チャレンジ41カ国語 ~外務省の外国語専門家インタビュー~

チャレンジ41カ国語~外務省の外国語専門家インタビュー~

2007年10月

ベトナム語の専門家 六反田さん

Xin Chao!(シン・チャオ)=こんにちは!

(写真)人なつこいベトナムの学生たち(中部ホイアンのビーチにて)

人なつこいベトナムの学生たち
(中部ホイアンのビーチにて)

 子どもの頃から、漠然と海外に憧れを抱いていたという六反田さん。職業に外交官を選んだ理由は、常に外国に関わることができる上に、外国政府を相手にするというスケールの大きさに惹かれたから。でも、まさか研修言語が「ベトナム語」になるとは思ってもみなかったようです。

「実のところ、ベトナム語に決まったときは少しショックでした・・・。」

 「それまで全く聞いたことのない言語でしたし、日本語にはない音が多い上に声調が6つもあり、最初はとにかく難しそう!という印象でした。」
 しばらくは発音と声調の練習に明け暮れ、のどを痛めることもあったとか。
 「語順は主語+述語+目的語、と英語と同じですが、英語ほど時制が複雑ではないし、フランス語のように名詞の性や格変化に悩まされることもありません。最初に発音と声調をモノにしてしまうことがポイントです。」

巨大蜘蛛・ゴキブリとの格闘、ヤモリとは共同生活?

 語学研修のためハノイに赴任した六反田さんは、ベトナム都市部の典型的な小さな一軒家を借りていたそうです。
 「タイル貼りの家だったのですが、ちょっとした音でもすごく響くのです。最初の夜は怖くて一睡もできませんでした。住んでみると蚊やゴキブリ、巨大蜘蛛などの虫との格闘がそれは大変で・・・。ヤモリは当たり前のようにいるので、はじめはその姿に驚いていましたが徐々に共生状態になりました。夜、「キャキャキャ・・・」という鳴き声が家の中に響いていましたね。(笑)」
 と懐かしそうに語る六反田さんですが・・・ベトナムのような高温多湿な土地では、巨大虫との遭遇は必至なのでしょうけど、かなりコワイ話ですね。

  • (写真)メコン河とともに生活する人々

    メコン河とともに生活する人々

  • (写真)奇岩で有名な世界遺産ハロン湾

    奇岩で有名な世界遺産ハロン湾

精神的豊かさを持つベトナムの人たち

 「最初、戸惑いはあったのですが、実際にベトナムに住み、ベトナムの人たちに接してみて、とても親近感を持てたし、自分の性に合っていると思いました。決して豊かとは言えない生活でも、何か彼らは幸せそうなんですね。特に、子どもたちのいきいきした姿が印象に残っています。」
 旧正月や命日などの家族・親類が集う行事に度々招かれ、歓迎されたそうです。
 「旧正月に外国人が家に来ると運が高まるとされているのです。ベトナム人は英語を勉強している人が多くて、外国人と積極的に接します。最近では日本語を勉強しているベトナム人も多く、よく話しかけられました。ベトナム人と日本人は民族的にも文化的にも似ている点は多いですが、思ったことをはっきり相手に言うところは日本人と違いますね。」

信仰心が厚い大家さん

 ベトナム人の80%は仏教徒ですが、儒教の教えも根強く、先祖崇拝はその一つ。六反田さんが借りていた家にはもともと仏壇が造られていて、ベトナム旧暦の毎月1日と15日には、隣に住む大家さんがお供え物を手に六反田さんの家を訪れるのが習慣だったそうです。
 「線香を上げて、お祈りをして帰った翌日、お供え物を取りにまた大家さんがやってきます。仏壇に供えたものは縁起が良いとされて、私もよく果物などを頂いたのですが、1ヵ月に何度も来られると正直『また?』と思うときも・・・(笑)。お陰で大家さん夫妻とは随分親しくなりました。」

必死の値段交渉

 六反田さんがハノイで研修を始めたのは1999年。当時はまだスーパーマーケットなどの数が少なかったので、市場や路上で買い物することが多く、値段交渉がつきものでした。
 「外国人だからと『ぼられる』のが嫌で、日本と比較すれば激安のものでも、見るからに貧しい行商人から10円でも値切ろうと必死になっていました。思い返せばそんな自分が恥ずかしいです・・・。」
 値段交渉もきっと語学力向上に役立っていたはず!

  • (写真)北西部山岳地帯の少数民族の市場にて

    北西部山岳地帯の少数民族の市場にて

  • (写真)サパの市場の様子

    サパの市場の様子

最初の通訳でお咎めが・・・

 研修終了後、在ベトナム日本大使館での勤務が始まります。最初の通訳の体験は、当時の日本大使の離任挨拶だったそうです。挨拶と言っても「お世話になりました、ではさようなら」で終わるわけはありません。ベトナムの首相や大臣との会談に同席し、メモ取りと通訳を同時にこなします。初めての通訳体験、いかがでしたか?
 「すぐに言葉が出てこなくて苦労しました。メモを起こして報告書にしたものの、大使から出来が悪いとお咎めを頂戴してしまいました。」

外交官の醍醐味

 その後経験を積むことによってスキルアップされたわけですね。「通訳をしていて良かった」あるいは「外務省に入って良かった」と思うのはどんなときですか?
 「外務省に入らなければ触れ合う機会もなかったであろうベトナムの人や各国の人々と接することができたこと、そして価値観の異なる外国人と接することで様々なことを吸収することができることです。また、日本の皇族や総理など、普段めったにお目にかかれない方にお会いできることも貴重な体験です。」

順調な二国間関係

 現在日本とベトナムの関係は、政治、経済だけでなく、文化、科学技術と幅広い分野で交流が進んでいます。2004年からはベトナムを訪れる日本人の一般ビザが免除になり、旅行者も増え続けています。現在、本省の南東アジア第一課でベトナムを担当する六反田さんは
 「今後はそれぞれの分野が、更に深い関係へと進むように努力していきたい」
 と語ってくれました。

  • (写真)仲睦まじい少数民族の夫婦(北西部山岳地帯)

    仲睦まじい少数民族の夫婦(北西部山岳地帯)

  • (写真)パイナップル売りの少女と(ホイアンのビーチ)

    パイナップル売りの少女と
    (ホイアンのビーチ)

六反田さんのベトナム語

好きな言葉・思い出の言葉

 Hoa Sua(ホア・スア) 花の名前。響きが綺麗なので気に入っている。花の季節、夕暮れの後、樹路にいい匂いがたちこめる。

便利なフレーズ

 Xin cam on !(シン・カーム・オン) ありがとうございます。
 Khong sao !(コン(ホン)・サオ) 問題ありません。大丈夫です。No problem !

ベトナム語を主要言語とする国: ベトナム社会主義共和国

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