・弾道ミサイル開発を最も強い言葉で非難し,全ての大量破壊兵器並びにあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法による廃棄(CVID)に向け,具体的な行動をとることを求める一方,4月27日の南北首脳会談の実施及び「朝鮮半島の平和と繁栄,統一のための板門店宣言文」の発出等,前向きな動きについては歓迎し,議長サマリーにも同様の内容が反映された。また,議長サマリーに関する検討のセッションにおいても,我が国からは,南北首脳会談を,北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動きとして歓迎しつつ,北朝鮮が全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な廃棄に向けた具体的な行動をとることを強く期待する旨述べた。
  • (4)中東非大量破壊兵器地帯構想については,その実現が重要との認識は改めて共有されたが,その達成方法については意見が分かれ,2020年に向けた大きな課題であることが改めて明らかとなり,今後も継続的な議論が必要と考えられる。
  • (5)米国は,「核態勢の見直し(NPR)」の公表を受け,同NPRを米国の核政策の透明性の例としてサイドイベントで説明した他,核軍縮を行うための環境創出を重視するアプローチ(いわゆるCCND)についての作業文書を提出するとともに,同盟国のみならず,米国に批判的な国やNGOとの対話に積極的に関与していた。
  • (6)2020年の運用検討会議議長の指名まではなされなかったものの,3つの決定事項の採択がなされ,概ね,議論が紛糾することもなく平和裡に準備委員会が終了した。これは,今回が第2回の準備委員会という中間点であることや事前の関係各国との調整や公平な議事進行といったブガイスキー議長の手腕及び第1回準備委員会議長国(オランダ)の支援等によるものと評価できる。

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