マレーシア

平成27年5月25日
儀仗隊による儀礼
(写真提供:内閣広報室)
握手を交わす両首脳
(写真提供:内閣広報室)
日・マレーシア首脳会談
(写真提供:内閣広報室)

 5月25日18時20分頃から約50分間,安倍総理大臣は,公式実務訪問賓客として訪日中のナジブ・ラザク・マレーシア首相と会談を行ったところ,概要は以下のとおり。
 両首脳は,会談後,「戦略的パートナーシップについての日マレーシア共同声明」骨子(PDF)別ウィンドウで開く仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)を発出した。

1 冒頭

(1)安倍総理から,ASEAN経済共同体の設立という節目の年にナジブ首相が議長として指導力を発揮していることへの敬意とともに,東方政策や緊密な経済関係を土台に政治・安保を含むあらゆる分野で深化している両国の関係を,今回の同首相の訪日を通じて更に強化し,地域や国際社会の安定と繁栄に共に貢献したい旨述べた。

(2)ナジブ首相からは,強固な両国の関係を安倍総理と共に一層深め,平和で繁栄し,ダイナミックなASEANを実現するために緊密に協力していきたい旨述べた。

2 二国間関係

(1)戦略的パートナーシップへの格上げ

 両首脳は,両国が戦略的利益を共有することを確認するとともに,これまで築いてきた協力関係を踏まえ,両国関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし,地域や国際社会の幅広い課題について一層協力を強化していくことで一致した。

(2)政治・安全保障

(ア) 安倍総理から,日本は戦後70年の間一貫して平和国家として歩み,アジアや世界の繁栄に貢献してきており,今後もその歩みは不変である,先般,閣議決定して国会に提出した「平和安全法制」は,PKO等,国際社会の平和と安定に一層貢献するための取組であり,「積極的平和主義」の実践でもある旨述べた。これに対し,ナジブ首相から,日本の積極的平和主義の下での貢献への歓迎が示された。

(イ) また,両首脳は,防衛装備協力を推進すべく,協定の交渉を開始することで一致した。

(3)海洋

 安倍総理から,今後も「法の支配」の下で開かれ安定した海洋を実現すべく協力したいとして,マレーシアの海上法令執行庁(MMEA)がASEAN各国の海洋人材育成を目指していることを高く評価するとともに,同庁の訓練センターへの更なる協力を検討する旨を述べた。ナジブ首相からは,マレーシアの海洋能力の向上に対する支援に感謝する旨述べた。

(4)経済,文化・人的交流

(ア)安倍総理から,今日の緊密な経済・人的関係の基礎となった東方政策の貢献を改めて評価するとともに,今般,両国がガイドライン文書に合意し,東方政策2.0を実施に移すことを歓迎した。また,具体的協力として,今後5年で500人の研修員受入れを目指す「東方政策2.0研修」を開始する旨を述べた。

(イ)安倍総理から,先般発表した「質の高いインフラパートナーシップ」の下,アジア開発銀行(ADB)と連携し,質・量ともに十分なインフラ投資を実現するとして,インフラ協力や日本からの投資推進を通じ,マレーシアの経済高付加価値化や2020年までの先進国入りに最大限協力する旨を述べた。その中で,シンガポールとの高速鉄道における新幹線の導入に強い期待を伝達した。

(ウ)また,安倍総理から,観光や青少年交流プログラムであるJENESYS2015等を通じた文化・人的交流の推進も重視しているとして,マレーシア日本国際工科院(MJIIT)のASEAN留学生向け奨学金を拡大することを決定した旨述べた(注:日ASEAN統合基金を活用し,博士課程向けの奨学金を新設)。

(エ)ナジブ首相からは,「質の高いインフラパートナーシップ」への高い評価が示されるとともに,東方政策2.0やMJIIT等を通じた交流の促進への高い期待が示された。また,高速鉄道について,国際入札が行われることとなるが,その際には日本が高い競争力を有する入札者となると信じている旨述べた。

3 地域・国際社会の課題

(1)ASEAN,EAS,経済連携

(ア)安倍総理から,ASEANが中心となった地域の枠組みの深化を重視しているとして,マレーシアのASEAN議長国としての取組を,様々な取組を通じて全面支援する考えを伝達した。また,EASの強化も重要であるとして,10周年の重要な年に,強化方針等の具体的成果を出せるよう,マレーシアの取組を引き続き支援する旨述べた。ナジブ首相からは,議長国としての取組に対する日本の支援に謝意が述べられた。

(イ)両首脳は,TPPの早期妥結及びRCEP交渉の進展に向け,引き続き協力していくことを確認した。

(2)現下の地域情勢

(ア)南シナ海の問題について,安倍総理から,大規模な埋立て等を含む現下の状況について強い懸念を表明するとともに,「法の支配」に基づく対応が重要であり,ASEAN一体の対応を支持し,議長国のマレーシアに協力していく旨を述べた。これに対し,ナジブ首相からは,4月のASEAN首脳会議では関係国の議論を経て議長声明を発出したこと等について紹介があった。

(イ)両首脳は,ロヒンジャの漂流の問題についても意見交換を行ったほか,テロ・過激主義対策の重要性で一致した。また,国連安保理改革について,ナジブ首相から日本の安保理常任理事国入りを支持する旨の発言があり,両首脳は,早期の改革実現の重要性とこれに向けた協力を確認した。


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